ちば環境情報センター > ニュースレター目次 > ニュースレター第156号
目 次
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埼玉県北本市 柳沼 薫
なんでマナティ?
伊豆七島のひとつ、御蔵島のミナミハンドウイルカに魅せられて数年。次に違う野生の海獣類に出会いたいと思って調べたとき、確実性を感じたのはアメリカのフロリダで見られるというマナティだった。目的地のクリスタルリバーは、ディズニーワールドで有名なフロリダ半島のオーランドから車で2時間の場所。ダイビング専門の旅行業者に手配を依頼して、自身初のアメリカへの旅に行くことにした。英語不安ですけど、しかも一人旅ですけど、何か?
マナティって?
マナティは、水中にすむほ乳類。沖縄の米軍基地移転問題で名前が挙がる「ジュゴン」に近いが尾のひれの形が異なり、マナティはしゃもじのように丸い形をしている。草食であることは同じ。水中で出会ったときの第一印象は、「なんて体積が大きいんだ!?」 大きな岩or丸太のような、カバってこんな感じ? そしてなんだか血を吸ったヒルみたい! 実際に出会ったこどものマナティのサイズが、だいたい人間の大人くらい。そしておとなのマナティともなると、3mほど。しかしながらそのメタボ体型さは人間との比ではない(写真)。
マナティに出会うには?
フロリダにすむマナティは、アメリカの東側、フロリダあたり〜ブラジルあたりの沿岸にすむアメリカマナティ(West Indian Manatee)の亜種。夏の間はフロリダ沿岸の海域で暮らしているが、冬になって海水温が低くなると、海につながっている水域をたどって、水温の高い湧水地帯にやってくる。
マナティに出会うには、泉に集まって来る寒い時期がチャンス。フロリダと言えば暖かい場所というイメージがあるが、現地を訪れた1月末は、日中の最高気温が15〜20℃、寒い日には最低気温が10℃を下回るという寒さだった。案内をするスタッフの朝の挨拶は、「寒いね。でもマナティを見に行くにはいい日だよ」といった感じ。暖かい日だとマナティが泉から分散してしまって、出会える数が少なくなるのだという。マナティ目当ての観光客は、船でポイントまで行き、スノーケリングで、あるいは船上から観察する。事前に、マナティの生態やスノーケリング中のマナー(保護エリアには入らない、潜らずに水面から観察する、休憩しているマナティを起こさない、など)をまとめたビデオを見て学習することになっており、日本語版もあった。
ついにご対面!
ポイント「スリーシスターズ・スプリング」にてお昼に港を出たボートは、運河のような水路をゆっくりゆっくり進む。一帯が広くマナティの保護区になっており、ボートの航行のスピードが制限されているためだ。1時間を過ぎた頃、船長が指さす先に、白っぽいマナティの姿が! 自宅を出てから実に40時間後のことであった。ポイントには、すでにほかのマナティウオッチング船やカヌー、泳いでいる人たちがたくさんいた。早速スノーケリングの準備をして(わくわく)、ガイドについて水面を泳いでいく(どきどき)。水温は湧き出し口のところで23℃、そしてとにかく青く澄んでいる!
