ちば環境情報センター
2004.9.6 発行    ニュースレター第86号
代表:小西由希子

目次
  1. 外来生物問題って身近な問題?
  2. 谷津田・里山レンジャー養成講座始まる
  3. 谷津田・里山レンジャー養成講座「夜の虫観察会」に参加して
  4. エコメッセちばに参加して
  5. 古着ものがたり最終報告
  6. 割り箸リサイクル学習会&リサイクル体験

外来生物問題って身近な問題?

東京大学大学院生物多様性科学研究室 千葉市花見川区 小林 頼太

「外来生物」とは、人間の活動によって本来の生息地を越えて持ち込まれ、そこに住み着いてしまった生物のことです。地域の生態系は、その地域の特有の環境や他の生物との関係を通し、長い年月をかけて生態系が形作られてきました。ところがこうした歴史的背景をもたない外来生物が突然やってきた場合、生き物同士のつながりを通して在来生物の存在を脅かすことや、物理的に環境を改変することで、生態系のバランスをくずしてしまうことがあるのです。また、人間に対しても病気を媒介するとか、怪我を負わせるとか、産業に被害をもたらす場合もあります。
最近では新聞やテレビの報道によって、こうした外来生物によって引き起こされるさまざまな問題をご存知の方も多いかもしれません。しかし、普段の暮らしの中で「外来生物」を身近な問題として意識することはあるでしょうか?食材が国産か外国産かには関心があっても、道端に生えている植物が「在来生物」か「外来生物」かについて気にすることはほとんどないでしょう。それは単に在来生物と外来生物の区別がつかないという理由かもしれませんし、自分に対して直接被害がないため、気にする必要がないと思いこんでいるのかもしれません。しかし、実際にしらべてみると、私たちの身の回りには、おどろくほど多くの外来生物が生息しており、とても身近な存在であることがわかります。
 以前に千葉県内では生物調査の進んでいる佐倉市の資料を使って、これまでにみつかっている生物のうち何種くらいが外来生物かを調べたことがありました。その結果、記録された動植物のうち、約15%にあたる526種が外来生物ということがわかりました。植物に注目すると約1/3にあたる488種が外来生物と思われ、俗に雑草とよばれる身近な草本の多くは外来種によって占められていました。
他にも、「外来生物」と「身近」をつなげるものとしてペットの野生化問題があります。飼いきれなくなったペットが野に放されことや、逃げ出すことで、外来生物問題を引き起こす原因となります。私は現在、千葉県内でペット出身の外来生物であるカミツキガメの調査を行っています。研究当初は取れたカメはすべて野外から取り除いていました。しかし、捕獲数が増えるにつれて、やみくもな方法では解決ができないのでは?と考え、現在ではどうやったら効率よく個体数を管理できるか?を目的に基礎情報を収集しています。その中でよく考えさせられるのが外来種の「命」の問題と「除去費用」の問題です。最初に飼いきれなくなった個体に対して責任をもつということは、野外で増えた後、個体を処分するより命を絶つ数は減ります。また費用もかかりません。無責任なペットの放逐は結果的に、倫理的にも経済的にもマイナスとなる場合が多いのです。

カミツキガメ(2004827日)
酒々井町にて千葉県生物教員研究グループの生態班が捕獲した個体

これまでも「動物の愛護および管理に関する法律」により、飼育者に監督責任が義務付けられてきました。しかし、国は外来生物が増える現状に対して、今年6月には「防除」を目的に含んだ新しい法律、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」を公布しました。この法律はいろいろと課題があるようですが、来春の施行に向けて現在準備段階です。外来種のなかには有効活用されている種も含まれており、関わるひとの立場や状況により、多様な価値観が混在する複雑な問題です。この法律の施行により外来種問題が解決するわけではありませんが、はっきりしていることは外来種問題の負担が税金を通して国民に課せられるほどの状況になったことです。現在は外来種問題に関して、行政にまかせっきりという状況が多いかもしれません。しかし、毎年、新たに膨大な数の外来種が進入している現状では、今後は市民レベルでの活動(除去作業やモニタリング)が重要になってくるでしょう。地域の財産である自然を外来種から守るためにも、普段から近所の自然に対する知識や、ペットに対する飼育者のモラル向上など、身近なことで貢献できることはたくさんあると思います。


