ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第197号 

2013.12.6 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 簡易アセスメントについて
  2. 「環境市民交流会2013 in やちよ」開催
  3. 「地産地消の我が家建築物語②」~地鎮祭~
  4. 海のおはなし二題

簡易アセスメントについて

千葉市緑区 小田 信治 

はじめに
 ニュースレター186号(2013.1.7)で環境アセスメントについて、書かせていただきました。今回は簡易アセスメントについて話題提供したいと思います。
 さて、平成25年9月2日~10月1日まで、千葉市環境影響評価条例(以下、千葉市アセス条例)の一部改正についてパブリックコメントの募集がありました。これは、環境影響評価法(以下、アセス法)の改正に伴い、千葉市アセス条例を改正するためのものです。なお、アセス法の改正についてはニュースレター186号を参照下さい。千葉市アセス条例改正では、①方法書の説明会開催、②アセス書の電子縦覧、③市長からの直接の意見提出手続の新設、④事後調査手続き(工事完了後提出)、⑤風力発電事業の追加(7,500kW以上)、⑥配慮書手続きの新設(要綱を定めて、千葉市事業に限り計画段階配慮を行う)、以上6項目です。
 小西代表が10月末に市のアセス検討会を傍聴されましたが、パブリックコメントは2件だけだったそうです。なんと、その2件は小西代表と私のもので、市民の関心のなさに蓋然とします。なぜ、環境アセスメントに関心がないのか、それは、アセス実施件数があまりにも少なく、身近な制度ではないのが原因の一つなのです。では、どうすればよいか! それがこれからお話する簡易アセスメントです。
 
環境アセスメント制度の現状
 まず、環境アセスメントの仕組みについて、少し解説します。環境アセスメントの実施は、アセス法とアセス条例で規定されています。アセス法は国等が行う道路やダム等の13種類の公共事業を対象とし、アセス条例はアセス法で対象としない事業についても対象とし、民間事業(工場、ゴルフ場等)を含めて、自治体ごとに定めています。いずれも、アセスの対象となる事業の種類と規模を定めており、それ以外はアセスを必要としない仕組みになっています。アセス法では、ダム(湛水面積100ha以上)や土地区画整理事業(面積100ha以上)等の大規模な事業が対象となっています。条例アセスでは、それよりは、小さな規模を対象としています。千葉市アセス条例では、18種類の事業を定めており、次のの表に示すとおりです。 

 表 : 千葉市アセス条例で適用される事業
 出展:千葉市環境保全課ホームページ   

 次にアセスの実施件数を見てみましょう。我が国のアセス実施件数は、アセス法が制定された1997年以降、約200件、条例アセスで約700件、アセス法と条例アセスを合わせても多い年で年間70件程度です。これに対して、年間でアメリカは4万件、中国は30万件、韓国は3千件と信じられないような件数です。千葉市では、現在まで22件でゴルフ場、発電所、最終処分場などのアセスが実施されています。このように我が国でアセスが少ないのは、対象事業を限定し、大規模な事業だけを対象にしているからです。
 諸外国では、事業の種類や規模を限定せず、まず、簡易なアセスを実施して、影響が大きいと判断された場合は本格的なアセスを実施する方法がとられています。
 
