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ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第174号 

2012. 1.6 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 安房地域に出現したナルトサワギクと駆除の取り組み
  2. 大震災と独立型太陽光発電
  3. 室内講習会「きのこの生態」

安房地域に出現したナルトサワギクと駆除の取り組み

南房総市  小林 洋生 

 特定外来生物に指定されているナルトサワギクが安房地域で確認され、その後、安房生物愛好会などが駆除活動を実施しているので以下に紹介する。

◇特定外来生物ナルトサワギクとその主な特徴
ナルトサワギクSenecio madagascariensisはキク科の植物で、草丈は通常30~70cm.生育環境によって極端な差がある。花は直径1.5~2.5㎝.黄色で舌状花と筒状花があるノギク型。葉は皮針形で縁に鋸葉があり、長さ5~8cm。茎の下部から多く分枝し、1株で多数の花をつける。季節に関係なく周年開花の性質を持つ。種子は長さ1.8~2.1㎜、径0.5㎜で冠毛がある。埋立地、空き地、造成地など土が露出している場所に好んで生える。
牛などの家畜に中毒被害があり、強い繁殖力や アレロパシーのため在来の植物に悪影響を及ぼすということで、2006年環境省により特定外来生物に指定された。

 

◇日本での発見・分布と安房地域の発生状況
日本で最初に発見されたのは1976年徳島県鳴門市で、当初は学名が判然としなかったが、やがて マダガスカルや南アフリカ原産のSenecio madagascariensisと確認された。その後、近畿地方,四国から西日本を中心に急速に分布を広げ、現在は鹿児島県、熊本県でも確認され、北は福島県いわき市で確認されている。関東地方では千葉県館山市出野尾で2007年4月16日に筆者が発見・採集したのが初記録と思われる。その後、安房地域では館山市大井(2008年),鴨川市東(2009年),南房総市山名(2010年),南房総市加茂(2010年),南房総市沓見(2010年)などで次々に発見された。
特に発生数が多かった場所は館山市大井の残土処分場と南房総市沓見の水田埋立地でこの2ヶ所は数10万本以上の発生と推測された。このほか1,000本以上の発生地が7ヶ所も見つかり、2011年11月まで館山市,南房総市,鴨川市において26地点で発生が確認された。

◇駆除の取り組み
筆者が所属している安房生物愛好会は、ナルトサワギク駆除のための活動を2010年春から開始した。当初は千葉県中央博物館,千葉県生物多様性センター,南房総市環境保全課,館山市環境課の担当職員の立会いの下に、会員数名で抜き取り駆除を実施したが、大規模発生地が発見されてからは、新聞社など報道関係者,両市役所にも協力をいただいて一般市民に呼びかけて駆除大会を実施し、2010年10月の1回目約130人,11月の2回約120人,12月の3回目は約80人の参加者があり、古い大きな個体が相当数駆除され、大きな成果が挙がった。この駆除大会は2011年春も実施した。
多数のボランティアの協力をいただいて抜き取り駆除を実施したが、2ヶ月も放置すると再び多くの花が次々と咲きはじめ、抜き取り駆除のみでは対応しきれない状況であった。

◇環境省から駆除団体の認定と自然保護協会などから活動助成の支援

安房生物愛好会は2011年6月、環境省関東環境事務所にナルトサワギクの防除の認定申請を提出し、同年7月1日より2016年3月31日までおよそ5年間、防除できる団体として承認された。このことにより、自治体の担当者の立会いがなくても独自に駆除できることになった。
また、日本自然保護協会などが実施しているプロ・ナトゥーラファンドに安房生物愛好会環境部会から活動助成の申請を行い、2011年10月から1年間の活動助成として採択され、助成金の交付をいただいて現在駆除活動を実施中である。

 

◇駆除活動の主な内容
1.緑化植物の播種・育成
ナルトサワギクは密生した植物群に覆われると生育が阻害されるため、2011年11月に南房総市沓見の埋立地においてシロツメクサを播種した。来年春には再度シロツメクサとバミューダグラスなどを播種する計画である。
2.防草シートの設置
防草シートにより物理的に発生を抑える方法で、館山市大井残土処分場において400平方メートル設置した。
3.刈り払いによる駆除
1ヶ月に1~2回ほど刈り払い機を用いて地際から刈り取り、小さな個体を駆除する方法で、大規模発生地の沓見の一部で実施・継続中である。
4.抜き取り駆除
当初の駆除から引き続き実施している駆除方法で、2011年10月からは毎週1回平均15人ほどで実施している。労力はかかるが開花している個体や大きな個体には有効な方法であり、これまでにかなりの成果をあげている。
5.定期的なパトロールの実施
100%抜き取り駆除したつもりでも100本以上の発生があった場所では、小個体の取り残しが考えられるので、1~2ヶ月に1回巡回し駆除している。また、大規模発生地の周辺や発生しそうな大面積の造成地などを対象に継続的に実施する方針である。
6.有効な駆除方法を見出すための調査
①抜き取り効果の調査 ②刈り払い効果の調査 ③防草シートの効果調査 ④緑化植物の効果調査 ⑤発生地の状況調査など。  