谷津田・里山レンジャー養成講座始まる


昨年好評だった「谷津田レンジャー養成講座」に続き、今年も「谷津田・里山レンジャー養成講座」(主催:NPO法人ちば環境情報センター)が始まりました。名称は変更しましたが、実体験と座学から谷津田の保全のありかたを考え、谷津田の守り人を育成するという趣旨は変わっていません。
今年は7回の講義と自由参加のフィールド研修13回があります。途中からの参加も可能ですので、関心のある方は是非お申し込みください。日程など詳細はニュースレター8月号(第85号)の折り込みチラシをご覧になるか、ちば環境情報センター事務所までお問い合わせください。            (事務局)


谷津田・里山レンジャー養成講座「夜の虫観察会」に参加して

山武郡大網白里町 平沼 勝男

2004年8月27日、谷津田・里山レンジャー養成講座の第一弾「夜の谷津田の生き物を観察しよう」に参加させていただきました。この日は生憎気温が低く、しかも風もあったので半袖では寒いような晩でした。残念ながら今年の里山レンジャー養成講座は今のところ参加者が少ないようですが、しかし少なくても頑張ってやろうと思っております。この日来ていただいた方々は、小西由希子代表,田中正彦さん,網代春男さん,福満美代子さん,萩原真紀さん,少し遅れて小西朝希子さん,瓜生達哉さんでした。講師は千葉県立中央博物館の倉西良一先生。水生昆虫の第一人者であるそうです。先生は愛犬と共に現れました。

 

灯火採集では、昼間見られないたくさんの昆虫が集まった

夜の谷津田でクロマドボタル探し(右端が倉西講師)


最初に行ったことは灯火採集でした。白い布に光を当て、集まる昆虫たちを観察するのです。今日の天気はこの採集方法にとっては不利らしいのですがそれでも時間と共にたくさんの種類の昆虫が集まりました。
倉西先生は容姿はヒグマのようにも見える方ですが、しゃべりだすとその内容の濃さ、話題の範囲の広さ、そして面白さ、気さくな人柄も手伝ってとても魅力的な人でした。しかも最近マスコミで話題を撒いた「金取りカエル」の情報の発信者であるとか、そして、その少し前にも麻綿原高原近くでヒメホタルを発見してこれもマスコミで話題になりました。まさに時の人。これらのエピソードを織り交ぜながら灯火に集まる昆虫たちのお話を聞かせてくれる。すばらしい体験でした。そしてあまりにも自分が昆虫の事を知らないという事も同時にわかった夜でもありました。今日参加していただいた田中先生や網代さんと倉西先生の会話には全くついていけずまさに格の違い、横綱・大関と幕下力士、くらいの差を実感しました。私はふんどし担ぎに過ぎないですこれでは。自然を愛する情熱だけは負けていないぞという負け惜しみを心の中で自分に言い聞かせることしかできませんでした。
灯火採集のあとクロマドボタルの幼虫を探してみようと谷津田を散策しました。極力懐中電灯をつけずに全員で歩きました。残念ながらクロマドボタルの幼虫は発見できませんでしたがその代わりにヘイケボタルのオスの成虫を見ることができました。8月も末というのに頑張って光っているのです。合計3匹いました(そのうち1匹はクロマドボタルの可能性あり)。とにかく幻想的な風景を見ることができました。
あっという間に9時を過ぎ解散の時間となりました。とにかく私にとってはお腹がすいている事も忘れ、楽しくて素敵な時間でした。部外者が見ればこんな夜に谷津田を懐中電灯もつけずに歩き回るおかしな集団(不気味!ですよね)なのでしょうが、おかげで昆虫たちの世界にお邪魔できたような気がするのです。あらためてこのような機会を設けてくださった「ちば環境情報センター」の皆様方にお礼を申し上げます。そして倉西先生、素敵なお話をありがとうございました。(その後わが自宅のある大網の住宅街に戻りましたが、住宅地の明るさに驚いてしまいました。)

