ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第202号 

2014.5.7 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 指定廃棄物処理促進市町村長会議に関する申し入れをおこないました
  2.  東日本大震災被災地の海岸で起こっていること・考えたこと(3)
  3. ハシブトガラスのピー助とカー子 -緑区下大和田の杉林に在住-
  4. チェーンソー講習を終えて②
  5.  沈没船重油流出事故その後
  6. 貝のよもやま話 14 -海そうめん-

指定廃棄物処理促進市町村長会議に関する
申し入れをおこないました

千葉県放射性廃棄物を考える住民連絡会事務局長 市川市 藤原 寿和 

 原発の爆発事故によって発生した千葉県内における放射性廃棄物の処理処分問題について、県内各地の住民が結集し「千葉県放射性廃棄物を考える住民連絡会」が4月6日発足しました。
 県内では、今放射性廃棄物をめぐって3つの大きな問題を抱えています。
 一つは、放射性物質汚染対処特別措置法によって決定された8000Bq/kgを超えるいわゆる指定廃棄物の最終処分場の立地選定問題です。

   

 二つ目は、県内の柏市や松戸市、流山市などいわゆる放射能汚染のホットスポット地域内で発生した焼却灰のうち8000Bq/kgを超える指定廃棄物について、千葉県は手賀沼流域下水道終末処理場内に一時保管施設を近隣住民の反対の声を無視して建設し、搬入を強行している問題です。近隣住民が公害等調整委員会に調停を申し立てたものの不成立となり、現在は千葉地方裁判所松戸支部に放射性廃棄物撤去請求訴訟を提起し係争中です。
 三つ目は、8000Bq/kgを下回っているとの説明がされていますが、100Bq/kg以上の放射能汚染廃棄物が民間企業の管理型処分場に搬入がされている問題です。この民間の管理型処分場のうち、君津市内の新井総合施設株式会社所有の君津環境整備センター及び富津市内にある大平興産株式会社所有の大塚山処分場については、いずれも汚水漏れが発覚して搬入停止措置が千葉県によって講じられている問題処分場です。
 以上のような問題を抱えている千葉県内に、環境省では最終処分場の建設を推進しようとしており、すでに、千葉県でこれまで4回の市町村長会議が開催されています。
 この会議は、県民には一切の情報の提供もなく、千葉県を通じて県内市町村長を招集して密室裡で事を進めようとしており、住民としては納得できません。
 4月17日に開催された第4回市町村長会議において、これまで千葉県を含めて他の4県に関しては国有林地を候補地とすることを表明してきましたが、今回、千葉県においては、県有地及び民有地を含めて候補地とすることを提示し、これに対して市町村長からは反対意見や異論がなかったとのことから、合意が得られたとして、候補地の具体的な選定作業に着手することを表明しました。しかし、市町村長の意見は各市町村の議会及び住民の総意を反映したものではないことは言うまでもありません。
 以上のことから、4月28日、環境大臣石原伸晃氏あて指定廃棄物処理促進市町村長会議に関する申し入れをおこなったところです。
 先にあげた3つの問題のうち、二つ目と三つ目に関してどのように周知し、理解しているかをたずねるとともに、指定廃棄物の最終処分場の立地に関して、次回からは市町村長会議を公開で行うこと、また、事前の告知(環境省のHP等)と市民が傍聴できる様にすることを要請しました。
 さらに、各市町村の住民に対して環境大臣及び千葉県並びにその市町村長の同席のもとで、住民説明会の開催を要請し、この住民説明会によって住民の総意が得られるまでは、事業に着手することのないよう、厳重に申し入れを行いました。
 また、今回、千葉県において県有林及び民有地を対象とした理由は何かを明らかにすること、また、千葉県内における指定廃棄物の種類及びその量についてその算定根拠の詳細についての説明を求めたところです。
 環境省は市民団体からの申し入れ書や公開質問書に対して文書回答は一切行いませんので、回答期日を設定し、後日口頭での回答をもらうために出向いていくことになります。今後の動向について皆さんにもぜひ注視していただきたいと思います。

 東日本大震災被災地の海岸で起こっていること・考えたこと(3)

東京情報大学総合情報学部 原 慶太郎 

海岸エコトーンにおける復旧・復興事業(続)
 仙台平野の沿岸域では、総延長30 kmにわたりT.P.(東京湾平均海面)7.2 mの防潮堤を築く復旧事業が進められています。あくまでも破壊した構造物を修復するという位置づけで、当初は環境に対する影響評価はなされないか、専門家による既存資料の確認程度にとどまりました。復興の拠点となる仙台空港や下水処理施設を守る緊急性の高い工事という位置づけで進められたようです
(http://www.thr.mlit.go.jp/Sendai/kasen_kaigan/fukkou/index.html)。

