ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第213号
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NPO法人四街道メダカの会代表 四街道市 任海 正衛
田植え備えて、メダカ田んぼに古代米の苗箱を運び、水の中に置いた。数日後、苗に元気がなく黄ばんできた。「苗箱の中で根詰まりを起こしているのか元気がないけど」などと話していた。マンノウを使い田んぼを耕起しているとザリガニも元気がなく、ドジョウも簡単に手で掴める。よく見るとメダカがいない。水に何らかの異変が起きていることに気づいた。
四街道メダカの会が多くの市民とムクロジ会に集まり、ムクロジ自然の里を作り、管理・保全をしてきてから10年を経過していた。子供たちや市民の遊びの場・憩いの場として親しまれ、様々な生物が回帰してきていた。GER(ギア、政府系国際NGO)からも表彰されるなど、どこにでもあった当たり前の自然を復元し市民に自然の楽しさを伝えてきた。環境庁のモニタリング1000里地の千葉県内の最大の調査地点にもなり、多くの関係者が調査に参加していた。
異変が起きる前年(2012年)の秋から、ムクロジ自然の里がある谷津の上流で問題の建設残土埋め立ての特定事業が始まっていた。既に谷津の奥の方は別事業で埋められていたが、今回はムクロジの里からすぐ見えるところでの事業で20万㎥の残土を埋める。条例に沿って市の正式許可を受けており、環境上多くの問題を含んでいるがやめさせることは難しい。異変に気づいた私たちはパックテストによる水質の簡易検査を行い、余りにもひどい測定値に愕然とした。最大地点で水素イオン濃度(pH)が11.5、CODが40である事がわかった。メダカの全滅が、私たちに水の汚染を警告してくれたことになる。その後、四街道市とも連絡を取り、汚染原因の特定にあたった。
現在、事業は埋め立ては終了したが、汚染は放置されたままである。汚染は近隣の井戸にまで及び、地下水脈にまで影響を与えている。流出水は、小名木川、鹿島川を通り、印旛沼に流入している。市はボーリング調査から、埋め立てられた残土のほぼ全部が市の基準(pH9まで)に適合していないと見ている。埋められた残土は、およそ幅100m長さ200m高さ10mである。分析した残土・汚染水の数値から単なる残土とは思えない数値を示している。
四街道市の条例では埋められた不適合な残土は、撤去することを原則としている。現在、市は業者に「改善計画」を出させているが量が多いだけに様々な困難が予想されている。私たちとしては条例に沿った将来に負の遺産を残さない解決を求めている。なお、この経過の中でムクロジ自然の里は閉鎖することになった。
今後、東京オリンピックやリニア新幹線の工事に伴う建設残土の大幅な増加が予想されている。今でも、東京や神奈川から千葉県に大量の残土が持ち込まれている。残土埋め立てにより谷津が埋められ、生物多様性や水環境にこれまで以上の問題発生が予想される。また、残土に紛れて産廃の違法埋め立てなども考えられる。建設残土は産廃とは違って、その取り扱いに国の基準はないに等しい。建設残土について産廃に準じた扱いの法整備が早急に求められている。とりあえず搬出者責任を明確にすることである。
君津市では、千葉県外からの残土の持ち込みを認めていない。千葉県、及び独自の市条例を持っている市町村でも県外からの持ち込みを認めない条例改正を早急に求めたい。安易に谷津を埋めることは、自然環境上問題が多い。
大網白里市 平沼 勝男
私は大網白里市在住、ちば環境情報センターに所属しています。専門の知識はないけれど無類の自然好き。それも年齢を重ねるたびに好きの度合いが増えていくという困ったタイプ。そんな私が許されるのであればこの紙面をお借りし、自然好き人間が散歩をするとどんなことをするのか、という興味のない方には全くくだらない話なのですが、書かせてください。世の中にこんな人間もいるということで、どうか寛容のお気持ちで読んでいただけると幸いです。
3月22日の朝、春の陽気に誘われ家を出ました。少し風は涼しいけれど穏やかで良い天気でした。手にしたものはニコンのカメラと双眼鏡、時計代わりのスマホ、それにこの時期に欠かせない目薬・ティッシュ・マスクの花粉症3点セット。飲み薬を飲まなかったことを気にかけつつ住宅地をぬけました。
