ちば環境情報センター ニュースレター第126号

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2008. 1.9 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. バイオミミクリー
  2. クルマと空気をかんがえる(前号からの続き)
  3. 脱穀・唐箕と不法投棄
  4. 新米主婦のえこ日誌 E 〜 私にもできること 〜

バイオミミクリー

千葉市緑区 小田 信治 

 耳掃除のような名前ですが、バイオミミクリー(biomimicry)は、最近、たいへん注目されている新しい科学の分野です。バイオは「生物」のことで、ミミクリーは「まねること」。「生物模倣」と訳されますが、日本語ではまだ定訳がありません。
バイオミミクリーを紹介しているウェッブサイト(http://www.biomimicry.net/)によると、”バイオミミクリーとは、人間の問題を解決するために、自然のモデルを研究し、自然のデザインやプロセスを真似る、またはそこからインスピレーションを得る新しい科学です。たとえば、葉っぱにインスピレーションを得てソーラーセルを作るなど。バイオミミクリーではエコロジーの基準を用いて、私たちのイノベーションの「正しさ」を判断します。38億年にわたって進化を遂げてきた自然にはわかっているからです。何がうまく機能するのか。何が適切なのか。何が長続きするのか。バイオミミクリーは、自然を見、評価する新しい方法です。自然界から私たち人間が何を取り出せるかではなく、私たちが自然界から何を学べるかを基本とする新しい時代を拓くものです。”(原文英語)
バイオミミクリーによるものは、意外と私たちの回りにたくさんあります。その身近な例としては、マジックテープがあります。秋になるとオナモミ等の種がセーターに付きますが、マジックテープは引っ付きムシをヒントにつくられたものです。その他、いくつかの例を紹介します。

JR西日本が新幹線500系を開発した際に、騒音対策としてパンタグラフの形状をフクロウの羽をヒントにつくりました。フクロウは夜、音もなく飛んでネズミを襲いますが、フクロウの風切り羽根にはノコギリ状のギザギザがあり、空気を拡散して消音効果を発揮することが知られています。また、500系の先頭車両は、長く尖ったような形状をしています。これは、カワセミのくちばしをヒントにつくられています。カワセミが獲物の魚を捕るため高速で水中に飛び込みますが、水しぶきは非常に小さいのです。このカワセミのくちばしのような形状で、トンネルへ進入する際の抵抗を少なくしています。
南米に生息するモルフォ蝶は、メタリックブルーの羽が特徴で、世界でもっとも美しい蝶と言われています。青い色は色素ではなく、モルフォ蝶の鱗粉には、超微細な格子状の溝が等間隔で多数刻まれていて、そこに光が干渉して独特なメタリックブルーを生み出すのです。帝人ファイバー梶ihttp://www.teijinfiber.com/top/top.html)はこの原理を繊維に活かし、モルフォテックスを開発し、ネクタイや自動車のシート等の製品として売り出されています。
2000年のシドニーオリンピック水泳競技で、ほぼ全身を覆うフルボディースーツが水泳ファンの目を釘付けにしました。これはミズノがSPEEDO社(英)などと共同で開発した競泳用水着で、サメの皮膚をヒントにした溝の加工やうろこ状の撥水プリント加工などで表面摩擦抵抗を低減させています。
人工衛星のソーラーパネルは、小さく折りたたんで、宇宙では大きく開く必要があります。木の葉が開くのをヒントに三浦公亮(東大名誉教授)が考案したミウラ折りが人工衛星のソーラーパネルで使われています。また、ミウラ折りは、地図をコンパクトに折る方法としても使われています。参考:http://www.orupa.co.jp/miura_frame.html
この他にも、バイオミミクリーで今後開発が期待されるものとしては、アワビのように水中で接着材を使わずに自在に吸着、剥離する技術、シロアリ塚のようにエネルギーを使わずに温湿度を制御する技術等があげられます。きっと、バイオミミクリーには、地球環境問題を解決するためのヒントがあるに違いないと思います。生態系はこのように、我々人間に富みと問題解決の糸口をもたらせてくれるのです。世界的に生物多様性が失われつつありますが、同時にバイオミミクリーのヒントも失われていることを思うと生物多様性を守る重要性がよりクリアになりますね。下大和田の谷津田で、バイオミミクリーの新しい発見をしてはいかがでしょうか。

クルマと空気をかんがえる(前号からの続き)

国立環境研究所 千葉市中央区 高橋 克行 

5.ナノ粒子ってナニ?
前回は最近のディーゼル車は排ガスもきれいで温暖化ガスも少ないことを紹介しました。でもこのように書くといいことばかりのようで、私ものんびりできるのですが、そんなにうまくいきません。ディーゼル車や一部のガソリン車のように直接、燃料を吹き込んで燃やす方式のエンジンはナノ粒子を出すということがいわれています。みなさんの中にはナノテクという言葉を聞いたことがある方もいると思います。ナノ粒子は直径が50ナノメートルより小さいつぶ。髪の毛が70ミクロンですからそのおよそ1400分の1の小ささです。鼻からはいったつぶは小さくなればなるほど、肺の奥までやってきて、ナノ粒子になると直接、体の中に入ってくる可能性も言われています。いま、私は都内やつくばでナノ粒子の観測をやっていますが、優れたエンジン性能や排ガスの処理装置を取り付けたクルマが普及するにつれて、ナノ粒子の量も減っているようです。

