ちば環境情報センター

1999.4.5 発行    ニュースレター第21号
編集責任者:古川美之 

目次

  1. 県主催の三番瀬シンポジウムに参加して
  2. 植物だと誤解されていた動物
  3. エコクラブにて
  4. リサイクルフェスタで考えたこと
  5. 市民の森ガイドその5「園生(そんのう)市民の森」
  6. 川野博士の豆知識4 「メダカの棲める川」
  7. 白鳥は大にぎわい
  8. 楽しかったヨシ笛づくり

県主催の三番瀬シンポジウムに参加して

市川市 行徳の自然に親しむ会 町田恵美子

埋め立て計画に揺れる東京湾奥の干潟・浅海域「三番瀬」をめぐって、県企業庁が主催するシンポジウムが、3月6日市川市塩浜体育館で開催された。
 現在、市川2期・京葉港2期という、三番瀬を埋め立てる2つの計画が進行中だ。事業主体の企業庁は、1993年に両事業の基本計画を策定している。しかし、保全を求める市民と、環境庁からも「待った」が出され、県は三番瀬の環境を調査し、埋め立てが及ぼす影響を予測。現在、それに基づいて、計画の練り直しを行っているところだ。
 そんな中で開催されたシンポジウム。私たちは「説明会」でも「公聴会」でもなく、「シンポジウム」を初めて開くということに、たいへん期待をしていた。聴衆も含めたディスカッションによって、何がしかの結論が導き出されるものと考えていたから。そこまでいかなくても、せめて企業庁の、三番瀬埋め立てに対する方向性だけでも見えてくるはずと思っていたのだ。
しかし、ふたを開けてみると、ディスカッションといえるようなものはほとんどなく、県からもこれまでの説明以上の内容は出てこなかった。「シンポジウムを1回で終わらせないで」という要望に対してすら、明快な返答ができないなんて。このシンポジウムは、計画策定に市民が参加できる画期的な場ではなかったのか。
今、私たちがやらなければいけない議論は、「何f埋めるか」、「その上に何を造るか」ではないはずだ。2年にわたる補足調査の結果、東京湾の環境や生態系にとって重要な海域と確認された三番瀬をどう保全し、街づくりに生かしていくのか、そのために何が必要で、県・市や漁業者、市民はどんな役割を担っていくのかをみんなで考えていくことだと思う。「開発だ」「保護だ」と対立するのではなく、関係する人たちが協力できる方向を探るべきだ。行政も市民の側も、これまでのやり方では三番瀬を未来に残すことはできないと肝に銘じてほしい。


植物だと誤解されていた動物

千葉市稲毛区 西澤 康男

 サザエやアワビを食べたら貝殻を捨てる前に、ちょっと貝殻を観察してみましょう。フジツボ、海綿、海藻などカラフルな生物が付着しています。その中にコケだと思われていた動物−コケムシ−がいます。
 コケムシは、1mmほどの小さな虫(これを個虫という)が多数集まって、数mmから大きいものは数mの塊(群体)を作ります。この群体が、一見するとコケや海藻のように見えるので、植物の仲間と思われていたのです。ほとんどの種が海に棲息していますが、わずかに淡水に住むものがいます。
毎年秋風が吹く季節になると、印旛沼や古利根沼、雄蛇ヶ池では、バレーボールほどの大きさの寒天質の物体が浮かぶようになります。大きなものは1mをかるく越え、手で持つと以外と固く、ぬるぬるしています。表面には菊目模様があり、ルーペで見ると活発に動く小さな触手がたくさん見えます。これは外来種のオオマリコケムシで、日本では1972年に初めて発見されました。
 コケムシは触手を持ち群体を作るので、サンゴの仲間に似ていますが、口と肛門をつなぐU字型の消化管を持ち、サンゴなどの腔腸動物より高等です。1つ1つの個虫が1匹の動物のように振る舞うものもあれば、1つ1つの個虫が役割分担をして、群体全体で1つの生物のように振る舞うものもあります。単独生活を取るか、共同生活を取るか、コケムシには群体動物にしか見られないユニークな戦術が見られます。
 千葉県産の淡水コケムシは、かつてはヒメテンコケムシが手賀沼や古利根沼に、カンテンコケムシが手賀沼にいましたが、水質が悪化し今では見られなくなったそうです(織田, 1990)。そのかわり北アメリカ原産のオオマリコケムシが分布範囲を急速に広げています。このオオマリコケムシがどのようにして分布範囲を広げたか、また、どのようにして冬を越すのか、次回お話しします。


