ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第202号
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千葉市稲毛区 桜井 健
ちば環境情報センターも法人会員となっている「自然エネルギーを広めるネットワーク」主催の市民ソーラー発電所の視察に先日山梨県北杜市まで行って来ました。
この(株)市民ソーラーが行っている市民出資の太陽光発電の仕組みは、出資を募って建設し売電収入を出資者に還元する形ではなく、既に建設されたパネルを1枚単位で「分譲」するというパネルオーナー制度という形を取っています。
http://www.shiminsolar.com/owner.html
ファンドのような金融商品の形を取らず、物品の売買の形を取ることで、出資者にも実感のある「創エネ」に関わってもらいたい、という思いで始められたそうです。
千葉県内でも、私を含めた「自然エネルギーを広めるネットワーク」の中のメンバーで、山梨の例を参考に、同じような形で市民出資の「創エネ」をやっていこうと動き出しています。
写真は大網白里市に建設中の「ソーラーシェアリング」=農地で耕作をしながら、その上部で太陽光発電をしようという施設です。30%をパネルに70%は空間になっていますが、作物の種類によってはむしろ収量が上がるという実証も報告されています。この場所ではブルーベリーと落花生を栽培する予定です。
現在まずは地権者オーナーさんの私財で当面の建設は進行中ですが、これを市民出資の形でパネルを1枚単位で分譲していき、第2、第3の発電所も建設していこうとしています。
都市住民の方で自然エネルギーの創造に自分も主体的に関わりたいという思いのある方に小額の出資から参加できる仕組みを考えています。
また詳しいお話がご案内できるようになりましたら、ご報告させていただきます。
東金市 中村 真紀
6月に入り、いよいよ新居完成まで秒読み段階です。月末の引っ越し予定まで私たち家族も忙しくなります。今月は我が家の最大の特長の2つめとなるソーラーパネル「共同太陽光発電プロジェクト」のご報告をさせて頂きます。
現在、日本全国に広がっている市民発電の真似っこをして、自分のお家でもソーラー発電したいけれどなかなか出来ないという方、又、出来るだけ地産地消にこだわってエネルギーも自分たちで作りたいという私たちの想いにご共感下さった方々に、わが家の屋根に乗る太陽光パネルの初期投資にご協力頂き、発電スタート後に私たち家族が発電&節電し、売電した利益から皆さんにご返還していこうというこのプロジェクト。おかげ様で目標金額達成致しました!!
大空コース(20万円)…5人 合計100万円
ひだまりコース(5万円)…10口1人,3口2人,2口1人,1口4人 合計110万円
寄付コース…3口1人,1口9人 合計 12万
総計222万円
太陽光見積り
2,289,600円-補助金71,280円=2,218,320円
ご協力頂いた皆さん、本当にありがとうございました。プラン構想から約半年、未知へのプロジェクト挑戦に不安もありましたが、ちば環境情報センター代表の小西さんにもおしりをたたいて頂きながら(!?)無事にここまでくることができました。ご融資頂いた方には、これから頑張ってお返ししていきます。皆さん、どうぞお元気でいらして下さいね。それから3月のお彼岸中におかげ様で無事に3人目が生まれました。家族全員、彼にメロメロです。
見学会のお知らせ6月28~29日に我が家を設計して下さった「さんむフォレスト」の稗田忠弘さん主催で、完成見学会を予定しています(詳細はイベント情報)。小さいけれど、私達らしい家になりました!両日ともさんむフォレストの方々が目をキラキラさせながら色々説明して下さると思います。 ぜひ見にいらして下さい。 |
-千葉市緑区下大和田の水辺に在住-
生き物コミュニケーター 市原市 南川 忠男
