ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第158号 

2010. 9.6 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 思い出の中の女の子、としての里山
  2. ちばの里山里海SGA(サブ グローバール アセスメント)その3.生態系のめぐみとシナリオ
  3. お魚の話(その4) 秋刀魚はなぜ高い
  4. ちょこっと工夫でエコクッキング   その11~保温調理のススメ その3~

思い出の中の女の子、としての里山

大網白里町 池野 正則  

 美しい話から始めよう。
 夏は相変わらず豊饒だ。けなげでささやかな生き物たちの命であふれかえっている。
 環境が壊れつつあるといわれるけれど、野には力強い雑草があふれ、雑木林では蝉が命を謳歌し、恋の相手を求めている。
 西洋人と違い我々日本人は特別の努力なしに自分と蝉が同じように命を楽しんでいると感じることができる。そして同じように恋するのだと感じる。
 恋することを完全に肯定的に考え、恋のたどり着く性的な悦楽を神によって恵まれたものとして受け入れる。
 キリスト教文化圏では真にすばらしい人間はエリザベス一世のように生涯純潔を保つべきだという前提があるのだという。たぶんそのような文化圏で育った人々には日本は分かりづらいだろう。

 日本人ならだいたいの人間が美しいと感じることができるために、かつて高校の国語の教科書にさえ掲載されていた柳田国男の文章があった。内容はこうだ。「東北の農村の生産性の低さは年によっては多くの死者をだすようなものだった。食うものがないという事実が昨日まで体温を感じ合っていた子供の命を奪い、あるいは母親の命を奪うような人知を超えた力として押し寄せてくる。
 年によっては今年は一緒に生き抜くことができるかどうか分からないと覚悟しなければならない、そういった経験を誰もが共有していた。」そのような現実を共有している村落で一年に一度婚姻関係を超えて性が解放される祭りの夜があると柳田は言う。
 人々が生きているという、かくも不確かでもろい事実を一時的な無法状態を作ることで「いとおしく抱きしめ合う」というような書き方がしてあったと思う。高貴で、簡潔で有無を言わせぬ美しさを持つ文章だったと記憶する。
 里山を保護する活動をしている友人に誘われて二度ばかり里山の集まりに顔を出したことがあるのだが、その後で酒盛りをした。その酒盛りの場でぼくは「知っている?日本の里山の存在は婚姻制度と密接な関係があるのだよ」などと言ってしまったらしいのである。
 今回「あれをちゃんと文章化しろ」と友人に迫られた。気軽に引き受けてしまってから自分の書こうとする内容をチェックするとかなりの長さになる内容である。事実確認の下調べもいる。
 しかし、原稿の依頼から締め切りまであまり時間がなかった。
そこで今回は第二次世界大戦あたりまで存続していた農村の結婚の形式を記憶に従って説明し、次回以降それがどうして里山の存在と重なり合うかを検証したい。そして最後はこのことが現在の我々が我々であるのとどのように結びつくのかの私説で結びたい。これがこの文章の目指す地点だ。
 さて、美しい話にいつか行き着くはずのこの話しは、日本の農村(地方によって差があります)には集団婚と一夫一婦制が並存していたという発想から出発する。
 集団婚とは婚姻である以上村落社会に肯定された複数の男女の安定的な結合関係であって、現代の都市の若者たちに見られるフリーな性関係とはまったく異なる。
 極端に単純化して言えば農村の青年男女は13歳くらいになると親元を離れ、それぞれ若衆宿、娘宿で共同生活を送り、年上の構成員から村落成員としての社会的な振る舞い方などを訓練された。
 この間に複数の男女の間で性的な交渉があり、それは娘の妊娠まで続く。娘が妊娠すると子供の社会的な父親を決定する必要から第二段階の一対一の婚姻関係に移項し集団婚の輪の中からは卒業することになるのだ。(つづく)

ちばの里山里海SGA(サブ グローバール アセスメント)
その3.生態系のめぐみとシナリオ

千葉県生物多様性センター 千葉市美浜区 小倉 久子 

 SGAでは生態系から享受するめぐみ(生態系サービス)が時代とともにどのように変わってきたのかを調べています。「めぐみ」は供給、調整、文化、基盤の4種類に分けられます。

(1) 供給サービス
 供給サービスとは,農業,林業,水産業の生産物です。前回ご紹介した各都道府県別食料自給率のグラフで,千葉県は人口が多いので自給率はそれほど高くはないのですが,生産の絶対量はけっこう多いのです。第一次産業従事者数が激減して,農地面積も減少しているのですが(これも前回ご紹介),肥料,農薬,機械などの技術開発などの努力により,生産量が増加している品目もたくさんあります。水産業についても同じです。


