ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第194号
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鹿児島大学水産学部海ごみ研究室 藤枝 繁
1997年のナホトカ号による重油流出事故の時に日本海で海ごみの存在を知り、「みんなでやれば何でも解決できる」と若さをエネルギーに始めたクリーンアップも早15年がたちました。クリーンアップと並行していろんな場所で海ごみの調査を進めて行くうちに、初めは見えていた問題解決というゴールが、だんだん遠くにかすんで、今では全く見えなくなってしまいました。いろんな会合で聞かれる意見に、「回収するって考え方ではなくて、原因を突き止めてごみを出さないようにするべきでは」というのがありますが、でもね、ごみは出るんです。
皆さんのお部屋、たまには掃除しますよね。それに理由はありますか。いくらごみを出さないようにしていても、知らないうちにごみが出て、たまってませんか。海だって同じです。私たちの生活と直結している海は、人間が作ったものや使ったもので知らず知らずのうちに汚れます。なので海をきれいにするのに理由は必要ありません。とにかく続けるのです。でもねッて言う方に、無理矢理その理由を考えてみました。答えは昔からの大法則と一致します。
海ごみ第二法則
中学生を相手にしたクリーンアップを翌日に控え、お話しする新しい一言を考えてみました。以下台本。
「今日は、みなさんに覚えておいてほしい重要な2つのお話をします。」
「一つ目。これは、昨年ハワイの海岸ですくってきたごみ。ハワイの海岸には粉々になったプラスチックの破片がたくさん漂着しています。なぜこんなものがハワイの海岸にあるのでしょうか?
今日覚えておいてほしいことの一つ目は、プラスチック製品が海を漂うと劣化して破片になるということです。」
「二つ目。真水に塩を入れると混ざって塩水になりますが、塩水をほっておいても真水と塩に分離することはありません。
またコーヒーに牛乳を混ぜるとコーヒー牛乳になりますが、ほっておいてもコーヒーと牛乳には分離しません。
さらに熱湯に氷を入れると氷が溶けてぬるま湯になりますが、ぬるま湯をほっておいても熱湯と氷にはなりません。
これらはエントロピーが増えるってやつで、逆の現象は起きない不可逆性があるといいます。これを熱力学第二法則っていいます。
海のごみも同じで、最初はごみと海はわかれていますが(これはエントロピーが低い状態)、一度海にごみを流せばそれはもう回収できなくなります(エントロピーが増大)。」
「一つ目と合わせてみると、一度海に流れ出たプラスチックは、破片化して広域に拡散するので、後ですべてを回収することはできません。これを海ごみの第二法則といいます。」
この説明は、中学生には難しいかなあ。
ただし、海ごみの一部は自然と一箇所に集まることがあります。そこが海ごみの第二法則と熱力学第二法則の違いです。破片やごみが一箇所に集まることは、その地域では深刻な問題となりますが、回収するには最後のチャンスでもあるのです。
海ごみ第一法則、第三法則
さて、「海ごみ第二法則」をブログで紹介したところ、「海ごみ第一法則は?」ってお問い合わせをいただきました。そこで、熱力学の法則を参考に第一法則を考えてみました。
海ごみ第一法則「海に流出したごみは、元の状態を保つことができない」
いわゆる破片化が進行するってことです。前回の一つ目のお話が海ごみ第一法則です。特にプラスチックは、元は一つであったものが、紫外線や波・風、さらには野生生物などにより、小さく破片化していきます。よってごみは海に出る前に、もしくは出てしまった場合は早急に、回収することが必要ですし、何より出さないことが求められます。
さて、海ごみ第二法則は前述の通りですが、もう一度まとめてみると、海とごみが分かれた状態はお互いエントロピーが低い状態と言え、ごみが海に流れ出れば拡散します。これはエントロピーが増大すると言えます。従ってこの逆は起きない、不可逆であるってことになります。
海ごみ第二法則「海にごみが流れ出れば、それは海に拡散する(不可逆の法則)」。
しかし、海ごみの一部は自然と一箇所に集まることがあります。そこが海ごみの第二法則と熱力学第二法則の違いです。これは深刻な問題点でもありますが、回収するには最後のチャンスでもあるってことです。ついでに海ごみ第三法則まで行ってみましょう。
海ごみ第三法則「海ごみは、回収だけでは決してゼロにはならない」これは、熱力学第三法則(ネルンストの定理)を参考にしたものです。
ネルンストの定理では、ある物体を絶対零度にするためには、絶対零度の物体に近づける必要がありますが、その場合、絶対零度の物体はある物体から熱をもらうので温度が上がってしまいます。同じことを繰り返しても、二つの物体がお互いの中間の温度になるということは、決して物体は絶対零度にはならないということです。
これは100mの距離を、最初は100mの半分の50m走って、次に残りの50mの半分を走って、また次は残りの25mの半分を走ってという具合に、半分ずつ進んで行くことと同じで、ゴールに近づきはしますが、決してゴールには到達しないっていうのと同じ考え方です。