急に視界が開け、田んぼが広がります。私の住む大網白里市みずほ台の住宅地は農耕地と隣接しています。田起こしをしたばかりの田んぼからは懐かしいニホンアマガエルの鳴き声が聞こえてきました。もう冬眠から目覚めていたようです。
耳を澄ますとウグイスの「ホーホケキョッ」、コジュケイの「チョットコイチョットコイ」、さえずりが聞こえました。さえずりとは繁殖期のオス鳥の鳴き声。恋の季節が始まっているようです。土手にはオオイヌノフグリ、セイヨウタンポポ、ヒメオドリコソウ、ホトケノザが咲いていました。おなじみの春を彩る花達です。ツクシンボも出ていました。
近くの畑に目をやるとモンシロチョウが飛んでいました。もうすっかり春が来ていました。私が自宅周辺を散策するのは健康維持という目的もありますが、このような場所で季節の移ろいを感じることが好きだからです。
大網市内は灌漑用水の池が数多く点在します。そのため私の散策はいくつかの池をたどるルートにしています。この日のルートは自宅⇒殿塚池⇒寺下池⇒宮下池⇒天神池⇒自宅に戻るというルートです。普通に歩くだけなら小一時間でしょうが、私の散策は観察し、写真を撮り、時には人と話すこともあるのでその2倍から3倍の時間がかかります。
歩を進めていると、ほ場整備のされた大きな田んぼがあり、そこでツグミが群れを作っていました。双眼鏡で数えると分かっただけで36羽です。渡り鳥であるツグミは冬が終わり、シベリヤに帰る日が近づくと、このように群れを作り始めるようです。もうじきツグミたちが見られなくなると思うと寂しい気持ちになります。ツグミの他にもタヒバリやハクセキレイがいました。
こういった観察ができるのは双眼鏡のおかげです。私のものは倍率8倍、レンズの直径は25㎜と小型のものです。重さを量ると300グラムなので首からぶら下げても苦になりません。カメラとともに散歩の必需品です。またほかにもメリットがあります。人通りの少ない場所をふらふら歩いていても、カメラと双眼鏡があれば自然観察をしている人とみなされ、不審者と思われないことです。最近は物騒なので。また、これは出会った人に話しかける時も有効です。
「私はこの辺の自然が好きでよく観察しています」などと言うと、大概の地元の人は喜んでくれて、いろんな話をしてくれます。前に出会った話好きなおじさんは、この辺のことを聞きいているうちに、昔の職業や、家族のこと、はたまた嫁いで行った娘とその家族、最近入った農協の保険のことなどを詳しく聞かせてくれました。おかげですっかり帰りが遅くなってしまいました。
また別な人は、にんにくの芽がたくさんできているから採っていけと言われ、自宅へのお土産にしました。また、夏ミカンをいつでも好きなだけとっていけと言ってくれる人や、とっておきのセリがたくさん生えている場所を教えてもらったり、様々人たちとの出会いがありました。
話がそれました。しかしこの日も出会いがありました。宮下池を出て家に帰る途中に広大な面積をもつ田んぼに丈の短い植物が育っていました。昨年まではここは間違いなく稲を植えていた田んぼでした。どうしてもその植物の正体を知りたて、近くに農家の方がいたので聞いてみました。
植物の正体は小麦でした。数年前にブルドーザーが入り、区画の小さな田んぼから、大きな田んぼに改修したのは私も知っていたのですが、これは国と県がやっている体制整備ということだそうです。田んぼを維持管理するために営農組合というものに入り、機械耕作のやりやすい大きな農地に改修しもらったそうです。
しかしその組合に入るとお米のほかに麦と大豆を輪番制で作らなくてはならない制約があるとのこと。麦を作っても大したお金にならず、毎年お米を作りたいけどそうはいかないとのことでした。この農家の方から逆に質問攻めにあいました。
私がNPO法人に所属して田んぼをやっていると話したからです。無農薬、無肥料というと驚いていました。耕運機もないというとあきれていました。ホームページを見ると言っていました。
自然観察に話を戻します。この日はツグミの群れのほかに二つ特記したい収穫がありました。一つは先ほど述べた体制整備で大きくなった田んぼの隅に水たまりがあったのですが、その水たまりの中に、なんとニホンアカガエルの卵があったのです。ニホンアカガエルは千葉県では重要保護生物となっています。このような場所でも逞しく生きているのですね。これは初めての発見でした。
