ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第148号 

2009. 11.6 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 古くて新しい「あふれることを受容する」治水
  2. メダカと特定外来生物
  3.   「まんがで描く里山の生き物」に参加して
  4. ちょこっと工夫でエコクッキング(その1) ~日本人ならやっぱりお米~

古くて新しい「あふれることを受容する」治水

市川緑の市民フォーラム代表 市川市 佐野 郷美 

 巷では八ツ場ダム建設問題が大揺れに揺れている。マスコミは移転を余儀なくされた地元住民の「国との約束、造ってもらわなければ」というコメントばかりを流している。しかし、大切なのは「無駄な公共事業は中止する」ということではなかったのか。時代に翻弄された地元住民には十分な手当てをすべきだ。しかし、マスコミが取り上げるべきは、本当に必要な事業なのか否かではないか? 
 9月26日(土)、トネド(利根川江戸川流域ネットワーク)はシンポジウム「ここから未来の川づくりへ-個性ある“豊かな川”を次世代に-」を松戸市民劇場で開催した。河川工学の第一人者である新潟大学名誉教授大熊孝さんの「あふれることを受容する治水へ!-堤防強化と水害防備林-」と題した講演を中心に、治水のあり方を根本的に変えていこうという画期的内容のシンポジウムであった。

 大熊さんは今の治水について「破堤させないことを前提にした治水だから、破堤したときに全壊家屋や死者を出すような大きな被害が出る」と問題点を指摘し、一方で「江戸時代には渇水期に水争いする人々が、洪水のときの被害を最小限にとどめるために、徹底した話し合いの末に、計画的に溢れさせる場所を決めていた。また、適切に配置された水害防備林が越流した水の勢いを弱めた。だから、たとえ洪水になったとしても建物が壊れたり、人命が失われるような被害は出ていない」と、越後川支流、信濃川支流などを例に語った。あふれるけれど決して破堤しない堤防強化法としては矢板や地盤改良材等で補強した「ハイブリッド堤防」を提案し、あふれた場合の対処法としては「補助金を出して高床式住宅建設」を提案された。「100~200年に一度の大雨であふれた場合の保証の平均を1戸あたり1000万円とし3万世帯が被災したとしても3000億円で済む。八ツ場ダムが総額1兆円以上かかる事業であることを考えると、社会として十分に検討すべき案ではないだろうか」とも語られた。
 生物多様性保全の立場から個性ある川の生物相は守っていかなければならない。人口減少社会の日本では人の住む地域を誘導していくことも可能だ。そして人口減少社会は税収も減少していく。そう考えたとき、大熊さんの提案はまさに日本の近未来を見据えた非常に大切な提案ではないだろうか。
 1997年策定の「改正河川法」では環境と住民参加が法の重要な柱になっている。2000年の河川審議会答申でもすでに「氾濫を許容する治水」理念が提案されている。スマトラ沖地震の際、マングローブ林が津波からまちを守ったし、日本でも予想を超えた高波により防潮堤が破壊され人的被害が出たことを踏まえて「防潮堤だけに頼らず、その内側に防潮林、遊水池を配してまちを守る」という方針を国交省が示している。
 八ツ場ダム問題が大きな話題になっている今こそ、私たちは「あふれることを受容する治水」を、自信を持って提案していきたい。(写真撮影・提供:田中幸子氏)

編集部より
この文章は、市川緑の市民フォーラム会報「みどりのふぉーらむ」2009年10月号に投稿されたものを、筆者の了承を得て再掲載させていただきました。 

メダカと特定外来生物

 環境カウンセラー 鎌ケ谷市 倉田 智子 

 「メダカ」がいるというと、自然度が高く良い環境と誰もが思います。自然の保全や復元をしていたら、そこには存在して欲しいシンボル的な生き物です。
 ある生協が休耕田を農家から借り受けました。「田んぼの再生」をキャッチフレーズに組合員から参加者を募ると、50人もの人が集まりました。はびこった雑草を刈り、水路を補修し、新たな井戸も掘りました。この整備の段階で農家には「メダカがいましたよ」と報告があったそうです。
 月に一度の作業で田植え、除草、稲刈りなど作業は進みました。遠いところから時間を掛けて参加した皆さんは達成感を得ました。水路の「メダカ」は、何人かの方が持ち帰っています。
 数年前、私はこの農地を提供した農家の方から「メダカ」をいただいたことがあります。この農家と同じ自治体の環境再生保全地にメダカを放流する話が持ち上がったため、同じ地域の「メダカ」が最適と考え、このお宅を訪れました。ところが田んぼ周辺の水路の「メダカ」も、このお宅の水槽の「メダカ」も、どちらも「カダヤシ」でした。以前にいただいた「メダカ」はどこで採取したものか、分りませんでした。
 来年度はさらに耕作田んぼが増えると聞きました。今年度の成果を受けて参加者は増えるでしょう。そして水路に魚影を見つけたら「メダカ」だと喜び、持ち帰る人も出るでしょう。「カダヤシ」が人から人へ譲られて、あるいは別の水域に放たれることも想像に難くありません。「カダヤシ」が特定外来生物と指定がある以上は何か歯止めがかけられないかと考えました。
 今年8月、四街道において「メダカサミット」が開催されています。報告に「メダカの遺伝子」の研究があったようです。地域のものではないという結果が多いと聞きました。一般的な話題は「メダカ」の生存確認であり、また自然復元・再生という名目での放流はよく聞きます。しかしながら特定外来生物をそれと気づかずに拡大させることになるのは問題です。

