ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第122号
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佐倉市経済環境部環境政策課 丸島正彦
佐倉市では、平成18年度に取得しました(仮称)佐倉西部自然公園用地内の一部である畔田谷津において、谷津景観の回復と生物・生態系の保全を目的として環境保全整備事業を実施しています。
事業の内容は、畔田谷津下流域の長年にわたって耕作放棄されていた水田や、人の立ち入ることの出来なかった斜面林の保全整備を行い、湿田における多様な生物の生息環境や湧き水等の水環境を整え、谷津田と斜面林がセットとなった谷津の環境を回復するものです。
平成18年度は、放棄水田1.1haの湿地整備を行い、田んぼ池(10pほど湛水した田んぼ状の池)・土水路を造成し、水生生物の生息環境を整えるとともに、湿地の生物多様性に配慮し、刈高を段階的に調整する湿性草地を形成しました。また、斜面林の下刈や除伐を行い、農道付近の景観を一部回復しました。(※佐倉市ホームページの市役所発「経済環境部」→「環境政策課」→「谷津環境の保全」をご参照ください。)
平成19年度は、引き続き放棄水田2.2haの湿地整備を行い、20年度は周辺遊歩道の整備、21年度は放棄水田1.6haの草刈と駐車場整備、22年度はトイレ整備等とそれぞれ予定しています。
本事業は、平成18年3月に策定しました「佐倉市谷津環境保全指針」に基づき、北総地域に特徴的な自然である谷津の環境保全を図るもので、実施にあたっては、周辺地域で活動されている市民団体の方たちと協働して整備事業を進めてまいりました。
平成19年4月からは、市民参加によるワークショップを立ち上げ、畔田谷津の環境整備に関わる様々な検討を行うとともに、田んぼ池や湿性草地の草刈、周辺清掃などの保全管理作業も実施しております。
この事業により、谷津における豊かな生態系の保持と復元、生物観察会や自然体験活動などの環境学習と環境保全に対する意識の高まり、市民との協働による谷津環境の保全と利活用、その担い手となる市民団体の育成や組織化などの効果が得られるものと期待しています。
なお、本事業は、ちば環境再生基金の「市町村による戦略的自然再生事業」の事業採択を受け、基金の助成を受け実施しております。
[畔田谷津環境保全整備事業の概要]
・事業地 畔田谷津下流域
・対象面積(流域面積)約9.4ha(田4.9ha,山林・原野・畑4.5ha)
・施設概要 田んぼ池、湿性草地、土水路、遊歩道、バイオトイレ、駐車場等
・利用計画 自然体験活動、生物観察会、環境教育活動
・事業年度 平成18年度〜22年度
・事業費 21,200千円(草刈・湿地整備工事費、施設整備費) うち10,000千円を「ちば環境再生基金」に補助申請
千葉市若葉区 高田 宏臣
生活の中の身近な自然とは
街に住まれる大半の方々にとって無意識にも日常身近に触れている緑とは、どういったものでしょうか。第一番目は文句なく、自宅の庭でしょう。集合住宅にお住まいの方にとってそれは団地内の緑地かもしれません。第二番目に、街路樹や通り沿いの緑、学校や職場の公共的緑地が挙げられます。第三番目に、公園またはそれに準ずる公共スペースの緑があります。
日常の生活環境に潤いと安心と居心地のよさをもたらすこれらの緑、それが快適で美しく潤いのある環境を育み、その中で生活することができるのなら、街に暮らす私たちの心はどれほど豊かになるでしょう。そして、愛されるふるさとの街として、住む人の心に刻まれることでしょう。
心豊かな生活環境を作るため、それぞれの緑の目的やあり方について、少々考えてみたいと思います。
住まいの庭や緑地のあり方は
はじめに、日常生活のもっとも身近な緑と環境である住まいの庭や集合住宅敷地内の緑地について、お話したいと思います。
私は造園設計施工の仕事を通して、住まいの庭を作り続けております。事務所開設以来10年間一貫して、コナラやクヌギ、イヌシデなど、千葉の里山を構成する自然樹木を用いた庭造りを提案し続けてきました。それが千葉で生まれ育った私にとって心休まる見慣れた原風景だからです。
かつて日本の一般的住宅庭園は、室内からの鑑賞重視の庭が主流でありました。それが最近、環境改善を重視した庭が求められるようになりつつあるのです。鑑賞から環境へ、時代の変化、環境の変化と共に庭に求められるものは大きく変わりつつあります。