 逆に,供給サービスの量が減っている例をお示ししましょう。図1は千葉県における薪の生産量の変化で,第二次世界大戦後に生産量は激減し,1980年以降はほとんどゼロになってしまいました。理由の一つには,薪を採っていた里山が減ったということもありますが,図2のように,松林は減っているものの雑木林の面積は少しずつ増えているのです。今,私たちは日常のエネルギー源として薪や木炭をほとんど利用していません。家を建てる時も,木造と言っても合板を使わずムクの木だけを使うことはまれです。
 このように,供給サービスの量の増減は,サービスを提供してくれる里山や里海の変化だけでなく,サービスを受ける人間側の都合(ニーズ)によっても変わってくるのです。

(2) 調整サービス
調整サービスは,ちょっと分かりにくいと思いますが,里山や里海が私たちの環境を良い状態に保ってくれるというのが調整サービスです。森があると降った雨を貯めて少しずつ川に流してくれます。コンクリートジャングルの東京で,新宿御苑や明治神宮の森に入ると,気温がぐんと涼しくなります。昔の東京湾の水質がよかったというのは,流れ込む汚れの量が少なかったことのほか,干潟のアサリたちがせっせと海水をろ過してくれていたからなのです。印旛沼や手賀沼の水が透きとおっていたのは,水草が窒素やリンを吸収してくれたおかげなのです。
これらのサービスは,昔は当たり前すぎて全然「めぐみ」とは意識されていなかったのですが,森や干潟が開発によってなくなってみると,今さらながら失ったことの大切さを実感します。
注意しなければならないのは,水草やアサリを供給サービスとして使わないと,それらは水の中で死んで窒素やリンが溶け出して元に戻ってしまうということです。すなわち,調整サービスというのは供給サービスとセットになっていて,私たちが適度にアサリや水草を海や沼からいただくことが調整サービスの効果も高めるのです。
(3) 文化サービス
 千葉には海も山もあって,豊かな食材に恵まれていることから,すばらしい郷土料理がたくさんあります。この場合,食材は供給サービスになりますが,料理法というのは「文化サービス」です。また,春のワラビ採り,秋のキノコ狩り,お花見,お月見,収穫を神さまに感謝する秋祭りなども生態系からいただく文化のめぐみです。
 近頃は,このような「伝統的な」文化サービスがだんだん廃れてしまいましたが,エコツーリズム,マリンスポーツのような新しい「文化」も生まれてきています。伝統的な文化サービスは供給サービス(○○採り,など)と結びついたものが多かったのですが,新しい文化サービスは必ずしもそうではないようです。

(4) 基盤サービス
 この定義は,「他の生態系サービスを作り出すのに必要なもの」とされています。私にもよくわかりませんが,土壌形成とか光合成(酸素を作り出す),水循環などがあげられています。非常に長い時間スケールのサービスなようで,千葉に特有の,というものはあまりなさそうです。

 千葉の里山里海SGAでは,このように,私たちが里山里海からどのようなめぐみを受けているのか,それは人々の暮らし方の変化によってどのように変わってきたのかを整理しました。整理までで終わるのならば,普通の報告書なのですが,この報告書には,このような生態系(サービス)の変化(劣化)に対して,私達はこれからどうすれば良いのだろう,と考えるシナリオという章を持っているところが大きな特徴です。

 ごく簡単にいうと,これからの生活を「グローバル化(国際貿易)⇔ローカル化(地産地消)」と「自然⇔人工」という2つの物差で考えて,その度合いによってどのような社会ができるのか,を考えました(図3)。「これを選ぶべきだ」,というものを明示していないところが「シナリオ」なのです。私たち全員がこれからの生きかたについて真剣に考えて選択していただきたい。これがSGAのめざすところなのです。
 「あなたは,どういう社会をめざしますか?」

これまで3回に分けてご説明した内容と使用した図の全ては,千葉県生物多様性センター研究報告第2号「ちばの里山里海サブグローバル評価中間報告書」(2010年3月発行)のものです。興味を持って下さった方は,ぜひ報告書をお読みください。なお報告書については千葉県生物多様性センター小倉(h.ogr3@mc.pref.chiba.lg.jp)または中村俊彦までご連絡下さい。