 ちば環境情報センターの田中正彦さん、小西由希子さんに相談を持ちかけました。田中さんは「メダカやカダヤシに限らず、ミドリガメやカミツキガメなどの放流に関して、しないようにというアナウンスは以前からかなりされていると思いますが、なかなか改められないのが現状です。これからも啓発していくことが必要で、できれば学校教育の現場などで行うのがいいと思います。なかなか難しいですが根気よく声を出していくしかないでしょう」。小西さんは「これから先、遊休農地の活用や農業体験などもっともっと盛んになっていくことと思います。そうしたらこの問題はどこにでも起こりうることでしょう。考えたらちょっとぞっとしますが・・・。生物多様性の視点からもこの問題はとても重要だと思います。大事なことなのにあまり議論されていないことではないかと思います。」というご意見でした。
特定外来生物について、環境省から社会に指針が示されていますが、世の中に知識が普及するには時間がかかります。このような情報とは距離がある人もいるのでは?普及のために何かするべきではと考えました。
 
 今回問題とするのは“来年度さらに広く展開される事業”という点です。そこで生協の担当者に連絡を取り、問題点を説明しました。知識・意識がないことが法に触れることになるわけです。今回の申し出はその場で聞き届けられました。この地域だけでなく、ほかの地域にも展開している”田んぼ体験“のため、生協内部、関係機関での周知のほか、「カダヤシ」を取らないよう参加者に呼びかけると約束してくださったのです。
 自然保護などに関わる問題は、とかく世人のひんしゅくを買うものです。今回は対応のあまりの速さ、良さに、驚かされました。身勝手なものではないことを理解してくださったのでしょう。つまり善意でされる保全・再生活動を阻むものではなく、対応することで活動が質的に高められると判断されたのだと思います。

「カダヤシ」は特定外来生物
 「カダヤシ」が自然界に放されると・・・・
 「卵胎生メダカ」の名のとおり、初めから小さな魚体が、この世に誕生してきます。
 暗く暖かく、水のある地下鉄の構内で一年中発生する「蚊」対策として、ボウフラ退治に導入された生き物です。「メダカ」の、水質が良く水草があるという生息条件とは、大分かけ離れた環境でも暮らすことができます。生存を確保するための水質が汚濁してきたら、生命力の強い「カダヤシ」が断然有利です。
 日本に古くから住んでいた「メダカ」は、人間生活の影響で『生きる条件』が破壊され、いまや保護しないと存在できない事態になってしまっています。
 
 種の区別は難しいわけではありません。それでも「メダカ」と混同し、「カダヤシ」を放流する例が後を絶ちません。よかれと思って善意でされることが、地域の生態系破壊を招くことになります。「カダヤシ」にとっては不本意なことでしょう。
最近特定外来生物のブラックバスを移動した疑いで、逮捕者が出ました。では「カダヤシ」は?「ウシガエル」は? なじみのある生き物、身近な水辺にいる生き物だけに問題は切実・深刻です。生息分布拡大に手を貸すことのないよう、心がけたいものです。  


環境漫画講座を実施しました

 2009年10月18日、昨年に引き続き千葉市若葉区中野町と緑区下大和田の谷津田・里山で、参加・体験型環境学習講座 第4回「里山で描く生きものまんが体験学習」(主催:NPO法人 ちば環境情報センター)を実施しました。
 全員で谷津田・里山の生きもの観察した後、発見したことを題材に漫画を描きました。漫画を描くこつなどは環境漫画家のつやまあきひこさんが指導しました。また、東京情報大学教授でナチュラリストのケビン・ショートさんには、間近に迫ったハロウィンと自然・文化などのお話しをしていただきました。描いた作品は森の中にロープを張ってつり下げ、参加者全員で発表会を行いました。最後につやまさんからイラスト入りの色紙が全員にプレゼントされました。参加者から感想が寄せられましたので、掲載いたします。
 ※この活動は2009年度セブン-イレブンみどりの基金活動助成金を受けて実施しました。(事務局)