6.エコドライブ
このごろはずいぶんと地球の気温をこれ以上上げないためのキャンペーンが盛んに行われています。でも、いくらディーゼル車の燃費がいいと言っても、みなさんの家庭の自動車はほとんどがガソリン車でしょう。また、ガソリンが高くてクルマに乗るのをやめた、という話もあまり聞きません。温暖化防止はノーベル賞をもらった人たちにまかせて、私はクルマに乗るわ、ではホントは困るのですが、それでもクルマに乗る方はちょっとしたことに気をつけてほしいと思います。
「国環研がオススメするエコドライブ」ということで国立環境研究所では次の3つの点に注意して欲しいと呼びかけています。それは「ゆっくり加速」、「一定の速度で走行」、「早めにアクセルをはなす」です。自動車が走るときに邪魔する3つの力は「空気(スピードの2乗に比例)」、「地面(車の重さに比例)」、そして「加速の抵抗(車の重さと加速度に比例)」です。走り出すときにむやみにアクセルを踏んでもただ抵抗が増えるだけなのです。たとえば自転車をこぐときのことを思い出してみてください。疲れないように乗るためには、ゆっくり走り出し、ゆっくり走って、赤信号がみえたら自転車のペダルをこぐのを自然にやめるでしょう。クルマに乗るときも同じことをしてくださいということですね。

7.みらいのそらのために
環境省では2010年度までに環境基準を達成させることを目指しています。その取り組みとして自動車排ガスの低減のために、さらに厳しい目標値を設定し、排ガスをきれいにするための装置(触媒や粒子除去装置)の普及と開発をすすめることや、特殊車両にも排ガス規制を設定することなどを考えています。また、温暖化防止のことを考えてバイオマス燃料を使ったときの排ガスがどうなるか研究しています。もちろん自動車以外にも空気を汚す犯人がいます。私たちの研究では植物が原因で作られるつぶや(植物由来のVOCからの二次生成粒子)、焚き火・野焼きがどうも想定外にあるかもしれないと考えています。ほかにもまだわかっていない原因があるかもしれません。
クルマというのは私たちの生活になくてはならないものです。それでも公共の交通機関を使ったり、近くへ行くときは自転車を使ったりするような生活スタイルをこころがけることで空気の汚れを減らすことができます。また、どうしてもクルマに頼らざるを得ない方でも、先ほどのエコドライブでゆっくりのんびり走ることをやってみてください。私は普段の通勤は4km弱を自転車で通っています。また、クルマに乗るときはのんびり走ることにしています。どっちも気持ちいいですよ。私たちは1日20kgもの空気を吸って暮らしているのです。ビールを20リットル飲むのは大変ですが、どうせならおいしい空気を胸いっぱい吸いたいですよね。

脱穀・唐箕と不法投棄

千葉市緑区 原田 かおる 

 「ギ〜〜〜コン!ガ〜〜〜コン!!」と、静かな谷津に足踏み脱穀機の音が響きます。小山町YPP田んぼで収穫したコシヒカリ・黒米・緑米・赤米の脱穀作業が始まりました。いつものメンバーでの脱穀作業のため、ギ〜コンガ〜コンの音とともに笑い声も響きます。
脱穀した米の唐箕をかけ始めた大友さんが、「至福の時ですね」と、シートにあるお米を集めながら話されました。田おこし?田植え?そうだ!と頭の中で収穫までの日々がめぐります。
唐箕をかけた米は、「コシヒカリ」「緑米」「赤米」「黒米」と、別々の大きな米袋に入れられていきます。「去年より多いような気がするね〜?」「そうだね〜〜」「何キロあるかな〜」と、収穫の喜びでいっぱいでした。計量が楽しみです。
作業を終えた後、以前から気になっていた不法投棄の家具の始末をしようと、大友さんへお願いしました。家具1つくらいと現場に行ってみると、扇風機、ストーブ、布団、スピーカー、キーボードなど、ごみの山になっていたのでビックリしました。その他にもブックオフに持ち込めば売れそうなLDが、10枚ちょっとありました。家具が捨てられていると気づいたときにはなかったこれらのごみの中には、破られたノートに職業が特定できそうなメモや申請書の綴りもありました。