昨年、ぼくは下大和田のわいわい広場の南の土水路で生れ、幼虫時代を4回(5齢)も脱皮をしながら成長してきました。昼間は石の下にもぐり、夜になると川底でカワニナまたは弱ったオタマジャクシやヤゴを食べています。
6月の終わりごろにさなぎになり、7月の上旬に水から這い出し羽化するつもりです。成虫になると1週間くらいの短い寿命なんですよ。ぼくの仲間も羽化したら発光しているので、人間が観察に来てますね。飛びながら発光しているのはオスで、0.5秒光り、0.5秒休むサイクルです。
発光しているのはメスに居場所を知らせるためで、メスも葉の上で1秒光り、こちらにおいでと光通信します。
葉の近くに降り立ち近づいていくと、オスは点滅を早めていきそのうち交尾します。
ぼくたちホタルの発光は、ルシフェリン(発光物質)がルシフェラーゼ(酵素)などによってATP(エネルギー物質)と気管から入ってきたO2 (酸素)を使って、反応を繰り返すことにより、点滅する仕組みとなっています。
蛍光灯は20%の発光効率ですが、ぼくらは88%と高いです。なんとぼくらの発光物質は癌の転移経路の解明や薬物の体内動態を調べるのに役立っているんですよ。そうしてうまく交尾すると、メスは100個くらいの卵を葉(コケ?)に産み、1カ月後の8月の盆の頃に孵化して水中に入ります。ここ下大和田の夜は車が通らない場所なので、ヘッドライトがまぶしくなく繁殖に適した場所です。
2004年8月のニュースレターに、「房総のホタル」と題して倉西さんが執筆された、ヒメホタルの一大生息地の内浦山県民の森のことが書かれています。道路開放の計画が発表された時、繁殖時期にまぶしい光を受けると動けなくなるので、夜間だけでも通行禁止をお願いしました。
またぼくたちは、外敵をくらますため死んだまねをします。今度観察会の時にでも、ぼくたちを捕まえて手のひらに置いてみて、ひっくり返って動かない状態を観察してみてくださいね。そしてなによりも、ぼくたちがこの地で長く命をつなげられているのは、下大和田の谷津田にきれいな水が流れる土水路があり、そこでサカマキガイやタニシ,カワニナなどが生息できる環境が続いているからです。
人間がこの地を開発すればあるいは汚せばその行為は1回ですが、ぼくらの命はその時点で終わります。ぼくの遺伝子が引き継がれ、末永くアカガエルの一平やクサガメの亀子らと共に暮らしていきたい。
参考文献:加藤博章ら、京都大学、ホタルの発光色を制御するしくみ、(2007)
写真提供:田中正彦氏
東東京情報大学総合情報学部 原 慶太郎
復旧・復興事業と生きものたちの保全との軋轢(続)
2011年3月の大震災では、多くの人命が失われ、全国の犠牲者は死者15,884人、行方不明者2,633人の計18,517人に上りました(警察庁 2014年3月10日現在)。仙台湾沿岸でも多くの方々が被災し、震災直後から余震による被害を最小限に留めるために、捜索が終了した箇所から復旧事業が始まりました。これだけ多くの人命が失われた災害でしたので、まずは余震などによる被害を抑えるための事業が進められました。そのような中で、海岸エコトーンを襲ったこの津波の現状を知り、今後の対応を探るために、在仙の生態学者などを中心に2011年6月4日にフォーラムが開催されました。その時は、被害の状況に関する情報を共有するのが精一杯で、生きもののことに言及する余裕はありませんでしたし、そのこと自体、謹むべきことなのではという気持ちが強かったように思います。
津波被災地の捜索と瓦礫の撤去の進捗は市町村によって大分差がありました。仙台市は、市役所はじめ市の中心部には津波の被害が及ばなかったため、他の地域に比べると早い時期から復旧事業が始まりました。仙台平野の七北田川と名取川に挟まれた仙台市宮城野区と若林区では、市の方針として、県道塩釜亘理線と市道岡田107号線の海側を災害危険区域に指定して非居住区域とすることが示されました。そこに土地を持つ人々にとっては、複雑な思いであるのは想像に難くありませんが、何年か何百年先かはわからないものの、必ず再来する津波の被害を想定しての苦渋の決断だったと思われます。そのような情報が伝わってきた頃から、この一帯が非居住区域となるのであれば、防潮堤や防潮林などの復旧事業は、人命を第一に考えた強固な建造物や植林ではなく、震災前の海岸エコトーンがもっていた生物多様性のめぐみである生態系サービスが享受できるような、そして文化的景観ともいえる貞山堀と堤防のマツ林を保全しながらの事業とすることができないか、という声が次第に強くなりました。