エコクラブにて

大網白里町 中学校講師 園部 寿美子

機会があって、中学校でエコクラブの指導にあたりました。学校の所在地は、外房にある茂原市のはずれ。自然環境に恵まれたところで、環境に対して危機感を抱いている生徒が少なかっただけに、どうなるかと不安を抱いてのスタートでした。
自宅付近の二酸化窒素の測定,学校の屋上での酸性雨調査,河川や水道の水質検査など、まるで理科の実験をしているみたいだと、楽しんで取り組んでいる生徒たちの姿に安堵しました。
二酸化窒素の測定は、県下一斉調査に参加できたため、他地域の汚染状況がわかり「茂原は、なんて空気がきれいなんだ。」と大喜び。しかし、酸性雨調査で、思った以上の酸性雨が降っていることを知り「これでは、はげになる。」と深刻な顔つきで真剣に話し合う場面も見られました。
身近なプラスチックを集めて、溶剤試験や燃焼試験を用いて大別しながら(もちろん塩ビは燃やしませんでしたよ)、ダイオキシンの恐ろしさにも触れました。すでに社会科で下調べをしていた生徒たちは、図書館に行って多くの情報を仕入れてきました。さらに、文化祭で自分たちが学んだことを多くの人に知らせようと、掲示物づくりやサンプル集めに奔走し、地域の方からも高い評価を受けました。
いろいろな体験を重ね、少しずつですが自然や環境への思いが深まり、地域の自然を残そうとする思いが芽生えていったようです。クラブの生徒たちをつれてメッセで開かれた「子供環境会議」にも出席。環境というテーマで全世界がつながっていることや小学生の熱心な活動に触れ、深い感銘を受けたようです。
中学校では、環境という教科はありません。理科や社会科の一部に組み込まれていたり、英語や国語で環境を取り上げたテーマを学習したりと分散状態です。現在、「環境学習を統合して総合的な学習に」という流れの中で、教育に携わる多くの方々が各方面で奮闘中です。ただ、環境教育は、好きな人だけ進める,評価を得るためにがんばるという従来型の教科ではなく、子孫のためにという広い視野をもち、実行を伴わなければ成果は得られません。それだけに、学校教育と市民運動が連携して多くの人の力を借り、多くの知恵や経験を生かして進んでほしいと思います。


リサイクルフェスタで考えたこと

市原市 南川忠男

 9倍の競争率で選ばれた店へのお客は寒い雨にもかかわらず多かった。ちば環境情報センターのリサイクル相談所にも92人もの方が訪ねてくれました。
 受けた質問で多かったのは環境ホルモングッズの机の前で、「どれが悪いプラスチックですか?」でした。識別の方法や正しいプラスチック食器の選び方等をお示ししました。センター所蔵の「電磁波の影響」という本を座って熱心に読んでいる若いカップルや3度も来られた小学生が印象に残っています。7割はフリーマーケットでの買い物を終えた方で、「旦那、粗大ごみはどのように処理されていますか、捨てるのもったいないよね」と、尋ねられた60代の女性とは30分くらいしゃべったでしょうか。フリーマーケットでは衣料等軽い物が扱われますが古いタンスや家電製品等を捨てる人もいれば、それを欲しがっている人もおり、両者は結びついておりません。リサイクルの前にリユースが大事ですね。郊外の遊休地にリユースを仲介する商売を開けばアメリカのようにインターネット上で大きな市場ができるかもしれません(繁盛しているそうです)。
 現物を見て確かめるため、どうしてもある場所を経由しますが、各家庭との輸送(電話1本で軽く500円くらいで応じる)や粗大ゴミか有価物かの目利きと多少の手入れに働きたい高齢者を10人くらい雇って中古品需要に応えるのもゴミ減量に貢献できると考えました。新品購買意欲をそそるCMにまどわされず、中古で満足できる方が増えれば、まわりまわって干潟の埋め立てもなくなるでしょう。そんな社会が近づいています。


市民の森ガイドその5「園生(そんのう)市民の森」

千葉市 服部 マリ子

千葉市稲毛区にある「園生市民の森」は、広さ17,360m2(S51年指定)と小規模ですが、イヌシデ,コナラ,クヌギ,コブシ,ウワミズザクラ,ハリギリ……等、老木が多く、スギ,ヒノキの大木が空を覆っています。森の中程に立つと、どこか遠い森に、迷い込んだような錯覚さえ覚えます。直ぐ近くの街の喧騒も、カラスの鳴き声も、木々にこだま谺して、のんびりと聞こえます。
3月末現在、森を白く染めていたコブシの花も散りはじめ、ミズキの芽が、日毎に柔らかな緑を増しています。本格的な春の訪れを前に、あちこちで木や草の芽吹きのはじまりです。森の北西斜面では、タチツボスミレが可憐な姿を現し、ウラシマソウの髭もだいぶ長くなってきました。「ジュイ・ジュイ」,「ツーピー」,「ギーギー」,「クワッ」鳥のコーラスもにぎやかです。
また、森内では市内希少種とされる草本数種が、ボランティアにより保存されています。さぁー,五感フル回転して、森の春を探しに行きましょう!
 <交通> モノレールでスポーツセンター駅より徒歩6分、JR総武線稲毛駅より京成バス「草野車庫」又は「こてはし団地」行きで「スポーツセンター」下車徒歩5分


