ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第179号 

2012. 6.7 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 生態系を守るということの大切さ
  2. 身の回りの化学物質シリーズ10-水道水と次亜塩素酸ソーダ-
  3. 今年度もよろしく!割り箸リサイクル
  4.  千葉県内の活動団体紹介 11

生態系を守るということの大切さ

亀成川を愛する会 千葉市美浜区 小倉 久子 

 まず本の紹介から始めます。講談社ブルーバックスの「巨大津波は生態系をどう変えたか-生きものたちの東日本大震災-」(永幡嘉之 著)という本を読みました。タイトルのとおりの内容で、筆者が福島県いわき市から青森県下北半島までの海岸を歩き回り、失われた自然、復活した生きものを自分の目で確認した貴重な記録です。

 この本を読んで心に残ったのは次の3点です。

① 一度絶えてしまった生きものも、近くに生息地が残っていれば、そこが種の供給源となって、また復活することができる。
② 津波によって人為的に水田や住宅地に改変されていた海岸沿いの湿地が地震や津波により思いがけなく元の湿地に戻り、そういう場所に早くも元の湿地の生きものたちが発生していること。ただし、これらの生きものたちは「復旧」工事により、遠くない将来に再び殺されてしまう。
③ 「復旧」工事は環境配慮よりも速さが優先されれるため、復旧という名の環境破壊が懸念される。

     

 どれも私にとって重たいものでしたが、特に①は言い換えると、津波は天災だが、それで生きものが絶滅したら、それは他の場所の供給源をつぶしてしまった人災なのだということです。あちこちに供給源になれる生態系を確保しておくことが肝要です。これは、津波以外の災害にも言えることです。
 ということで、長い長い前置きから、ここからが本題です。
 印西市にある亀成川源流域は、昔はどこにもあった原っぱの生態系が現在も奇跡的に残っているところです。本当はとっくに街になっていたはずなのに、当初の計画通りにニュータウンができなかったので、そのまま「ニュータウン予定地」として40年間放置(保全)されていたのです。その間に原っぱは、「どこにでもある原っぱ」から「開発されずに残った貴重な原っぱ」になってしまいました。
  そこには、なんと今でもキツネが住んでいるのです!キツネが住んでいるということは、キツネが生きていけるだけの食べ物(ノウサギ、ノネズミ、野鳥、昆虫など)がいるということで、キツネは豊かな生態系の象徴なのだというのがよくわかります。

  いま、その原っぱが、なくなろうとしています。私たちは手をこまねいてそれを見ているわけにはいきません。本の紹介で言いましたように、この場所の生態系をつぶす(守る)ということは、単にこの場所だけでなく他への供給源をつぶす(守る)ことになるのですから。
 この原っぱを守るために、「亀成川を愛する会」では日本自然保護協会の支援をいただき、まずは専門家による生態系評価を実施しています。40年前にはアセスメントは義務付けられていなかったので、この場の生態系の豊かさが初めて確認されつつあります。
 みなさま、どうか一緒にこの場所を守ってください。ひとりでも多くの方が声を上げてくださることが、なによりも大きな力になるのです。
 詳しくは、亀成川のHP,ブログをご覧ください。
      ホームページ:http://www.kamenari-love.com/
      ブログ :http://blog.livedoor.jp/kamenarigawa/

身の回りの化学物質シリーズ10
-水道水と次亜塩素酸ソーダ-

市原市 南川 忠男 

 河川やダムから取り込まれた水は大腸菌などを死滅させるため、最終的に家庭に送られる水道水には殺菌のため残留塩素が0.1㎎/㎏(0.1ppm)以上含まれております。水道法の規定で塩素を使用しなければならないことになっています。この塩素の元になるのが液体の次亜塩素酸ソーダで化学式はNaClO です。以前(今も使用中の浄水場はあります)は液化塩素でしたが、取り扱い上のリスクが大きいので次亜塩素酸ソーダに変わりつつあります。苛性ソーダに塩素ガスを反応させて合成するので、pHは高い。浄水場にはその工場(千葉県は地元の市原市のコンビナートのA社)からタンクローリーで運ばれております。この物質は市民の生活の飲み水を支える大切な物質だと思います。

   

