ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第196号 

2013.11.6 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. おい、PM2.5ってずいぶんやっかいだね
  2. 放射能汚染時代を生きるー福島のいまと私たちの選択「福島県の漁業・漁業者の『いま』」に参加して
  3. 貝のよもやま話 11   台風の通りすぎた浜で~カメガイ~

おい、PM2.5ってずいぶんやっかいだね

日本環境衛生センター 川崎市 高橋 克行 

 PM2.5、みなさん覚えていますか?今年の初めに大騒ぎになりました。実は私、PM2.5とつきあい始めてすでに15年以上です。仕事を説明するときに「PM2.5やってます」というと、通じるようになりました。でも実際には、なかなかやっかいです。ここではやっかいなことをいくつか紹介してみましょう。
 まず、おさらいです。PM2.5というのは大きさが2.5マイクロメートル(μm)より小さな粒のことでした。よく「髪の毛の30分の1の大きさ」と例えられます。それくらい小さな粒です。ここで一つ目のやっかいなこと、それはPM2.5の大きさはすべて2.5μmではないことです。空気中には小さなものから大きなものまで様々な大きさの粒が浮かんでいます。PM2.5を測るときにはまずいろいろな大きさの粒の中から2.5μmより小さいものを選別しなければなりません。教科書では2.5μmの粒が100個あったら、50個を正しく選ぶ性能をもっていることが必要となっています。「おい、なんだかずいぶんおおざっぱだね。」でも図1に示すように、実は2.5μmくらいの大きさの粒は少なく、多いのはもっと小さな粒(0.5μmくらい)です。これくらいの粒はだいたい正しく選別することができます。

   

 次に選り分けたPM2.5の重さを測ります。空気中に浮かんでいる粒の重さを測ることはできないので、掃除機のような機械のホースの先にろ紙をつけて空気をたくさん吸い込みます。このときろ紙の上にホコリ(PM2.5)がたまります(図2)。このPM2.5の重さ(正しくは1立方メートルあたりの重さ。μg/m3という単位で表します)を測るのですが、その方法には大きく分けて2通りあります。ひとつは天びんを使って測る方法です。教科書では1日かけてPM2.5を集めることになっていて、そうして集めたPM2.5の重さはたったの0.0002グラムぐらいです。その重さを正しく測るのはものすごく大変です。そこで二つ目のやっかいなこと、それはPM2.5がひとつの物質ではないことです。PM2.5には捕まえてから蒸発してしまうもの、空気中の水分を吸い込んでしまうものなどがあります。ですので天びんで測ると刻一刻と重さが変わります。また、この成分の割合は季節、地域によって変わります。そこで教科書では捕集に使ったろ紙は重さがなじむまで温度湿度が管理された部屋で1日放置することになっています。でもこれでは集めるのに1日かかって、重さを測るにも1日かかってしまい、今の空気がきれいなのか汚いのかは明後日にならないとわからないということになってしまいます。そこでもう一つの方法である機械を持ち出すことになります。この機械を使うと今のPM2.5の重さを1時間ごとに調べることができます。現在では全国の600ヵ所以上でPM2.5が測られており、ホームページでその結果を見ることができます。なお千葉県は11か所、千葉市は9か所で測っています。

 今年の春先にPM2.5への関心が高まったことを受けて環境省は注意喚起のための暫定的な指針値を決めました(表1)。その数値は日平均値(1日の平均の濃度)が70μg/m3ですが、天気予報のように「明日は注意喚起が出るでしょう」なんてことはまだ難しいです。一応目安があって、朝5時から7時の平均濃度が85μg/m3となっています。多くの自治体がこの数字で判断して、ファクシミリなどで通知をだしているようです。ここで3つ目のやっかいなこと、実は1時間ごとの測定値(1時間値と言います)は「参考値」となっていることです。「おい、参考値ってなんだ?」PM2.5の測りかたは天びんで測る方法が標準とされていて、機械は天びんで測った数値と同じ結果を出せなければなりません。「おい、当たり前じゃないか。」そんなに簡単ではありません。図3のようにたくさんの測定装置をならべて、結果を比べる試験をしています。いろいろなやっかいなことがあるので、測定法が違えば、結果が違うのは私に言わせればそれが当たり前なのです。そして1時間値が正しいかどうかをまだ検証できないのです。なので「参考値」。

