ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第169号
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千葉市緑区 小田 信治
福島第一原発の事故により、土壌が放射性物質で汚染され深刻な問題となっています。特に農地や校庭の除染は、食の安全とこどもたちの健康を守る上で、大きな課題です。
一般に土壌汚染対策としては、以下の3つの手法があげられます。①物理的手法(表土のはぎ取りなど)、②化学的手法(鉱物などで吸着、分解)、③生物的手法(植物や微生物で吸収、分解)
放射性汚染対策としてヒマワリを植えることが話題になっていますが、これは、生物的手法で、ファイトレメディエーションと呼ばれています。
■ファイトレメディエーションとは
ファイトレメディエーション(Phytoremediation)とは、植物の環境汚染物質を蓄積・分解する能力を利用したレメディエーション法(汚染浄化・修復法)のことで、ファイト(Phyto)とは、ラテン語で植物のことを言います。広義には、ヨシ原による水質浄化やクスノキなど照葉樹による窒素酸化物の大気浄化等を含めた浄化技術のことですが、一般には植物による土壌汚染浄化技術のことを指します。その他に微生物による浄化技術としてバイオレメディエーションがあります。
ファイトレメディエーションは、植物が根から水分や養分を吸収する能力を利用して、土壌や地下水から有害物質を取り除く方法、または、根圏を形成する根粒菌や微生物などとの共同作業により浄化する方法があります。植物の体内や微生物の働きにより汚染物質が分解される場合と、植物の体内に吸収・濃縮する場合があり、吸収・濃縮される場合は、その植物を刈り取ることで汚染物質の除去が出来ます。重金属の場合は、汚染を取り除くだけでなく、濃縮した重金属を抽出・回収することが可能です。ヘビノネゴザ(オシダ科Athyrium
yokoscense Christ)は、別名カナヤマシダと呼ばれ、金属鉱床の指標植物として知られ、銅、鉛、カドミウムなどの重金属を体内に蓄える性質があります。その他、カラシナやヒマワリが重金属を蓄えることが知られています。
■ファイトレメディエーションの特徴
土壌汚染対策手法別に濃度とコストの関係を以下の図に示します。ファイトレメディエーションの特徴は、低濃度で広範囲に汚染されている土地の浄化に向いている手法です。簡単に言えば、汚染地に草を生やせて長期間放置するという方法ですから、地価の高い、高度な土地利用を行う都市部はどちらかと言うと不向きです。汚染濃度が低く、表面部に薄く汚染が広がっている土地で、面積は広いがすぐには利用しなくてもよいと言った土地に向いている手法と言えるでしょう。また、植物自体の浄化作用以外に緑化することにより、降雨等で汚染を広がらなくする効果も期待できます。郊外や山間部の汚染地で土地利用が困難な立地の場合(例えば鉱山跡地)は、土地を緑化し、さらに植生遷移を進めて樹林化し、地域生態系保全と二酸化炭素の固定を目指すような場合は、最適な活用策になると考えられます。
しかしながら、重金属などは植物に吸収・蓄積されても分解されるわけではないので、刈り取った植物はその場で燃やさず、適正処理が可能な焼却場で処分する必要があります。
■ファイトレメディエーションの今後
技術開発ではアメリカが先行しており、効率的に砒素を吸収するシダ類の発見や、遺伝子組み換え操作により植物の重金属に対する耐性や蓄積量を向上させる技術が報告されています。また、アメリカではファイトレメディエーションを扱うベンチャー企業も現れていますが、実用化事例は少ないのが現状です。わが国では、基礎研究がようやくスタートしたところで、アメリカより10年は遅れていると言われています。
私は油汚染に関するファイトレメディエーションの調査研究に関わったことがありますが、ヒマワリは好成績で、その他ではクワやアカシアなど生長が旺盛な植物は成績がよいようです。
ヒマワリを植えて放射性物質(セシウム、ストロンチウム)を除去しようという取り組み※が始まったようですが、今後、放射性物質と植物の関係についての調査・研究が期待されます。また、放射性物質はヒマワリの体内に移動しただけなので、刈り取って枯れたヒマワリは、放射性廃棄物になってしまいます。この処理処分の仕組みをどうするのかも大きな課題です。様々な分野の専門家の英知が求められます。
※福島ひまわりプロジェクト http://himawari-fukushima.info/
千葉市緑区 稲富 直彦
前回はモニタリングポストの計測値から、千葉県下に広がった放射能汚染の状況を観察しました。その上で、人々の抱いている不安について一つ、語ってみました。
今回はそれに引き続き、不安の二つ目から。
●不安その2,身の回りが分からないから!