 我が家に水道水を供給してくれている市原市の福増浄水場(能力90,000トン/日)では2年前の次亜塩素酸ソーダの使用量がその落札価格(公共事業は取引価格をネットで公開している)から約400トン、江戸川を水源とする松戸市にある松戸市、市川市、船橋市が給水範囲の栗山浄水場は約1,400トン使用しているので、2ppmで注入していることが計算できます。ということは
 月間使用量が30m3の我が家では60gの次亜塩素酸ソーダが使用されていることになります。

 一方、江戸川の上流の下水処理場では活性汚泥法という微生物によって家庭からの汚水の栄養源を食べてもらい、汚物を処理され、大腸菌などの下水中の細菌を次亜塩素酸ソーダで滅菌し江戸川に放流しています。したがって、この地域の市民が水を飲む前に浄水場では殺菌のために次亜塩素酸ソーダが使われ、飲んだ後のトイレ経由の下水にも次亜塩素酸ソーダが使われていることになりダブルでこの化学物質が使用されていることになります。
 除菌剤として水道水の他には,スーパーに並ぶ果物や野菜の除菌、乳製品など各種食品の製造加工においてその設備や器具の除菌に使用されております。プ-ルの水,浴場の水にも使用されております。家庭用に販売されている液体の塩素系漂白剤、殺菌剤(洗濯用、キッチン用、ほ乳ビンの殺菌用などに使用されています。個人的にはこの薬剤で孫のほ乳ビンを洗浄すると少し塩素の臭いが残るので洗浄は電子レンジで3分の殺菌をしました。まだ下水道に接続されていない家庭は台所排水やトイレ排水を一緒に処理する合併浄化槽を設置していると思いますが、これも下水処理場と同じ微生物処理ですので、ハイターなどの塩素系漂白剤を大量に排出すると微生物は死にますので気をつけてください。
 誤って酸性液などと混合すると塩素ガスが発生するので、注意する必要があります。
 10年くらい前にトイレ殺菌用に12%次亜塩素酸ソーダと洗浄用の塩酸を別々に使用していたビルで、女子清掃員が両方の作業を1回で済ませようとして二つの薬液を混合したところ、塩素ガスが発生し、それを吸い込んだ事故がありました。

          NaClO + 2HCl → NaCl + H2O + Cl2

今年度もよろしく!割り箸リサイクル

ちば環境情報センター 割り箸リサイクルプロジェクト 草加市 伊原 香奈子  

 久しぶりのニュースレター登場ですが、皆様はこの「割り箸リサイクルプロジェクト」のこと、お忘れではないですか?2003年にスタートしているので、もうかれこれ10年近くになろうとしているんですね。「へぇー、もうそんなにも経とうとしているのね~」と、思わず感慨にふけってしまいます。
 多くの人に「使い終わった割り箸をゴミにせず、資源に変えていこう!」と呼びかけるために、初めの頃は、各イベント会場で積極的にPR回収をして呼びかけたり、学習会や交流会、工作教室などを開催したりして、いろいろ周知を図ってまいりました。その甲斐あってか、最近では、以前のように特別な働きかけをせずとも、ISO1400に取り組む企業や、個人の飲食店、環境意識の高い学校や学生さんが、HPをみて取り組んでくださるようになってきました。

 

 世の中の動きとしても、割り箸の輸入価格の高騰の影響もあり、多くの飲食店で、割り箸から塗箸やプラスチック箸に移行するようになり、年間の割り箸使用量が250億膳から190億膳へと変化してきています。箸もいろいろ工夫が施され、麺類でもつかみやすい滑り止め付きや、手に馴染みのよい六角箸、食洗機対応型など、多様な種類が出回ってきました。それらを利用する客側も、以前のように「衛生面が心配っ!」と反対することもなく、この変化を受け止めて使っていますよね。「マイ箸」という言葉もよく聞くようになり、国民のエコ意識が大きく変わってきていることを感じます。
 でも、まだまだ割り箸の出番は、たくさんあります!私達のプロジェクトでは、そんな使われた割り箸を、1膳でも多くゴミから資源に変えていこうと、これからも呼びかけ続けていきたいと思います。
 新しい年度もスタートし、気分一新、新しいチラシも完成させました。今月号に挟み込みましたので、この割り箸リサイクルのことを、これからも伝え広めてくださいね。皆様のご協力で、今までの割り箸リサイクル量は既に1トンを超えています。まだまだ伸ばしていきたいですね、この記録! よろしくぅ~♪


