ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第182号
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ちば市民放射能測定室共同代表 千葉市中央区 小西 由希子
8月18日から19日、ちば市民放射能測定室(通称しらベル)スタッフ数人で福島市を訪問しました。
主な目的は、6月30日のちば環境情報センター総会で講演していただいた阿部一子(梨農家)さんを訪ねて、
1.福島の町や農地の放射線量をより詳しく測定して状況を把握すること。
2.市民による取り組みを伺って、私たちが協力させていただけることはないか考えること。
3.福島の現状を参考に、しらベルの活動をより現実的・発展的に展開する方策を見いだすこと。
などでした。厳密な測定を行うためSWR株式会社の山口さん,早川さんという二人の専門家にも同行していただきました。
JR福島駅東口に降り立った私たちの前には、幾本もの大きなケヤキがありました。どれも幹が不自然に白くなっており、除染したことが分かりました。駅周辺をあちこち歩き回りましたが、持参した線量計の目盛りはどこも、国の言う「面的除染」が必要な0.23μSv/hを超えていることを示しており、改めて事故の深刻さをずっしりと実感しました。
住宅地では中学校や公園など、町のあちこちにモニタリングポストがあります。住民にとってはこの値が一つの目安になるわけですが、除染はモニタリングポストが設置されている学校や公園に限られており、この値が周辺の空間放射線量を代表している訳ではありません。いまだ除染は「点」にとどまっており、この先の長い道のりに気が遠くなる思いです。
はじめに訪問したのはCRMS市民放射能測定所。福島駅から歩いて5分ほどの商業ビルの一角にあり、さほど広くないスペースに、ホールボディカウンター(利用料:県民は無料 その他は3000円)1台,ゲルマニウム半導体検出器(同3時間8500円)1台,ヨウ化ナトリウムシンチレータ(同1800秒1500円)1台が設置されているほか、相談スペースがありました。
未来の福島こども基金,カタログハウス,その他宗教団体などからの寄付と借用,利用料で機器の購入と運営を行っています。電気代含め運営費は月10万円程度、測定スタッフ3人は有償ボランティア。説明してくださった清水さんは、元有機農業者です。さらに、2か月に1回健康相談室を開催したり、放射能関連の書籍,雑誌も販売しています。
去年までは相当忙しかったようですが、昨年末から行政でも測定サービスをおこなう(公民館ごとに測定所がある)ようになり、利用者はかなり減ったそうです。ただし、行政の測定時間は1000秒と短く、また結果も数値ではなく「あるかないか」知らされるだけなので、これに満足できない人や農協を通さず出荷する農家の利用があり、リピーターも多いとのことでした。
測定結果は原則公開で特に問題はないとのこと。しらベルでの測定結果と同様、キノコやシイタケは他と比べると桁違いに放射能の値が高く、キウイ,サンショの実など木なるものは高めで、梅は実が皮より高い傾向があったそうです。モモは木の皮を剥ぎ高圧洗浄したせいか、昨年と比べセシウム濃度が4分の1~3分の1になったとのことで、一定の効果が現れているようです。
測定結果の精度を上げ、利用者の思いにできるだけ寄り添いたいと努めるスタッフの皆さんの努力と思いが伝わってくる市民測定所でした。測定依頼数が多いといはいえ、放射能による影響がより深刻な地域であるにもかかわらず、行政の測定サービスがかなりおおざっぱなのが気になりました。経済的に厳しい中での運営、先の見えない活動の継続には悩みも多いことと思われますが、苦労を表に出さず物静かに語るスタッフの皆さんに穏やかな県民性を感じました。
次に訪問したのは、市民測定所から歩いて数分の空き店舗で西日本の野菜を販売している野菜カフェ「はもる」。店長1人とアルバイトで運営しています。ここで「子ども達を放射能から守る福島ネットワーク」(平成23年5月1日設立)代表の佐藤幸子さんからお話をうかがいました。
原発事故後子育て中の若い親子が福島を離れたようですが、それでも移住者は1割程度でこの地域に残る人が圧倒的に多いそうです。そこで「子どもを守る」ためなら多少の意見の違いも認めてなんでもやっていこう、できることをすべてやろうと、野菜の販売,情報発信,対話・交流,講演会,料理教室,保養や移住の相談など精力的に活動しています。