-外部被曝は気にせずok!、内部被曝も-
自分の身の回り、目の前の食物の実態がわからないことから来る不安です。もっともな事で、大地に降下した放射性物質は、その場に止まるばかりでは無く、風や水の動きとともに流れたり、植物や動物に取り込まれたり、など移動や濃縮過程の存在を考えれば両手放しには受け入れられないのは道理でしょう。
先ず、身の回りの地面からの外部被曝について、モニタリングポストからの推定からそれほど大きな隔たりは無いでしょう(恐らく数倍以内)。原発から大気への放出があった場合には、広域に影響が出るため、各地のモニタリングポストの値にも変化が見られるはずですし、その後の降雨による値の変動も見受けられません。汚水処理場の汚泥の場合は、汚水から濁りを落として、水分を飛ばすなどの濃縮操作を経ているので、桁違いの高い値が出ても不思議はありませんが、ただ水をためているだけのプールなどでは、多くの放射性物質は、水中か、底に溜まった泥上にふわふわと移動しやすい状況で存在していると考えられるので(味噌汁の味噌を想像して下さい、ここでいう放射性物質は味噌です)、水を流せば多くは流出してしまうと思われます。と、いうことで、雨水や風による移動程度では桁違いな濃縮は考えにくいと思います。では、食品は?
基本は自治体が発表しているスクリーニングの結果を参考にすることになりますが、漏れがあるのでは?とか、信じられない?などと色々な心配がもちあがりますね。これらについて全ての回答は出来ませんが、稲を例に観てみましょう。
●不安が膨らみ田植え体験学習が中止に
-蓋をあけてみれば。。。やっぱり!-
YPPの協力している、小山町にある谷津田を利用した小学校の田植え体験が「放射能の影響への懸念」から中止になってしまいました。我々からは、元々降下量が少なかった事、田んぼは水が常に流れていること、耕すなど泥を攪拌していること、などを根拠に安全性を説明しましたが、不信感はぬぐえませんでした。果たして実態は?
先日、千葉県で貸し出しているサーベイメーター(γ線を計測する装置)を利用して実際に空間線量率計測したので紹介しましょう(詳細は別報「谷津田だより」参照)。結果は、小山町のいくつかの田んぼ、畦道、暗渠内部、何れも計測した高さ(0.1m,0.5m,1.0m)、場所によらず概ね一定で、0.09±0.03
μSv/hとなりました。図2は、空間線量率と高さの関係を表します。プロットは、各場所で得られた空間線量率平均値で、左右の棒線は計測のばらつき幅です。
先に語ったように、放射線は地面(つまり土中)から飛び出してきていると考えられるので、場所や高さによって値があまり変わらない事は、放射性物質が地面に、ほぼ均等に分布している状況を反映したものと考えられます(γ線は大気中ではあまり減衰しません)。また、この数値は、先の許容レベルの1/2程度で。我々が継続して浴び続けても問題のあるレベルで無いのは明白です。
●泥のレベル、稲のレベル
-県産品はむしろ安心だと思う-
田んぼでとれた稲は食べても安全なのでしょうか?これまで敢えて語りませんでしたが、今我々の身の回りで問題になっている人工放射性物質は、放射線を出すセシウム(137,134)という物質です(以下、単にセシウムと呼びます)。原子力災害対策本部の指針によると、土中のセシウムの1/10が玄米に入り込むとしています(これは詳細な観測と実験の結果得られた信頼性の高い数値です)。その上で、土中にあっても玄米の暫定規制値を超えないとされる土中レベルを1kg当たり5000ベクレルとしています(これを限界値と呼びましょう)。千葉県では県下各地の畑や田んぼの土中のセシウムを計測し、公開しているのでその値をみてみましょう(図3)。