お魚の話(その4) 秋刀魚はなぜ高い

大網白里町 平沼 勝男 

 皆様はもう秋の味覚、サンマを食べましたか?
 今年のサンマは漁を開始したものの獲れる量が少なく値段が上がりました。それがマスコミに報道され話題になりそれが原因でさらに相場が上がるといった状況になりました。店頭の価格で1尾600円を越えるものもあったようです。
 ここにきてようやく値段が下がり始めました。筆者は8月の末、自宅近くのスーパーで、大きめのサンマが1尾300円、小型のものが100円で売っていたのを見ました。
 しかし、この安くなった秋刀魚ですが相当スーパーが無理をして安めに価格を設定しているようです。特に100円のほうは小さいとはいえお店が客寄せのために損をしている価格だと思います。
 実際に調べてみるとここ数日漁獲が増えてきたとはいえ1日に北海道中心に400~500トンほどの水揚げです。例年では1000トン以上の水揚げがあっていい時期です。多いときには2000トンを越える時もありました。それが連日のように続くのです。だから秋刀魚は安かったのです。今の値段を見ますと、浜値(漁師が漁獲して産地市場に上場し入札で値がつく、最初の価格)はキロあたり300円です。昨年の同期では100円を切っています。70円から80円です。やはり今年の状況は異常と言えそうです。
 今年のサンマはなぜ少ないのか? 実はサンマはここ数年、最も安定し漁獲量が増えた魚種でした。サンマをはじめ、イカ・サバ・アジなど数量的に多く水産資源として重要な魚種は農林水産大臣の名で1年間の漁獲数量の上限が決められています。その上限がサンマとサバでは最近増えています。つまり資源量が増えているとされているのです。
 今年の獲れない原因は水温に関係しているようです。この時期のサンマが好きな水温は14℃から18℃までといわれています。その水温の海域を回遊(南下)しています。しかし今の漁場である釧路沖から三陸沿岸にかけては暖水塊と呼ばれる水温が異常に高い状態になっています。20℃から23℃あるのです。
 この温度の違いですが魚は我々人間と違い1・2℃の水温の違いは大変なことです。何しろ魚は服を着ていません、人間の体温が1℃違えば体調が悪くなるのと同じなのです。その水温のため群れが散らばり漁獲しにくい状態であるというのが一般的な見方です。筆者の友人で 気仙沼のサンマの専門家は水温が高いとサンマは深いところに潜って回遊すると言っていました。あるいはそうかもしれません。
 サンマは1年魚です。筆者の経験でも過去に獲れない年がありました、しかしその次の年は見事に回復しました。早くも来年にですが回復することを期待しましょう。

 ところでサンマは変わった漁獲方法なのをご存知でしょうか?その名を棒受け網漁といいます。図を見てください船の左舷に一本棒のようなものが出ています。これはサンマを集める集魚灯です。実際の船には何本もこの集魚灯がついています。サンマの光に集まる習性を利用している漁法なのです。
 もちろん漁は夜中に行われます。海面をものすごい光で照らし、サンマが集まったところを大きな網ですくいとるのです。この漁法、効率的に獲れる事と魚が傷つかないところに利点があります。しかし火を焚くものですからものすごいエネルギーを消費します。おまけに漁船の移動距離も長いです。魚が獲れないとなおさら移動距離が長くなり、また漁の回数が増え効率がさらに悪くなります。

ちょこっと工夫でエコクッキング   その11
~保温調理のススメ その3~

                                   千葉市緑区    江澤 芳恵 

 今月も保温調理についてお話します。今まで、汁物、煮豆、その他いろいろ、とお話してきましたが、何か試してみていただけたでしょうか?包み物グッズに包んでおく、というやり方さえマスターしてしまえば、いろんなお料理に使えますが、今月は、ちょっと応用編。茶碗蒸しのレシピを紹介したいと思います。
 みなさん、茶碗蒸しを作った時に「す」があいてしまったことはありませんか?わたしは、蒸し器を使って茶碗蒸しを作るとどうしても「す」があいてしまうのですが、この方法なら、「す」があくこともなく、なめらかな茶碗蒸しが出来上がりますので、是非お試しください。

<材料>(4人分)
  ・鶏肉 80g
  ・かまぼこ 4切れ
  ・生椎茸 4枚
  ・ぎんなん 8個
  ・卵 3個

  ・三つ葉 4本
  ・だし 2カップ
  ・塩 小さじ2/3
  ・みりん 小さじ2
  ・しょうゆ 少々
<作り方>
 1.卵をときほぐして、だし、調味料と合わせ、漉しておく。
 2.鶏肉は、酒、塩少々(分量外)で下味をつける。ぎんなんはゆでておく。
 3.三つ葉以外の具を入れ、1を注ぎ入れる。
 4.鍋に蒸し茶碗の3分の1ぐらいまで水を入れ(蓋をして)、沸騰して4分したら(この間、弱火で)火を止め、
   包み物グッズに包んで20分おいたら出来上がり。

毎回お話しているように、保温時間は鍋や包み物グッズの材質によって変わってきますので、各ご家庭で、ベストな時間をさがしてください。
また、同じような調理方法で、具の中身を変えれば、蒸しプリンもつくることができますので、小さい子どものいるお母さんはトライしてみてください。その時、小さい子どもが鍋をひっくり返してやけどすることがないよう、鍋の置き場所には十分気をつけてくださいね。
(茶碗蒸しのレシピは全国友の会のレシピを参考にしています)


今月号の環境漫画「地球マン」は編集の都合によりお休みします

発送お手伝いのお願い

ニュースレター 10月号(第159号)の発送を 10月6日(水)10時から事務所にておこないます。
発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記:鬼のような太平洋高気圧がどっしりと腰を据え、日本列島を覆い尽くしています。台風をも寄せ付けないその威力の前に、人間はなすすべがありません。せいぜい一晩中窓を開けるかエアコンのお世話になるくらいでしょう。今後はこうした夏が当たり前になっていくのかと思うと、うんざりします。雨が待ち遠しいですね。 mud-skipper