ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第205号 

2014.8.11 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 鋸南町における汚染土壌処理施設設置計画の問題点   
            その1.汚染土壌埋立処理施設とは?…なぜ、採石場に作るのか
  2. 第11回里山シンポジウムin君津 「君津の山ににぎわいを」
  3. 「谷津田の生きものが語る」    シリーズ6   
                  コガネグモのアミちゃん  ―千葉市下大和田の草原に在住―  
  4. 都川で川遊び       

鋸南町における汚染土壌処理施設設置計画の問題点 
その1.汚染土壌埋立処理施設とは?…なぜ、採石場に作るのか

鋸南町の環境と子どもを守る会事務局長 田久保 浩通 

 南房総の玄関口、鋸南町は自然豊かな美しい町です。この町に現在、土壌汚染対策法に基づく「汚染土壌埋立処理施設」設置計画が、地元採石業者の鋸南開発(株)によって進められています。採石場は、館山自動車道路の鋸南富山ICの正面に位置し、優良農地や町内主要河川に隣接し、河口にある勝山漁港、勝山市街まで2㎞程の場所にあります。その採石場に汚染土壌埋立処理施設を造ろうとしているのです。
 この施設は、有害物質の第二溶出量基準以下であれば埋立てできます。第二溶出量基準のほとんどが環境基準10~30倍、排出水基準のほとんどが環境基準の10倍を受入れることができる施設なのです。(環境基準とは、最低値ではなく、健康保護・環境保全を悪化させない大気・水・土壌・騒音値のこと)この施設には汚染土に含まれている有害物質、ヒ素・鉛・フッ素・ホウ素・カドミウム・六価クロム等8種の有害物質を受入れることができます。
 汚染土壌は、環境基準を超過した土壌が扱えない残土とは違い、有害物質が含まれた土を扱うもので、有害物質の基準は廃棄物とほぼ同等なものです。残土は残土条例・廃棄物は廃棄物法・汚染土は土壌汚染対策法でそれぞれ規制されています。土壌汚染対策法とは、土壌汚染による健康被害の防止を目的として調査や汚染区域の指定、浄化等の措置、移動や管理の方法などの対策を定めた法律です。しかし法的に汚染土壌とされるのは要措置区域等に指定された基準超過土だけで、その他の汚染土壌は法的には汚染土壌とされず、中間処理施設で2次管理票が発行されて発生元とリンクされないなど、この法律は、ザル法と呼ばれていて抜け道が多く、法律施行後11年たちますが千葉県では指導要綱が未整備な状態です。

 

 同社は、1977年から岩石採取を行い、H.19年認可(申請)では、標高13m以下を掘ってはいけないものを、標高1mまで深掘りし、今回認可では認可通りに深堀を埋め戻せないなど、認可(申請)違反を繰り返しています。H.24年12月、掘削する岩石がなくなったため、認可を更新できず、深掘りした約47万㎥の大穴が開いたままになっています。認可(申請)では、堀下がりの埋め戻しは「表土等の場内だけの土砂で埋戻し、廃棄物その他の有害物質を搬入しない」と県に約束していながら、場内だけの土砂で埋戻しができなくなると、他法の許可を取って汚染土で埋め戻すという是正計画書をH24年9月に県に提出しました。この申請は汚染土で埋戻し必要量約48万㎥を埋戻しするものですが、汚染土壌埋立処理施設の計画はその上に更に100万㎥を積上げ、計約147万㎥を埋める計画です。
 事業者は採石場跡地利用計画としていますが、認可違反の採石場を他法の許可による汚染土壌埋立処理施設へ転用する計画です。(つづく)


<編集部より>

 鋸南町議会において、平成25年第1回定例会(3月議会)で鋸南開発㈱の汚染土壌処理施設設置計画について反対を求める請願が賛成多数で採択、鋸南開発㈱の汚染土壌処理施設設置計画について反対する意見書が賛成多数で採択され県に送付されています。
 また、平成26年第1回定例会(3月議会)において、採石場における深掘りの埋戻し土砂について安全基準の作成を求める請願と採石場における掘下り採掘の埋戻し土砂の安全基準の作成を千葉県に求める意見書、および採石場における掘下り採掘の埋戻し土砂の安全基準の作成を鋸南町に求める意見書が賛成多数で採択されています。

第11回里山シンポジウムin君津 「君津の山ににぎわいを」

里山シンポジウムin君津実行委員会 尾形 孝和 

1.はじめに
 2014年5月18日(土)に君津市学習交流センターを会場に第11回里山シンポジウムin君津が開催されました。
 参加者は概ね500名で準備した資料250部が開場早々になくなってしまい大変迷惑をかけました。全県各地域や県外からの参加者も多くありました。これは、里山活動の高まりや今までの里山シンポジウムの着実な活動の成果です。
 第11回の里山シンポジウムを君津で開催できたことで、君津の里山活動に大きな勢いがついたように思います。開催にあたり、里山シンポジウム実行委員会や里山をイメージしたチラシの作成者、君津市役所等多くの関係者のご指導に感謝します