海岸の清掃も同じで、現在海洋中に大量のごみが出てしまっている状況では、その場をきれいにしても海ごみの総密度がほんの少し減るだけです。なので、前回より少し流れ着くごみが減るかもしれませんが、漂着は起こります。がんばって回収を繰り返し続ければ、いずれ全体の密度も低下することになりますが、逆に密度が下がるとどんどん回収効率も下がっていきますので、すべてを回収することはますます難しくなっていきます。
もちろん一回ですべて回収することができれば、こんな心配はいりませんが、それこそ無理な話です。すなわち各地で行われる海ごみの清掃活動には、終わりがないということです。
よって海ごみゼロを目指すのは、永久機関を作るのと同じように非現実的で、低密度の状態を維持し続けることを目指すのが、現実的と言えるでしょう。
いかがですか。
水辺の生きもの-トンボ・カエル・メダカの世界
千葉市稲毛区 桜井 健
千葉の谷津田で一緒に活動させてもらっている方の共著が出ました。北総の谷津田周辺で見られる、トンボ、カエル、メダカの類を網羅した、とのこと。写真も美しく、生物個々の種類の説明だけでなく、生息環境や、里山・谷津田自然の全体像をわかりやすく理解できる構成となっています。トンボ,カエル,メダカが主ですが、谷津田に見られる水辺の植物なども紹介されています。水生昆虫やエビ類や貝類などには切りが無くなるので、あえて手を広げていない形になっています。調べる図鑑でもあるけれど、読んでも楽しい内容です。
千葉市緑区 渋谷 雄二
小枝や竹、ドングリなどの温かみのある自然材料を使って楽しいクラフトを作りましょう!!
今回の作品はおなじみの竹トンボです。
用意するもの | |
材料 | 竹(厚さ4~5mm×巾2cm×長さ12cm)1個 竹串(焼き鳥用)(径3㎜×長さ17cm) ・・1本 |
用具類 | 薪割り、ノコギリ、ナイフ、キリ、紙やすり、木工ボンド |
作り方 | ||
1 | タケをナタで割ってノコで切断して 巾2cm×長さ12 cm板状にします。 |
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2 | 中心部にキリで穴(2.5mm)を開けます。 | |
3 | ノコギリで竹トンボの翼の形に切断します。 ※工具(ナタ、ナイフ、ノコギリ、キリなど)を使う時は使い方をマスターしてケガのないように十分注意しましょう。 |
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4 | ナイフで竹トンボの翼の断面が左右とも右上がりなるように傾斜を付けて削り、仕上げに紙ヤスリで竹トンボの翼面を滑らかにします。 | |
5 | 竹トンボの翼の穴に木工ボンドを適量注入して竹串を真っすぐ取付けます。 | |
6 | 竹トンボの左右のバランスを確認して翼が水平になれば完成です。 翼が水平に滑らかになれば左右の長さや厚さを確認してナイフで削ってバランスを微調整します。 |
完成したらさっそく広場で飛ばしてみましょう!!
※竹トンボを飛ばす時の注意
貝のよもやま話 10 -月日貝のおはなし-
貝のコレクションをはじめて50年ちかくになります。幼い日、海水浴に連れて行ってもらい、毎年海岸でたくさんの貝を拾いました。昭和40年代、少し生活に余裕ができた時代、貝のコレクションブームが巻き起こりました。海岸の海の家には貝細工が並び、東京のデパートでは貝の標本がショーケースに入れられて売られていました。そこでは海岸では見たこともないようなきれいな貝が美術品のように輝いていました。 月日貝 西のお空はあかね色、あかいお日さま海のなか。 東のお空真珠いろ、まるい、黄色いお月さま。 日ぐれに落ちたお日さまと、夜明けに沈むお月さま、 逢うたは深い海の底。 ある日漁夫にひろわれた、赤とうす黄の月日貝。 10年ほど前、館山で知り合った漁師のおじさんから生きているツキヒガイをいただいてびっくりしました。ときどき網にかかるそうです。こちらでは「お天道様貝」と呼ぶそうです。 館山に住んでいるときに借りていた家の大家さんから『外国の貝』と称する見たことのない薄い貝をいただきました。図鑑を見てもわからずそのまま標本ケースに入れておきました。数年後、千葉県立中央博物館で展示してあった貝を見て驚きました。「ナンキョクツキヒ」。いただいた貝そっくりでした。かつて館山の自衛隊から南極観測隊に参加した隊員がおられたという話を聞いたことがあります。もしかしたらその時のものなのかもしれません。いまは南極から貝を個人で持ち帰ることが禁止されているそうですからこれはここだけのお話・・・・。 |
ニュースレター 10月号(第195号)の発送を10月7日(月)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。
編集後記:猛暑に集中豪雨、ここへ来て竜巻と、日本列島は異常気象と放射能に脅かされています。そんな中うれしい話が一つ。惜しまれつつお休みしていた環境漫画“地球マン”が今月号から復活しました。地道な活動を続けながら、子どもたちに環境を守ることの大切さを伝えようと努力する姿に、作者の熱い思いを感じています。 mud-skipper