マナティは、ほとんどの個体が水底にたたずんで休憩している。単独のものも、親子で寄り添って行動しているのもいる。ブイとロープで囲まれたマナティ保護のための立ち入り禁止エリアにはたくさんのマナティが集まっていて、まさに「ごろごろと転がっている」という表現がぴったりであった。時折、水面に上がってきて息継ぎをし、そしてまたスイッチが切れたように休憩。体表には藻が生えていて、その藻を食べようと魚がつついたりする。ゆっくりとした動作、個体によって違う顔つき、そしてそのまわりにいる魚たちは見ていて飽きない。が、船と衝突したのであろう痛々しい傷跡を持つ個体が結構いて気になった。
小一時間楽しんでボートに上がると、貴重な体験をした興奮とは裏腹に、ウエットスーツを着た体はすっかり冷え切っていた。このツアーで一緒になったアメリカ人、なんであんな薄いウエットスーツで大丈夫なんだ?! ホットココアが染みる〜。(続く)
千葉県生物多様性センター 千葉市美浜区 小倉 久子
本題に入る前に、まず千葉県という場所について、おさらいです。ごく簡単に言うと、千葉県というのは、@ 海でいうと黒潮(暖流)と親潮(寒流)がぶつかるところ、A 陸(植生)でいうと常緑広葉樹林域(暖温帯)から落葉広葉樹林域(冷温帯)の境目にあるところです。このため、人々は昔から里山里海からさまざまな恵みを得ることができました。これに加えて、B 東京という巨大な都市圏の一部であること。この3つが千葉県の特徴です。
今回はいくつかのデータをご紹介しながら、千葉県についてざっくりと評価して見ましょう。
千葉県の市町村を人口密度,人口増減率,高齢者率という指標で、都市域,都市化進行地域,過疎高齢化地域、の3つに分類してみました。その3つの区域ごとに、図1では高齢者率の変化、図2では水田面積の変化を調べました。
図1からは、過疎高齢化地域で高齢化が著しく、都市域においても1980年以降は高齢化が進んでいることがわかります。また図2をみると、すべての地域で水田面積が減っていることがわかります。都市域で水田面積が大きく減少しているのは、予想どおりですが、過疎高齢化地域でも水田面積が減っているのは高齢化の影響でしょうか。耕作放棄という問題もあるので、実際に耕作している面積は、さらに少ないのではないかと思われます。
千葉県内の産業別人口構造の変化を表したのが図3になります。1920年(大正9年)には人口の72%の人が一次産業に従事していました。一次産業という言葉を広辞苑で調べると、「産業のうち、農業・林業・水産業など直接自然に働きかけるものをいう」と書いてあります。すなわち、里山里海から「めぐみ」を得る生業(なりわい)のことです。
ところが40年後の1960年には、全体の人口(杵のような形の面積)は1920年よりも増加しているのに、一次産業人口は減少し、全体の46%になってしまいました。
さらに45年たった2005年には、一次産業が、なんとわずか2.8%しかありません。二次産業(工業)も増えていますが、なんといっても三次産業人口がすさまじく増えているのです。
2005年の図のなんと不安定な、あぶなっかしいことでしょう。これが現実の姿なのです。私たちの食べ物(原材料)は一次産業によって作られるわけですが、私たち千葉県民は、このわずか2.8%の人に養ってもらっているのでしょうか。
図4には、都道府県別の食料自給率(カロリーベース)を示します。全国平均は40%ですが、千葉県は平均を大きく下回る29%しか自給できていません。自給率が29%ということは、71%は他所(他県,外国)から持ってきているということになるのです。
このように、昔は言われなくても「千産千消」をしていたのに、今の私たちは他の県や外国の「めぐみ」で養ってもらっているのです。
こんな千葉県でいいのだろうか。データを見ながらこう考えるのが、SGA:サブグローバル生態系評価なのです。
ちなみに、最も自給率が高いのは北海道で(198%)、東京都はわずか1%です。
NPO法人千葉まちづくりサポートセンター副代表 千葉市美浜区 栗原 裕治
今年3月に沖縄に行く機会を得ました。普天間基地移設問題で揺れている沖縄ですが、市民や大学が行政を巻き込み、沖縄の特性を踏まえた「環境」「人権」「平和」といった人類にとっての3つの普遍的な価値を融合させた地域づくりを模索する動き活発になっていました。