簡易アセスメントとは
 我が国では、簡易アセスメントについては、環境アセスメント学会や業界で、①ミニアセス、②スモールアセス、③自主アセスなどと呼ばれており、その定義は明確ではありませんが、法や条例上の義務はないが、アセスを実施して環境配慮を事業に組込むことを意味しています。簡易アセスメントの内容は、事業者の自主的なものとして、通常のアセスに比べて、調査・影響評価項目を少なくしたり、手続きを簡略したりして、期間を短くし、費用も安価にしています。
  事業者にとって、環境アセスメントは長期(長い)で、膨大な費用(高い)を要するため、アセスに係らないように、規模をぎりぎり下げたり、細切れにして、アセス逃れを行う場合があります。アセス法では、アセス逃れを防止するため、75%の規模でアセスを実施するかどうか検討する2種事業の制度がありますが、うまく機能していないのが実態です。
  (一社)日本環境アセスメント協会がミニアセスについて会員企業に調査した結果では、平成15年以降、62件の実施があり、道路、建築物、集合住宅、火葬場が多く、期間は1~2年、費用は100~2,000万円、メリットとして行政対応ができたことと住民との対話ができたことをあげています。この調査結果から、事業中断リスク(近隣住民から反対され易い)の高い事業ほどミニアセスを実施しており、リスク回避に役立っていることがうかがえます。民間事業者としては、自主的にアセスを実施するにしても、社内を説得するには、行政サイドのお墨付きや支援が必要になります。
 川崎市では、事業を規模に応じて第一種、第二種、第三種に区分し、第二種、第三種については手続きの簡略化を行っています。また、自主アセスについても規定し、事業者を行政がバックアップする体制が取られています。その他、世田谷区の「開発事業等に係わる環境配慮制度」や岡山市の「環境配慮事項届出制度」などの簡易アセスメント制度もあります。
 千葉市内で、高層マンションの建設が見られますが、千葉市アセス条例では、高層建築物(例:高さ100m以上のビル等)はアセスの対象となっていません。高層ビルは風害や交通など市民生活に影響を与える事業であるため、建築計画では環境配慮検討を通常実施します。また、工事前の近隣住民説明会では影響について説明することが多いので、簡易アセスメントを実施し、市民との合意形成を図ることが適切です。不動産事業者にとっても、リスク回避と着実な事業の推進に役立つと思われます。なお、千葉市アセス条例改正のパブコメでは、このことも意見として述べました。
 民間事業者が実施した自主アセスについては公表されるケースはほとんどないのですが、NPO地域づくり工房が長野県大町市で実施した「中網南側土砂採取事業 自主簡易アセス」は少ない予算(50万円+41.5万円)ながら、興味深い取り組みを行っています。
 詳細は以下をご覧下さい。
  http://npo.omachi.org/works/saisekijyou/
 
おわりに
 我が国の環境アセスメントは、市民にほとんど関心がないか、事業の反対を言う場でしかありません。本来の目的である、事業に環境配慮を様々なステークホルダーといっしょになって盛り込むための合意形成ツールとして十分機能していないのが実情です。本格アセスメントと簡易アセスメントがうまく機能すれば、もっとアセスが身近な存在になるではないかと思います。簡易アセスメントを普及するには、事業者になんらかのインセンティブが必要になります。アセスの実施により、事業リスクが回避・軽減されることを評価して、例えば、優遇金利が適用されるとか(ODA等の海外プロジェクトでは実施されている)、環境認証システムにより企業のCSR向上につなげると言ったようなことを検討していく必要があると考えます。
 
【参考文献】
1:環境アセスメントとは何か―対応から戦略へ (岩波新書) 原科幸彦
2: 環境アセスメント学会第12回大会シンポジウム(スモールアセス~自主アセス・ミニアセスの動向~)
3:千葉市環境保全課ホームページ
 http://www.city.chiba.jp/kankyo/kankyohozen/hozen/index.html 

「環境市民交流会2013 in やちよ」開催

八千代市 齊藤 充弘 

 10月20日(日)八千代市市民会館・会議室で、「環境市民交流会in やちよ」が開催されました。この会は八千代環境市民連絡会(代表:佐藤素子)の主催、八千代市後援で、一般市民も参加して毎年行われています。今年は「どうする?これからの八千代の自然パート2」というタイトルで、千葉商科大学教授・東京工業大学名誉教授の原科幸彦氏の講演「簡易アセスで自然を残そう」とパネルディスカッション「いつやるの?緑の基本計画」が行われました。台風の影響で強い雨の中ではありましたが、市内外から51名が参加しました。

   

 原科氏は環境アセスメントの権威で、今年5月、国際評価学会から環境アセスの最高賞であるローズハーマン賞を受賞されました。講演内容は環境アセスについて。特に「日本の環境アセスは国際的にも遅れており、大きな事業だけにしか行われないため年間約70件に止まり、アメリカの千分の1の件数になっている。本来環境アセスはコミュニケーションによって合意形成をする手法である。開発事業を行う事業者が、できるだけ早い計画段階から情報公開し、専門家と地域住民、行政も含めた利害関係者の間で、納得のいく(意味ある)応答をする『簡易アセス』が大切である。それも頻繁に行うことで、環境情報や合意形成のノウハウが関係者の間で蓄積される」と訴えられました。

 

 パネルディスカッションでは、秋葉市長が総合的観点から「今後2年で、市の(総合計画)基本計画を見直す予定だが、緑の基本計画もその中で見直し実効あるものにしたい」と意見を述べられました。会場からは市内の公園に対する意見(苦情)、環境アセスを実施する場合の問題点に関する質問などもあり、議論されました。また市内にもホタルがみられるなど手つかずの自然が残っている、との報告もあり「自然を荒らされないためには、情報を公にしない方がいい場合もある」と原科氏の応答でした。