スタッフは20名ほどですが、徐々に減ってきているのが悩みとのことでした。周りの人や家族と話が合わずストレスを抱えている人、被害を受けて落ち込んでいる人など、こうした人たちが活動することで心のバランスをとっているともいえる、と佐藤さん。
行政には言いたいこともたくさんあるのでしょうが、活動には行政からの補助金も必要、転地保養は町や学校が主催すると保護者も安心して子どもを参加させるからと、行政ともうまく手をつないでやっていくことに配慮しています。
幸いナス科やウリ科の野菜は放射能を吸収しなかったようですが、それでも福島産の野菜は安く買いたたかれているそうです。特に事故前有機野菜を購入していた人は福島産の野菜を受け入れられず西日本のものだけを求めているそうです。
福島には若い医者が来なくなっており、新規に開業する診療所もない。ちょっとした病気でも医大に通院するので大変込んでいるなど、事故の影響が様々なところに見られます。
原発事故への不安を抱えながらも、人はやはり安心と言ってくれるほうになびく、それが現実。でも福島にとどまるのも移住していくのも、両方の考えがあることを認めてほしいと佐藤さんは言います。転地しての保養には去年と比べ自治体の補助金がとりにくくなった一方で、県内で行われるイベントには助成金がでている。「被災者支援法では保養にも予算をとってほしい」と佐藤さんは熱く語っていました。
放射能が高く作物を作れなくても草刈りをする、耕すだけでもやりたいと言う農家の人もいたそうですが、今年はそれも少なくなったそうです。
団体の情報誌の名称は「たんがら」。竹で作ったしょいかごのこと。福島県民はこれから重い荷物をしょって歩いていかなければならない、という意味なのだそうです。生々しい「福島の今」を詳しく伝えています。是非皆さんも定期購読ください(年間 送料込み1000円)。重く辛い問題に目を背けず背筋を伸ばして向き合っていこうという佐藤さんの聡明さと心の強さを感じました。
阿部農園では、家の中や庭、梨畑の詳しい放射線量測定を行いました。近所の方から、孫が遊びに来るので放射線量を詳しく知りたいとの要望があり、庭や幼稚園・保育所・公園なども測定しました。
モモやリンゴがたわわに実る豊かで美しい大地は、この地にすむ人々にとって大きな誇りであることを改めて強く感じました。だからこそなおのこと、この事故がどれほど取り返しのつかないものであったのかと、残念でなりません。
鎌ヶ谷市 倉田 智子
学校プールの掃除で、我が子が「ヤゴが流される。どうにかできないの」と訴えてきたのが、プールの住人を知るきっかけとなった。数年後横浜で「プールのヤゴ救出作戦」が始まり、この取り組みは全国に拡大していった。船橋市運動公園でのイベントにアドバイザーとして関わったが、この時、主催者から「ヤゴになぜ羽化の棒が必要か、当日説明してね」という宿題が出た。飼育図鑑には棒が必要と書いてあるが、なぜ必要なのかは書かれていない。数日後、満水の容器の中でチョウバエが、目の前で羽化した。ヤゴは身体が大きく、また脱皮の際反りかえって羽化するため、水面から相当離れる必要があり、容器で飼うには羽化補助具が必須なのだと気付いた。自然が教えてくれたのだ。
ヤゴはプールの壁面だって登れない。羽化に失敗したトンボやヤゴがおぼれて水面を漂う。そのため市民プールでは、5月中に羽化補助のため網やすだれを設置する。その頃ちょうど、木の枝に卵を生むオオアオイトトンボやアジアイトトンボが水中から飛び立つ。彼らは羽化の際反りかえらないので、水面の浮遊物に体を預ければ間に合うようだ。
ウキクサやサカマキガイが発生する年があった。初夏の急激な水温上昇時にはミジンコが湧きあがり、その後無数の卵が水面を漂う。アカムシのループ状の卵塊は造形の妙、ハイイロゲンゴロウの幼虫が泳ぐ姿はナウシカの世界だ。
7月初旬の清掃時に網などを撤去、そして“ヤゴすくい“となる。網に付いた羽化殻を回収する。これはセミと同様、命を損なうことなく扱えるので、最高の教材となる。人の利用(遊泳)が終了し、塩素消毒がなくなると、水は濁りはじめ、塩素が抜けた頃、再び生きものが住むようになり、ウスバキトンボの羽化がある。
冬にはカルガモのつがいがここで過ごし(ウキクサ、サカマキガイは彼らが運ぶ)、寒さの最中でさえ、ミジンコがいて、零下の日には卵に姿を変えている。早春、ニホンアカガエルの産卵がある。初夏には、ツバメがプールで成体になったばかりのカエルを襲う。ゲットすると飛び方が沈む。虫と比べたら大変な重さなのだろう。
プールの清掃時の「ヤゴ救出作戦」に留まらず、人間が遊泳する期間を除いて、通年観察が可能な、すてきな価値あるフィールドなのだ。
