ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第133号
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船橋市 大谷 恵理
私が木について深い興味を持ち始めたきっかけは、二年前、安房鴨川にあるNPO法人・大山千枚田保存会の実施した、「家造り体験塾」に参加したことでした。
初めて伐採現場に連れていってもらった時は、急斜面での作業に驚きました。そもそも、日本では平らな土地は別の用途に使うわけで、木が植えられている場所は傾斜地に決まっています。そんな事も、自分の目で見て初めて理解できたのです。現在の住宅に使われている木のほとんどが輸入材、しかも接着剤で固められた集成材だということも、それが日本の風土の中で、どれほどもろく、腐りやすいものなのかも、具体的な資料や実験結果をもとに説明してもらいました。また柱や床の材料は工場であらかじめカットされ、現場の大工さんはそれを組み立てるだけ、古民家や文化財を長い年月支えてきた日本の伝統技能は失われようとしている。しかも、木を手入れしたり伐り出したりする人手の不足で、山は荒れていく一方。
これまで、箱根で自然解説のボランティアをするなど、環境や社会の問題にそれなりの知識があると思っていた私は、自分が木についてあまりにも無知だった事にショックを受けました。
それから、森林・林業に関する本を読みあさり、中でも三重県尾鷲市の速水林業の取り組みが印象深く、昨年の九月に同社が実施した「林業塾」に参加することにしました。そこでは、戦後の拡大造林から、復興需要と円高に伴う木材の大量輸入、高度成長による山間地からの人材の流出、大量・短期・均質という大手住宅メーカーの要望に応えられず、次第に市場を失っていった林業界の状況などについても学ぶことができました。一方、FSCなどの森林認証制度を日本にも導入し、持続可能な管理をされた森林からの木材製品をどうやって社会に認知・浸透させるか、努力を重ねている速水社長の姿にも感銘を受けました。
ここまで勉強してみると、今度は実際の現場について知りたくなるのは当然の成り行きです。素人にも伐倒の初歩から教えてくれる講座があると聞き、早速参加したのが、岐阜県郡上八幡のNPO法人・Woodsman Workshopの「林業寺子屋」です。林業についての座学も含め、チェーンソーの構造や扱い方、伐倒の方法、かかり木を処理するロープワークまで、しっかり教えられました。林業では、わずか六万人の従事者のうち、毎年五十人近い方が労災で亡くなっています。いかに危険な作業かをあらためて認識しました。
森林の問題を色々と学んできて思うのは、やはり森は人の生活と切り離しては守れないという事です。人の手が入り、活用することではじめて生み出された生態系、それが日本の山の豊かさだと思います。単に昔に戻るのではなく、最新の技術を駆使しながら、体と感性を再度自然に向き合わせ、そのサイクルを生かした生活を実現すること、それが今の私の夢です。
里山シンポジウムに参加して、こんなに近くに、これほど熱心に、里山の自然、伝統の生活を守り伝えようとしている人達がいらっしゃる事に驚きました、自分もそこに加わることができるのを、心から嬉しく思っています。 (写真撮影:田中正彦)
東京都文京区 荒尾 稔
山武杉を使った個人住宅を、このイベントに参加して見学をしてきました。
千葉県佐倉市の駅から車で5分とかからない場所でした。参加者40名以上。建て坪が40坪程度のコンパクトな家ながら、外部からは大きな垂直に立つ煙突と山武杉の板目をそのまま外壁とした、とても明るい感じの家です。
入ってすぐが山武杉のままのフローリングされたリビングダイニング。分厚い床材で何十人でもびくともしない、天井までまさに吹き抜けで、どこからともなく風が吹き抜けていく。ものすごい暑日でしたが、心地良く涼しく、30人以上が入り込んでも人いきれの熱気ひとつ感じません。
夏はクーラーがいりませんとのこと。また冬は大きなストーブがあって、この家を建てたときに出た廃材をまきとして4年間は大丈夫とのこと。
