ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第160号
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大網白里町 平沼 勝男
10月某日私は仕事の関係で北海道は知床半島の中央に位置する羅臼町に行ってきました。知床は世界自然遺産に登録されている場所です。すばらしい自然が存在することはもちろんですが同時に周辺の豊かな海は水産物の宝庫でもあります。その知床半島の中央に位置する羅臼港は世界でも有数の漁港です。私は仕事の関係でこれまで何度かこの地を訪れました。今回は知床の豊かな海のお話です。
根室中標津空港で飛行機を降り、車で目的地である羅臼を目指しました。このあたり(北海道の東部地方)は酪農の盛んなところです。右を見ても左を見てものどかな牧草地が広がり、時折牛たちが休んでいます。信号はほとんどなく、人の姿も見かけません、時おり車が走るくらいです。関東に住む人間にはこの雄大な景色を見ただけでも心が洗われるような気持ちになれると思います、まさにこれが北海道といった風景です。
知床半島に入ると風景が一変します。進行方向の左側が山、右側が海。途中の休憩で浜辺に立ちますと眼下には美しい海、そして海の向こうには国後島が見えます。ここは海峡になっているのです。地図をご覧ください、大きな湾が国後島を包み込むような形になっています。そして北から寒流である親潮が入ってきます。親潮は遥かロシアの大地を流れる大河アムール川の水を多く含みます。そのためこのあたり東部沿岸およびオホーツク沿岸は流氷が来る世界最南端の場所です。 何年か前に流氷が来ない年がありました。 するとその年の春のホタテが大不漁になったことがありました。 流氷は豊富な栄養塩を運んでくれる、それでプランクトンが増え、豊かな水産資源が育つのです。 羅臼で水揚げされる代表的な水産物はアキサケ、カラフトマス、スケトウダラ、マダラ、ホッケ、コマイ、キチジ、各種カレイ類、タラバガニ、スルメイカ、ドスイカ、ブドウエビ、昆布、バフンウニなどなど。回遊魚から底性生物、魚はもとより軟体動物、甲殻類、海藻類と多岐にわたります。海峡の中央部は深度があることも種類を多くしている要因になっていると思います。
私は数年前、冬の2月に羅臼に来たことがあります。 天気に恵まれたその日に見た流氷の美しさは息を呑むほどでした。今まで見たことのない不思議な景色でした。美しさのほかにもこれだけの豊かさをもたらしてくれる、それが流氷なのです。
ここの海が海峡であることに大きな意味があります。まず魚の通り道であること、漁場が岸から近いこと。狭いことで海流が早くなり魚の身のしまりが良くなること。港からほんの目と鼻の先で大量に良質の魚介類が獲れるのです。さらに羅臼港は水揚げされた魚介類の扱いに定評のある港です。だから羅臼という名は一つのブランドになっているのです。ここで一つ言いたいことがあります。よく地方などに行って水産物の産地だからいつでもうまい魚が食べられるというのは大間違いです。水揚げされたばかりだからおいしいというのも大間違いです。漁船が何日もかけて魚を獲ってきて港に上げる時はすでに鮮度が悪くなっていた、持っていく氷が少なかったので魚が悪くなった。こんなことは良くある話なのです。特に不漁のときや大獲れしたときは要注意です。今年の前半のサンマが良い例です。
羅臼のホッケは北海道で一番おいしいです。羅臼で食べたキチジ(地元名メンメ)は私が今まで食べた魚の中で最もおいしい魚でした。幻の鮭といわれるケイジ(鮭児)市場での入札価格はなんと1キロあたり2万円でした。羅臼のスルメイカは日本一身が厚く甘みがあるといわれています。羅臼で水揚げされる魚は秋サケを始め多くが海外にも輸出されています。次回はこれらおさかなのお話をしたいと思います。 (つづく)
千葉市中央区 角川 浩