 

 やっかいですね。「おい、それじゃ何を測っているかわからないじゃないか。」いろいろなやっかいなことがある中で、条件をそろえて測ったり、やっかいなことをできるだけ取り除いて測ろうとしています。また、同じ方法で測ったデータが増えて、積み重ねることによりこれまでわからなかったこともわかるようになると期待しています。みなさんはPM2.5の数字をみるときに、だれが、いつ、どのようにはかったのかよくみてくださいね。
私もPM2.5とつきあって15年以上ですが、いまだにわからないことだらけです。かみさんとつきあって20年、いまだにわかりません。どちらもやっかいですね。「あんた、お互い様だよ。」はい。理解しあえる良い方法があれば教えてください。よろしくお願いします。

※PM2.5のわからないことはこちらのURLが参考になります。
   環境省, 微小粒子状物質(PM2.5)に関するよくある質問(Q&A)
      http://www.env.go.jp/air/osen/pm/info/attach/faq.pdf
   埼玉県, 県民環境学習会「PM2.5の真実」における 質疑応答
      http://www.pref.saitama.lg.jp/page/cess-pm25-gakushuukai-qa.html

放射能汚染時代を生きるー福島のいまと私たちの選択
「福島県の漁業・漁業者の『いま』」に参加して

東京都江東区 中瀬 勝義 

 日 時:10月21日(月)
 主 催:アジア太平洋資料センター自由学校
 はじめに:細川共同代表。漁業との本格的な取り組みは初めて企画しました。
 講 師:乾政秀(水産コンサルタント)
 
①自己紹介
・ 大学院で地球化学、特に元素の移動(地圏・水圏・気圏・生物圏)のメカニズムを学んだ。その後、海洋調査会社に入社し、各地の原子力発電所などの環境調査を行い、その後独立。
・ 入社1年前に福島第一が操業開始した。日本の原発は海岸に立地し、冷却水として膨大な海水を利用している。3・11まで日本に大規模な事故が起こるとは、全く予想していなかった。福1は、海への影響が人類史上初めての大事故になっている。
・ 漁業組合を中心に関係知人が多いこともあり、事故後、2か月に一度の頻度で、個人として現地に入り、調査を続けている。

 

②福島県の漁業
・ 福島県漁業就業者は1743人、7%の方が亡くなった。若い方が多く、後継者に恵まれていた。北から南に14漁協。北部:砂浜海岸、アオノリ、アサリ。中部:断崖連なり自然の良港なく、漁業が発達しなかった。南部:岩礁海岸が混ざり、ウニ・アワビが豊富、港が発達。水産物は約2.5万トン、生産額約86億円。主な漁法:沖合底引き>船曳>固定刺し網。漁獲物は、リスクヘッジのために現地と消費地の2段階の市場を経て流通する。買受人400社。
 
③海洋の放射能汚染とその推移
・ 外国では空冷や河川水利用が多いが、日本の特徴はすべて海岸立地で、海水で冷却している。人類史上初めての大規模な海洋汚染が進行している。
・ 海水中の放射能濃度は半年で低くなったが、海底土は高く、採取地点が固定できず変動が大きい。文科省や東京電力がモニタリング調査データを公表しているが、最近はN.D.(不検出)が多い。肉のある魚については、ヒラメ、アイナメは今でも高い。貝類は急速に減っている。底魚は高目。
・ 現在、福島県の漁業は全面的に止めており、漁業者は補償で生計を立てている。瓦礫処理や汚染調査のバイトで海に出ているが、海でしか生きられない感性にとって大変厳しい状況にある!
 
④試験操業、今後の見通し
・ 漁業再開に向けて、試験操業を行い、18魚種のモニタリングを続けているが、操業率は数%! 9月下旬に調査結果をもとに一部再開したが、汚染水漏れで厳しくなった。
・ 請戸、富熊漁協地域は壊滅的で、復興の見通しが立たない、住めない状況。
・ 農業者は放射能被害中心だが、漁業者は、放射能+漁協破壊+漁業者の死亡+船の流失の複合被害。103隻の船が19隻に、155軒の家屋が17軒に減少、放射能の他に津波の大被害が襲った。
・ 瓦礫処理は平成23~25年度の3か年実施されたが、今後の継続は未定。
・ 試験操業から本格操業への道は程遠い。漁業者の士気が低下しつつある。
・ 福島第一発電所の成り行きの見通しも立っていなく、漁業再開への目途も立たない!!!
・ 生産者の苦痛が続いている!!
 
