ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第177号
目 次
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ちば市民放射能測定室 共同代表 長谷川弘美 小西由希子
福島第1原発事故から1年がたちました。事故後、大地や海などに放出された放射能による食べ物への汚染が広がっており、私たちは不安な生活を強いられています。特に子どもは放射線への感受性が高く、大人の責任においてできる限り取り込ませないようにすることが大切です。
ご存知の通り、4月1日からは食品中の放射性セシウムの新基準値が適用されています。一般食品は1kgあたり100ベクレル、飲料水は同10ベクレル、牛乳と乳幼児用食品は同50ベクレルと、これまでより大幅に厳しくなりました。千葉県でもタケノコや原木しいたけなどが基準値をオーバーし、出荷を自粛せざるを得ないケースもあります。
子どもを持つ親たちの不安や、食品や飲料水、土壌の放射能検査を要望する市民の声が上がっており、これらを受け止めるところが必要ですが、残念ながらまだまだ不十分です。「食べても大丈夫なのだろうか」と、数字がないことへの不安があるので、それぞれの食品にどれくらいの放射性セシウムが含まれているか、きちんと測定して数字を提供することは大変意味があると考えます。市民自身が正しい知識を身につけて、自ら判断していくお手伝いをしたいと、有志が集まって「ちば市民放射能測定室(しらベル)」が開設されました。
私たちは2011年12月20日準備会を立ち上げ、取り組んできましたが、その間多くの仲間に支えられようやく開設にこぎつけることができました。周辺機器を入れて400万円を超える測定機器の購入にはSWR株式会社さんからレンタルの提案をいただき、2月2日、EMF211 ガンマ線スペクトロメーターが事務所に納入されました。それ以降、オープンに向けて学習会を重ね、オペレーター養成講座も開催してきました。内容は、放射線の基礎知識、検出限界と定量下限、統計入門、測定装置の検出原理と結果の判定(実技あり)などです。
4月1日の開所式には約50人が参加し、熊谷俊人市長も駆けつけてくれました。「市も連携して市民の安心、安全につなげたい」とのお話。高い数値が出た時は市にも相談しますし、市による小売店の検査の可能性もあり、まずは責任ある正確な測定に努めていきたいと考えています。
開所後測定依頼が届いていますが、親戚から送ってもらった米や自宅でとれた夏みかんで作ったジャム、家庭菜園の土、小売店に卸している商品などさまざまなものがあります。機器の測定下限値は、試料の状態にもよりますが10Bq/kg程度です(メーカーカタログは1リットルで4~10Bq/kg)。基本的には本人持込ですが、遠方など事情がある場合は郵送でも受け付けます。
測定は、一般食品や土壌など。火、木、金と第2、4土曜の午前10時から午後5時まで。サンプル量は約1リットルで測定時間は30分程度。料金は1サンプル3千円で、会員割引もあります。事前に電話やメールでお申し込みください。
しらベル連絡先
電話:043-224-5013
メールchibacrms@gmail.com
事務所:千葉市中央区中央3-13-17
(きぼーる前
ちば環境情報センター事務所と同じフロアです)
市原市 南川 忠男
トルエンは最も多く大気に放出されている化学物質で2009年は年間約7万トンが放出され、PRTR法(2001年4月から実施)で登録されている462物質の排出合計15万トンの半分に相当します。トルエンは包装紙の印刷、繊維のコーティングの加工溶剤、合板の接着剤、グラビア印刷のインキ溶剤、皮革の仕上げ溶剤など多様に使用されております。
環境省が公表している全国の事業所の排出データは誰でもアクセスでき、環境省がそのサイトに用意しているダウンロード可能なソフトを使用すると(マニュアルを読めば簡単に操作できる)例えば下記④まで調べることができます。①トルエンの排出量が多い企業の順位はどうなっているか?年ごとの変化はどうか?②トルエンの都道府県別の排出量はどのくらいか? ③気になるあの会社の化学物質の削減実績はどうだろうか?④近くで大量に放出している会社はないか?(環境省のデータには排出所在地が記載されている)⑤我が家の近くではどのくらいの濃度になっているか?