このたびのレアアース問題については、いろいろ考えさせられました。
”優しくすれば優しくされる、愛されるには愛すればよい”といった性善説的・ニューミュージック的発想は国際政治の世界では通用しないばかりでなく、足元を見られてつけこまれることにもなりかねないようです。”国際分業の時代だ、食料の自給率向上は必要ない”との立論がとんでもないことは自明のこととなりました。
我が国には、石油、レアアースは出なくても、太陽光と降雨量は足りています。せめて水は大切にし、十分な貯水に心がけるべきと考えます。本稿では雨水利用の2回目として雨水利用に不可欠な貯水容器について述べることとします。
1.雨水タンクに求められるもの
ゴミや蚊などが入らない完全なフタがあること,容器の材質が太陽光を通さないものであることの2点が充足されれば溜まった雨水は長期間きれいであってくれます。
フタをつけるとすると、あふれないようオーバーフロー口も必要となります。初期雨水排除装置は別に述べるとして家庭でのちょっとしたエコ活動というなら、水位計や底部の蛇口は不要です。水位計は多くの場合、藻の発生原因となること、小さい容器ならふたを開けてバケツで汲み出す方が手っ取り早いからです。
むしろ大切なのは一に容量,二に容量です。水はちょっと使えばすぐになくなるし、少し雨が降れば大量に溜まるからです。
2.雨水タンクに使えるものとしてどんなものがあるか
雨水利用用に製作・販売されているものもありますが、容量の割りに高い感じです。小さいものでよいならホームセンターには容量90~100リットル位のふたつきポリバケツが多く売られているのでこれの利用が合理的です。給食・調理でも使っている飲料水の保存もできる水色のポリバケツ(JIS規格)はむしろ品質的にも勝っているものです。遮光は外部に遮光材(たとえば農業資材のあぜシート)を巻きつけることで対応できます。
低廉予算での容量の拡大には、前述の容器の連結,浴槽(FRP)の活用,農業用ローリータンクの購入があげられます。浴槽については不要な金具を取り外し、穴の部分を樹脂の板を貼り付けて閉じて使うことになります(写真1)。
3. 雨水貯水タンク作成と不可欠な技法
雨樋からの水を引き込む、複数容器を連結させる、オーバーフロー口を取り付けるといったことのためには一定の加工(穴あけ)と関連部品の取り付けが必要となります。
日曜大工を趣味とする方もプラスチックを対象とすることは少ないようで、この点で躊躇してしまうようですが、以下のようにすれば難しくありません。
(1) 水道(排水)用配管用品の活用
水道(排水)用品は日本中どこでも入手でき、品質も安定していて価格も低廉なので観賞魚育成用のものより有用です。
雨水を容器内外に通す基本は次の写真2のように容器壁の両側からオネジの部品(バルブソケット)とメネジの部品(給水栓ソケットなど)をパッキングを間に挟んで閉めるというものです。パッキングが手に入らなければ薄いゴム板を購入してナイフで丸穴を開けることで代用できます。
(2) 大きな丸穴を開ける方法
(1)の部品を取り付ける穴は電気ドリルの先端に穴あけ用のビットを取り付け,ゆっくり回転していけばきれいな穴あけができます。木工用ホールソー(5組入りで数百円),板ギリ100円ショップ)で十分です。
(3) 穴あけの寸法
分かりにくく間違いやすいところですが、たとえば塩ビ管(VP20の場合。外径26ミリ)を使うなら、これを受けるバルブソケットのネジ部分の外径は26.44ミリなので27ミリ用のドリル刃で穴あけすることとなります。
(このあたり、ほかの口径の塩ビ管を含めて拙著「天の恵みを活かす初めての雨水利用」に一覧表としてまとめてありますので参照ください。)
プラスチックへの穴あけと水道部品の利用ができるようになれば雨水利用はもちろんのこと、ビオトープ作りなどにもなにかと役に立つようになります。ぜひアタックしてみてください。
大網白里町 池野 正則
