ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第140号 

2009. 3.6 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 「ごみから見つめるエコライフ」を発刊して
  2. 養蚕をして感じたこと
  3. 自然の実験場としての学校ビオトープ~もう一度意義を考えよう~
  4. 展覧会 ちばの里山・里海の今 開催

「ごみから見つめるエコライフ」を発刊して

船橋市 長 正子 

 ごみ問題は、人が生きていく上で必ず直面する問題でありながら、なかなか全体像がわかりません。たとえば、私たちは毎日どのくらいのごみを出しているでしょうか?

  ア.500g イ.800g ウ.1,000g? 

答えは1,000gで、正確には1,116g。一世帯4人家族とすると、毎日平均4kgを出していることになります。(環境省平成20年発表)そして日本全体では1年間で約5,200万トンのごみが出され、その処理費用に1兆8600億円が費やされているそうです(環境省HP、廃棄物処理統計平成18年度より)。
 では、それらは実際に、どのように処理されているのでしょうか?焼却するのでしょうか?埋め立てているのでしょうか?それともリサイクル? 特にプラスチックごみはどこへ行くのでしょうか?本当に分別された後、リサイクルされているのでしょうか?
 基本的なところから調べてみたい、という願望のもと、消費生活相談員の仲間と話し合い、調査することにしました。また、昨今のリサイクルの法律についても調べ、その結果を冊子にして各地の消費生活センターなどに配布したいと思い、宝くじ協会から補助金をいただくことにもなりました。イラストは環境漫画で有名な高月紘先生のご協力をいただき、誰が読んでもわかりやすい内容にするよう心がけました。

 まず、ゴミの処理は廃棄物処理法に定められています。ごみは、大きく一般廃棄物、産業廃棄物に分かれ、一般廃棄物は市町村が、産業廃棄物は排出者が責任をもって処理することになっています。普通の市民が出すごみは一般廃棄物と呼ばれ、各市町村が処理をしなければなりません。ごみの分別が市町村によってまちまちになっているのは、このためで、たとえば船橋市ではプラスチックも生ゴミも紙ごみも一緒に出してかまいませんが、東京都の三鷹市ではプラスチック、生ごみ、紙ごみ(はがき以上の大きさのもの)は分別して出さなければなりません。調べてみると、4種類の分別から34の分別をする自治体までさまざまな分別がありました。
 農村と都会ではごみの質も量も違いますし、財政や処分場の広さも違うので、その自治体にあったごみの処理をするほうが実情に合っているのです。分別でいえば、徳島県の上勝町では34分別という多くの分別を実施し、75%を資源化しています。そして収集方法も、町民が持ち込むという方式をとっています。(ちば環境情報センターの福満さんと一緒に見学に行き、その集積場が清潔なことと、町民が不満に思わないことにびっくりして帰ってきました。)
 一方、ごみの処理方法でユニークな市もあります。埼玉県の日高市では家庭から出されたごみをセメント工場の材料にしています。
 生ごみやプラスチックごみを全部一緒に大きな筒のような釜に入れて発酵させ、セメントの原料となる粘土の代替物として利用するのです。市はセメント会社にごみの処理費用を支払うので、 清掃工場を持たなくてもすみます。最終処分地の心配もしなくてもすむのです。
しかし、日本ではほとんどが焼却という処理方法をとっています。総処理量の77%が焼却、3%が埋め立て、資源化が20%となっています(平成19年度環境白書より)。

 日本には焼却施設が1,300以上あり、他の諸外国に比べても圧倒的に焼却施設が多い国になっています。しかも1980年代からダイオキシンの問題が発生し、ダイオキシンを出さない焼却炉にするため、高度化、大型化した清掃工場の建設が進められてきました。しかし、そのことで(高価な焼却施設の建設)地方の財政を圧迫、ごみを大量に集めなければいけなくなり、休止する施設もあるなど、問題をかかえる自治体も出てきています。
 また、焼却すれば終わりではなく、その後に焼却灰が生じます。容積にして10~20分の1の灰が生成されるので、それを最終処分地へ持っていって埋めてはじめてごみの処理が終わります。
 一方、リサイクルも万能ではありません。リサイクルするには、収集し、それをリサイクル工場へ運ばなければ行けません。しかし、プラスチックやペットボトルは空気を運んでいるようなもので、容積が大きく、運搬費用がかかります。集積場も必要です。しかもプラスチックは種類が多いので、同じ材質のものを集めるというのは困難で、かろうじてペットボトルやトレイが可能な状況です。したがって、プラスチックのリサイクルというのは、材料リサイクル(マテリアルリサイクル)だけでなく、燃料に利用したり(サーマルリサイクル)、製鉄所で使う還元剤として利用したりする(ケミカルリサイクル)ことも含めてリサイクルといっているということがわかりました。
 また、東京都23区では今まで、プラスチックは埋め立てていましたが、東京湾の最終処分地があと1区画しかないということで、全区で焼却又はリサイクルする方向になっています。
 私たちの生活は今まで消費することが美徳で、そのためには簡単に捨てたほうがいい、といった風潮もありました。そのほうが企業には便利だからで、処理費用は全額、税金で処理されるからです。プラスチック容器はまさに使い捨ての典型です。しかし、ごみを処理するには高度な焼却施設が必要ですし、運搬費用もかかりますし、焼却した後に出る灰の処分にも困ります。リサイクルにもお金がかかります。これらの事態を目の前にして、消費者としてやはり、無駄な買い物はしない、中身を中心に考え、包装は断り、安易な広告に騙されない、買ったものは長く使いたいと思いました。
 また生ごみは自分の家の庭に埋める、裏紙も利用するなど、ごみをごみにしない工夫が求められていると思います。もちろん、ちば環境情報センターのように封筒の再利用はごみの減量のお手本です。なお、この本に興味をもっていただいた方は、(社)全国消費生活相談員協会03-3448-9736にお問い合わせください。

