ちば環境情報センター
2003.5.6 発行    ニュースレター第70号
代表:小西由希子

目次
  1. 30周年を迎えた千葉県理科教育研究会生態教材研究班の発足当時を振り返って
  2. 「養老渓谷自然観察会の感想」  
  3. 千葉県立中央博物館 生態園 「森の調査隊」
  4. 環境情報(新聞・資料)を活かそう!
  5. ちーたねイベント報告
  6. CEIC運営委員から4人間は自然の一部 
  7. 広場としての環境情報センター

千葉県における生態教育
30周年を迎えた千葉県理科教育研究会生態教材研究班の発足当時を振り返って

千葉エコロジーセンター 千葉市若葉区 小滝 一夫 

1975年、日本生物教育会の第30回の全国大会が千葉県で開かれた。この時の千葉県の地域の出し物としてテーマが「平凡な自然を見直そう」であった。そのようなテーマが生まれた裏には、多くの生物教師の自然との関わりの体験が浸み込んでいた。生物分科会では、当時「分科会便り」が県下の各高校の生物の先生方の手元に届けられていた。分科会の研修成果や各先生方の体験や意見がこの会報を通じて行き交いしていた。そんな中で遺伝教材研究グループ,校庭植物研究グループ等々があり、分科会会員数の増加で多人数が集まってこれまでに行ってきた研究協議会は廃止の傾向に傾かざるを得なくなっていた。小回りの効く集まり方の必要性が高まり、研究部会の小グループ化による活動の活発化が必要になった。このような方法が今までよりも更に実質的なグループ活動の発生をみたのである。生態班もまたその一つ。生態教材の内容をどのように生徒に教えるか?フィールド体験のない教師には、生徒の学習指導が皆目分からない。まず教師自身が、生態学をフィールドで体験し、それが生態の教材内容開発に結びつき、教師自身の教育意欲につながることを期待したのである。
日本生物教育会の全国大会(千葉大会)は、時機を得た全国から集まる生物教師への生態班からの教育方法をアピールする好機であると考えられた。そんな環境条件の中、生態班のメンバーはエキサイトして興味ある催しを考えついたのである。研修会を野外コース紹介に使おうというのである。場所は千葉県内でも、とっておきの自然と考えられた清澄山が選ばれた。大会会場の千葉そごうでは房総の自然展を開催し、その中に清澄山の案内も盛りこまれた。
大会の終わりに組まれた研修旅行では、清澄山の自然紹介があった。生態班がこの重責を負った。東京大学の演習林施設を借用して、ここに参加者45名が宿泊した。夜は懇親会の他に清澄山の自然紹介が、地元の浅野貞夫,新山恒雄,高滝賢治,浅間茂,小野沢信夫,五十嵐和宏,成田篤彦氏らによる植物、動物に関する講義がなされ、フィールド紹介のオリエンテーションがなされた。メーンフィールドとして「あらかし沢」が観察地となった。このフィールドの林内の路傍に、ベニヤ板に張り付けた解説板が並べられ、各専門の係りが、通過する参加者に説明をするしくみである。参加者の中には山林に生息するアカネズミの姿に接して驚く場面もあったとか。イエネズミだけがネズミと考えていた人たちがいたことは解説者側から見つけた発見であった。このような発見,体験が生態教育には是非必要なことであろう。
当時まだ「あらかし沢」では、ヤマビルの被害は少なく普通の状況だったので、参加者に被害がでることはなかった。それにイノシシについてもまだ情報は少なく、伝説的でしかなかった。したがって、オリエンテーションでの説明紹介はなかった。
小滝は29回の大会会場で、千葉大会参加への誘いの挨拶をした。そのとき、「ヤマビルとの出会いが、皆さんの自然生態系理解の為の良い経験になるだろう」と参加を呼びかけたことを思い出す。もし今のような被害状況になっていたとしたら大問題になっていたことだろう。
それから30年以上の日が経過し、清澄山の自然はそのヤマビルによって保全されているといってもよいのではなかろうか?そこで、今日の「生態班」の別名を、仮に「ヤマビル班」と名づけておこう。ヤマビルがまだうごめきだした頃の年代に、生態班の活動が動き出したという意味をこめてである。それから、私はフィリッピンの山中で綺麗なヤマビルの姿を見ている。可愛いものだった。清澄山の種類がもっと綺麗だったらと同情すらするのだが。
生態班を含めて、当時発足した研究班は多かった。中でも遺伝研究班は、雑誌「遺伝」にその研究成果を発表した。清澄山の山中でした出前教室を開いたような自然紹介法についての例を全国的にまだ聞かない。そのような実践は長続きしないものだろうか。問題地域の自然紹介は、フィールドを変え内容を変えればいくらでも大衆にアピールする良い方法と考えられる。これからの生態班の活躍を望むものであり、これからの生態教育の進展を期待したい。