   

2.テーマについて
 里山シンポジウムが基本的に追求してきた重要なテーマは第1回から一貫して「里山に託す私たちの未来」です。そこで、君津では「里山、裏山、命山 その恵みと創造」としサブテーマに「〜見る、聞く、触れる、嗅ぐ、味わう そして作る、遊ぶ、学ぶ〜」を設定しました。君津市の里山は九十九谷の深い森があり、亀山湖・三島湖から小糸川・小櫃川が流れ東京湾に注ぐ、自然豊かな森と水に代表されます。

 

 そこで、このシンポジウムを契機に、現在里山をキーワードに活動している多くの団体や市民と情報交換や連携を図り、里山の荒廃や有害鳥獣等の身近な問題にも視点をあてながら、君津市の里山に一層のにぎわいをもたらしたいと考えました。特に「命山」という文言は、君津が最初に提起した里山の重要なキーワードとなっています。里山(命山)は、昔から経済活動(現金収入を得る)を抜きにしては考えられない場所なのです。このことについては、今回のシンポジウムの中では十分に具現化できませんでした。

3.発表内容について
 午前中に地元君津市内の8団体の発表(みんなで作る里山活動8×10分)を行いました。プレゼンテーションにあわせて各団体の活動を紹介したカラー版の手引書「君津の里山のにぎわい」は好評でした。同時に、野生動物と里山分科会、台湾国との国際的里山活動分科会も展開され会場は満員状況となっていました。合わせて、3日前よりギャラリーにて28団体が里山活動紹介の手作りのパネル展示を開催しました。

   

 午後、開会行事で市長様の挨拶から実行委員長挨拶につづいて千葉県の担当課から第3次里山基本計画についてお話を頂きました。その後、シンポジウムを構成する各発表が続きます。時間の制約もありましたが、県内の里山シンポジウム分科会の発表を行いました。
 基調講演は、ケビン・ショート氏による「里山のにぎわいを創りだす力」の講演です。この聴講希望者が午後に多く来場され好評でした。その後、テーマに即して地元の発表(3団体×20分)を行い、パネルディスカッションを行い会場からも多様な意見がありました。それを「君津里山宣言」として発表して閉会となりました。

4.終わりに
 このシンポジウムを開催して、君津市内で活動していた里山活動団体相互の連携が一層深まったと思います。そして、今後も里山を維持発展させて行くために「命山」の視点を持ち、「君津里山宣言」を具体的な活動に発展させて行く、里山活動団体や市民とつながる「きみつ里山活動ネットワーク(仮称)」を考えて行きたいと思います。

「谷津田の生きものが語る」 シリーズ6
コガネグモのアミちゃん  ―千葉市下大和田の草原に在住―  

聞き手;大網白里市 平沼 勝男

 私はコガネグモのアミちゃん。千葉市下大和田の草原ではちょっと知られた存在よ。自分で言うのもなんだけど、草原の貴婦人と言ったところかしら。それなのに、クモというだけで、やれ気持ちが悪いとか、怖いとかで嫌う人が多いわ。私そんなこと言われるたびにとっても傷ついちゃうの。どうしてよく見てくれないのかしら。私の姿をよく見て欲しいわ、とっても綺麗なのよ。特にすらっと伸びた脚線美、美しく彩られた腹部の横縞。8本ある脚は普段は2本ずつ束ねてまるで4本脚よ。腹部の縞模様なんか見事な色合いでしょ。網を大きく丸く張って、その中心にいる姿はまるで優れた芸術作品よ。でもさすがはちば環境情報センターの人たちね、クモ好きな人が多いのよ。特に私たちコガネグモのことは大事にしてくれるわ。変わった人達だなんて言わないでね。
 ところで私アミちゃんはお分かりと思うけれどメスですよ。多くのクモはメスが大きくてオスは小さいの。成熟したコガネグモのメスの体長(脚と触肢を除いた胸頭部と腹部の合計の長さ)は20~25㎜、それに比べてオスはわずかに5~7㎜しかないの。オスはメスが作った巣の隅っこで、目立たなでいることが多いわ。

 

