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ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第222号 

2016.1.8 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 下大和田谷津が環境省の生物多様性保全上重要な里地里山に選ばれました
  2. 千葉県にすむ哺乳類 12   カヤネズミ
  3. 第7回   都心カラス調査に参加して

下大和田谷津が
環境省の生物多様性保全上重要な里地里山に選ばれました

千葉市緑区 網代 春男   

 昨年末にビッグニュースが飛び込んできました。
 下大和田谷津が環境省の生物多様性保全上重要な里地里山に選定され、12月18日に環境省のホームページで公表されるというものでした。
 環境省では様々な生命を育む豊かな里地里山を次世代に残していくべき自然環境の一つであると位置づけ北海道から沖縄まで全国から500か所を選定したものでその中に選ばれたものです。
 また、豊かな里地里山を広く国民の皆様に知ってもらうためのもの、地域における農産物等のブランド化や観光資源などにも広く活用できるものと考えています。としています。

 選定にあたって三つの基準と選定理由が述べられています。
   1.多様性に優れた二次的自然環境を有する。
   2.里地里山に特有で多様な野生動植物が生息し生育する。
   3.生態系ネットワークの形成に寄与する。
 下大和田谷津はいずれの基準も満たしているとされ、選定理由の一端として「昔ながらの小川も残る山林と農地が一体となった谷津田の自然が維持されてきたことから、トチカガミなど希少植物が生育しているほか、里地里山に特徴的な種をはじめとする多様な動植物の生育空間となっている。」と評価されています。

 ちば環境情報センターが長年にわたり谷津に生息する生きもののために田んぼや山林をみんなで力を合わせて維持してきたことが評価され、今回の決定に至ったもので大変嬉しく思っています。
 下大和田谷津はほとんど耕作田はなく、私達が田んぼを維持してこなかったらヨシやオギに覆われ、環境省が選定理由に挙げたトチカガミやサンショウモは消え、メダカ、カエル、タニシ、トンボなどの生息場所は狭められ、消滅に向かっていたことでしょう。
 周辺で田んぼが消えていくなか私達の田んぼは最後の砦となっています。生きもののための田んぼづくりは何としても続けたいと覚悟を新たにしています。

今後に向けて
 今回の選定で皆さんいろいろと感じたり、思いを持たれたことでしょう。今後に向けて皆さんと話し合って行きたいと思っています。私は次のような問題意識を持ちました。
・今回の選定の具体的評価を受けた状況を維持することが出来るのは、ほとんど私達の田んぼだけに負わされているという、もろさを抱えています。下大和田の谷津田を安定した生物多様性に富んだ谷津とする対策が必要と考えています。
・地域に暮らす方々はいつも肌で接し、どこにでもあるありふれた自然で国が評価するほどのものとは思っていらっしゃらない方がほとんどだと思われます。農家の方であれば「環境省の生物多様性保全上重要な里地里山に選定された自然豊かな下大和田の畑で栽培した〇〇」とか、販売品に冠し活用するくらい地域に誇りや自信を持っていただきたいと願っています。私達と共通の認識を持っていただく対策も必要と思います。

環境省のホームページをご覧ください。
  全国で500か所、千葉県19か所、千葉市2箇所で下大和田谷津と大藪池谷津が選定されました。
  http://www.env.go.jp/nature/satoyama/jyuuyousatoyama.html 
 

千葉県にすむ哺乳類12 カヤネズミ

哺乳類研究者 香取市 濱中 修  

  「下大和田谷津田ごよみ2016」の9月のこよみにカヤネズミとその巣の写真が載っています。写真には「コシヒカリなどの稲刈りの季節です。稲刈りをしていると、イネの茎と葉を巧みに使って丸い巣をつくる、カヤネズミに出会えることがあります。カヤネズミは日本で最も小さいネズミです。」という説明が付いています。

