ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第143号
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市原市 環境部クリーン推進課
「この繰り返し使える箸をお使いくださ~い!」新緑に不釣合いな野太い声が響く。ここは市原市の南部、「ワンデーマーチ(新緑の中のハイキング)」に参加した多くの方々が、各コースに設けられた昼食会場で、楽しみな弁当を開いているところである。
地元の方々からのおもてなしとして、採れたてのたけのこや山菜入りの味噌汁が無料で配布されている脇に立ち、プラスチックの箸を、半強制的に渡している。
昨年から始めて、2年目を迎えるこの「おしかけくん(と勝手に制度化している)」は、新たな市原市の名所となりつつある「更級川の桜の会」や、市内・外から多くの人が集まる「ワンデーマーチ」などへ、頼まれもしないのに出向き、リユース箸の使用を通じて、今の「簡単で、便利な使い捨て型ライフサイクル」を見直そうと、市役所のクリーン推進課が仕掛けている取り組みである。
環境志向が高まっているとはいえ、実際に、なんらかの行動を起こすことは、大きな勇気と小さなチャレンジ(取り組み)が必要だ。
これまで、市原市では、町会やサークルなどから「ここにきて、減量化の方法を教えて」という呼びかけを待って出向く出前講座「おでかけくん」を中心に取り組んでいたが、やはり、こちらから直接出向き、具体的に「こうしましょう」と多くの方に呼びかけるとともに、リユース箸を実際に渡し使っていただくことで、実践行動へのきっかけを作ろうと「おしかけくん」を行っている。
ワンデーマーチの当日は、私どもとともに、市民の立場で「もったいない」を合言葉にごみの減量とリサイクルに取り組んでいる「いちはら・ごみ端会議」のメンバーも一緒に、リユース箸を渡しながら、使いすて商品の使用を控えること、ごみとなるものを家庭に持ち込まないことなど、ごみ減量には自分たちの意識を変え、まずは自分でできることからはじめよう と呼びかけた。
うれしいことに、2年目の今年は「いらないよ、今年はマイ箸を持ってきたよ」と笑いながら話してくれる人がいたり「うん、先生からマイ箸を持って参加しようと言われたよ」など、実践行動が伴ってきているようだ。
身近な使い捨て製品の使用を控えるなど、このひと手間を実践することで、ごみの発生抑制・焼却処理量の抑制を通して、二酸化炭素排出量の削減、森林保護など、様々な環境問題へ関心を持っていただければと念じている。
ワンデーマーチで皆様を出迎えた地元の方々のおもてなしの心を、是非とも、今度は豊かな新緑で迎えてくれた自然への尊敬の心に繋げ、かけがえのない市原市の自然環境を次の世代へ引き継ぐための、小さな小さな一歩である「おしかけくんを通じてリユース箸の推進」に、今後も大きな声を張り上げてまいりたい。
千葉市緑区 高山 邦明
■中程度攪乱説
生きものの生存を脅かし、成長を抑制する環境の作用として撹乱やストレスがあります。乾燥や低温といったストレスが強くなると砂漠やツンドラのようにストレスに強い種類しか暮らすことができなくなり、生物多様性は低下します。人間による大規模なニュータウンの宅地開発など撹乱が大きくなった場合も多様性は低くなってしまいます。撹乱に対する抵抗力の小さい種が絶滅してしまうからです。一方で撹乱がほとんどない場所では競争力の強い少数の生きものが競争力の弱い種を排除して繁殖し、種多様性が低下します。撹乱が競争に強い種を抑えるくらいに大きく、しかも撹乱に弱い種を絶滅に追い込むほどには大きすぎない場合に、種の多様性が一番大きくなります。これが「中程度撹乱説」と呼ばれています。
一番わかりやすい例は雑木林です。管理を放棄された雑木林では林の中にアズマネザサが生い茂り、背丈の低い草木は生育できなくなります。アズマネザサの競争力がとても大きくて、アズマネザサが高い密度で生育する場所は地表付近が暗くて他の植物には適さない環境になるからです。かつては炭焼きや肥料のための落ち葉採取のために林の手入れという撹乱が行われ、アズマネザサの優先が抑えられており、林床にキンランやニリンソウなどの草花がたくさん見られました。下大和田でもアズマネザサで覆われていた林の手入れを始めてから林床に光が入って様々な草花が復活しました。