 大きな丸い巣は専門的には垂直円網というのよ。他にもいろいろなタイプの巣があるけど種類によって異なるの。コガネグモはもっぱら垂直円網ね。田んぼの脇や草原に堂々と張っている姿は一見の価値はあるわ。もし見たことがないのなら、是非ちば環境情報センターの主催する毎月の観察会に参加してみてはどう。情報センター人たちが詳しくガイドしてくれるはずよ。巣の目的はあくまでも獲物を捕るため、住むためのものではないの。だから正式には巣ではなく捕獲のための網なのよ、知ってた? 私たちの網にかかる獲物は小さな蚊やハエくらいのものからカブトムシやカマキリ、アブラゼミ、オニヤンマだって捕まえるのよ、すごいでしょう。
 網の中心から放射状に伸びるタテ糸は私たちが歩くときに使う糸よ。円心状にめぐらすヨコ糸は粘着力のある獲物捕獲用の糸。私たちクモは8本もある脚を正確にタテ糸の上において移動するのよ、すごいと思わない。実は私たち目があまり良くないの。でも獲物が網にかかったときは糸の振動ですぐにわかるわ。獲物がかかったときはすばやく近づき、白いたくさんの糸を同時に出して獲物をくるくる回転させながらぐるぐる巻きにしちゃうの。この時の糸は補帯というのよ。真っ白になるまで包み上げる姿は、まるで人間が食べ物にラップで包むのと一緒ね。こうなるともう安心、がぶっと獲物に噛みつき、牙の先から麻酔効果のある毒液を注入するの。毒液と言っても安心して、人間には無毒で昆虫にだけ効くのよ。すぐに獲物は動かなくなるわ。次に唾液腺から消化液を出して獲物を溶かすの。そして溶けたら吸って食べてしまうの。専門家は体外消化と言っているわ。だから私たちの消化管は短くてすむのよ。
 どう私たちコガネグモってすごいでしょう。いろんなことができるのよ。でもまだまだあるわ。例えば産卵のときよ、産卵のときは糸を厚くして綿布団のようにするの。その上に卵を押し付けるようにして産み付け、その上にまた糸を厚くして覆うの。こうして出来上がったものが卵のうよ。形は木の葉型。安全で快適な子グモちゃんたちの棲みかね。秋に子グモちゃんたちは孵化するの。幼虫で冬を越すの。
 私たちコガネグモは、以前は本州中部から南のほとんどの地域に、ごく普通に身近に見られたクモなの。それが証拠に、九州の鹿児島県では、私たちコガネグモを戦わせるクモ合戦なんていう伝統的な行事が古くからあって、今でも続いているわ。しかし今では私たちコガネグモが安心して生きていける草原がどんどん減ってしまって大変なの。だから逆に、コガネグモがいる場所は豊かな生態系が残っている貴重な草原と言えるのよ。以前は情報センターの人たちもクモ合戦をやったことがあるの。それは子供たちが大喜びで大人気だったわ。私たちコガネグモのことをもっと多くの人に知って欲しいわ。そして私たちが安心して暮らせ場所を大事にして欲しいの。
(参考文献:クモの巣と網の不思議 池田博明編 ,日本クモ類大図鑑 千国安之輔著) 


        

都川で川遊び

      千葉市稲毛区 桜井 健 
  ー主催の「都川川遊び」にスタッフと参加しました。毎年海の日の恒例行事となっている、都川川遊び。今回で19回目。一昨日準備の草刈りをしましたが、直前まで天気や雨量が心配でしたが、今日は天気に恵まれました。
 今年は市の教育委員会の後援も得て、市内の小学校にもご案内を差し上げたところ、先週中に参加申し込み希望が殺到し、定員オーバーでお断りをせざるを得ない盛況になりました。毎年ご参加いただくご家族もいますが、今回はじめてご参加のご家族が多かったように思います。
 都川は流域が千葉市内で完結していることや、下流部は千葉市街を通り県庁の前を通って千葉港に注ぐことから、千葉市のシンボル的な河川でもあります。その中流部の東金街道に沿ったあたりには、周辺の湧き水を集めて、思いの他きれいな流れになっている部分もあります。
       
 この川遊びでは、コースを下見してきちんとルートを定め、川への出入りもしやすいように、草を刈ってハシゴをかけて、と準備をします。
 今年はどの家族もたくさんの生きものを獲っていました。ドジョウ、タモロコ、モツゴ、コイ、メダカ、各種のヤゴ、エビの類、コオイムシやマツモムシなどの水棲昆虫、などなどいろいろ採れましたが、昨年との印象の違いとしては、ドジョウの個体数が非常に多かったように思います。
 川の様子も毎年変わりますが、生きものの状態も毎年同じではありません。毎年定点でこの活動をしているので、環境の変化も体感できます。
 管理されていない水場で、子どもを遊ばせることはなかなか簡単ではありません。今日我々が活動した地点も、事前の下見や、草刈りなどの岸の整備、深みの部分に注意の立て札を立てたり、岸辺と川の中に随所に監視のためのスタッフを置くなどをしているので、家族がふらっと来て遊べるわけではありません。
 しかし、千葉市の中心部からほど近いところで、驚くほどたくさんの生きものに出会える、という経験は、子どもたちにも親御さんにも知っていただき、感じていただければ、と思っています。

【発送お手伝いのお願い】

ニュースレター2014年月9号(第206号)の発送を9月8日(月)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: 幼い頃母に読んでもらった「りゅうの目のなみだ」。今年8月、山形県に行った折、浜田広介記念館に立ち寄りました。ひろすけ童話の挿絵の多くを描いた初山滋の企画展が開催されていました。いわさきちひろにも大きな影響を与えた一人だそうです。子どものつぶらな瞳を曇らせる戦争は絶対に起こしてはならないと改めて思いました。    mud-skipper♀