 
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 関東地方より西に住む農民は、昔からカヤネズミをよく知っていました。稲刈りのとき、田んぼに巣が見つかるからです。
 カヤネズミは、イギリスから日本まで、ユーラシア大陸北部に広く分布する野ネズミです。18世紀に書かれたイギリスの古典『セルボーンの博物誌』には、収穫期のムギ類の茎に、葉を編んだ巣をつくる小さなネズミとして登場します。
 カヤネズミは、成獣でも体重が10グラム未満の本当に小さなネズミです。春から秋にかけて、草原のススキなどに、子育てのための巣をつくります。千葉県では、遊水地や河川敷などのヨシ原に多くすんでいて、ヨシの茎に巣をつくります。
 カヤネズミの巣は、ススキやヨシなどの茎の中間点くらいの高さに、その茎から伸びた葉を裂いて、編み込んでつくられています。子どもが入っている巣は、母親が入り口をていねいにふさいでから出かけますので、中が見えません。
 カヤネズミの巣の周囲には、両端が水平方向に開口している、つくりかけの巣のような構造物がたくさん見つかります。
オオヨシキリなどの小鳥も、ヨシなどの茎の途中に巣をつくりますが、その茎の葉を裂いて、巣材に使ったりはしません。小鳥の巣は、周囲から運んできた材料でつくられています。
 冬、カヤネズミは、繁殖活動をやめます。台地や土手の斜面など、水はけのよいところに小さな穴を掘り、地下にねぐらを移します。
 カヤネズミのしっぽは、とてもしなやかです。クモザルは、横にのびた支柱にしっぽを巻き付けて、ぶら下がることができます。カヤネズミのしっぽには、クモザルのしっぽに近い機能があります。カヤネズミは、しっぽをススキやヨシなどの茎に巻き付けて、体を支えるために使います。
 カヤネズミは、手足の関節もしなやかです。ススキやヨシなどの茎をしっかりつかんで、登り下りできます。
ネズミには、伸び続けるするどい前歯で、かたいものをかじるというイメージがあるのですが、カヤネズミは、かたいものが苦手なようです。多くの種類のネズミは、口の部分が大きく前に突出し、ほほの筋肉が発達しています。しかし、カヤネズミは、口の部分があまり突出せず、ほほの筋肉も、あまり発達していません。
 カヤネズミは、昆虫やイネ科の草の実、キイチゴのなかまの軟らかい果実などを食べているようです。
草刈りしたり、焼き払ったり、カヤネズミがすむ草原に、ヒトは定期的に手を加えます。でも、だいじょうぶ、カヤネズミは、近くの草原に、すみかを移動して、たくましく生活しつづけます。
 ススキやヨシなどの草原は、人手が加わらなくなると、森林に移り変わっていきます。森林に、カヤネズミはすめません。
カヤネズミは、ヒトによって維持されてきた、不安定な環境で生活してきた野ネズミです。
  

第7回 都心カラス調査に参加して

大人からの報告「都心カラス調査」

市川市 小田 信治  

都心カラス調査について
 都市鳥研究会※は、30年前の1985年より5年ごとに都心のカラスの個体数を調査しています。今回は第7回目で、12月19日(土)に実施されました。
 夕方、集団ねぐらに集まってくる羽数をカウントしてその動静を都市鳥研究会の会誌であるURBAN BIRDSに掲載しています。都内にはカラスのねぐらになる樹林地がありますが、その中で、大半のカラスが集まる山手線内の豊島ケ岡墓地(文京区)、明治神宮(渋谷区)、自然教育園(港区)の3ヶ所について調査を実施しています。都心に生息するカラスは主にハシブトガラスですが、非繁殖期の秋~冬は樹林地内に集団ねぐらをつくり、夜はそこで過ごします。特に冬季には、その地域に生息するカラスの大半が集団ねぐらに結集してきます。12月に調査を行うことで都心に生息するカラスの個体数が把握できるのです。 
 調査方法は、各調査地のポイントで午後1時から5時まで、10分間にねぐらに入る羽数と出る羽数をカウントして記録し、その差からねぐらにいる個体数を算出します。
 調査員はボランティアで、今回76名の参加がありました。参加者は個人の他に都内の自然観察グループや高校生物部の生徒、ちば環境情報センターからは田中先生の呼びかけで多数の参加がありました。
 私は今回で3回目の参加になります。毎回調査地点は明治神宮の南側NHK陸橋(P1地点)です。3回目ともなるとベテランと言うことでしょうか、当日の調査結果をとりまとめて報告する班長を担当しました。P1地点の参加者は、秦野市の年配ご夫婦と大網白里市のご家族(親子6名)で、天候にも恵まれて楽しく調査を行うことができました。

調査結果
 都市鳥研究会ブログの速報によれば、3箇所の集団ねぐらで合計4,816羽がカウントされました。以下の表に示すとおり、5年前の第6回2010年調査と比べて37.8%の減少となりました。

 

 都心カラスの動静は、以下の図に示すとおり2000年の18,664羽をピークに減少しており、30年前の1985年第1回の個体数を下回りました。
 私が担当したP1地点では、当日、代々木公園内でアルゼンチンサッカーチームのサポーターが集結して大騒ぎをしており、その影響もあったかと思われますが、例年に比べて夕刻前にカラスの羽数が数えきれないといったこともなく、ずいぶん少なくなったなと感じました。

 

●カラス減少の要因
 カラスは早朝、ねぐらからゴミ捨て場に出かけて残飯をあさります。市民からカラスがゴミ袋を破って散乱させるので掃除が大変だ、カラスに襲われた、気味が悪い等の苦情が多数寄せられ、東京都は2001年に、カラスが大嫌いな石原都知事の大号令の下、庁内にカラス対策プロジェクトチームが編成され、カラス駆除と巣撤去の実施、ゴミ箱の蓋掛けや網掛けなどのゴミ対策キャンペーンを展開しました。特にカラスが餌場にしていた銀座など繁華街のゴミ回収を夜間に変更しました。その後、2005年の調査では8千羽近く減少しました。捕獲やゴミ対策等様々な要因が考えられますが、その後も減少傾向が続いており、何が原因なのか、都市鳥研究会による詳細な分析を期待したいと思います。