養蚕をして感じたこと

東金市 江口 純一郎 

 私は東金市で養蚕(蚕を飼育する事)を行っている江口と申します。今回、養蚕の記事を書かせて頂けるという事で、環境問題という事に関しては共通する事があると想いますので宜しくお願いします。
 蚕の歴史は古く今から5,000年前の中国の逸話に遡ります、神話の中に登場する黄帝のお妃がある日、山繭を手にしてお茶を入れようとし、誤って湯の中へ山繭を落としてしまい箸で懸命に拾い上げようとしたが、純白の糸が手繰っても、手繰っても続き、この偶発的な出来事が繭から生まれる絹誕生のきっかけとなりました。
 さて私は現在、日本刺繍という伝統工芸の会社で刺繍糸づくりをしています。仕事内容は養蚕また、とれた繭から糸を挽く事です。
蚕を飼う為に必要な物といえばまず桑畑です、会社の敷地には2反弱の桑畑が有ります、(現在は人工飼料で飼育しているところもあります。)そして幼虫を飼育する部屋と繭をつくらせる部屋がそれぞれ有ります。

 蚕の一生は卵⇒幼虫⇒サナギ(繭)⇒成虫⇒産卵というようになっています。養蚕というのは幼虫から繭までの期間を呼び、その後は製糸工場などに送られ糸になります。幼虫期間は1齢から5齢まであり、一般的には2齢もしくは3齢までは共同飼育所で人工飼料によって育てられ、その後、各養蚕農家に配られて桑の葉で飼育されます。これは蚕が小さい時に病気になりやすい事や温度・湿度管理が大変な為にそうしています。
 しかし私の勤める会社では有難くも「昔ながらの自然に近い繭をつくりたい。」という私の想いを理解して下さり、1齢より桑の葉で飼育しています。
1齢の時には葉を2~3mm程度に刻んで与え、温度は27~28℃位、湿度は80%位に出来るだけ保ちます。その後大きくなるにつれ、葉も摘んで来てそのままの形で与え、温度も次第に低くして5齢の時は22℃位にします。そして5齢の9日頃になると蚕は糸を吐き始め繭をつくります。蚕は8の字やSの字に首を振りながら糸を2日間かけて繭を完成させますが、見ているととても神秘的です。この後、本当であれば成虫になって繭から出て来るのですが、そうなっては繭に穴が開いてしまい人間が糸を挽くのに不都合な為、中のサナギは殺して繭を保存します。ですから絹糸をつくると言う事は蚕の命を頂いている事なので、感謝して使わなければいけないと感じています。
 養蚕を始めて7年程が経ちますが、今まで嬉しかった事は近くの小学生が総合学習の一環として来てわいわい騒ぎながら蚕を見たり触ったり、また年配の方が来て懐かしそうに昔やっていた養蚕の話をしてくれたりした事です。そんな体験をして自分で感じる事は、昔からあるものや、自然の中で育まれたものには人の心を癒すような働きがあるのではないかという事です。
 私は10代の頃より環境問題に関心を持ち、現在は自然に関わりのある仕事、また住居にをいても100年以上経つ古い農家に住む事が出来き、とても恵まれていると感じています。
 しかしそれだけでは環境問題を解決するには50%だけだと、最近になって感じてきました。残りの50%は蚕がおしえてくれた人を癒すようなもの、それは自分の中に「優しい心」などが無ければ、人間が原因の戦争や乱開発の環境問題は無くならないと、言葉では上手く言い表せませんが養蚕をして感じました。
 これからの人生、残り50%の「優しい心」をこの仕事を通じて、少しでも育む事が出来れば何よりです。
 注:この文章はJEAN(2006年12月号)に投稿したものを加筆再投稿しました。