図の赤丸は土中のセシウムの濃度を面積で表していて、県下ではざっと50~300程度の範囲 (注;単位は略、これらは土を乾燥して計測しているので、水田の場合は値が3割程度低くなるでしょう)にあって、開きはあるものの、桁違いな差は無い様です。また、空白地帯はありますが、県内は北部でやや高く、房総中央から外房では低くなる傾向が見受けられます。何れも限界値(図3中の大きな白丸)よりはるかに低い値で、玄米が暫定規制値を超える可能性は、かなり低いと思います。
●むすび
-今のところ、千葉県は汚染軽微で幸いだったが-
身の回りに情報があふれ、解釈が錯綜しておりますが、上で観てきたように、公開されているデータを比較したり、広がり方を眺めたりすると、我々の住む町の全体像が分かってくると思います。さらに調査が進めば、全体像はより、輪郭がはっきりとしてくるでしょうが、描かれる絵は、大きくは変わらないでしょう。
皆さんはどう思いましたか?当方は、健康影響に関して、千葉県は汚染が比較的軽微で、幸いであったと、感じています。
一方で、県下で放射能の精密な分析を行って来た専門機関では、今回の汚染は、かなり困った事態を引き起こしています。また、一般の方でも、放射能は目に見えない、感じる事も出来ない、故に大きなストレスを感じている方も多いと思います。
境遇、感じ方は人それぞれなので、最終的には、自らの置かれた環境を出来るだけ正確に理解して、各人に必要な判断を、自らしていかなくては成らないと思います。
このつぶやきが、皆さんの判断の一助になればと願います。
編集部より:放射能の影響に関しては、さまざまな見解があると思います。前編・後編をごらんいただき、皆様のご意見をお寄せください。
都川で川遊び千葉市若葉区 土井マキコ初参加。川には分かりやすい入口出口の看板が立ててあり、下調べがあって安心!という気持ちで入水しました。 水が冷たくて、思っていたより透明、水量もある!街なかで見る都川とは印象が全く違っていて新しい発見でした。 長女の絵日記には「やごをとったよ!」と得意げに記述あり!!とっても楽しい夏の思い出になりました。 |
ニュースレター9月号(第170号)の発送を 9月 7日(水)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。
編集後記 :7月15日、女子プロゴルファーの有村智恵選手が、静岡県で行われたLPGA(日本女子プロゴルフ協会)ツアー「スタンレーレディースゴルフトーナメント」で、アルバトロスとホールインワンを同じ試合で達成した。LPGAのホームページによると、ホールインワンの確率は過去10年間で604ラウンドに1回、アルバトロスは17,896ラウンドに1回。毎日試合をしても同時に達成できる確率は29,614年に1回ということになるらしい。東日本大震災を引き起こした巨大地震は、1,000年に1度の地震といわれている。ということは、有村選手の記録と東日本大震災クラスの地震が同じ年に起こる確率は、単純計算すれば30,000×1,000=30,000,000で、3千万年に1度ということになる。確率的には人生で起こりえないといっていいであろう。しかし現実には起こってしまった。確率とはかくなるものなのである。福島原発の事故も、確率論で事を進めてきたことに大きな問題があろう。人知の及ばぬ事が溢れていることを、人は謙虚に受け止めなければならない。もしかすると、1,000年に1度の地震は明日また起きるかもしれないのである。 mud-skipper