ひるがえって、千葉市では昨年度から新たな環境基本計画づくりが始まっていて、今年度末に策定予定とのことです。千葉市は次期環境基本計画において、どのような地域づくり目指すのでしょうか。
国の政策・施策にのっとった平均的な計画づくりではなく、さまざまな千葉市域の状況を踏まえ、現場の課題や意見を丁寧に拾い上げ、将来の世代にどのような環境を残していくのかを示していく必要があるのではないでしょうか。また、千葉市が環境重視の姿勢を内外に示すことで、市民の関心を更に喚起することも重要のように思われます。
そう考えると、次期計画づくりは、不十分な過去のデータや一部の専門家の知見に頼るのではなく、千葉市が手持ちのデータを示し、不足しているデータや専門的知見を補い、市民や専門家と開かれた議論を活発に行うプロセスの中で計画づくりを進める必要がありそうです。
現在、千葉市環境保全部が「千葉市環境基本計画等に関する市民意見募集」を行っていて、6月30日に千葉市の市民説明会が開かれたのですが、そこに次期環境基本計画の策定に関わっている専門家や環境審議会委員、更にコンサルタントの姿はありませんでした。地方分権社会の基本である市民参加や市民に開かれた自治を目指す千葉市において、市民は顔の見えない環境審議会委員やコンサルタントに計画策定の審議や作業を負託することはできないでしょうし、良識ある委員やコンサルタントもそれを望んでいないと思います。将来にわたって市民生活に影響力のある基本の計画をつくるわけですから、今回の意見募集で策定の方向性が固まったら、実際の策定に向けてもっと徹底した議論のための時間を用意するべきでしょう。千葉市が計画している審議会の回数も少ないように思いますし、市民の関心を喚起するためのメディア対応等の工夫や努力も不足しているように感じます。
地球温暖化の問題には、ほとんどの国民に認知されていますが、生物多様性の危機は34%の国民に認知されているにすぎないと言われています。今年は国連の生物多様性年で秋に名古屋で生物多様性締約国会議(COP10)が開催されますが、次期環境基本計画を策定中の千葉市の動きが見えてこないのは不思議です。千葉県は生物多様性地域戦略を他県に先駆けて策定し、県内では流山市が地域戦略を策定しています。
国の生物多様性基本法は、第13条第1項において基礎自治体が単独又は周辺と連携して地域戦略を策定する努力義務を定めています。千葉市においても今回の環境基本計画づくりを機会に生物多様性の問題を含めた子どもたちの将来の安心につながる体系的な環境施策を構築して欲しいと願っています。
ちば環境情報センター会員の小田信治さんが、千葉市環境基本計画等に関する意見書を提出しました。小田さんに本ニュースレターへの転載をお願いしたところ、了承していただきましたので以下に掲載いたします。
千葉市緑区 小田 信治
・気候変動(地球温暖化)と生物多様性(種の絶滅)のグローバルな環境問題が深刻になり、今年2010年は名古屋でCOP10が開催され、国際生物多様性年である今年度に、次の10年の千葉市の環境の方向性を指し示す「千葉市環境基本計画」が検討されるということは、ひじょうにタイムリーなことと思います。
・次の10年が地球環境の劣化をストップし、元に戻せるかどうか人類の存続を左右する瀬戸際の重要な時期です。それだけに、多くの市民が参加して、環境基本計画を世界に発信できるだけの先進性のあるものにしていただきたいと切望します。
・千葉が世界に誇れる自然は、「谷津田」です。千葉市では、千葉市谷津田の自然の保全施策指針(2003年)、千葉市谷津田の自然の保全に関する要綱(2004年)があり、千葉市民として誇りに思います。
・目指す環境像「人と自然が共生した快適で個性あふれるまち」の個性は、まさに谷津田かと思います。
・キーワードとして「生物多様性」が入っていることは、非常に重要です。このキーワードは、まだ市民には十分理解されている段階ではありませんが、谷津田を通じて、身近な問題として理解されるような施策が必要です。