   

防潮林の造成
 海岸に広がっていた防潮林の復旧事業も始まりました。仙台湾沿岸部のマツ林は、10メートルを超えるクロマツやアカマツ、そしてアイグロマツ(クロマツとアカマツの雑種)の高木が、地下水位が高い場所では根が抜けるかたちで流亡し、地下水位が低い立地では、幹折れや倒壊するなどの被害が及びました。一方で、林内には震災の年から種子や地下茎などで生残した植物たちが再生してきました。
 海岸林を管理する林野庁では、専門家による「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」を立ち上げて検討が進められ、『今後における海岸防災林の再生について』(2012)という報告がなされました。ここでは、「海岸防災林」という位置づけとなり、津波被害を防ぐためには、林帯幅を200 m以上、地下水面から2-3 m となるように盛土するなどの要件を挙げています。防潮林の復旧事業は、この報告書の趣旨に従って進められることになりました。
 調査区を設定した南蒲生モニタリングサイトでも、仙台湾沿岸域でかろうじて残ったマツ林に対して、上記の報告書に沿ったかたちで復旧事業の実施が決まりました。私たちも、当初はこの事業も防災のためには仕方がないのではと思いながら、残った海岸林や再生してきた生きものたちの調査を続けていました。しかし、事業の全容や再生してきた生きものの実態が明らかになるにつれ、このままでは、1000年スケールの大津波を乗り越えた生きものたちが、防災林の復旧事業によって危機にさらされていることを認識し、関係部局への働きかけを始めました。
 
復旧・復興事業と生きものたちの保全との軋轢
 仙台湾の砂浜海岸は、自然性の高い海岸が広がり、海浜植物やそこに生息する昆虫類などにとって貴重なハビタットでした。今回の大津波は、大規模な都市開発や水田開発が行なわれてから経験する初めて大規模災害で、その復旧・復興事業と、生きものたちの保全に関しては、我々が初めて直面する多くの課題が生じました。(続)

ハシブトガラスのピー助とカー子 -緑区下大和田の杉林に在住-

生き物コミュニケーター 市原市 南川 忠男 

 おれたちは下大和田に住んでいる2歳のハシブトガラスのカップルだ。まだ結婚してないが集団生活の中で知り合い、婚約し、2015年3月めでたく新婚さんになるんだ。ねぐらから集団で出て、又、同じ所で寝暮らしするのはその年巣だった若鳥と2年生までで、10羽くらいでカアーカアー(ハシボソはガアガア)騒いでいるのは未婚の若者で、結婚すると自分たちの新居探しをしなくてはならない。

 

 おれたちは今どこに縄張りを張ろうか悩んでいる。フクロウのアジトから遠い高い杉か向かいの大楠の洞が一等地だが、序列1番(つがい)と2番の夫婦が住んでいる。去年の新婚さんで弱そうなポン助に迫って少し縄張りを分けてもらおうかとカー子と相談している。ちょっと喧嘩になるけどね。おれたちハシブトカラスの色覚は人間が持っている赤・緑・青色に反応する錐体に紫がひとつ多く(4つ)あるので、人間と違って緑から青にかけて同じ色味には見えず、虹なんか14色に見える。
 新緑の頃も、人間よりもっと鮮やかな色彩の世界に見える。視力は人間の5倍くらいあるので、4Kテレビどころでないくらいとてもきれいだぜ。また、若いカラスほど黒の羽根に混じる紫が濃いので、遠くでも年齢が判る。人間には熟しているか識別しにくい木の実も、その表面の紫外線の反射率の違いで一番いい餌の時に食べている。結婚すると3月頃4~5個の卵を産み、カー子が20日抱くと孵化する。その間、おれが餌を運ぶ。巣がどこにあるかわからないように、直接渡すことはなく、離れた枝に置き、カー子が取りに来る。
 巣立ちは8月で、2羽しか巣立てない。一番の天敵はフクロウで、この間はポン助の巣を見破り、夜襲をかけていた。かわいそうに雛が食べられた。おれたちはフクロウがいなくても餓死と病死が一番の死因で、人間も1年で1千万人も餓死していることを考えると、同じだね。
 仲間から聞いた話だが4年前に軽トラで網代さん田んぼに行く道を塞ぐように割ったタイルやコンクリの建設廃材を運んできたワルを上空から見た。その前の日に下見に来ていたのを覚えている。同じ白い車で袖ヶ浦ナンバーだったから。50代の男の顔を覚えていて、ちば環境情報センターのみなさんに伝えたかった。
 YPPの野草の会や収穫祭をやったあと遠近両用の眼で上空20mから食べ残しを探しに行くが、ここの人間は皆おりこうさんなので餌にありつけない。    この前の朝、フクロウが老衰で死んで森の広場に落ちたのを見たが、自然観察会の人間が来て、「あらフクロウさん、こんなところで南無」と言って丁寧に埋めていた。
 1日違っていたらおれたちのいい餌だった。人間から見たら残酷だけどカラスも死ぬと地面に落ち、他のカラスが食べてくれる。おれたちは一生懸命生きているので黒いからと言って気持ち悪がらないでくれよ。