◇現在の状況

2010年春から駆除活動を実施して以来、現時点では安房地域での発生地26ヶ所の内、15ヶ所で完全駆除に成功し、5ヶ所でほぼ駆除完了、3ヶ所で残り100本以下になった。しかし2ヶ所の大規模発生地ではまだ大量に存在している。その内の1ヶ所である南房総市沓見の埋立地では発見当初は花畑状態であったが、現在は小個体がまだ多数あるものの、開花個体は探して歩くほどの状況にまで到達した。
今は低温気に入り、開花までの速度が遅くなるので、この1,2ヶ月の間で着蕾個体や開花個体を駆除し、春からの旺盛な生育期までに総量を抑えこみたいと考えている。

大震災と独立型太陽光発電

千葉市中央区 角川 浩 

1.初めに
 12月初旬、三菱総研理事長小宮山 宏氏の講演を聞く機会がありました。
 東大工学部長、東電社外監査役といった経歴から一定の予断をもって臨みましたが、お話は太陽光発電や地熱利用の有効性、日本車ハイブリッド技術の優秀さを前向きにとらえるもので予想・予見とは異なるものでした。
 また、環境は、生物の多様性の問題とともにエネルギー問題の側面から考える必要があるが学校教育では後者の面が弱いのではと指摘していたのが印象的でした。今回の原発事故でエネルギー施策上の失敗が、芝生を剥がす、庭は木を抜いてコンクリートにする、水辺に子供を近づけさせない、腐葉土は利用しないなど負の面で関連することを教えてくれたのは残念としか言いようがありません。

 

2.太陽光発電(系統連系型と独立型)
 今、世の中で叫ばれている「自然エネルギーの活用」が前提としている太陽光発電は電力会社と電気のやり取り(売買電)をする系統連系型システムというものです。しかし、太陽光発電にはこのほかに電力会社とは無関係に発電した電気をバッテリーにためながら運用する独立型太陽光発電システムというものがあります。
 このシステムは低額かつDIYによる設置が可能、停電とは無関係など良さがたくさんあります。ちなみに系統連系型はバッテリーを持たず(一部の例外あり)、夜間・雨天時は商用電力を頼みにするもので大震災時は戦力となりません(自立運転というのは昼間発電しているときのみ専用コンセントに延長コードをつなげて使える不安定なものです。)。
 ところが独立型太陽光発電は電気工作が得意でないと扱えないのでは?実用性に乏しいのでは?と思われてきました。また、説明する資料も供給側(メーカー、販売者)からの不完全なものが多く、普及支援になっていない状況でした。
 そこで、徹底的にエンドユーザーの立場に立ち、できるだけやさしくかつ低費用で構築できるシステムづくりを解説する本にまとめました。(「独立型太陽光発電と家庭蓄電」パワー社)
 はんだ付けはせずに結線が主というオーディオみたいなものを目指していますが内容のポイントをいくつか紹介します。
① 太陽電池パネルは南向き30度に向けて設置するとの点。こだわる必要はありません。平置きしてロープで固定するだけでも実用になります。
② 太陽光発電には専用のディープサイクルバッテリーが必要との点。過充電・過放電防止コントローラを使用するのであり、一般の自動車用バッテリーで使い物になります。大型バス・トラック用が最もコストパフォーマンスに優れています。
③ 電気製品は起動電力が大きいのでインバーター(直流を交流に変換する機器)は電気製品の定格消費電力の2~3倍、時には5~6倍の容量のものをえらぶ必要があるとの点。
この言い回しで断念している人はとても多いようです。はたしてそうなのか、私は家を建てるのに必要なマルノコ(950W)、スライドマルノコ(1200W)を1500Wのインバーターで問題なく動かしています。1回の使用時間が短時間なら問題ありません。

 