「養老渓谷自然観察会の感想」  

成田市 富重 正蔵

1.はじめに
千葉県生物学会のおかげですばらしい自然観察会に参加させていただきましたことに感謝の意を表します。専門家の説明付き自然観察は、大変勉強になりました。2003年4月13日(日)の養老渓谷およびその周辺の探索について、雑感ですが、以下のとおり報告します。
2.文明の利器
小湊鉄道の便数が少ないことを確認せずに出かけて、養老渓谷駅の集合時刻に間に合わず、ご迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。うちの子供が都合がつかず、父親が代表参加で土産話を約束した関係もあり、あきらめきれませんでした。鶴岡幹事の携帯電話に泣きを入れ、結局、山崎さんの車にご厄介になり、養老渓谷駅から渓谷の現場近くまで徒歩を省略したかたちになりました。自然観察といいながら、安易にも文明の利器に頼ってしまいました。
3.自然観察
当日はちょっとうす曇りという理想的な天候に恵まれ、養老川のせせらぎ、大小の滝のしぶき、さわやかな風、新緑の草木、田園風景、カエルの鳴き声、水月寺のツツジ、等々を五感に受け心身爽快でした。植物の専門家や愛好家の皆さんの薀蓄の深さに、感心したり驚いたり。わたしには同じに見える植物に違いがあることを教わり、自分の観察力の無さになさけなくなったり。アメンボーにもいろいろあることを知り大満足。次に参加するときは、皆さんのまねをして、ルーペや望遠鏡を持っていきます。
4.総合学習
うちの子供が4人とも都合がつかず残念。おそらく、総合学習でこういうことをやっている学校があるにちがいない。わたしがもっと勉強や経験をかさね、自然観察の初歩的な説明くらいできるようになれば、ひょっとして小学校や中学校の総合学習のお手伝いができるかもしれない。天気の良い休日にパソコンゲームに熱中するような子供がいたら、とてもやるせない。
5.多様性
自然観察でちょっと回っただけで、少しずつ顔の違った植物に多数出会うということは、地球規模では、いかに植物が多様性に富んでいるか想像に難くない。動物や昆虫などもしかり。人間も人種的に、民俗学的にも多様性がある。ヒトと自然の共生もすごく大切ですが、人間どうし互いの違いを理解し合い、仲良く共存したいものです。宇宙に思いを馳せると、星の多様性、宇宙に広がる有機物質の多様性などは、地球外生物の可能性を示唆している。未来社会では、宇宙生物どうしの共生や共存が問題になるかもしれません。
6.おわりに
自然観察に端を発し、最後はとりとめのないまとめをしてみます。わたしたちの科学は、人類自身についての理解、森羅万象の共通法則の発見、宇宙を構成する物質の根源や有機合成物の多様性の研究などに、今後ともそのエネルギーが注がれていくでしょう。そして、これからの政治・経済は、ますます自然科学の知識なしでは、うまく展開していかないでしょう。自然観察などを通して子供や青少年が自然とふれあう機会をもつことを願っています。彼らが科学者にならなくても、自然を愛する社会人になってほしいです。


千葉県立中央博物館 生態園 「森の調査隊」

 千葉県立中央博物館 浅田 正彦 

千葉県立中央博物館では、野外観察地である生態園に来園する子どもたちを対象に、「森の調査隊」という自然体験を促進するワークシートを使ったイベントを開催 しています。これは参加者に、ワークシートを利用して園路を散策してもらい、自然 体験につながる一連の活動を行ってもらうものです。それによって、自然観察・自然体験の方法を習得し、自発的に自然を楽しめるようになることを期待しています。
今回、2003年の夏休み期間中に、子どもたちの活動をサポートするボランティアの方々を募集します。詳細は、当館のホームページから、「森の調査隊」実施企画書をご覧下さい。

http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/informations/info030531/partner_wanted.htm
(ご覧になれない場合は、下記連絡先にご連絡ください。)
 〒260-8682 千葉市中央区青葉町955-2 千葉県立中央博物館 生態学研究科
 電話043-265-3397(科直通)ファックス043-266-2481 
担当:浅田正彦(asada@chiba-muse.or.jp)まで

環境情報(新聞・資料)を活かそう!