和室の前には15cm位の段があって、何人かとそこに座って足をぶらぶら。まさに縁側の気分。とても住みやすそうな家。作った大工さんは自信満々に、間違いなく100年は持つと。設計した稗田さんから発言があり、山から山武杉を柱として切り出す時には3本を切るとそのうちのまっすぐな木で床柱、残りの2本を梁や作りつけの家具,テーブル等に使うのがコツとのこと。
隣のより大きな個人住宅と合わせて2軒の、稗田さん設計の個人住宅の見学となりました。午後からの、木材市場での講習会の中で聞いた話では、本年度から千葉県山武市では、山武市内で山武杉を使って個人住宅を建てる方々に対して、助成金を出すことが決まったそうです。 (写真撮影:田中正彦)
東京農業大学 流山市 伊藤 有希
二日間という、短い間でしたが、山武杉で作られた家、森林組合や木材市場など山武杉を見学して様々な発見がありました。特に、山武杉で出来た家は細かい仕切りをなくし、風通しを第一に考え夏でもクーラーいらず、冬は薪ストーブで家全体を温めるという画期的な家で、こんな家にいつか住みたい!と見学した人はみんな思ったはずです。
こんな素敵な家を山武市内に建てれば、助成金が出て、職人さんの育成にも繋がるというのだから、さんむフォレストの方々にはこれからも、どんどん山武杉の家を建てて欲しいです。また、山武森林組合や千葉県木材市場で直接山武杉を見ました。森林組合の土場では直径1m近くもある木材がごろごろ転がっていて、今の時代こんな大きな大径木はほとんどないと思っていました。
そして、木材市場では山武杉は1万円以下という安値ですが、毎回9割以上が売れ、一部の大径木が残るが次回には売れてしまう、という事を伺いました。山武杉の人気の高さを改めて感じました。
そんな、人気の高い山武杉ですが、一つだけ弱点があります。スギ非赤枯性溝腐病に弱い。スギ非赤枯性溝腐病とは、チャアナタケモドキという病原菌(キノコの一種)によるもので、空気を媒体として、杉の枯枝に付着し、胞子がやがて発芽し、枯枝から生きた樹幹の組織内に侵入し、3〜5年の潜伏期間を経て、形成層から辺材部に菌糸を伸ばして増殖し、上下方向に拡大し、組織を溝状に腐朽するという、難しい病気です。
病気になった木を初めて見ました。発病すると材がボコッとするんですね。そして、発病するまでに20〜30年かかりいざ木を切り倒して、使う時には木がボコッとして建築などには使えない材になってしまう。大切に育てても使いたい時に使えないのはとても残念ですよね。
私は大学の先生の紹介で初めてこの研修に参加させて頂きました。卒業論文で千葉県の山武杉について書こうと思っていて、この研修はまさにうってつけでした。山武杉で作られた家、森林組合や木材市場など山武杉の流れについて触れられる、とても濃い二日間でした。ダチョウの卵、シカの肉、茅葺屋根の作り方など貴重な体験をすることができました。この研修を企画してくださった方々、どうもありがとうございました。
東京都江東区 中瀬 勝義
日 時: 7月21日(月) 13:30〜17:00 場 所:流通経済大学新松戸キャンパス講堂 主 催: 関さんの森エコミュージアム 関さんの森を育む会 (財)埼玉県生態系保護協会 共 催: 千葉県生物多様性県民会議 参加者:500 人 |
<主催者挨拶> 関美智子
昨日、会が創立した。皆でつくり上げてゆきたい。
<講演1> 「世界の環境・日本の環境」池谷奉文(日本生態系協会会長)
<講演2> 「関さんの森を読み解く」 合田博子(兵庫県立大学環境人間学部教授)
<パネルディスカッション>池谷奉文、合田博子、関啓子、佐野郷美、米田雅子、中島敏博
<所 感>
新米主婦のえこ日誌 L
山武郡大網白里町 中村 真紀 |
発送お手伝いのお願いニュースレター9月号(第134号)の発送を 9月 8日(月)10時から事務所にておこないます。 |
編集後記: 例年梅雨が明けると抜けるような青空が広がるのですが、今年はなんだかぐずぐずした天気が続いています。そう言えば、これぞという入道雲も見ていません。ところで、今月号は森林に関する記事がそろいました。一人でも多くの人たちが、千葉県の森や木材の行く末を考えるきっかけになればと思います。 mud-skipper