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ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第232号 

2016.11.7 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 南房総の里山と里海は千葉県の宝物「県残土条例の正しい運用を求めます!」
  2. 千葉県にすむ哺乳類21  タヌキ
  3. わら納豆作り
  4. 海岸砂丘における生態系サービス その4 「自然の恩恵を受けた酒造り」

南房総の里山と里海は千葉県の宝物
「県残土条例の正しい運用を求めます!」

 館山の海と山の自然を守る会 水中写真家 館山市 久保 誠 

 4年の事業期間が終わったばかりの館山市坂田の残土処分場に、県廃棄物指導課がまたすぐに許可を出してしまいました。この業者は他でも10年近く事業を続けていて、ここも続けるのではないかと不安に思っていましたがこんなに早く許可が下りたことで、さらなる環境破壊や搬入ダンプでの道路の損壊による交通被害がまた続くと思うと、大変残念でなりません。
 私は南房総の素晴らしい自然に魅了され移住をしてきました。館山は温暖で都心から近いのに自然が深く、人々は里山、里海の恵みとともに暮らしています。私は水中写真家なので海をよく見ていますが、黒潮育む海は美しく豊かで、珊瑚と海藻が共存する千葉県の宝物です。

   

 その近さが仇となり我が家の裏の渓谷は、都会から船で運ばれた約1000万立米の残土で、森も川も生き埋めになりました。事業者や行政に説明を求めたり、1万通の署名を集め許可をしない様、県にお願いをしてきました。ところが、地元地権者の権力を使ったり、行政や政治家に根回しを周到にしてきた事業者に、違を唱えることすら封じ込まれた中での反対活動は困難を極め、近隣住民の反対意見は隠されたまま降りたのが前回の許可でした。
 千葉県の残土条例は平成15年に改正され「期間は、三年を超えて申請することができない。延長は、一年を超えて申請することができない。」と言う4年間の制限が加えられました。坂田の処分場は4年が終わったので申請できないはずなのに、「新規」ということにすればできると廃棄物指導課は受けました。どう考えてもおかしいです。同じ場所の上に積み上げることは「延長」でしかありえません。また、許可の条件に「産業廃棄物は一切搬入しないこと。」と明記されています。私たち住民は終了した処分場に沢山の産廃を見つけ、廃棄物指導課に指摘をしました。県議会でも取り上げられ、廃棄物指導課は「360㎏の産廃を撤去した」と回答したので、混入を認めたはずです。明らかに違反している同じ業者に延長許可が出せるのか、全く理解できません。これらのことは質問として提示しましたが、廃棄物指導課は私たち住民との話し合いを一方的に中断し、拒否を続けています。
 条例が正しく運用されるように指導や監督をし、許可の権限を持つ県が条例を無視するとはどう言うことなのでしょうか。明らかに事業者のかたを持つ対応に憤りさえ覚えます。残土の問題について私たちが頼れるのは県行政だけなのです。
 汚染値の上限を超えていないため問題になっていませんが、下流や事業場の貯水池から検出された汚染物質、フッ素の値が上昇しています。事業場ができる前には全くなかったので、明らかな変質が起きてしまいました。環境破壊は後で取り返しがつかない事になるのを、過去の歴史で学んだはずです。「千葉県の宝物」を次世代へ引き継ぐことが、私たちの責務ではないのでしょうか。南房総の自然に囲まれながら、私は強く感じています。
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千葉県にすむ哺乳類21  タヌキ

哺乳類研究者 香取市 濱中 修 

タヌキは人里の動物
 千葉県でタヌキといえば、「証城寺の狸ばやし」が思い浮かびます。昔、木更津の證誠寺(しょうじょうじ)の境内には、竹やぶが広がっていて、タヌキがたくさん棲んでいたそうです。
 タヌキは、漢字で「けものへん」に「さと」と書いて「狸」となります。タヌキは、昔から人里で暮らしてきた獣(けもの)なのです。
仏教は「一切衆生悉有仏性」(生き物はすべて尊い)と説いていて、お寺の境内は、殺生が禁じられた聖域でしたから、タヌキは、そこで安全に暮らし続けることができました。

 
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タヌキのすむところ
 千葉県内の農村地帯では、お寺の境内や鎮守の森などにタヌキがたくさん棲んでいます。 都市化が進んだ千葉県北西部にも、タヌキが棲んでいます。台地に谷が深く入り込んで、複雑な地形になっている住宅地が、街の中にあります。そこには、台地と谷をつなぐ斜面があり、多くの場合、コナラやイヌシデなど、冬に葉を落とす高木、アオキやヤツデなど、その下に生育する常緑の低木、それにアズマネザサからなる群落ができています。そういう場所が、都市でのタヌキのねぐらになっています。タヌキが棲んでいれば、アズマネザサのやぶの中にタヌキが通る獣道を見つけることができます。