千葉市花見川区 伊原 香奈子 

ちば環境情報センターには、過去約3年分の環境に関する新聞の切り抜きがありますが、ほとんどの方はご存知でなかったことと思います。今まで整理しようにも、ついつい読みふけってしまい、なかなか進まなかったのですが、最近ボランティアの方に手伝っていただき、ようやく皆様に見ていただける状態が整ってきました。
そこで今後は、これらの情報の山をどう有効に利用していけるかを、皆さんと考えていきたいと思いました。日ごろから、資料などはいつでもご覧いただけるようになっていますが、日時を決めて同じ思いの人が集まって考えれば、活用方法の新しいアイデアも出てくるのではないかと思っています。不定期ですが、何回か機会を設けてみますので、一緒に模索していただけたらと思っています。ニュースレターのイベント情報欄に日時等を掲載してもらいますので、時間のつくれる方は、ぜひお越しください。
新聞の切り抜きは、幅広い環境のジャンルの情報があり、「企業や行政は、こんな動きをしてるんだ」「私たちもこんなことができるかも」「ここの取り組み、今はどうなってるんだろう」などなど、探究心がかきたてられます!もちろんそれ以外にも、県内の環境団体の発行した会報誌や、行政が発行しているものなど、環境に関するいろいろな資料が、棚には所狭しと並んでいます。こちらも読み出せば、いくら時間があっても足らないくらいです!
初回は6月4日(水)の午後1時から3時まで。皆さんのお越しをお待ちしております。


ちーたねイベント報告

千葉市美浜区 金澤 奈々

2003年4月13日(日)、ちば環境情報センター共催、富津市役所の協力のもと、ちばのたね(通称:ちーたね)企画、『新舞子海岸でゴミ拾い&貝がら、流木アート』を行いました。
新舞子海岸のもよりの駅である佐貫駅周辺はとてものどかで、春のあたたかな日ざしと新緑の葉をゆらすそよ風のふく一日で、時間の流れさえもゆっくり感じられた、そんな町でした。当日は生命の母である"海"という自然を守りたい・・・という思いで海洋ゴミの調査をしている大倉よしこさんに来ていただき、人間の生活からうまれている動物への影響、世界各地で行われているクリーンアップ作戦により回収されたゴミの種類、数などをお話ししていただきました。
世界各地で撮影された写真には、わたしたちの生活に本当に身近なものがゴミとなり、海辺で暮らす鳥や魚、オットセイやかめがそれらによって命をおとしている・・・、という現実がたしかにありました。大倉さんは人間が故意に捨てるゴミによって死んでいく動物たち、その報告がある限り活動をつづけていくそうですが、早く世界中の海からゴミがなくなることを一番に願っているのだと思います。参加してくださった方もスタッフも、千葉の豊かな自然をあらためて感じるとともに海のむこうで拾われたゴミも遠い国だけの問題ではないのだな、と実感した一日でした。
ちばのたねは千葉の自然と人にいい!と思ったことをこれからもどんどん行動していこうと思います。こんなことやりたい!と心の中で思っている方、ぜひご参加ください。('03年秋にはちばのたね企画クリーンアップ作戦も企画中です。)


CEIC運営委員から4
人間は自然の一部 

市原市 南川 忠男 

1997年9月に67番目の会員として入会し、5年半継続しております。この間、ニュースレターに「東京湾を汚さないエコ台所」「能満谷津」「フッ素と虫歯」などの記事を載せさせて頂いております。
第2回サポーター研修会で自転車通勤を提唱し、今は習慣となり毎日往復10qを軽快に風を感じて会社に行っております。
このNPOには皆で共感できるイベントが多く企画され、和やかな雰囲気です。野草を食べる会の初代副会長を務め、(会長は平田氏)現在はYPPに引き継がれ嬉しいです。会社勤めを終えたら、毎月ニュースレターの封筒入れや事務所の当番をしたいと思っております。


広場としての環境情報センター

船橋市 長 正子

かつては自然が破壊されて開発が進んでゆくことに非常に危機感をもっていましたが、今は、地球の温暖化が私たち一人一人の暮らし方にも起因していることを知るようになり、すこしでも省エネルギーの暮らし方はないかと考えるようになってきました。車に乗らないとか、調理の器具を工夫するとか(保温型の調理機具を使う)、お風呂もソーラーを使う等です。基本的にケチなのかもしれませんが、、、、エネルギーは有限です。
ちば環境情報センターは環境問題を怖い顔で難しく話すのではなく、普段のことばで、自然に話せる貴重な場所です。そして暖かい人たちが沢山いてホッとする場所でもあります。そうした普通の真面目な会話からいろいろなアイデアやエネルギーが生まれてゆく、そういう広場にちば環境情報センターがなれたらいいなあと思っています。


編集後記:新緑のまぶしい季節です。谷津田ではウワミズザクラの白い花がかがやき、メダカやドジョウが土水路に群れています。シオヤトンボも飛び始め、ヨシ原にはセッカの姿も。世相は暗いニュースが多いですが、自然はいつものように巡っています。 mud-skipper