これは周囲の環境に起因する。市民プールは土に接する部分があり、また木立に囲まれ、プール内に葉っぱが落ち込む。堆積物の多さゆえに、生きものは種類も数もたくさん生育するのだ。四角い閉鎖空間は、「食う寝るところに住むところ」、葉っぱを食べる虫、その虫を食べる虫と、小さいけれど生態系が成立しているのが分かる。年ごとに発見があり、楽しみがある。水生生物の宝庫、生きた図鑑である。
もう一つ、重大な要因がある。学校プールより、清掃時期は1月半ほど遅い。この時間差が生きものの、“いのち”を確保しているのだった。
この貴重な水辺の自然の記録を思い立ち、郷土資料館に提言して、プールの生き物調査による環境比較が始まった。市街地、梨畑、畑、そして市民プールの近隣の学校プールを調査対象とし、その記録は鎌ケ谷市史 資料編Ⅶ(自然)P321-326(平成12年11月発行)に、掲載された。(次号に続く)
千葉市緑区 小川 晃弘
環境カウンセラー事業者部門(NO.2011112001)
私が、環境カウンセラーの存在を初めて知ったのは、大学生の頃でした。将来の職業を悩んでいたころです。市民や企業の環境に関する課題解決のアドバイスをする環境カウンセラーの存在を知り、「なりたい」と感じたのを覚えています。なりたいと思ったもう一つの理由は、千葉の谷津田が広がる風景の中で育ち、自然の大切さを直感で感じていたからかもしれません。
私は、環境ISOやエコアクション21のコンサルタント経験があります。その経験を生かすために環境カウンセラーに登録しました。産業廃棄物業者等に30社ほどの認証を支援した経験を生かし、今後も環境貢献企業を増やしたいと思います。
なお、エコアクション21とは、環境省が策定した環境経営システムで、活動が評価され、審査を通過後認定証が発行されます。認定企業は環境貢献企業として行政や金融機関から優遇され始めています。環境省の狙いは、環境貢献企業が評価される社会になれば、循環型社会の実現に繋がるからです。
環境カウンセラーには、事業者部門と市民部門の2部門があり、現在私は事業者部門での活動が中心です。しかし、自然や私たちは全て繋がっていますから、環境カウンセラーの事業者部門にて活躍することが、実家の谷津田を守ることに繋がると思っています。
最後に、CIECのイベント情報欄にある方々の活動も、もちろん次世代の自然を守ることに繋がっています。皆さんの行動や活動は素晴らしい取り組みです。ニュースレターを読んでいる全員が評価しています。もし、何か課題が出てきたら、お近くの環境カウンセラーへご相談ください!!
八千代市 松尾 昌泰
1. 4月に八千代市に誕生した脱原発の団体
2012年4月21日発足,会員数85名。福島原発事故から一年半が過ぎたが、原子炉設備の危機的状態は変わらず、今も放射能の危険にさらされています。八千代市においても市内産タケノコや露地栽培のシイタケの放射線量が基準を超え、また、校庭や公園にも放射線量の高い地域があり除染済とはいえ、未調査の地区も多く心配はなくなりません。
原発は、廃棄物処理の問題が未解決のうえに、一旦事故が起これば地域・空間・時間を超えた大きな被害発生の可能性が高い。取り返しのつかない原発事故で「負の遺産」を、将来の子ども達に残してはならないと思います。
2. 目指すところ
目指すところは、「脱原発」であり、同時に、原発や化石燃料から早期に「再生可能エネルギーへの転換」であり、そして徹底した「省エネルギーの社会」です。その為にも、エネルギーを使い過ぎている私たちが、自身のライフスタイルを見直し、省エネ型社会を目指す必要があります。
発足会の会場風景 (2012年4月21日) |
3. 具体的活動
・毎月第4土曜日に定例会の開催
・メーリングリストによる、原発と地域の放射能のニュースと情報の交換
・学習会の開催
・集会や署名活動等への参加(将来は独自の市民集会も)
4. 連絡先
黙っていては、行動しなければ、物事は何も始まらない。是非、一緒に活動をしませんか? 八千代市以外の方も大歓迎です。
川井康郎 (運営グループ責任者)
E-mail:PFA00532@nifty.com
電話:090-7278-1840
ニュースレター 10月号(第183号)の発送を 10月 5日(金)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。
編集後記: 8月8日、岩手県にある早池峰山に登ってきました。27年前と同じ小田越から入山し、山頂まで3時間あまり。若い頃より難儀しましたが、ハヤチネウスユキソウやミヤマアケボノソウなどの変わらぬ美しさに、原発事故という大事があったのを、忘れてしまいそうなひとときでした。 mud-skipper