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2009年 |
% |
埼玉県 |
6011 |
3.4 |
静岡県 |
5915 |
3.4 |
愛知県 |
5153 |
2.9 |
茨城県 |
3872 |
2.2 |
兵庫県 |
2857 |
1.6 |
福岡県 |
2675 |
1.5 |
千葉県 |
2577 |
1.5 |
三重県 |
2573 |
1.5 |
福島県 |
2443 |
1.4 |
滋賀県 |
2413 |
1.4 |
全国合計 |
176110 |
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表-1 トルエンの排出上位10県 |
全国の大きな規模の約4万の事業所が2001年から 物質別の排出実績を国に報告する義務が課せられました。最初のうちは市民がこのデータを入手するには数百円の負担が必要でしたが、3年くらい前から米国同様無料となりました。このソフトで調べた結果、都道府県別の排出量は埼玉県が排出No.1でした。これはプラスチック製品の製造、輸送機械製造及び印刷工場での使用が多いからです。
千葉県や三重県は沿岸部のコンビナートでトルエンを製造したり、ゴム工業やプラスチック製品の製造も多いので、ランクインしています。%は全国合計に占める割合です。一番少ないのは沖縄かと思ったら青森でした。⑤の環境濃度は「PRTRマップ」で検索すると出てくる独立行政法人製品評価技術基盤機構のサイトが5km四方の地図で表示してくれております。
会社 |
所在地 |
2009年 |
2008年 |
(株)スミロン |
和歌山県 |
930① |
650⑧ |
王子特殊紙(株) |
岐阜県 |
760② |
870③ |
藤倉ゴム工業(株) |
埼玉県 |
680③ |
790⑤ |
(株)寺岡製作所 |
栃木県 |
680④ |
790⑥ |
(株)サンエー化研 |
静岡県 |
660⑤ |
880② |
(株)リンテック |
愛媛県 |
650⑥ |
460⑪ |
檜山工業(株) |
茨城県 |
580⑦ |
1000① |
○囲みは順位 |
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表-2 トルエン排出上位7社 |
表-2は事業所別の排出上位7社の過去2年の推移です。○囲み数字はその年のランクです。これを見ると檜山工業は1年で大幅に削減する投資をし、全国7位まで下がりました。前年8位だったスミロンは稼働が上がったか、設備を増設したか放出が削減を大きく上回り、1位になってしまいました。2008年には700トン以上の事業所は5社もありましたが、2009年は2社に減りました。
このような情報を市民が入手できるので、事業所はCSRの観点からも化学物質の放出削減のインセンティブが働きます。下のグラフ1は、過去6年間(2010年のデータは2012年5月に公開される)の届け出事業所の大気へのトルエン排出量合計と大気への全化学物質合計の推移です。
23万トンが6年で15万トンまで減ったのがよくわかります。このPRTR制度の狙いどおりです。諸外国などの新たな有害物質の知見から妊娠中だけでなく、妊娠に気付かない時期の女性の母性保護を強化するためこの4月から女性労働基準則が改正になり、トルエン、キシレン、鉛及びその化合物など25種類の化学物質を取り扱う業務には作業環境管理が適切でないと就労できなくなりました。マニキュアの除光液はシンナーで主成分はトルエンです。この前閉め切った部屋でマニキュア落としを娘がしていたので、必ず換気扇を回してやるように注意しました。
福島市 阿部 一子
東京電力福島第一原発の事故から一年が過ぎました。初めて経験する放射能との闘い。終わりのない闘いにならないことを、ひたすら願っています。
梨の木の除染のため、冬の間続けてきた粗皮削りがやっと終わりました。今は、梨の枝を棚に結んでいく作業に精を出しています。本来なら、3月いっぱいで終わるはずの仕事ですが、粗皮削りをしていたために遅れてしまっています。でも4月に入り、日が長くなったので、好天の日は夕方6時近くまで畑仕事ができるようになり、遅れた仕事を挽回しようと畑に立つ毎日です。
この1年、日々何かに追われているようで、気持ちが落ち着かず、頭の中は霧がかかったような状態です。それでも畑仕事があるので、前に向かって進んでいられるのだと思います。全村避難となった地域の農家の人たちは、春になって畑に種をまく季節をどんな思いで過ごしているのでしょう。自分の畑を再び耕せる日が来るのか、先の見えない不安を抱えて、つらい日々を送っていることでしょう。同じ農家として心が痛みます。
