ちば環境情報センター
1999.9.6 発行    ニュースレター第26号

代表:小西由希子


目次

  1. 盤洲干潟のホテル建設経緯
  2. 女性と環境について思ったこと
  3. みんなつながれ!学校ビオトープ
  4. 人と自然にやさしい公園作り
  5. コンピューター2000年危機対策
  6. 環境ホルモン講座に参加して
  7. トビハゼ観察会に参加しました

盤洲干潟におけるホテル建設の経緯

君津市 森  哲司

木更津市の小櫃川河口干潟に存在する「北浜町1番地」、通称「三万坪埋立地」(以下「三万坪」と略す)は、約50年前頃から埋め立て造成され、千葉県企業庁(以下「企業庁」と略す)の所有地であった。しかし、1989年3月に、地元の金田漁業協同組合(以下「漁組」と略す)は、県からの漁業補償金7億円をもとに、企業庁から6億円で払い下げを受けた。このとき両者の売買契約で、漁組は土地購入後10年間他者への売却はできないことになっていた。そして、10年後の1999年3月26日の契約解除を待って、同年4月に、ホテル三日月に21億円で売却された。
三万坪がホテルに売却されることが明らかになったのは、昨年10月28日の新聞報道によるものである。10年間盤洲干潟の保護運動を続けてきた、地元の「干潟まつり実行委員会」等多くの自然保護団体は、新聞報道後現在に至るまで、ホテル着工阻止に向けて、行政やホテル側に対して数々の働きかけをしてきた。すなわち、千葉県に対しては建築申請の不許可の要望や、木更津市長との話し合い。ホテル側に対しては、干潟への環境影響評価と工事着工の延期,さらには地元自然保護団体を中心とした開かれた話し合い等、継続的に要望している。
これに対し行政側の答えは、「法的に問題がない」ということでホテル建設を容認している。行政の一部には「町の発展につながる」と歓迎の意を表す者もいた。また、ホテル側は6月10日と7月10日の2回の話し合いに応じたものの、誠意ある回答は得られず、進展は見られなかった。
今までにホテル側と干潟まつり実行委員会を中心とした、2回の話し合いでわかったことは、今年9月にT期工事を着工して高さ27m,長さ146m,幅40mの5階建て温泉スパを建設し、来年営業予定であること。ここで使用される水は、地下水を最大で1日500d近く汲み上げ、温泉などに利用する。そして、多量の洗剤を含んだ使用水が浄化槽を経由し、殺菌塩素を含んだ状態で多量に干潟に排水される。それも温排水である。さらに、2年後にはU期工事として高さ45m,長さ119m,最上階に露天風呂もある大浴場を備えた11階建てホテルが建設される予定である。
以上のことから考えられる問題点は、
@多量の地下水汲み上げによる地盤沈下の問題。地盤沈下で直接干潟が消失する心配がある。
A洗剤成分を含む多量の排水が、直接干潟に流れ込むことで、そこに生息する生物だけでなく干潟の生態系全体に影響を及ぼす心配がある。ホテル側は、BOD10ppm,N-ヘキサン抽出物質5ppm等、水質基準を満たしているというが、これらの値はかなり汚れた水の値に相当する。それが1日最大で500d近く排水されれば、干潟の生態系を大きく脅かす心配がある。また、多量に使用されるであろうシャンプーなどの洗剤や清掃用洗浄剤は、法的基準のない環境ホルモンなどの化学合成物質を含むおそれがある。このことは、今話題になっている水生生物のインポセックスのように、干潟に生息する多種多様な生物たちの存亡に大きな影響を及ぼす可能性がある。さらに、法的に義務づけられている浄化槽排水への塩素殺菌は、その塩素を含む水が直接干潟に排水されることで、干潟の分解者である細菌類にも影響を及ぼすとともに、排出された塩素は海水中の有機物と化合して、発ガン物質であるトリハロメタンを多量に生じる可能性が指摘される。
B約25℃という排水温度は、熱帯魚の飼育水槽の水温と等しく、冷水で生育する海苔にとって問題がある。
C高層で横長の大構造物は、照明も含め野鳥の飛行を妨げ、建物への鳥や昆虫の激突死を招く心配がある。ホテル建設の予定地である三万坪は、内陸から突出した形で盤洲干潟(小櫃川河口干潟)内に存在する。この干潟には、毎年多くの渡り鳥が訪れ、羽を休めている。特に絶滅危惧種のコアジサシが、例年8月ともなると各地から約1万羽も集結し、秋の渡りに備えて休養する。こうした鳥たちが、高さ45m,ホテルと温泉スパを合わせた長さが250m以上にもなる構造物に激突する可能性は高い。さらに、照明による誘引などで激突する可能性は増すであろう。
以上のようにこのホテル建設は多くの問題をはらんでおり、建設にともなう経済効果もふまえた上で十分に議論し、早急に対応していかなければならない。