静かな冬が終わり最初の谷津田の作業は田起こしです。作業をしているとオケラやカエル、ザリガニ、クモなどが慌てて逃げ出していきます。生きものにとってはとんでもない撹乱です。時に鍬で命を奪ってしまうことも・・・ その上、田起こしが終わった田んぼは水浸し。引っかき回された上に大洪水に見回されるのです。代かきでさらにかき回され、一段落したと思ったら田植えでぐんぐん生長する稲を植え付けられてまた環境異変。草取りで踏みつけられ、9月になると一斉に稲が刈られて急に日差しが田んぼに入るようになるのも大変化。米づくりは田んぼに暮らす生きものにはとんでもない撹乱なのです。でもそれによって生きものが絶滅することはありません。では逆に多様性が豊になっているのか?それを確かめるには米づくりを放棄された谷津田と比べてみるのが一番です。田んぼは一年米づくりをしないだけで雑草に覆われてしまいます。そのままにするとやがてヨシやセイタカアワダチソウだらけになり、オタマジャクシやトンボの姿は見られなくなってしまい、草花の種類もグンと少なくなり、種多様性が激減することは明らかです。すなわち、谷津田での米づくりは「中程度撹乱」なのです。
田んぼの畦は草刈りをサボっていると雑草だらけになります。よく見るとそんな畦で元気に育っているのはハルジオンなど限られた種類で背丈の低い草花は生育できなくなってしまいます。畦の草刈りも程よい撹乱なのですね。
人間が米づくりを続けることによって維持される谷津田の生物多様性は「中程度撹乱説」を裏付けるよい事例だと思います。
■キーストーン種
多様性を保つ生態系では生きものがお互いに影響を及ぼし合いながら暮らしています。生態系の中でそれぞれの種が個別に異なる機能を担っているので、1種類が抜けても生態系の機能に支障をきたすという考え方があります。でも実際には抜けてもただちに全体に影響を与えることがない種が多いようです。一方である種がいなくなると生態系の性質に非常に大きな影響が生じることがあります。このような生きものを「キーストーン種」と呼んでいます。キーストーンというのは、石でアーチを組んだ時に最上部にはめるくさび状の石のことで、その石を外すとアーチが崩れてしまいます。
よく知られているキーストーン種の例として、人間が放牧する牛など草食動物によって草原環境が維持されることが知られています。牛が草を食べることによって背丈の大きな草や木が育つことなく、様々な草本植物が繁茂できる草原環境が成り立ちます。牛の糞は植物の栄養や昆虫などの餌として役立ちます。放牧を止めると草原は消失するし、過放牧でも草本は生育できません。草食動物が草原のキーストーン種なのです。
谷津田の生態系のキーストーン種は何か? カエルたち? カエルの餌になって害虫も食べてくれるクモ? 水中で大発生するミジンコ? いやいや、サシバやノスリ、モズなど食物連鎖の頂点にいる猛禽?
どれもいなくなったら困りそうですが・・・ と田んぼで悩んでいた時に目に入ったのがアシ原。同じ谷津田でも米づくりをしているのとしていないのでは環境が大きく違ってしまいます。原因は米づくり=人間の活動の有無で、人間が谷津田の環境、生態系を大きく左右するとても大切な役割を果たしているのです。そういう意味で谷津田の生態系のキーストーン種は米づくりをするお百姓さんと言っていいのではないかと思いました。お百姓さんが米づくりを継続することによって谷津田の生物多様性は維持されているのです。そして問題はキーストーン種であるお百姓さんが高齢化や後継者不足で絶滅の危機に瀕していることです。下大和田でも小山でも放棄田が増えつつあり、キーストーン種である米づくりの担い手をいかに確保するかが大きな課題となっています。
今回は保全生態学の3つのキーワードについて考えてみました。もしかすると解釈が正しくないかもしれませんが、谷津田の生物多様性を見る上でこのキーワードの視点が大切に感じられて話題提供させていただきました。保全に関わる私たちも少しずつ科学的な視点を身につけて、今後の活動にうまく活用していきたいと思います。
参考資料:鷲谷いづみ・矢原徹一(1996)「保全生態学入門」 文一総合出版
5月16日、千葉市緑区下大和田の谷津田で第94回YPP「みんなでわいわい!コシヒカリの田うえ」が実施されました。当日は80名を超える参加者で大賑わい、午後の谷津田運動会「おおばこ相撲」にこども達も大興奮。楽しい一日になりました。
参加者の親子から感想が寄せられましたので、掲載いたします。
小学3年生 宮下 夕鶴(ゆづる)