川野博士の豆知識4 「メダカの棲める川」

−@絶滅危惧種

博士:きょうはメダカについてお話ししよう。
生徒:そういえば、このごろよくメダカが話題になりますね。
博士:今年の2月18日環境庁から「絶滅のおそれのある野生生物種のリスト」いわゆる「レッドリスト」が公表されたんだけど、その中でメダカが絶滅危惧U類(VU)として登録されたんだ。
生徒:ゼ・ツ・メ・ツ・キ・グ?
博士:そう、環境庁では、動物の全国分布のアンケート調査結果から絶滅の可能性が大きい順に、絶滅危惧TA類(CR),同TB類(EN),同U類(VU),順絶滅危惧(NT)としたんだ。メダカは3739調査地点のうち472地点しか見つからなかったから、貴重な種とされたわけだ。
生徒:どうしてメダカは減ったの?
博士:それについては、次回ね。


白鳥は大にぎわい

2月11日の「白鳥に会いに行こう」

朝から悪天候の予報にもかかわらず、
3歳から70歳の女性まで17名もの参加者がありました。
雨も我慢してくれ、100羽のコハクチョウと10羽のオオハクチョウに会うことができ、みな大満足でした。
参加者の一人,千葉市美浜区の塚本美恵子さんから次の句が寄せられました。
  ・白鳥の池バレリーナの支度部屋
  ・大白鳥はた小白鳥睦じく
  ・白鳥の愛のしぐさの水影に

楽しかったヨシ笛づくり

 2月21日の「ヨシ笛づくり」

高校教師,千葉大園芸学部の学生,日本野鳥の会レンジャー,主婦,初老の紳士,小学5年の女の子などなど多彩なメンバー11名が集まり、楽しい雰囲気の中、自分の手で笛を作ることが出来ました。
ヨシ笛の優しい音に「ヨシ笛づくりを広めたいね」などの意見も出て、うれしくなりました。
3月12日には千葉市立松ヶ丘中学校でも行いました。

また企画しますので、今回参加できなかった方もそのときご参加下さい。

事務局からのおしらせ
ホームページのアドレス変更

4月1日から「ちば環境情報センターのホームページアドレス」がhttp//www2.tky.threewebnet.or.jp/~ceic/
から
http//www2.tky.3web.ne.jp/~ceic/
に変わりました。
「お気に入り」などアドレス変更して下さい。
またみなさんの活動の様子や季節の話題などの
写真やコメントをお送りください。
HPの「最近の話題」に掲載させていただきます。
1999年度の会費納入のお願い

ちば環境情報センターの活動は、会員の方々の会費によって運営されています。
99年度会費の納入をよろしくお願いします。
98年度までの会費が未納の方は、併せて納入お願いします。
各人の会費納入状況は封筒の宛名シールに印刷されていますのでご確認ください。納入したのに未納となっている方はご連絡下さい。
会員の方で、環境関係のホームページをお持ちの方はご連絡下さい。

ちょっといい本の紹介
月刊誌「遺伝」4月号(特大号)裳華房刊 特集:田んぼのエコロジー ¥1,400+税
日本の伝統的な農業が守り育ててきた田んぼ。
田んぼがいかに生物多様性を支えているか、また人々の暮らしにどんな恩恵を与えているかを今一度見直してみよう。
千葉県についての話題が多く、ちば環境情報センター会員の田中正彦氏も魚類と土水路の重要性を解説している。
(本センターでは20%引きで取り扱っています)

総会のご案内

日時:1999年6月6日(日)
10時〜12時
ちば環境情報センター緑町事務所にて
総会後、昼食をとりながら懇親会
メダカ大好き人間集まれ!!

メダカ分布マップ・メダカ絵本・メダカの生活史などなど・・・
メダカにこだわってみたい人は田中までご連絡を
043-483-0027
とびはぜくんこんにちは!

ちば環境情報センター主催
日 時:4月18日(日)10時〜12時 
集合:京成バス行徳橋南詰停留所10時
持ち物:長靴,手網(あると楽しい),
弁当,手ぬぐい
参加費:200円 *詳細問合せ

編集後記
・平山や小篠塚の谷津にはヒキガエルの卵塊がいっぱい,泉自然公園のカタクリの花も満開です。(まさ)
・「持続可能な社会」っていったいどんな社会なんだろ う???                   (ゆき)


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