ホテルの見取り図

この敷地は干潟に
飛び出ています。

右(北)には漁港で、
上(東)と左(南)は
干潟は広がっています。

女性と環境について思ったこと

ー 国際女性技術者・科学者会議に参加して―
千葉市美浜区 小倉 久子

7月24日から27日まで、千葉市幕張メッセで第11回国際女性技術者・科学者会議が開催されました。今回の統一テーマは「Science and Technology for GlobalEcology」で、私は地元として開催準備のお手伝いをしました。
この会議の目的の一つに、女性(科学者)の地位を引き上げたいということがありますが、これは分野によってずいぶん違うように思えました。私の属する環境というのは比較的新しい分野であるためか、日ごろ女性の地位の低さを感じることはほとんどありませんが、医学や土木の分野ではまだまだ大変そうでした。また「大学」というのもとても閉鎖的・封建的な社会であるように見受けられました。
 現在やこれからの環境について考えるときには「生活者の視点」が絶対に必要です。そしてこの場合女性は男性に比べて有利なことが多いはずです。環境ホルモンだってゴミの問題だって、家族の食事を作る人、買い物をしたりゴミを出す人のほうが、切実に考えられるじゃありませんか。環境科学の分野で女性が強いというのは、こういう理由もあるのではないかと私は考えています。
 でもほんとうはいつまでも「男だ女だ」と言っているのは愚かなことです。どちらも生活者なのですから。環境問題をまじめに考えようという男性(女性でももちろん)は、まず家事に取り組むことが一番の勉強になるのかもしれません。


みんなつながれ! 学校ビオトープ

 〜インターネットメーリングへのお誘い〜

千葉市花見川区 伊原 加奈子

最近ビオトープ<野生生物が生息する空間>は、全国の学校や地域で盛んにつくられています。しかし維持が大変なうえ、一般的に十分知られていないので、どうしても一部の担当者に負担がかかってしまい、個々で解決できず、数年後には草むらに姿を変え・・という展開も珍しくないようです。
゛せっかく子ども達が自然と親しめる場があるのに、途中挫折はあまりにももったいない!もっと同じ意思を持つ者同士がつながれば、アイデアも出て、解決の糸口が見つけやすくならないか?"―― 今年4月下旬、そんなことを考えていたメンバーにより、インターネットのメーリング(送ったメールが、登録者全員に送られるメールシステム)を利用した交流がスタートを切りました。登録者は、現在100人。すでに450通を超えるメールのやり取りが行なわれています。(当センターの会員も何名か参加しています。)
 学校ビオトープに的を絞ったものではありませんので、ビオトープに関心がある方は、参加してみてはいかがでしょうか?すでに実践している方からの豊富なアドバイスや、専門職の方からの情報も飛び交い、きっと心強い存在になってくれることでしょう。
 登録方法は簡単です。メールをmajordomo@freeml.comへ送り、本文1行目にsubscribe biotopeと書いて送信してください。自動登録されます。入会退会は自由にできます。なお、ちば環境情報センターでは、このメーリング上のやり取りを編集し直し、センター内で閲覧できるよう、用意しております。御利用下さい。 また、インターネットを使われてない方で、このメーリングに参加してみたい方(ちば環境情報センター会員のみ)は、当センターの伊原まで御相談下さい。