「地産地消の我が家建築物語②」~地鎮祭~

東金市 中村 真紀 

 11月の気持ちいい小春日和、我が家新居の地鎮祭を行いました。
地元の山武杉&自然素材そして省エネルギー住宅にこだわりの「さんむフォレスト」稗田一級建築士に設計をお願いして半年以上。ほぼ完成までいった設計図面を白紙に戻して初めから再スタートしたり、見積もりが大幅に予算額を超え、稗田さんと大工さんと私たち夫婦で何時間もコスト削減策を練ったり、なかなか長い道のりでした。

 

 やっとの思いで迎えた当日、建設予定地の真ん中に4本の竹で囲いを作り、その中にお米やお酒、海のもの山のもの(魚や野菜)、お塩などをお供えし、これから私たちが暮らすことになる地元の神主さんにお願いして、土地の神様にご挨拶し工事の無事と安全を祈願してもらいました。
 私たちの新しい家からはこれから子供たちが通う予定の木製の素敵な小学校(偶然にも我が家と同じ稗田さんの設計)が見え、田んぼや木々の美しい緑に囲まれています。地鎮祭当日は青く広い空も暖かなお日様も一緒にお祝いしてくれているようでした。
 一月下旬には餅投げも予定しています。お近くの方、ご興味ある方はぜひお立ち寄りください。


 

海のおはなし二題

              
                 千葉港ポートパークかもめのクリーン隊 千葉市中央区 谷口 優子
1.漂着物学会に行ってきました
 11月16~17日南房総市の大房少年自然の家で第13回漂着物学会南房総大会が開催されました。北海道から石垣島の方まで全国の研究者や愛好家が集結しました。会場は熱気ムンムン。大会名物の「一升展示」という各人が持ち寄った漂着物コーナーではアート作品、化石からダイヤのピアスまで拾った方、北海道の浜辺で拾ったという中東のゲーム盤を持参された方もいて大人気でした。
 ポスターセッション、口述発表もあり、アカデミックでありながらフレンドリーな雰囲気でよかったです。市原市の考古学者の方の「縄文遺跡から房州のタカラガイが北海道の遺跡で見つかった」という研究発表は興味深かったです。石垣島からいらしたFさんの「世界のモダマ」は自ら海外に赴いて調査したというすばらしい研究で感動しました。個性豊かなビーチコーマーたちに圧倒されて帰ってきました。また一歩ディープな世界に入り込んでしまいました。な、なんと来年の大会会場は石垣島に決まりました!

2.本のご紹介「ぼくたちいそはまたんていだん」三輪一雄作・絵
 漂着物入門の児童書が偕成社から11月に発売されました。
 じっちゃんの手紙の謎を解きながら1年間海辺でいきものや漂着物を観察するというストーリーになっています。美しい貝の写真が載っていて図鑑としても使えるハイレベルな作品です。物語の舞台は三浦半島になっていますが南房総もほぼ同じ生きものが見られます。

     「秋のはま サクラちるちる 海ザクラ」

 大風が吹いた後わたしも館山の海岸を歩いてきました。かれこれ14年館山で貝を拾っていますがこんなにサクラガイのなかまを拾ったのは初めてです。
 
 
 千葉ポートパーク管理棟(テニスコート脇クラブハウス)では「かもめのクリーン隊」で集めた漂着物が展示してあります。ごみも漂着物としてみれば「お宝」です。かなり不思議なものもありますのでぜひ見てください。みんな海から流れてきたものです。
 秋から冬にかけての海は荒れるのでお宝が見つけられるチャンスです。波があるときは寒いですし、危険です。無理をしてもいいものは採れません。波が静まって気温が高くなった時が狙い目ですよ。

【発送お手伝いのお願い】

ニュースレター 2014年1月号(第198号)の発送を1月8日(水)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記:12月1日、下大和田の観察会に行ってきました。森は紅葉真っ盛り。と言ってもモミジのような華やかさはありませんが、常緑樹の中で青空を背景に、黄茶色に色づくクヌギやコナラは、控えめで奥ゆかしさを感じさせてくれます。これぞ千葉の里山の晩秋です。田んぼには薄氷も張っていて、本格的な冬も間近ですね。 mud-skipper