先日「ふくしま土壌クラブ」のブログに載せるため、メンバーの写真撮影をしました。どんな出で立ちで写真に納まろうかと考えたら・・・やっぱり「魔女」でした。(時々、魔女の姿で、おはなしの出前をしています。)
遠い昔、人の生はいつも死と隣り合わせにありました。人は寒さで死に、飢えで死に、生まれたばかりの赤子も、愛する夫も、訳の分からないまま死の国へ連れ去られてしまう。大切な家族の命を守りたい、よみがえらせたいという願いを込めて、魔女は薬草を探し当て、祈りに替わるおまじないの呪文を作りました。自称3~9歳のミジュクな魔女は、フクシマの子どもたちが元気になれる特別愉快な、おまじないの言葉を捜している所です。
土壌クラブのメンバーの若い父親は、ポケットから、4ヶ月になる愛娘の写真を取り出して、一緒に写真に納まりました。愛(いと)おしそうに、小さな娘を見つめる彼の姿に胸がいっぱいになりました。この子がいつまでも健康でいられますように、このお父さんが悲しむような日が絶対に来ませんようにと、魔女はとっておきの呪文を心の中でくり返し唱えました。
3月9日、東京電力から、自主避難に関する賠償請求の書類が届きました。対象は福島県全域ではなく、23市町村の約150万人で、そのうちの約30万人は子どもと妊婦です。地元に残った子ども・妊婦には40万円。自主避難した子ども・妊婦には60万円、それ以外の住民には一律8万円という賠償額の内容です。
原発事故の後、政府は「直ちに健康に影響はない」と繰り返していました。低線量の被ばくはすぐに病気になるということはないということなのでしょう。
チェルノブイリから70キロ離れた放射能汚染の比較的高かった所では、事故後、15年ぐらいから、大人の6割が血液疾患、内分泌疾患、心臓病など何らかの病気を発病。17歳以下の子どもでは、1人で複数の病気を抱えているケースが多いと言われています。
今回、18歳未満の子どもの医療費を国庫負担にという要望は認められず、福島県が独自に取り組むことになりました。子どもだけでなく、大人も健康に不安を抱えています。健康な大人がいて、元気に子どもたちが育つということを、国も東電も忘れないで欲しいと思います。
これから先のことを考えると、一時的な8万円より、生涯にわたっての医療費の保障を望みます。
特定非営利活動法人ちば森づくりの会 理事長 坂本 彌
ちば森づくりの会はいわゆる森林ボランティア団体です。アマチュアですが、これからの森林管理システムの担い手の一角を占めることをめざしています。
生物多様性の保全、地球上の炭素循環等々、森林が注目されています。しかしいま、山持ちの山離れが進んでいます。木材生産が経済活動として成り立たない。あるいはかつての里山も人々の生活とのつながりがなくなってきました。多くの森林は放置され、荒廃・機能劣化が進んでいます。さらに千葉県はスギの非赤枯性溝腐病と竹林拡大という大きなハンディを負っています。同病はほとんど千葉県にだけ発生している病害であり、また千葉県はもともと竹林率が高いので竹林拡大の影響が大きい。この二つの問題を解決してようやく他県に並ぶと言えるのですが、その見通しは立っていないと思われます。
我々の活動のメインは森林施業です。植栽、下刈り、枝打ち、除間伐、さらに竹林改良や荒廃林の再生など。健全な森林の再生・育成が目標です。活動日は原則月5日、活動フィールドは主に千葉市内です。何らかの理由で所有者が手入れできなくなった森林を所有者に代わって整備するのが一般的なケースです。森林のタイプはスギ・ヒノキ人工林から広葉樹林や混交林、竹林(拡大竹林を含む)と多様です。
その他、発生材を利用しての木工、炭焼き、きのこ栽培など森林資源の利活用にも取り組んでいます。また原則2か月に1回、作業後に再度集まって勉強会を実施しています(森づくり懇話会/略称:もりこん)。文武両道での成長をめざす一環です。終了後、アルコールを伴う2次会を持ち会員相互の親睦を深めています。
森が呼んでいます。一緒に森に入って楽しみませんか。森と自らの健康のために!
URL:http://www7b.biglobe.ne.jp/~chibamoridukuri/
Email:swataru@cnc.jp
℡:043-262-9376/090-9240-2296
髯の数で泥鰌は種類がわかると云う 六本八本十本がある 種漬花の白花食めと進めらる ぴりりと春の田と日の風味 志自岐百々代 |
ニュースレター 5月号(第178号)の発送を 5月 7日(月)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。
編集後記: 千葉市でも桜が見頃になりました。最近では卒業式の頃咲いてしまうこともありましたが、今年は桜の花をバックに、新入生の記念写真を撮影できそうです。平和を象徴する光景ですが、桜の花を見ても、放射能のことを考えてしまう今日この頃です。 mud-skipper