自然の実験場としての学校ビオトープ
~もう一度意義を考えよう~

千葉県立市川工業高等学校 松戸市 川北 裕之 

 (1月号からの続き)
3.今もう一度、みんなで学校でのビオトープの意義を考えたい
 学校ビオトープは、計画や造成自体に意義のあった段階から、育成管理や教育活用に意義を求める段階に移っている。今、生物多様性低下を防ぐためどう管理し育成するのか、教育活動にどう活用するのかが問われている。
 ビオトープの意義を認めつつも一部の教員の負担になったり、校庭に隅で放置され荒れた例もあるという。学校で背負い込むのはやめて、助けを求めてはどうか。ビオトープは決まった管理を続けてことですんだかつての校庭ではない。ゲージでニワトリを飼い、花壇で特定の花を育てるのとは違う。ビオトープはその場所の土壌、水質、日当たりといった非生物的な環境、元々あった植物、埋土種子、移入された動植物という生物環境のちがいに影響を受けてさまざまな変化を見せる。それを生物多様性が高まるようにコントロールする必要がある。
 ビオトープの課題は、簡単に答えの出せる算数の問題ではなく、証明に時間がかかる高等数学の問題なのかもしれない。この問題の答えは一つとはかぎらないし、試験のように決まった時間内に一人で解く必要もない。確かに学校の課題を公にすることに躊躇する向きもあろう。ビオトープの課題を、まず子どもたちと共通認識し、無理をせず保護者や地域、専門家に助けて求めてはどうか。結果をそんなに急ぐこともない。じっくりと時間をかけたい。うまく行かなければ修正すればよい。
 私は、高校の生物教員でつくる研究会(千葉県高等学校教育研究会理科部会生物分科会)の中にある「ビオトープ研究」班のまとめ役をしている。ビオトープを研究し何か役に立つことはできないかと考えてつくられた。植物や動物、昆虫それぞれの専門家も参加しているし、ビオトープを実際につくった経験のあるメンバーもいる。昨年は船橋市内の小学校との連携も始まった。幕張の県総合教育センター内に小さなビオトープを作り始めた。すべて手作りである。みんなで相談して意見を出し合い、実行に移している。形になるまでに2年くらいはかかりそうだ。この時間のプロセスの中で学び合っている。ビオトープを糸口として小中高の間でもっと交流ができればいいを考えている。
 今、学校教育も結果やスピード重視であり、競争を煽っている感じさえする。それでは閉塞感や息苦しさが増すばかりである。ビオトープを造成、育成管理する過程で、体を動かし、汗をかき、ともに考え、ともに悩む。無理なら助けを求めればいい。失敗してもその原因が分かれば前に進める。学校ビオトープは自然の実験場だ。教師やこどもたちにとっては、理科や生物で学んだことを生かせる場でもある。微力ではあるが「ビオトープ研究班」が閉塞感を和らげるネットワークづくりに一役買えればと思っている。


展覧会 ちばの里山・里海の今 開催

       1月22日~24日千葉市中央区Qiball キボールに於いて展覧会「千葉の里山・里海の今」が開催されました(主催:ちば環境情報センター,ちば・谷津田フォーラム,カモメのクリーン隊)。
 里山の自然や生き物の写真、米作りや谷津田プレーランドプロジェクトの写真、おなじみ環境漫画家つやまあきひこさんの原画、子ども達の描いた環境まんが、谷津田の植物で染めた草木染め、自然工作に谷津田のジオラマなどなど、盛りだくさんの展覧会となりました。その他、海に流れ着くゴミや、そこに生きる貝なども紹介し、里山と里海のすばらしさを多面的に伝えることができました。
 子どもから大人まで、来場した多くの方が生物多様性について知る機会となったことでしょう。また是非このような展覧会を開き、自然との出会いの場にしていきたいと思います。(事務局)
※この展覧会は千葉県生物多様性モデル事業補助金を受けて実施しました。

会場で実施したアンケートより抜粋
≪子ども≫
・工作のウマやバッチ見たいなのがつくってあってすてきでした。(10代女子、稲毛区)
・むかしの人のふべんも楽しみにつながっているようでした。(7才男子、船橋市)
・エコしたほうがいいと思いました。(6才女子、印西市)
・ジオラマが本物みたいですごくて、一回ちっちゃくなって
あそこで遊びたいと思いました。(7才女子、千葉市)

≪大人≫
・人間のエゴできれいな環境をこわさないようにしたい。自然大切にすること、親しむこ
とを子供達に伝えたい。実践したい。(60代女性、千葉市中央区)
・千葉にもまだこんなすばらしい里山がある。今しみじみと自然のすばらしさに感動した。 このまま自然を子どもや孫に伝えていきたいと思う。(60代男性、中央区亀井)
・初めて目にすることで新鮮でした。手にとって見るとぬくもりがあって、皆さんの努力がつたわってきました。又機会がありましたら展覧会を開催して欲しいと思います。来場者もご家族、お子さんもみかけます。家族のコミュニケーションの場でもあり、再認識。心から美しい風景、ぬくもりは人の心を動かすものだと思います。(30代女性、千葉市中央区)

発送お手伝いのお願い

ニュースレター4月号(第141号)の発送を 4月6日(月)10時から事務所にておこないます。
発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: 2月最後の週は雨がよく降りましたね。27日(金)は、朝からの雨が雪に変わりました。高校受験を終えた中学生たちが肩をすぼめ、足下を気にしながら校門を出て行く光景を目にしました。そんな生徒を窓越しに眺めながら、うっすらと雪化粧している谷津田を想像していました。いよいよ若葉も芽吹く3月です。 mud-skipper