  「まんがで描く里山の生き物」に参加して

   東京都北区 小学校6年 伊東 凱 

 ぼくは、「里山どんぐり」を描いているまんが家、つやまあきひこさんの大ファンです。イベント前日は、つやまさんに会えるのが楽しみでよく寝付けませんでした。当日は、東京から二時間近くかかって里山に着きましたが、景色がだんだん緑豊かになっていくのがうれしかったです。

 まんがの題材を探す探検では、本でしか見たことのなかったセイタカアワダチソウやイナゴを初めて見ました。虫取りあみを使ってトンボとチョウを捕まえたのも初めてで、とてもおもしろかったです。案内してくださった人が古代米の話をしてくれたのが印象的でした。
 ぼくは、古代米を題材にして古代米の精のまんがを描きましたが、だんだんつやまさんのまんがのキャラクターに似てきてしまいました。つやまさんに「さすがどんちゃんファンだね。」と言ってもらえてうれしかったです。ケビンさんのハロウィンについての話はおもしろく、かぼちゃのランタンの顔のデザインをぼくが考えました。
 今回初めて里山に行ったのですが、里山には都会ではふれることのできない昔ながらの自然がありました。ぼくは、このような自然を守っていきたいと思いました。ちば環境情報センターの活動を知り、すばらしい体験をすることができて本当に良かったです。 


ちょこっと工夫でエコクッキング   その1
   ~日本人ならやっぱりお米~

                   千葉市緑区 江澤 芳恵
 今月から数回にわたり、主婦歴18年の私がエコクッキングについて紹介させていただくことになりました。エコブームの昨今、エコクッキングの本もたくさん出ています。私が紹介するまでもなく、みなさんも様々な実践をしていることと思いますが、私が日々、台所に立ってしてきたちょっとした工夫の中から、「これってエコに結びついているかも」と思うことを紹介してみたいと思います。
 エコクッキングと聞くと、何となくエコな調理方法やメニューを連想しがちですが、実は、買い物をするところから後片付けを終えるところまで、すべてを含めてエコを意識することが大事。このことは何年か前に参加した情報センターのエコクッキング講座で教えられました。ですから、今回は、まず、食材選びについてお話したいと思います。
 最近、地産地消という言葉をよく耳にしますが、毎日の食卓に欠かせない野菜は、できるだけ我が家の近くでとれた旬のものを中心に食べたいと思っています。幸いにも、私の住んでいる土気周辺には、まだまだ畑や田んぼがたくさんあって、野菜直売所も近所にあります。直売所の野菜たちは、スーパーのものと比べると形が悪かったり、泥がついていたり、虫が食っていることもありますが、価格も安めですし、虫が食べてくれる野菜なら人間だって安心して食べられます。
 そして、主食。日本人ですから、やっぱりお米をたくさん食べたいです。我が家は、主人と私、中2の娘と小4の息子の4人家族ですが、地元のお米屋さんから買う玄米はひと月約30キロ。朝はごはん、主人と私のお昼のお弁当もごはん、夜はもちろんごはん。休日の昼食には麺やパンを食べることもありますが、基本はごはん食です。
 お米は、エネルギー源になるだけでなく、たんぱく質やビタミンなどの栄養もたっぷり含んでいます。さらに、精白米に比べ、玄米となると栄養も倍増!それに、ごはんなら和洋中どんなおかずにもぴったり合います。ということで、朝食とお弁当は8分づきに精米した白いごはん、夕食は玄米ごはんを中心に食べるようにしています。(ちなみに、玄米は圧力鍋で、白米は厚手の鍋で炊いて食べています。鍋でお米を炊くと、電気炊飯器と比べ炊飯時間も短くすみます。たとえば、5合のお米も30分ちょっとで蒸らすところまで完了です。)
 地元でとれた野菜とごはんをモリモリ食べて、我が家はいつも元気いっぱいです。

発送お手伝いのお願い

ニュースレター12月号(第149号)の発送を12月7日(月)10時から事務所にておこないます。
発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します


編集後記: 11月1日の「古代米の稲刈り」に参加された田村佳子さんからの感想です。「子どもと大人も一緒に働く、これって昔の農村の姿?!休日のレジャーにショッピングセンターや遊園地に行くのではなく、田んぼや畑へ行く、というライフスタイルを流行らせたいですね。」 同感です!  mud-skipper