「個人の庭は個人だけで楽しむもの」ではなく、個人の庭も街の風景や環境つくりの一翼を担っているという意識が少しずつでも浸透していけば、地域性を失った日本の街にもその土地らしい風景が蘇り、そして美しい街は住む人に郷土に対する誇りと愛情を育むことでしょう。
街路樹などの公共緑地
街路樹は街の風景や環境を決定つける重要な役割があります。このあり方については次号にて、具体的に考えていきたいと思います。今回ここでは、街路樹の効果や目的について、大まかに見ていきたいと思います。
写真3は、都内某所、駅前片側2車線のメインストリート沿いの並木です。よく見るケースですが、好例です。
まず、道路両サイド、歩道と車道の境界沿いにケヤキ並木が枝を上空に大きく張り、車道歩道の双方に大きな木陰を落としています。
アスファルトやコンクリートは蓄熱性が高く、夏の直射日光を蓄熱して夜に放熱します。それが都会のヒートアイランド現象の大きな一因となります。これを緩和して都会の生活環境を改善するために、上空に枝葉を広げる樹木の存在がとても大切になるのです。
そして、中央分離帯に歩道から反対車線の路面が見えない程度の高さの常緑低木、および高さ3m程度の常緑樹中木を規則的に植栽することで、4車線道路の広いアスファルト面を分断することで、殺風景な広い路面を視覚的に緩和しています。
つまり、車や人の通行に十分な広い空間を確保しつつも、空間を上手に使い、樹木の枝葉を人の活動に邪魔にならない位置に効果的に配することで、視界のほとんどを潤いのある緑で覆うだけでなく、生活上の広い空間をさえぎることなく、夏の木陰あふれる快適な街が実現できるのです。
写真4は、千葉市内の幹線道路です。これもまたよく見るケースです。片側3車線、両サイドそれぞれ幅4m程度の歩道が付随しています。また、中央分離帯は平均2m以上の緑地スペースを確保しながらも、樹木はありません。木陰もなければ殺風景な視覚を和らげるもののない、殺伐とした光景、これも日常的な街の風景です。
灼熱の路面に直射日光、路面の蓄熱、ヒートアイランド化や地球温暖化にどれほど貢献していることでしょう。そして何よりも、潤いのない風景がどれほど人の心を殺伐とさせることか、このような環境で子供の健全な心の成長がありうるのでしょうか。
せめて落葉樹高木による木陰が欲しい、低木を植えなければ管理の手間もほとんど要しないのですが。何とかしたいものです。
写真5は千葉市内の大学病院の駐車場です。高木の配置には広いスペースは不要です。通行や視界に邪魔にならない位置に枝を大きく広げる樹木も、わずか1m幅の緑地帯があれば十分な環境改善が可能です。夏の日中、駐車場を見ていますと、木陰から順に車が埋まっていくことがはっきり分かります。駐車場や路面に木陰を増やすことで、冷房などに要するエネルギーも大きく晴らすことができるのです。
写真6も先の写真5と同様、千葉市内の大学病院の駐車場です。木陰を作る糸で植えられたはずのプラタナスが無残に剪定され、意味不明な緑と化してしまいました。木陰も潤いも求めるべくもなくなってしまいました。
なぜこのようなことが繰り返されるのでしょうか。目的を踏まえた愛情と心ある緑地管理のあり方、折角の町の緑を活かすも殺すも最終的には管理方針次第という気もいたします。
少々余談になりますが、写真7はニューヨーク市内、大通り沿い歩道のプラタナスです。このように自然樹形をそのまま活かした街路沿いのプラタナスは、日本ではほとんど見受けられません。
日本では街路樹としてのプラタナスは毎年同じ大きさに切り詰めるものという先入観があるような気がしてなりません。
公共緑地のあり方については次号にて詳しくお話したいと思います。
新米主婦のえこ日誌A
山武郡大網白里町 中村 真紀 |
発送お手伝いのお願いニュースレター10月号(第123号)の発送を10月 5日(金)10時から事務所にておこないます。 |
編集後記: 8月21〜22日、東京都檜原村の林業家、田中惣次さんを尋ねました。400haの山をもち、林業をなりわいとする田中さんに案内された杉林は、手入れが行き届いていて、凛としてまっすぐに伸びたその姿にほれぼれとしてしまいました。人工林に肯定的ではありませんでしたが、少し意識が変わりました。 mud-skipper