千葉市谷津田の田んぼに田うえをしに行きました。
午前中はザリガニ、メダカ、オタマジャクシ、カエルなどをとりました。ザリガニを8匹ぐらいとったけど、3びきくらい死んでしまったのでかなしかったです。小さいのばかりなので、学校にもっていってどうやってえさを食べるのか、みてみたいです。
お昼ごはんはおにぎりとおみそしるでした。おみそしるは田うえを教えてくれたおじさんたちが、作ってくれました。おみそしるにじゃがいもや、あぶらあげがあって、とてもおいしかったです。お昼ごはんのあと、おじさんが「オオバコずもうやる人」ときいたので、私は一番にやるといいました。かつひけつは、日あたりのいいところのを、ねっこのほうまでぬくことです。それとねっこのほうでやることです。私は一位になりました。
午後は田うえをしました。足がどろの中にはいってとれなくなったり、そばをカエルがとおったりして、とてもおもしろかったです。
こんどはいねかりのときなので楽しみです。
母 宮下 亜紀
私自身、子供の頃はまだ近所でザリガニを捕ったり草花を集めたりして遊ぶことができ、また父の田舎で畑仕事を手伝い、学生時代はキャンプをしたり、海山で動植物採集や観察、と自然の中で過ごす機会に恵まれた日々を送ってきました。地球温暖化やエコなどの言葉が身近になった昨今、私たちは子供に何を伝えるべきでしょうか。まず身近な自然に触れて、たくさんの生き物を好きになって欲しいと思います。そして多種多様の力強く生きる命に興味を持ってくれることを願います。田んぼや畑と縁遠くなってしまった私たちに、このようなイベントを企画して下さった皆様に感謝いたします。ありがとうございました。
谷津田運動会担当者より
おおばこ相撲には12名もの参加があり、負けて悔しく泣く子もいましたが、日当たりの良い太くて硬い茎を探すのが勝つこつでした。4年半前に「こぼしちゃだめよレース」から始まった谷津田で楽しく遊べる運動会をこれからも新種目を考えて、たくさんの方が楽しめるように工夫したいと思います。喜ばれる景品としてご家庭で不要になった新中古品の文房具などありましたら、イベント時募集いたします。
楽しくって、安上がり☆日常のエコ実践1
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千葉市花見川区 伊原 香奈子 環境のためには、車は使わないのが良いというのはわかっているけど、それは無理・・。我が家は独り暮らしの母のところへ、定期的に車で出かけます。ガソリンの量は車のスピードによってかなり変わることは、多くの皆さんは既にご存知と思いますが、高速道路は信号停止も無いため、特にはっきり感じることができます。 以前とは違い、エコドライブを意識するようになったここ10年ほどは、時速80~100㎞走行でゆったり走っています。道路交通法からすると当たり前の速度ですが、不景気な今でも、次々に他の車に抜かされていきます。でも、以前のように「少しでも早く行きたい」とか「抜かれて悔しい」などの思いは全く起きず、逆に緑地帯の木々が喜んでくれているようで、不思議です。時々私たちの後ろを、抜かずに走ってくれる車がいると、とても嬉しくて「エコドライブ仲間」と勝手に命名し、また、前をゆっくり走る車がいると、「お友達♪」気取りで後ろに付いて走り、車内の会話も弾みます。「低速は迷惑だし逆に危険!」と怒鳴っていた主人も、今は、“きっちり100㎞をいかに維持し続けるか”というゲーム感覚を創り出し、楽しく運転してくれるようになりました。 ガソリン量は以前の使用量の3分の2以下に抑えられ、適正な速度は、大きな省エネルギーに繋がることがわかり、エコドライブの良さを経済的にも実感しています。 これからも、エコドライブを通じていろんな発見と楽しさを見つけていきたいと思っています。
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発送お手伝いのお願いニュースレター7月号(第144号)の発送を 7月 6日(月)10時から事務所にておこないます。 |
編集後記:5月22日、南房総の清澄山で生物調査をしました。マルバウツギの白い花が満開で、昨年と同じ場所にはエビネも花を付けていました。清澄寺では池に張り出した樹上で、モリアオガエルの産卵合戦が繰り広げられていました。長靴に塗った塩水が功を奏したのかヤマビルにも悩まされず、新緑の森を堪能してきました。 mud-skipper