エコメッセちばに参加して

越谷市 塩飽 知子 

2004年8月8日、幕張メッセ国際会議場で開催された「エコメッセちば」に参加してきました。私はエコメッセのようなイベントに参加するのは初めてで、最初は緊張していたのですが、だんだん馴染めて楽しむことができました。
 ちば環境情報センターでは、これまでの活動の紹介や今まで作ったものの展示・販売、どんぐりで作るトトロの体験教室を行なっていて、私もそのお手伝いをさせてもらいました。主にどんぐり教室で子供達にトトロの作り方を教えていたのですが、エコメッセに来る子供達はとても積極的で、教室は常に子供達でいっぱいでした。私はどんぐりを使って遊ぶといったらやじろべぇくらいしか知らなかったので、子供達と一緒になって楽しんでトトロを作っていました。

自然物工作コーナーにはこどもたちがいっぱい

 エコメッセの参加団体は全部で70団体にものぼり、小さな会場でしたがバラエティ豊富でたくさんの新しい情報を得ることができました。環境カウンセラーのこと、合成洗剤のこと、エコ車検のこと、化粧品の悲惨な動物実験のこと、などなどです。また、環境問題をテーマにした子供向けの紙芝居を観たり、自然の物を材料にした工作教室も何ヵ所かあって、私はもともと環境学習に興味があるのでその一部を知れて良かったです。
来場者数は、私の記憶によると約600人だったと思うのですが、やはりエコメッセ自体の知名度はまだ低く、もっともっと多くの人にエコメッセの存在を知ってもらう必要があると思いました。私もそのお手伝いができるように、これからがんばっていきたいと思います。


古着ものがたり最終報告

八日市場市 萩原 真紀

インドネシアの三井さんの古着募集からすでに1年。やっと全ての荷物を送ることが出来ました。ご協力頂いた全ての方に、感謝申し上げます。
@送付古着総量・・・インドネシアへ段ボール大3つ(計39.940キロ)・アフガニスタンへ段ボール小1つ(予想以上に古着が集まったため)。 
A寄付金総額・・・19,410円 
B送料総額・・・19,200円 お陰様でマイナス会計にならずに終了できました。本当にありがとうございました。夏休みで一時帰国した三井さんもとても喜んでいました。


割り箸リサイクル学習会&リサイクル体験

市川市 岩丸 利恵

2004年8月22日「割り箸リサイクル学習会&リサイクル体験」を行ないました。
割り箸回収の先輩団体(調布市の「くるりん」)の馬部さんに、「割り箸の現状と、行政と連携し展開している調布市のリサイクル活動の様子」を、千葉市再資源化事業協同組合の深山さんからは、「割り箸が紙製品になるまで」をお話いただき、その後、親子三代夏祭り会場に設置しておいた割り箸回収BOXから、割り箸を回収し、分別→洗浄→干しの体験をしました。
今回は、学習会のみの参加者を含め14名の方が参加して下さいました。
中でも、高校生が5人来てくれて、こんな若い子がボランティアに関心を持ってくれるんだ!と嬉しく思っていましたが、参加理由はいずれも学校の宿題で仕方なく、とのこと。ちょっとガッカリしましたが、アンケートに、「やってみたら意外と楽しかった」「リサイクルされていくんだなぁ〜と実感」「大量のわりばしを洗って、すごく充実した感じでした」など、嬉しい感想を書いてくれました。私たちが目指すのは、割り箸リサイクルを通じて、少しでも多くの人に環境問題に関心を持ってもらうことなので、今まで関心の無かった子たちに、こういう活動があると知ってもらえただけでも、やって良かったと思います。

最後に、貴重なお話をして下さった馬部さん、深山さん、参加して下さった方、学習会をサポートして下さった方、本当にありがとうございました。今回の学習会がみなさんにとって良い経験のひとつとなりますように!


編集後記:8月26〜27日にかけて、酒々井町でカメの調査をしました。カツオのアラなどを餌に4つのわなにイシガメ,カミツキガメ,ミシシッピーアカミミガメ各1個体と、クサガメが何と71個体もかかりました。専門家の話ではクサガメの中には外国産のものもいるとか。外来種による生態系の混乱が懸念されます。mud-skippe