※都市鳥研究会
 身近な都市鳥の生態を明らかにする目的で、1982年に研究会を設立。人工環境である都市と鳥のかかわり合い、人と野鳥が共存する方策などの調査研究を実施している。   会員数約120名   http://urbanbirds.eco.coocan.jp/

  

子どもからの報告①「カラス調査に参加して」

東金市 小学校2年生 石井 克実  

 12月19日、ぼくはまちにまったカラス調査にさんかしました。30年前から5年に1度、都会にすむカラスの数を調査していると聞きました。
 原宿えきにつくと、すぐ近くに行ってもカラスがにげないのにおどろきました。道路ひょうしきにとまって鳴くカラスは、にくがんでまばたきするのが見えました。手をのばしたらさわれそうです。『都会のカラスは野性っぽくないな』と思いました。
 それからクスノキにとまってえだを切り落とすカラス。大人の人たちは「カラスは遊ばない」とか、「食べるためにやっている」と言っていました。『食べてないみたいだけど、食べるためなのかな?』ぼくは、カラスは頭がよいし、都会のカラスは野性っぽくないからあそぶのではないかと思いました。カラスに切られた枝が、クルクル回転しながらおちてくるようすがとてもおもしろかったです。ぼくがそれをおいかけると、つぎつぎにおとしてくれました。きっと都会のカラスは食べるものがいっぱいあってひまな時間に、あそぶこともあるのではないかと思いました。
 いよいよ数のカウントがはじまりました。明治神宮の中はカラスがよく見えて分かりやすくて楽しかったです。ぼくは見のがさないようにがんばったけど、平沼さんはぼくより12ひきもおおくみつけられて『すごい!』と思いました。
 明治神宮から出て、裏参道児童遊園地という場所での調査は、遠くにとぶカラスの調査。ぼくはこれがにが手でした。カラスはせんかいしてしまったり、行ったりきたり…同じカラスかもしれないのに、全部数えてよいといういみがぼくにはわからなかったので、ここでしかできないあそびを楽しみました。『帰り、明治神宮に行ったらまたがんばろう!』と思っていました。それから、日ぼつ直後のカラスのようすを近くで観察してみたかったです。『僕の出番だ』と思ったのに明治神宮の門がしまっていてとてもざんねんでした。5年後、ぼくは中学生。またさんかしたいと思っています。
 最後に、5年前7728わいたカラスが今年は2920わだったそうです。都会にの生きのこれるカラスは、カラスの中でも頭がよくて強いのかなと思います。人間とカラスのちえくらべ。『おもしろいな』と思います。
明治神宮から出て、裏参道児童遊園地という場所での調査は、遠くにとぶカラスの調査。ぼくはこれがにが手でした。カラスはせんかいしてしまったり、行ったりきたり…同じカラスかもしれないのに、全部数えてよいといういみがぼくにはわからなかったので、ここでしかできないあそびを楽しみました。『帰り、明治神宮に行ったらまたがんばろう!』と思っていました。それから、日ぼつ直後のカラスのようすを近くで観察してみたかったです。『僕の出番だ』と思ったのに明治神宮の門がしまっていてとてもざんねんでした。5年後、ぼくは中学生。またさんかしたいと思っています。
 最後に、5年前7728わいたカラスが今年は2920わだったそうです。都会にの生きのこれるカラスは、カラスの中でも頭がよくて強いのかなと思います。人間とカラスのちえくらべ。『おもしろいな』と思います。

子どもからの報告②「カラス調査に行きました」 

     千葉市稲毛区 小学校3年生 檜原 啓輔 
  12月19日土曜日に明治神宮で5年おきのカラスの羽数調査に家族で参加しました。千葉高校の田中先生といっしょに行きました。都市鳥研究会の調査でやりました。
 ぼくは、カラスを七百七十七羽見ました。たくさんいたのでびっくりしました。あと、カラスのほかにヒヨドリ、カルガモ、ドバト、キジバトがいると田中先生が教えてくれました。明治神宮には、こんなにたくさん自然があるのだとわかりました。そのまま、とまっちゃいたいくらい楽しかったです。5年後にぼくは中学2年生になります。そのときはもっとカラスにくわしくなって行きたいです。
   

【発送お手伝いのお願い】

 ニュースレター2016年 2月号(第223号)の発送を 2月 8日(月)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: 暖かい正月です。1月5日、下大和田谷津田では、昨年生まれたメダカが群れていました。1月号では、毎年こんな編集後記を書いているような気がします。   mud-skipper