3.震災対応
 震災後、発電機を用意するところが増えていると聞いていますが、発電機のガソリンは数時間で無くなります。また、大震災ではガソリンの補給も相当の日数、ままならないことが判明しました。その点独立型太陽光発電システムは燃料なしに10年、20年と運用できるのであり、サステイナブルといえます。震災時には車のバッテリーを取り外して補強に使うことも可能です。
 太陽電池パネル80W程度、バッテリー100Ah程度のシステムなら15~20万円で構築できるので理科教育の教材の意味もかねて各学校で用意しておくと、学校は避難施設になることが多い点からも極めて有効と考えます。
 (角川浩さん著「独立型太陽光発電と家庭蓄電」は、角川さんが当会に1冊寄付してくださいましたので、事務所で閲覧することができます。 事務局)

 

室内講習会「きのこの生態」

 2011年11月3日、江東区豊洲文化センターで実施された室内講習会「きのこの生態」(主催:都立両国高等学校生物部OB会、通称:かぶとむし会)が行われました。講師は根田仁森林総合研究所キノコ研究室長。身近な生物でありながら、あまり話題になることのないキノコの生態などについて、貴重な話がなされました。内容について中瀬勝義さんがまとめてくださいましたので、紹介いたします。(注:図は講演に使われたスライドを、会場で撮影したものである)

1.キノコはどのような生物か
・ キノコは多くの人には食べられるか、食べられないかぐらいしか関心を持ってもらえないが、大変面白い,興味深い生物である。
・ キノコはどこにでもいます。身近にも。
・ キノコは1年中、発生します。
・ キノコはカビ(菌類)の仲間です。
・ 生物界は、昔は動物と植物の2つでしたが、最近の生物5界説では、動物界,植物界,菌界,原生生物界,モネラ界とも言われ、キノコは菌界として一界をなしている重要生物である。
・ キノコは胞子を飛ばして子孫を増やします。オニフスベは7兆個もの胞子を放出します!!
・ 動物に食べられて胞子を運んでもらう種類もいます。・ 光るキノコもいます。ツキヨタケ、ヤコウタケ等。
・ 昆虫に栽培されるキノコもいます。オオシロアリタケ。
・ 冬虫夏草は、菌類が昆虫に寄生してできます。

2.キノコの生態
・キノコは菌根、埋木、落葉枝、枯幹等を食べ、高い分解能力で植物遺体(葉、材)を分解します。
・ 森林の有機物の半分は幹(木材)で、1/20は菌、動物は1/1000でしかありません。
・ 木材の主要成分はセルロースとリグニン。植物の細胞壁の大部分の成分はセルロースです。リグニンは分解しにくく、セルロース、リグニンを分解できるのは菌類などの微生物だけです。
・ 草食動物は自分ではセルロースやリグニンを分解できず、消化管内にいるバクテリアなどの微生物の出す酵素で分解し、栄養を摂っている.
・ 生態系のピラミッドは本当ではなく、植物界の上にキノコを含む菌類とわずかに動物界のピラミッドが乗っているに過ぎない。
・ キノコの中には、菌根という樹木の根と共生関係を持つものも多く、樹木の成長を助けていることも多い。マツが海岸や荒れ地などの環境に厳しい所でも育つのはキノコのおかげ。マツ科、ブナ科など森林の 優占樹種の大部分は、キノコと共生している。
 
3.キノコの見分け方
・ キノコの図鑑は日本産のすべての種類を網羅していない。
・ キノコ(子実体)と呼ばれる部分は高等植物の花に相当する。
・ キノコは、リン片、傘、ヒダ、ツバ、柄、ツボからなる。
・ 最近、分類方法にDNA分類が出てきたが、まだ怪しい。

4.キノコ関係の本はまだ少ない

・ 初心者には根田仁,伊沢正名著「キノコ博士入門」が便利。
・ キノコの視点で自然を見てみよう!!

所感:地元大島周辺の街歩きとキノコ博士からの話を聞いた。地元の歴史はほんの少し前についても知らないことが多く、ガイドいただくといろいろな興味が湧いてきた。キノコ博士の話は、日常的に関心の少ない菌類のため目から鱗という感じであった。地球上の動物は植物の1/1000位しか占めていないこと等、生態系の常識のウソを知らされた。生態系について勉強せねばならないと痛感した。
     (文責:江東区 中瀬 勝義)

【発送お手伝いのお願い】

ニュースレター2月号(第175号)の発送を 2月 6日(月)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: 新しい年が明けました。昨年は大地震と大津波に、生きている地球のエネルギーを感じ、その後引き起こされた原発事故に、人知の限界と愚かさを思い知らされた1年でした。2012年の暮れ、「いい1年だったね」と振り返られることを願わずにはいられません。 mud-skipper