 どこに通報したらよいか迷って、最初に思い浮かんだのが行政です!そこで知り合いの千葉市職員の携帯へ電話かけ相談したところ、「今日は通院のため休暇をとっていて、電話番号までは分かりませんが、若葉・緑環境事務所へ連絡してみてください。私の名前を言ってかまいませんから・・・」と印籠を預かりました。「若葉・緑環境事務所へ連絡してだって〜」と話すと、ごみを片付けていた大友さんが、携帯に登録していた電話番号を教えてくださいました。(下大和田でも昨年不法投棄があり、その時に若葉・緑環境事務所の電話番号を携帯に登録したそうです。)
若葉・緑環境事務所に通報すると、「小山町の方からも通報がありました。」と言われ、「同じ不法投棄だと思うので、通報者の方へ連絡をして対応します。」となりました。(印籠を使うまでではなく一安心)。回収に来てくれるのならと、辺りにあった道行く人が捨てていくビンや缶などのごみもまとめました。
翌日、地元の方数人と相談して南警察署生活安全課へも通報しました。発見した場所や状況だけでなく、私の住所・氏名・年齢・連絡先の電話番号まで聞かれ、「犯人が特定できた時には、こちらへ出向いてもらい調書を取ります。」との事でした。
後日、これらのごみは市によって撤去され、今回の不法投棄は一件落着しました。楽しかった脱穀や唐箕の作業が一変した不法投棄には、本当にうんざりしました。
小山町は、数年前に産業廃棄物最終処分場建設問題が浮上し、地元住民と近隣住民が中心になり建設反対の署名活動をし、市議会へ請願したり、さまざまな形での反対運動によって、建設を阻止した場所です。また、この豊かな自然を保護しようと、地元の方が千葉市と保全協定を締結している所でもあります。その経緯を知ってか、知らぬか、不法投棄した人がいるのかと思うと、とても残念でなりません。
人目の付かない谷津に、たくさんの不法投棄がされている今「ごみはごみを呼ぶので、不法投棄を見かけたら通報する」と、地元の方々は目を光らせています。 
今後も仲間と共に自然観察会や稲作をしながら、先祖代々受け継いできた環境を守ろうとする地元の方のお手伝いができたらよいかと思いました。(写真提供:大友英寿)


割り箸リサイクル「きぼーる」内で回収拠点開始!!

 中央区ボランティアセンターで、回収拠点として開設することとなりました。
場所は10月、ちば環境情報センターの真向かいにどでかくオープンした「きぼーる」の11階です。
一般の方が持ち込みやすい場なので、多くの方にお知らせいただけますよう、ご協力よろしくお願いいたします。

場所:きぼーる館11階(千葉市中央区中央4丁目5番1号) 
日時:日曜,祝日,年末年始を除く午前8時30分から午後5時30分
「使った割り箸はゴミでなく資源に・・・ねっ☆」 (伊原加奈子)

 

新米主婦のえこ日誌 E 
〜 私にもできること 〜

              山武郡大網白里町 中村 真紀 
 毎度ご愛読頂きありがとうございます。今年も宜しくお願いします。
今回は“世間様に対して物申す”ということについてです。

毎日の生活の中で、おかしいなと思うことありませんか?例えば通勤で使う電車の冷暖房がきつすぎたり、頂いた箱菓子の包装があまりにも過剰で小さなお菓子の隣にちょっとしたゴミに山が出来てしまったり、エコロジーをうたっている商品が実は環境負荷の少ないものではなかったり。

私はそんな時、出来るだけ文章にして相手に伝えるようにしています。良かれと思ってしてくれたことも逆に迷惑になっていたら本当にもったいないし、文句だけ言っていても改善する筈がないからです。新聞などの投稿欄に投稿したり、アンケートにもまめに答えています。投稿欄の場合、例え採用されなくても1本の原稿を世論としてとらえるので、投稿自体に意味があるそうです。又、よく気をつけて見てみると政府機関や行政から意見を求められていることも多く(形だけかも知れませんが)、それにきちんと答えるのも大切だと思います。

ちなみに私は(環境問題に限りませんが)、そんな方法でオリジナルペンやカタログギフト、現金などを過去に頂いています。「おいしかったです」とお礼を送った会社からはおせんべいセットも届きました。テレビ欄では私の投書がきっかけで視聴者の意見が特集されたこともありました。こんな私の文章でも…。
独り言で済ませてしまえばただの文句ですが、少しの時間を使って自分なりの意見をまとめ、相手に伝えることによって好転への小さな小さな一歩になるのではないでしょうか。もちろんその場できちんと伝えられるたくましい人は、どうぞその調子で宜しくお願いします。
次回はバレンタインディにちなんだお話です。 

発送お手伝いのお願い

ニュースレター2月号(第127号)の発送を2月6日(水)10時から事務所にておこないます。
発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: 昨年は年金問題や食品偽装がクローズアップされ、世相を表す漢字に「偽」が選ばれるなど暗い年となりました。その暗さを吹き飛ばすように、今冬、下大和田の谷津田にはルリビタキが紺碧に輝く翼を休めています。自然は嘘をつきません。今年がこの翼のような美しい年でありますよう願っています。  mud-skipper