ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第186号
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千葉市緑区 小田 信治
平成16年9月にちば環境情報センター主催の第2回 谷津田・里山 レンジャー養成講座で「都市計画と環境アセスメント」について講演させていただいてから8年がたちました。講演では、環境アセスメント制度と環境配慮の事例について解説しました。環境アセスメントについて、多くの質問をいただきましたが、環境に係わって活動されている方でも、制度については十分理解されていないなと感じたのを覚えています。これは、我が国の環境アセスメントが市民の生活に根付いていないこと(機会が極めて少ない)を示していると思います。また、平成23年4月に環境影響評価法が改正され、様々な事項が追加されましたが、そのこと自体もあまり知られていないではないでしょうか。環境アセスメント制度の概要と改正の内容について解説します。
1.環境アセスメントとは
環境アセスメントとは、開発事業の内容を決めるに当たって、それが環境にどのような影響を及ぼすかについて、あらかじめ事業者自らが調査・予測・評価を行い、その結果を公表して一般の方々、地方公共団体などから意見を聴き、それらを踏まえて環境の保全の観点からよりよい事業計画を作り上げていこうという制度である。 環境アセスメント制度のあらまし(環境省2012年2月発行) |
ここで大事なことは、アンダーラインの「公表して意見を聴き、環境の保全の観点からよりよい事業計画を作る」と言う下りです。環境アセスメントは、市民(ステークホルダー)といっしょに環境に配慮した開発事業にするための合意形成の手続きを定めた制度で、市民参加のツールなのです。
市民団体は、アセスで開発事業をストップできる。事業者はアセスにかければ開発事業が実現できる。と環境アセスメントに対する誤解があります。最近では、事業をストップさせるために、市民団体が県庁でピケを張ってアセス書の提出を阻止するというケースもありました。アセスメントではなく。アワセメントだ。などなど、環境アセスメントに対する社会の評判はよくありません。どうも我が国は市民参加のために環境アセスメントがうまく使われていないようです。我が国の環境アセスメントは事業が固まってから手続きを開始する制度になっており、市民の意見を事業内容に十分反映することができませんでした。今回の環境影響評価法の改正では、そうした面が改善されています。
2.環境アセスメントの経緯
環境アセスメントは、1969年(昭和44年)に米国において国家環境政策法(National Environmental Policy Act:NEPA)として制度化されて以来、世界各国で制度化が進展しました。わが国では、1972年(昭和47年)6月に「各種公共事業に係る環境保全対策について」の閣議了解がなされたことにより環境アセスメントの取り組みが開始されたとされています。その背景として、昭和30年代から40年代にかけて、高度経済成長の一方で、水俣病(水質汚濁)や四日市(大気汚染)に代表される公害問題が深刻になり、また、宅地、道路、ダム、発電所、ゴルフ場などの無秩序な大規模開発で自然破壊の問題が全国各地で注目され始めました。この制度は港湾法や工場立地法等の各個別の法律で環境アセスメントの運用を定めていましたが、事業の種類や所管する省庁ごとにバラバラで、環境アセスメントに関する統一的なルールを法律で定める必要が認識されるようになってきました。
環境庁が発足したのは、1971年(昭和46年)ですが、1975年(昭和50年)頃から環境庁では法制化に向けて検討を行い、1981年(昭和56年)に環境影響評価法案が国会に提出されました。しかし、産業界の反対や与野党の攻防の中で、審議が進まず、1983年(昭和58年)に廃案となってしまったのです。政府は法制化を断念し、1984年(昭和59年)閣議決定により、「環境影響評価実施要綱」を定めて運用を開始しました。これは「閣議アセス」と呼ばれていますが、再び法制化される1997年(平成9年)まで運用されます。その間、諸外国では次々にアセス法が制定される中、OECD加盟国の中で、日本は法制化が最も遅れるとともに、制度面も決して十分とは言えない「アセス後進国」となってしまいました。
1993年(平成5年)11月に環境基本法が制定され、これを機に、環境庁では環境影響評価制度の今後のあり方について検討を開始しました。閣議アセスの内容が見直され、1997年(平成9年)に環境影響評価法(以下、アセス法)が制定されました。閣議アセスでは道路、ダム、鉄道など11種類の事業をアセスの対象としていましたが、アセス法では、発電所や大規模林道などを追加し、13種類に拡大しました。アセス法制定の過程では、発電所を加えることに対して、電力会社と通産省から猛烈な抵抗がありましたが、例外は認めないと言うことでアセス法の対象となった経緯があります。その他、環境影響評価を行う環境要素(大気汚染、水質汚濁、騒音・振動、植物・動物、景観など)についても範囲が広がっています。アセス法では「生態系」が追加されています。手続き面でも改善がされました。閣議アセスではアセスの対象規模ぎりぎりに小さくするアセス逃れがありましたが、1種事業と2種事業(規模が小さい)に分けて柔軟な対応が可能なようになり、「方法書」(どのようなアセス調査を行うのかを示した計画書)の手続きが追加され、早い段階で住民意見を聴く機会が増えました。