人と自然にやさしい公園作り

千葉市立扇田小学校 石井 信子

5年生になった子どもたちに、住都公団より学校近のくの公園予定地で、子どもたちのアイディアを生かした公園作りをしてみないかという話が舞い込んできた。昨年「街作りフォーラム」で、公団の方や地域の方との活動が「公園作り」につながったわけだ。
5月下旬、初めて現地を観察する。フィールドビンゴをしながら、五感をつかってたっぷり自然に触れさせ、生き物マップを作り、2度目の公園探検の後には、一人一人「キーワード」を考え、絵や文で自分の思いを表した。さらに、全校朝会で公園の様子を知らせたり、全校の児童や地域の人にアンケートやインタビューしたりして情報を集め、その結果を「公園新聞」で地域に知らせていった。一方で、ディベート手法やロールプレイ手法を使い、いろいろな立場に立って考える学習をしていった。
さて、いよいよ「プラン」作り。自分の思いをみんなに発表し、自分と同じ思いの仲間とグループを作りプランを練り始めた。子どもたちにとってこの作業が一番つらかったようだ。途中、公団や市の公園管理課の方や、造園会社の方にも話し合いに参加してもらいアドバイスをもらった。
6月下旬、地域の方や公園作りの関係者の前で、それぞれのグループが手法を凝らし、プランを発表した。グループのキーワードは「自然を生かす」「自然を残す」「ふれあいを大切に」などだ。どの子も堂々と発表し、生き生きと活動をしていたのには驚いた。その後大人たちが、子どもたちのアイディアを真剣に考えてくれたのが、公団側からのプラン発表でわかり、子どもたちはとても満足したようだ。これからの花壇作りや、椎茸栽培、トーテンポール作りなど地域の方と関わっていこうと計画を立てている。来年3月には完成予定である。


コンピューター2000年危機対策

千葉市稲毛区 出野 花子

最近マスコミで時々取り上げられているコンピューター2000年問題のこと皆さんはご存じでしょうか。ひと月ほど前にわたしは菊池由美さんという環境問題に関する様々な活動をされている方の所へ行ってきました。菊池さんは2000年問題に詳しくそこでいろいろなことを聞き、その後、本などで知れば知るほどこれは大変な問題なのだと分かってきたのです。今の社会(文明社会)はほとんど全ての分野、電気・ガス・水道・農業・流通などがコンピューター制御されており、その一部でも誤作動をおこすと、それに関わる全てが影響を受けることになります。最悪の場合、電気・ガス・水道が止まり食糧危機という事態も起こりかねません。アメリカでは政府が食料の備蓄を勧告しています。そして一番危険なのが原発の事故と、核兵器の誤発射です。現実のこととなれば地球環境は壊滅的な打撃を受けてしまいます。Y2KWASH※の主旨に賛同していただける方は署名にご協力をお願いしたいと思います。(※Y2KとはYear 2kiroの略 広くコンピューターの西暦2000年問題を指す、またWASHとは、World Atomic Safety Holiday 原子力安全休暇を指す。)また2000年問題に関心のある方はご連絡いただければ詳しい資料など差 し上げます。一緒に考えてみませんか。
連絡先:千葉市稲毛区緑町 2-20-11 出野花子 TEL&FAX:043-246-9667(午前中在宅)


環境ホルモン講座に参加して

四街道市 浅野 幸子

父が家庭菜園で作った、曲がったキュウリ…,葉の間に虫がくっついているキャベツ…。見かけは悪いし、よく洗わないといけないので大変ですが味は抜群…。父に電話し「環境ホルモン講座に行ってきたよ。やっぱり無農薬野菜はいいよね。」と言うと、「ンダベ。ンダベ。」(父は秋田県人です)という得意気な声が返ってきました。
今まで何となく体に悪そうだから…、という理由で心がけて避けてきたものは多少ありますが、こんなにも身近なところに、たくさんの環境ホルモンが影響しているのには驚きました。
あまりにも便利になってしまったこの時代…。すべての環境ホルモンを徹底的に排除した生活は困難かと思われますが、少しでも自分たちの身を守るための工夫や努力を心がけたいと思います。小さなところで、一人一人の積み重ねが、地球や子孫を守ることにつながるということを実感しました。
講師の南川忠男先生のお話は、専門的ですがとてもわかりやすかったです。もっと多くの人たちがこの問題に興味をもち、勉強の場が増えるといいと思います。