・千葉市内(市内に限らず)里山、谷津田の放棄による自然の荒廃、生物多様性の劣化が進行しています。
・こうした劣化をストップするには、農業自体を見直すことが必要ですが、千葉市内には多くのゴルフ場あり、ゴルフ場の協力を得るような施策を検討してほしいと思います。
・(社)ゴルファーの緑化促進協力会 http://www.ggg.or.jp/は、平成21年5月19日「ゴルフ場の生物多様性調査報告書」を公表し、ゴルフ場の緑が生物多様性に貢献していることを明らかにしました。
・ゴルフ場開発は、バブル期には自然破壊の象徴として社会から批判の対象となりましたが、ゴルフ場の管理された緑が、結果として生物多様性保全に貢献しています。これの現状を調査・評価して、ゴルフ場(企業)の力を引き出し、市民、企業、行政が連携して生物多様性保全に取り組む仕組み(例えば、千葉市谷津田の自然の保全施策指針に位置づけるなど)をつくる施策を検討してほしいと思います。
・千葉市としてゴルフ場を生物多様性保全に位置づけことは、社会的に話題性、訴求力があり、SATOYAMAイニシアティブのモデルとして千葉市を世界にアピールできるものと考えます。
・石川遼君を広告塔にてして千葉市をPRしてはどうでしょうか。
(事務局)
6月5日(土)・6日(日)きぼーる 1階 アトリウム(きぼーる広場)にて千葉市内の環境活動に関わる団体、企業、行政の展示説明と体験が行われました。主催は2010ちばし手づくり環境博覧会実行委員会と千葉市。
今年はきぼーる内の「千葉市子ども交流館」との合同企画で「巨大すごろく」と「ペレットペンダント」も行われ、子ども達の参加が多くありました。参加団体は33、参加者は展示期間を含めて1,000人になりました。会場内では各ブースをまわるスタンプラリーも合わせて行い、活動紹介を熱心に説明したり、聞いたりする姿があちこちで見られました。
来場者の環境への気づきを少しでも促し、環境活動に参加してほしいと願っています。来年度も環境月間6月に行われます。新しく環境の活動を始めた団体の方も、活動を紹介するとてもいい機会です。ぜひご参加ください。(ちば環境情報センターも実行委員として関わっています)
ちば環境情報センターも今年で14年になります。そして今年も6月26日(土)22年度総会が無事行われました。参加者は正会員と一般会員で15名。
昨年度の事業報告、会計報告に続き、今年度の事業計画と予算を検討しました。
多くの委託事業で環境講座を開催してきた昨年でしたが、今年は1年を通した田んぼ講座と千葉市子ども交流館との共催事業の田んぼ講座やテーマを決めた観察会を重点的に行い、その他今後の会の方向性を考える1年にしていこうと話し合いました。また講座を通して新しいスタッフも増え、また会員になった家族も増え、会の活性化を図りたいと思っています。
総会終了後の交流会では夕方まで様々な話題で花がさき、にぎやかな交流会となりました。
皆さんも今年の活動に是非参加していただき、ご意見いただけますよう、お願いします。 (事務局)
ニュースレターで団体の活動を紹介しませんか?ちば環境情報センターには、多くの団体が会員として登録して下さっています。そこで、今年はニュースレターで会の紹介をしていこうと予定しています。 毎月のニュースレターは会員200名他、行政,公共施設,一般企業にも送付し、読んでいただています。 団体を多くの方に知っていただく、いい機会です 是非、あたな会の紹介をしてみませんか?一団体500字〜800字。写真も1枚。原稿は下記までお送りください。お待ちしています。 メールアドレス:hello@ceic.info. |
ちょこっと工夫でエコクッキング その9
千葉市緑区 江澤 芳恵 |
発送お手伝いのお願いニュースレター 8月号(第157号)の発送を8月6日(金)10時から事務所にておこないます。 |
編集後記:下大和田谷津田の一部が狩猟禁止区域に指定されました。狩猟期間は11月15日〜2月15日まで。自然観察エリアも指定してもらいたかったのですが…。里山で散弾銃の薬きょうを拾うことがあります。この中には多くの鉛の粒が入っていたはず。たとえ無農薬で栽培しても、鉛が溶け出して汚染されることになり大問題です。 mud-skipper