以上はアセス法と閣議アセスの主な違いですが、アセス法の附則第7条には、施行後十年を経過したら、状況により見直しを行うことが明記されています。アセス法施行以降(1997年)、法施行を通じて浮かび上がった課題や生物多様性の保全、地球温暖化対策、インターネットの普及など社会情勢に対応するため、2011年(平成23年)4月にアセス法が改正されました。
3.改正アセス法の内容
改正の主な点は以下のとおりです。全面施行は平成25年4月からになります。
①風力発電の追加
②計画段階配慮の導入
③図書の電子縦覧
④方法書説明会の開催
⑤政令市から事業者への直接意見提出
⑥方法書段階での環境大臣意見
⑦事後調査の報告・公表
この中から、いくつかについて解説します。
①風力発電の追加:風力発電がアセス法の対象事業に追加されました。風力発電は自然エネルギー利用による地球温暖化対策として期待される事業ですが、ウインドファームと呼ばれるような大規模な風力発電は、野鳥が回転翼に巻き込まれるバードストライクや騒音・低周波音による健康被害、景観など、環境影響が問題になっています。1万kW以上(2種事業は0.75kW以上)がアセスの対象となります。
②計画段階配慮の導入:改正前のアセスは事業内容が決まってから行う「事業アセス」で、土地改変を伴う開発事業で生態系に影響がある場合、回避は困難で保全対策も限定的でした。事業の計画段階で環境配慮を検討する手続きが追加されましたが、今回の法改正の一番の目玉です。具体的には、事業の位置や規模等の複数案の環境配慮を検討した「配慮書」を作成して公表します。
この計画段階配慮は、戦略的環境アセスメント(Strategic Environmental Assessment;SEA)と呼ばれる政策、上位計画、事業(計画段階)を対象とする環境アセスメントですが、今回の改正アセス法では、事業の計画段階だけを対象とし、政策や上位計画は対象外で、日本型SEAであると言われています。
③図書の電子縦覧:アセスに係わる図書(方法書、準備書、評価書)をインターネットで公表することが義務化されました。従来、分厚いアセス書を役所などに出かけて閲覧する必要がありましたが、誰でもが時間を気にすることなくアセス書を読むことができ、合意形成を図る上で効果が期待されます。
④方法書説明会の開催:方法書は事業概要とアセスの調査方法等を示した図書で、改正前のアセス法では方法書の縦覧だけでしたが、説明会の開催が追加されました。
⑤、⑥は行政手続き上の改正で、ここでは省きます。
⑦事後調査の報告・公表:改正前のアセス法では評価書を作成、公表して手続きが終了しましたが、事業を実施した際の環境保全措置等の結果の報告と公表が追加されました。アセスで予測・評価し、環境保全対策を実施してその結果がどうなったのかをきちんと確認することが重要ですが、その当たり前のようなことが位置づけられたと言うことです。
(出所:環境省HPより)
4.我が国の環境アセスメントの現状
アセス法を中心に述べてきましたが、都道府県と政令市では、アセス条例が制定されています。1976年(昭和51年)川崎市がアセス条例を定めたのが最初です。自治体のアセス制度は、廃棄物処理施設、工場、ゴルフ場、高層ビルなどアセス法以外の事業も対象とし、地域住民の生活により密接で、地域の特性が反映された内容となっています。例えば、東京都では100m(かつ延床10万㎡)以上の高層ビルはアセスに係るのに、千葉県、千葉市では高層ビルはアセスに係らない?!などなど、機会があれば、アセス条例についても解説したいと思います。
我が国のアセス実施件数は、アセス法で約200件、条例アセスで約700件、アセス法と条例アセスを合わせても多い年で年間70件程度です。近年、公共事業や民間の開発事業の減少でアセスも減っています。これに対して、年間でアメリカは4万件、中国は30万件、韓国は3千件と信じられないような件数です(※1)。我が国のアセスは対象事業を限定し、大規模な事業だけを対象にしているからなのです。また、アメリカや韓国では、政策や上位計画もアセスの対象で、戦略的環境アセスメントが政策への市民参加のツールとして機能しています。我が国のアセスは、諸外国と比べて件数が異常に少なく、特別なものとなっており、市民にとって身近なものではないのです。アセスは時間も費用も膨大に係るので、事業者はまず始めに、環境配慮ではなく、アセスの係らないようにするにはどうするかを考えます。市民はアセスを疑って、アセス書に誤字脱字を見つけると、このアセス書はいい加減で信用できないと意見書を出します。これが、我が国のアセスの現状です。本来のアセスの目的である市民参加のツールにするにはどうすればよいか。まずは、皆さんがアセスに関心を持っていただくことが必要です。この記事がそのきっかけになれば幸いです。アセス法の改正に少しだけ期待したいと思います。