トビハゼ観察会に参加しました

東京都練馬区 為貝 和弘

8月29日に江戸川放水路で行われた「トビハゼ観察会」に、6歳の娘をつれていってきました。朝方はパラパラと小雨が降っていましたが、現地に到着するころには雲もきれ、観察会がはじまった時にはピーカンの天気になりました。参加者は、子供さん10名くらいを含め40人程度でした。講師は「北限のトビハゼを守る会」代表の田中正彦氏で、この大人数を一人でリードし、わかりやすい説明と時にはジョークも含め、なかなか好評でした。
先日の大雨の影響で、堰を開けた為にハクレンなどの淡水魚が汽水域に流され、堰を閉じた後取り残された魚が大量に死んでいました。貝類もだいぶ死んだようで、かなり臭いにおいがただよっていました。この時期は、生まれてまもないトビハゼの稚魚/幼魚が多く、成魚になるとなかなかつかまえられないトビハゼも、割と簡単につかまえることができ、我家の娘も喜んでトビハゼ採りに熱中していました。
ここでは、最小のハゼであるマサゴハゼなども見られ、チゴガニのダンス、コメツキガニ/アシハラガニ/ヤマトオサガニ/シロウリガイ/オキシジミ/シマイサキの稚魚など、いろいろな生物が観察され、大変勉強になり、かつ楽しめる観察会でした。年に何回か行われているようなので、ぜひみなさんも家族で参加されることをお勧めします。
あれやこれやで盛り沢山の観察会でしたが、私は夏の疲れがでたのか帰宅してから熱発し、翌日フラフラの状態で出勤したのは予定外でしたが、楽しい夏の一日でした。


 「談 話 室」開設!〜 ホームページの一室にて 〜

 ちば環境情報センターのホームページ<http://www2.tky.3web.ne.jp/~ceic/>の中で、自由に意見交換のできるぺ−ジが作られました。その名は「談話室」。
会員、非会員に関係なく参加できます。インターネットの使える方は、じゃんじゃん書き込んでください!(お知りあいの方にも知らせてくださいね)

★たとえば、今までにこんなことが書かれているヨっ!
いろいろな価値観 投稿者:yuki  
会員の方にはいつも再生封筒を使わせていただいています。情報センターのメンバーだから歓迎してくれるわけで・・・感謝しています。
やはり「みっともない、礼儀に反する」と考えるかたも多いと思います。少しでも多くの人が今までの価値観から少し脱却し、立ち止まって考えて下さるとうれしいですね。

盤洲をみてきました。 投稿者:松尾  
8月27日に、環境パートナーシップちばのエコツアーで、東京湾では最大で1400Haの素晴らしい干潟を見てきました。ヨシは茂り、沖には簀立で漁の用具がみえ、アジサシは少々、コアジサシの大群をみる事が出来ました。金田海岸の一部はホテル建設計画かあり、大浴場の温排水による、自然の変化が予想されていると、案内の藤平さんは言っていました。どうなるのでしょうか?
自由研究完了 投稿者:KJOE  
砂鉄入りスライムを作りました(作らせました)、スライムの中に入れる砂鉄の量が多い方が、磁石で動かしやすいようです。しかし、見た目は、大変グロテスクな、物体に成ってしまいました。アイデアありがとうございました。
環境番組やるよ! 投稿者:カーコ
今日から1週間、NHKテレビで夜10時頃に、『環境との共生をめざして』という番組をやります。始まる時間や放映時間はまちまちですが、企業の取り組み、干潟問題、名古屋ごみ事情、生ごみリサイクルなど、なかなか興味ある物が多く、楽しみです。個人的にビデオ録画もするつもりですが、皆さんも、テレビで見てみてはいかがでしょう?

編集後記

千葉市赤井の谷津でカラスウリの開花を見ました。日が沈んだあと、白い花がゆっくりと開いていくようすに、優雅さと神秘を感じました。(まさ)


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