もう一つの発見はトウキョウサンショウウオの卵を見つけたこと。場所は宮下池の上の田んぼの後背地にある水たまりで、森から出てきた絞り水が溜まる場所です。実はこの場所でトウキョウサンショウウオの卵を最初に発見したのは3年前です。毎年見に来ていますが今年はこの日が初めてでした。6個の卵がありました。今年もあったかと思うとホッとします。
こんな感じで私の散歩が終わります。花粉症をものともせず、気の向くまま、足の向くまま、時間の許される範囲で。行くと必ず小さな発見・大きな発見あります。私にとって心が最高にリラックスできるひと時なのです。
山武市 中村 彰宏
昨年夏に山武市に建てた我が家についての記事を妻が何度か書かせて頂いていますが、薪ボイラーで湯焚きする生活がきっかけになり、山武市のバイオマス推進室が募集していた提案型事業の採択を受けて「さんむ木づかいネット」を立ち上げました。
これは、山や庭の木を処分したい「オーナー」と、木の伐採や運搬をする「ワーカー」、木を製材したり家を建てる「メーカー」、木の商品の購入や薪を消費する「ユーザー」をつなぐことで、地域の自然資源の有効利用を進めるためのネットワーク作りです。
薪ボイラーの生活をしていると、自然に「うちの庭木も使ってくれないか」と声をかけて下さる方が続出してきて、実際に木を頂くとオーナーも喜んで下さいます。それから、「もっとほかにも木を処分したい人・欲しい人がいるのでは」と思い、さんむ木づかいネットを立ち上げました。
この環が広がり、地域の里山資源が当然のように利用されるネットワークにしていきたいです。
千葉県にすむ哺乳類③ キョン
「キョンなんて動物は、初めて知りました。」 千葉県にすむ外来哺乳類について、授業でお話しした後、高校生に書いてもらった感想の一節です。たぶん、千葉県北部に住む人々の多くは、きっと同じだろうと思います。これまでに、キョンという動物名を聞いたことがないと思います。 キョンは中国南部原産の小形のシカで、「特定外来生物」の1つです。千葉県では、県南部で野生化し、増え続けています。 鴨川市内にフラミンゴのショーを見せる観光施設がありました。経営不振におちいって、この施設は2001年に閉鎖されました。今も、JRの駅だけは、昔の名前で残っています。 ここで、キョンが飼育されていました。施設閉鎖後、千葉県の南部で、キョンが急増しました。千葉県内でキョンを飼育していたのは、この施設だけでしたので、ここから逃げだしたものが、野生で繁殖したと思われます。 閉鎖するにあたって、キョンを他の施設にひきとってもらうか、それが無理なら、殺処分するべきだったのですが、そうしなかったようです。キョンがいる地域には、もともとニホンジカが棲んでいますが、キョンの足跡は、ニホンジカの足跡より、ずっと小さいので、誰でも見分けることができます。 2004年4月1日に、鴨川市の金山城址付近で、地元のかたから、お話を聞くことができました。 「シカは夜間に庭にやってくる。キョンもくることがある。シカは、庭のウメの木などの樹皮を、はがして食べてしまう。 以前は、サルもやってきたが、このごろはこない。モウソウダケの林には、イノシシがやってきて、竹の子が地面に頭を出す前に、ほじくり出して食べてしまう。今年は、まだイノシシがきていない。 ・・・・・」 この地域の農林業被害は、いろいろな野生哺乳類がからんで発生しています。キョンによるものがどのくらいあるか、私にはよくわかりません。でも、キョンは、確実に害獣の1つになっています。 【発送お手伝いのお願い】ニュースレター2015年5月号(第214号)の発送を 5月8日(金)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。 |
編集後記:今年も米づくり講座が始まりました。3月21日のオリエンテーションに続き、4月4日には下大和田の田んぼに苗代をつくり、コシヒカリや緑米などの種をまきました。米づくり初体験の参加者も多く、ましてやどろんこになって谷津田で作業をしたことなどありません。それでも皆さん満足な顔で、この先どんな体験ができるのか楽しみのようすでした。 mud-skipper