【アセスについての参考情報】
環境影響評価情報支援ネットワーク(環境省)
http://www.env.go.jp/policy/assess/
環境アセスメント学会
http://www.jsia.net/
(一社)日本環境アセスメント協会
http://www.jeas.org/
※1:環境アセスメントとは何か―対応から戦略へ (岩波新書) 原科幸彦
千葉港ポートパークかもめのクリーン隊 千葉市中央区 谷口 優子
あけましておめでとうございます。市内のデパートでお正月用に売っていたチリ産のアワビを見つけました。”研究資料“と言い聞かせて買ってきてしまいました。養殖ものの冷凍です。
このアワビの原産地はチリではなく、カリフォルニア湾あたりに多いアカネアワビだということがわかりました。アカネアワビは安房とは深いかかわりがある貝です。明治30年(1897年)南房総市白浜出身の小谷源之助氏がモントレーに渡ってアワビ漁を伝えました。水温が低かったモントレーでは機械式潜水漁は効率がよかったといいます。安房からはたくさんの海士が渡ってきました。ハリウッドスターになった早川雪洲の兄も移住者だったそうです。現地の実業家と小谷氏がアワビの缶詰を販売して財を成しましたが、アワビ漁は戦争で途絶えてしまいました。
殻の縁が赤くなるので現地では「レッド アバロン」日本語でも「赤」を意味する『茜鮑』という和名がつけられています。殻がとても大きくなる種で以前、博物館で見たものは殻が30センチ以上もありました。(食べると硬かったかもしれませんが。)殻は観賞用としても輸入されていて標本店で高価だったのを記憶しています。養殖アワビはエサの関係で殻の表側が緑色になります。値段は国産高級品の10分の1ほどです。ロコ貝とよばれるアッキガイ科でアワビの代用の貝もありますが(こちらは寿司ネタになっていることが多い)アカネアワビは安くておいしいのでこれからの主流になっていくことでしょう。
今回わが家では酒蒸しにして食べましたが評判は上々でした。さすがアワビです。小ぶりなのでやわらかかったのですが、本場モントレーのようにステーキにすればよかったかなと思いました。
近ごろ、鮭、ムール貝、アワビ、アワビモドキ(ロコ貝)などチリからの海産物が目立ちます。それも生で輸入されることはなく、加工品ばかりです。人件費が安いことと生物多様性に配慮してのことかもしれません。チリの海は暖かいせいか養殖すると成長が早いそうです。
(お詫びと訂正:先月号の写真「東京湾のハマグリ」は、「九十九里のチョウセンハマグリ」でした。編集のミスで、お詫びして訂正いたします。)
2012年12月16日、千葉市緑区下大和田にある谷津田での活動を締めくくる収穫祭と米づくり講座の修了式が行われました。悪天候のため1日遅れの実施になりましたが、50名あまりの老若男女が集い、賑やかで楽しいイベントになりました。参加した2名の方から感想が寄せられましたので、掲載いたします。
(編集部)
千葉市美浜区 上田 和宏
一日遅れで行われた収穫祭は、良いお天気で驚くほど暖かく、絶好のお餅つき日和となりました。ここで、うちの三人の子供達にこの日の感想を聞いてみました。
自分でついたお餅、とってもおいしかったよ。おいしくて楽しい思い出をありがとうございました。(長女、六歳)
一番楽しかったのは、谷津田運動会です。メダルがもらえて本当に嬉しかったです。この田んぼでいつも、水の生き物をつかまえるのが大好きでした。(七歳、次男)
収穫祭、とても楽しかったです。お餅や魚、焼き鳥、焼き芋など、どれも美味しくてたくさん食べました。もらったお米は家でおいしく食べています。赤米や黒米は色がお赤飯みたいできれいでした。お米作りを体験してみて、本当に大変なことがわかりました。スタッフのみなさん、どうもありがとうございました。(長男、九歳)
千葉市中央区 蛭田 久美子
今回米作り講座を受けようとしたきっかけは、6歳と1歳の子供達に米作りを通して自然と触れ合い、食に対して少しでも興味を持ってほしいという思いでした。4月の種まきに始まり9月10月の稲刈りを終え、12月の収穫祭まで約8カ月間、雨で何度も参加できませんでしたが、米作りの一連の作業を体験する事ができました。
子供のためにと参加を申し込んだのですが、毎日食べているお米がどのように作られているかを知らなかった自分に驚きました。米作りは子供達にはまだ早かったようですが、四季の移りかわりや普段あまり目にすることがない生き物に触れる事ができ良い経験になったと思います。
この活動を通し少しでも多くの人に谷津田の素晴らしさを知ってほしいと思います。
ニュースレター 2月号(第187号)の発送を 2月 6日(水)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。
編集後記:あけましておめでとうございます。本年もCEICの活動とニュースレターをよろしくお願いいたします。1月2日、下大和田に初鳥見に行きました。ベニマシコ,ウソ,カシラダカなどたくさんの野鳥に出会えました。昨年は小型の野鳥があまり見られず心配しましたが、今年はいいスタートがきれたようです。 mud-skipper