所感:3・11以降、隔月で現地入りし、市民として調査し続けている講演者の迫力ある報告に圧倒されるとともに、現地の厳しさ、凄まじさを知ることができた。福島原発の状況は、総理が言う、完全にコントロールされている状況とは程遠い現状にある。一人ひとりの市民の監視の目が必要である。改めて、「資源のない国」から「自然豊かな国」への転換を目指したい。
 農林水産業の再生と海や地域の環境へ配慮した海洋観光立国を夢見て。


 

貝のよもやま話 11
   台風の通りすぎた浜で~カメガイ~

              
                 千葉港ポートパークかもめのクリーン隊 千葉市中央区 谷口 優子
 ことしは10月になってから台風が3つも関東地方に接近するという異例の年になりました。最後に来た台風27号は幸いにも大きな被害もなく去ったので台風一過の館山の海辺にお宝を求めて歩いてきました。
 館山湾の海岸はどこも竹がたくさん打ち上がっていました。強い風と波で砂浜が美しい北条海岸の階段状のデッキもすっかり埋まってしまいました。聞くところによると、それとは反対に砂がすっかり消えてしまった浜もあるそうです。自然の力には逆らえません。
   
 台風の置きみやげの貝をさがして浜をひたすら歩きました。大物狙いの息子に先を越されてしまったのでわたしは小物をさがしていきました。波が砂浜の一番高いところまできた場所には(高潮線といいます)打ち上げられたものが線上に並びます。軽い発泡スチロールやレジンペレットなどに混じってときどき小さな貝が見つかることがあります。今回見つけたのは「カメガイ」のなかまです。「カメガイ」といってもなかなかなじみがない貝ですが、『流氷の天使・クリオネ』の和名は「ハダカカメガイ」といいます。「カメガイ」はクリオネのように翼を持って海を漂う貝です。マルカメガイ、ササノツユ、マサコカメガイ、ウキヅツ… 海の中にはたくさんいるのかもしれませんが透明なので海の上から見つけることはまずありません。岸まで薄い殻がこわれないで打ち上がることは館山湾では少ないです(写真左からマサコカメガイ・ササノツユ・マルカメガイ・シロカメガイ・ヒラカメガイ・ウキヅツ)。
  館山市出身の沖縄大学の盛口満先生(ゲッチョ先生)の「青いクラゲを追いかけて」(講談社)の中に館山湾で拾ったカメガイを宝物にしているエピソードがありました。こんなに拾えることはまずないのでとてもうれしかったです。
 話があまりにもマニアック?だったでしょうか。実は、身近なところでもカメガイのなかまは見つけられるのです。「しらす干し」の中にときどき混じっていることがあります。“高級なしらすには混じりものが少ない”ので“しらすの大きさがそろっていないもの”を選ぶとカメガイのなかまが見つかるかもしれません。それらの雑魚を一部マニアは『チリモン』(ちりめんモンスターの略)と呼んでしらすからお宝をさがすのを楽しんでいます。くわしくは「チリモン博物誌」きしわだ自然友の会 (幻戯書房)でごらんください。これはハマります!
 館山湾では台風26号のとき大型貨物船が座礁しましたが(いなかったので無事沖にサルベージ船を使って浅瀬から脱出できたようです)、1センチにも満たないこんな貝も浜に寄るのです。

【発送お手伝いのお願い】

ニュースレター 12月号(第197号)の発送を12月6日(水)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記:今年はじめてタデ藍を育て、仲間と染色をしました。空気に触れるごとに鮮やかに青く深みを増していく布の変化に、思わず歓声が上がりました。摘んでも摘んでも繁茂してくる生命力の旺盛さには驚きましたが、だからこそ染料として利用されてきたのでしょう。もうじき種子が採れそうです。うまくいけば皆さんにもお分けできるかも。 mud-skipper