チェーンソー講習を終えて②

千葉市緑区 松阪 廣剛 

 3月15、16日の両日に行われたチェンソー講習会についてご報告させていただきます。本講習会はチェンソーを用いて行う伐木等の作業に関する安全衛生教育で、講師に千葉県森林組合君津支所の木村正敏さんをお招きし実施されました。この講習会は大径木(胸高直径70センチ以上)の伐倒、直径20センチ以上のかかり木(伐倒中に他の木に引っ掛かってしまった木)の処理、および特殊伐倒を安全に行えるようになるためのもので、受講者には労働安全衛生特別教育等修了証が発行されます。
 講習は座学8時間、実習8時間でチェンソーの整備、使用手順、伐倒時の受け口と追い口の切り方などの基本から伐倒方向の選定、ワイヤー使用時の作業位置など、実際の作業時に注意すべき点まで多岐にわたり、非常に内容の濃い講習でした。参加者は14名、受講者の中にはチェンソー経験者もおられましたが大径木を伐採した経験は当然無く、初日の座学から皆さん真剣に受講されていました。
 今回の実習は、ちば環境情報センターで整備を進めている大和田の林で受けることができ、実践に即した作業を受けることが出来ました。溝腐れ病にかかった木を伐った感触や実際の伐倒時に必要な退避路の確保など、これらかの活動で必要になる作業を多く経験できました。実際の伐倒作業は想像以上に難しく、予定とは別方向に倒れたり、かかり木になってしまう場面もありましたがそれらも含めて実践的な研修を受けることが出来たと思います。
 非常に濃密な2日間でした。今回、都合がつかず参加出来なかった方、あるいはこれから里山くらぶの活動に参加したいと考えている方にはぜひ次回参加していただきたい講習です。また、今回参加した方も安全技術の再確認のため、数年に1回は参加した方が良いと思います。安全な活動を続けるために年中行事の1つにしてしまうのも良いかもしれませんね。


       

 沈没船重油流出事故その後

            千葉港ポートパークかもめのクリーン隊 千葉市中央区 谷口 優子   

 先月のニュースレターでお伝えした3月に浦賀水道で沈没したベーグルⅢ号からの重油流出事故の続報です。
 館山市坂田海岸では岩に重油がかたく貼りついていました。砂を掘って貝拾いをしていると指先に重油がついてきました。海岸に新しいオイルの漂着はなく、固まった重油がところどころに落ちていました。別の海岸では油回収業者の人たちが作業していました。被害が大きかった富津市萩生漁港、金谷漁港でも漁を再開しているそうです。岩に着いたオイルは専門業者でないと落とせないとのことで北の磯から順番に清掃作業をしています。
 生きものへの直接の被害はわかりません。拾った貝の内側にべっとりと黒い重油がついていたのを見てがっかりしました。

貝のよもやま話 14 -海そうめん-

 春になると潮が大きく引くようになります。するとしばしば岩場でラーメンのようなものを目にすることがあります。それはアメフラシという大きなウミウシ(巻貝のなかまです)の卵塊(中に卵がたくさん入っている)です。これを「海そうめん」と呼んでいます。ことしはどうしたことか千葉ポートパークではまだ親も卵も見かけていないのです。潮干狩りではアサリやシオフキが採れています。青潮の影響なのでしょうか?小さな人工の浜ですが、観察を続けているとその年その年で海の状態がまるで違うことに気づくことがあります。これからが貝の産卵のシーズンです。
 いつもクリーンアップしている千葉ポートパークで「みどりの学校」が5月24日(土)開催されます。今回は「海辺のいきもの観察会」で谷口がみなさまをご案内いたしますのでよろしかったらいらしてください。
   千葉ポートパーク管理事務所 043-247-6049 (9時~17時まで受け付け)
 

<総会のご案内>

本年度の総会を 6月7日(土)13時からQballで実施します(詳細はパンフで)。

     

【発送お手伝いのお願い】

ニュースレター2014年6月号(第203号)の発送を6月10日(金)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。

      

編集後記: 昨年から本格的に始めた下大和田の山の手入れ。朽ち木を倒し、枯れ枝などを整理して、荒れていた森が見違えるようになりました。林内は明るくなって、ヒトリシズカを始め埋土種子からであろう草木の芽生えが、林床を彩るようになりました。人が適度に管理することが、生物多様性を育んでいるのを実感しています。   mud-skipper