社会的な父親などと言ってもピンとこない人も多いかもしれない。
どうしてかというと、それは現代社会の特徴から、今では父親と言えば生物学的な父親を指し、それが同時に社会的な父でもあるからだ。
しかし、人類学が扱って来たような伝統的な社会ではこの二者は別物だ。こういった社会では人は生物学的な父からは遺伝情報を継承し、 社会的な父からは経済基盤と社会的な地位を継承する。
この日本の農村の場合で言えば村落共同体の中の女の子は娘時代に複数の若者と婚姻関係にあって子供を宿す。彼女は跡継ぎを生むことができる生殖能力を証明した段階で一人前な女性として村落の社会に受け入れられる。
この段階で結婚相手にAという若者を指名すれば、彼女はAに付随している経済力(田畑)を継承するメンバーの一人として認定される。また、彼女のおなかの中にいる子供が男子である場合は嫡男としてAに付随する経済基盤と社会的な地位の継承をする。
社会的な地位とはたとえば神社の宮司の継承権などで経済的な生産の基盤という意味においては田畑と同じような機能を持つ。
妊娠をした女の子に選ばれてしまったA君は大変だ。集団婚や若者組みといった青春組織を突然卒業させられ、田畑を継承し妻と子供を従えた一人前となるのだ。ルール上は複数の女の子との婚姻関係を卒業させられ妻との一夫一婦制に移行しなくてはならない。しかも、この段階では生まれてくる子供に特別な愛情は持っていない。生物学的には自分以外の若者の子供である可能性の方が高いからである。
村落内の誰にでもいずれめぐってくる避けられない運命であるとはいえ、男としては同情してしまう。
しかし、A君は「わりくう」だけとは言えない。彼は生まれてくる子供の社会的な父になり、将来自分の立場を継ぐ後継者も得たわけである。この世界の男性はたとえ不妊症であっても祖先から来て、未来に続く継承関係の鎖の一部となれるのだ。生産の要素としての田畑を継承して、それを次の代に渡すことが一人前の条件である社会において女性の不妊症は人間として不完全である条件だが、男は守られているのだ。
個別婚と集団婚の役割 それでは婚姻とは何なのか?
現代の婚姻が結婚する男女という個人を主人公に据えたパフォーマンスだとすると伝統的社会における婚姻の主人公は「生存するための手段」と言えるだろう。これは田畑とか財産と言い換えることもできるがそういった表現を使うと打算的で強欲な人間たちのあさましい動きのような印象を与える可能性がある。しかし、現実は生存を賭けた厳粛な行為だ。
農業生産の上に立つ社会の生産性の低さは継承権を持たぬ者には生存を許さぬ厳しさがある。東北地方では嫡男は主人であるが、次男以下は人間的な扱いもうけないような隷属すべき存在であったという。
資産を継承し、一家をなす一人前の男か一生結婚することもない人生かだ。このように生存をかけたギリギリの戦いの中で女の子が自分の子供の父を資産が多い男と選定したとしても、それを欲に目がくらんだ浅ましい行為とは言えないだろう。
それでは個別婚と集団婚は農村社会を成立させるためにそれぞれどのような機能を分担していたのだろうか。
まず結論から言うと個別婚は家族という個々の経済ユニット内の統合を担当し、集団婚は家族間の係争などを和らげ村落内を統合させる機能を持っている。
千葉県内の活動団体紹介 1
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発送お手伝いのお願いニュースレター 7 12月号(第161号)の発送を12月 8日(水)10時から事務所にておこないます。 |
編集後記:10月24日、佐倉市直弥の谷津でクロコノマチョウに出会いました。南方系の蝶で、ツマグロヒョウモンと同じように、最近の温暖化の影響か分布を北に広げているようです。同じ頃、千葉市の都川でこれもまた南方系の魚類であるヒナハゼを採集したという情報がありました。イネの栽培適地の北上など、影響は深刻です。 mud-skipper