そのような声に押されて、事業を進める国交省や林野庁、調整する環境省では、震災の影響の実態を把握し、環境に配慮した事業を実施するための委員会が立ち上がりました。国交省では、2012年8月10日に「仙台湾南部海岸環境対策検討委員会」、林野庁では、2013年3月17日に「仙台湾沿岸海岸防災林生物多様性保全検討委員会」、環境省では、2013年2月8日に「東北地方太平洋沿岸地域自然環境調査検討会」がそれぞれ設けられ、復旧・復興事業の影響調査などが実施されることになりました。しかしながら、再生してきた生きものたちを埋め尽くして進む復旧事業を止めることは難しく、私たちは、声なき生きものたちを代弁したパンフレットを作成しました。それが「海辺のいのちのメッセージ」です。
(https://sites.google.com/site/ecotonesendai/news/panfurettohaibiannoinochinomesseji)
お詫びと訂正:ニュースレター202号で紹介した写真10コナラの実生とあるのはサクラの実生でした。編集作業上のミスでお詫びして訂正いたします。
貝のよもやま話 14 -イボニシの産卵-5月30日(金)、定例のクリーンアップを行った後、潮まわりがいいので参加した方々といっしょに海岸の観察をしました。浜は潮干狩りをする人でにぎわっていました。アサリとシオフキが採れているようです。千葉ポートパークの海岸は人工の干潟ですが、千葉市の幕張~いなげの浜にかけての海岸にくらべると昔の千葉の海の面影が残っています。ここ数日、気温が高い日が続いているせいで海はプランクトンの異常発生(赤潮)が出て水が褐色ににごっていました。夜は気温が下がるのでもしかしたら軽い貧酸素状態になるのかタイワンガザミ、イシガニ、サッパの幼魚などが死んでいました。 かつて船の底に着くフジツボを予防するために有機スズという劇物が塗られていたことがありました。その影響で海岸からイボニシが消えた・・・・環境ホルモンの影響、といわれたことがありました。現在ポートパークの護岸にはイボニシがすぐに見つかります。気温が高いせいか5月にイボニシの産卵を見たのははじめてです。イボニシは内臓に紫の色素を持っていて卵のカプセルに注入します。紫の色素には毒があり、紫外線が当たると紫色に発色します。母貝の愛が外敵から卵を守っているのです。 伊勢の海女たちはこの「紫」を利用して自分の手ぬぐいにおまじないの星のマーク(セーマン)、網目模様(ドーマン)や自分の名前を染めました。貝で染めた紫色は紫外線や水に強く、いざというときの目印になったということです。 ちなみにセーマンは安倍清明、ドーマンはそのライバルの芦屋堂満のことだといわれています。ドーマンの網目模様はたくさんの目で守られている、そういう意味も込められているそうです。 イボニシはアッキガイ科というグループの貝です。このなかまの貝はすべて紫色の色素を持っていて古代フェニキアではシリアツブリという貝を使ってローマ皇帝のマントを染めていました。英語のパープルpurpleは貝の赤みがかった紫が語源です。イボニシは潮干狩りに来た人はだれも見向きもしないような小さな巻貝ですが、ディープな世界があります。
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編集後記: 6月5日関東甲信越から東北南部までが梅雨に入りました。関東の梅雨入りは、平年より3日早く、昨年よりも5日早いそうです。人間にはじめじめしてうっとうしいですが、生きものたちにとっては恵みの雨の季節到来です。最近は考えられなかったような集中豪雨に見舞われることも多いですが、今年はそうならないことを祈っています。 mud-skipper