 学習会のご案内


本誌4ページ目で紹介した、市民ネットワーク街路樹プロジェクト「千葉市の街路樹見て歩き」を以下の要領で実施します。専門家と一緒に街を歩き、いつもと違った眼で街路樹を観察してみませんか。

テーマ:「千葉駅周辺の街路樹ウオッチングと街路樹のお話」
講 師:千葉大学園芸学研究科 藤井 英二郎教授(農学博士)
日 時:2012年 6月15日(金)街歩き14:00~15:30 お話15:30~17:00 市民ネット事務所
集 合:千葉駅前ドーム(東口改札を出て右)連絡先:043-201-2551

  ちば環境情報センター総会と講演会・交流会のお知らせ


2011年度の活動実績報告や会計報告,2012年度の活動予定や予算など審議します。総会後14:30から福島県の梨生産農家の阿部一子さんのお話を伺います。15:30からお菓子などをつまみながらの交流会を予定しています。初めての方も大歓迎です。ちば環境情報センター内に併設の、ちば市民放射能測定室「しらベル」の見学もできます。

日 時:2012年6月30日(土)13:00~16:30
<総会13:00~14:00,講演会 14:30~15:30,交流会15:30~16:30>
場 所:NPO法人 ちば環境情報センター事務所
千葉市中央区中央3-13-17  
TEL&FAX 043-223-7807 E-mail:hello@ceic.info
交流会参加費:500円

   

 千葉県内の活動団体紹介 11

-市民ネットワーク街路樹プロジェクト
千葉市の街路樹見て歩き-

                              千葉市緑区 佐竹 由美子

 都市の美観を向上し、住む人に癒しを与え、歩行者等へ日陰を提供してくれる街路樹は街の印象に大きな影響を与えます。ケヤキの仙台、スギの日光、ニセアカシアの札幌が良い例でしょう。日本では一度植えてしまうと街路樹として適さないくらい大きく成長してもそのままであることが多いのですが、パリなどでは街路樹に適した大きさの木への植替えを行い、景観を保っているそうです。
 千葉市の街路樹についてもまずは現状を知り望ましい街路樹のあり方を考え、市に提言していくことができればという思いから私たちは街路樹プロジェクトを立ち上げました。
 街路樹調査の最初は緑区あすみが丘。緑区は街路樹が美浜区に次いで多い地区で千葉市の全街路樹数の約3分の1が緑区内にあります。特にあすみが丘は昭和57年より開発された住宅・商業地で街区は千葉県最大の都市公園である千葉市昭和の森に隣接しています。広い通りや歩行者専用道路、公園などが評価され平成4年には国土交通省による「都市景観100選」に選ばれました。大きな通りにはそれぞれプラタナス,カツラ,メタセコイア,クスノキ,サクラなどが整然と植えられ、各通りを特徴づけています。
 街を南北に通るあすみ大通り、東西に通るあけぼの通りは電力・通信などのケーブルが地中化されており樹木はのびやかに育っていて新緑と低木のツツジが美しいコントラストを見せています。
 しかし問題点もいくつか見つかりました。電線に絡むように伸びてしまっているプラタナス、強剪定されている街路樹、成長しすぎた根が歩道を盛り上げひび割れを起こしてしまったクスノキ、また店舗建築工事の際、植栽のツツジが削り取られたままになっている個所などです。
 3時間ほどの歩行観察でしたが、あすみが丘は多くの通りに街路樹が植えられ気持ちよくめぐることができました。緑の多い美しい景観をつくり街に潤いを与えてくれる街路樹の今後のあり方を提案するため、引き続きほか地区の状況を調査していきたいと考えています。

【発送お手伝いのお願い】

ニュースレター 7月号(第180号)の発送を 7月 6日(金)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: 5月中頃から我が家のベランダにある梅の木に、大量のアブラムシが発生。つぶしたり、枝を切るなどしましたが、その数を増すばかり。ところが、6月に入ると枝葉にテントウムシの幼虫が大量発生。あっという間にアブラムシはいなくなりました。天敵とはよく言ったもの。生きものの不思議なつながりには、いつも驚かされます。 mud-skipper