タヌキのため糞と千鳥足
 タヌキがたくさん棲んでいる森林に入ると「ため糞」が見つかります。タヌキたちは、便所に使う場所を決めています。たくさんのタヌキが、そこにやってきて、うんこをしていきますから、うんこの山ができます。それが「ため糞」です。
 タヌキの足跡は、イヌの足跡に似ていますから、1つだけだと区別が難しい。でも、地面に連続した足跡がついていれば、タヌキとわかります。タヌキが残した足跡は、左右にゆれて、よっぱらいが千鳥足で歩いたようになります。

タヌキの子育てと子の独り立ち
 タヌキは、春先に4~5匹の子どもを産みます。そのため、初夏から梅雨時にかけて、昼間、タヌキの子どもたちが、広い庭などに姿を見せることがあります。
 キツネは、地面に穴を掘って、その中で子どもを育てます。タヌキは地面に穴を掘りません。地上に隠れ家を見つけて、そこで子どもを育てます。
 やぶの中は、タヌキの隠れ家に適していますが、子どもの遊び場がありません。タヌキの子どもたちは、広い場所に出て遊びます。こういうとき、お母さんタヌキは、少し離れたところから、子どもたちを見守っています。
 秋が深まるころ、タヌキの子どもたちは、親元を離れ、ひとりで生活するようになります。自動車にひかれて死んだタヌキが見つかるのは、このころが一番多く、そのほとんどが、独り立ちしたばかりの若いタヌキです。経験不足で、道路が危険な場所であることがわからないのです。
 親から独立するころまでに、タヌキの子どもは、親とほとんど変わらない体格に育っています。しかし、秋から冬は、自然の食べ物が少ない季節ですから、十分な食べ物を見つけることができません。独り立ちしたタヌキの多くは、やせ衰えていきます。
 自動車にひかれて死んだタヌキを拾ってきて、解剖したことがあります。胃の中に、カエルが1匹だけ入っていた個体がありました。胃の中は、枯れ草だけだった個体もありました。どちらも、冬枯れの季節に死んだタヌキです。

タヌキに食べ物を与えない!
 タヌキは、雑食性で、昆虫などの小動物を捕らえて食べるほかに、穀物や果実も食べます。畑のトウモロコシを食べていったり、庭のカキの実を食べていったりします。
 農村部では、作物や果実がタヌキに食べられますから、タヌキは好かれません。都市には、タヌキをかわいいと感じる人々がたくさんいます。そして、タヌキにたべものを与えてしまいます。
 タヌキは、イヌのなかまです。ドッグフードを与えれば食べます。でも、タヌキに食べ物を与えてはいけません。タヌキのためにならないからです。
 ジステンパーは、ウイルスが病原体のイヌの病気です。イヌどうしが接触したり、イヌが咳をして飛び散ったウイルスを、他のイヌが吸い込むことで感染します。疥癬症(かいせんしょう)は、寄生性のダニが、イヌからイヌに感染して起こります。
 タヌキも、これらの病気に感染します。食べ物を与えると、タヌキが人間世界に近づくことになります。その結果、イヌからタヌキに、これらの感染症が広がります。タヌキからイヌに感染することもあります。私たちの近くで暮らしていても、タヌキは野生動物です。野生のままにしておくことは、とても大切なことです。

わら納豆作り

東金市 石井 美佐代 

 稲わらには1本に1千万個の納豆菌が胞子の状態で付着しているそうです。稲刈りの時に、丁寧に洗って干したわらを用いて、わら納豆を作りました。わらには元々納豆菌がおり、茹でたり、蒸したりして加熱しても、雑菌はほぼ死滅しますが、納豆菌は生き残ります。百度以上や氷点下の状態になると芽胞を形成し耐性をあげる性質があり、生き残った芽胞は自己増殖しやすい環境になると芽胞から発芽し、増殖するそうです。

 

 今回は大人5人子ども4人で作りました。行程は、雑菌を除去するために、加熱消毒したわらに、加熱処理した大豆を包んで保温するという簡単なものなのですが、出来上がりが非常によいものと、ぬめりの強い大豆というものまであり、納豆作り面白いなと思いました。手をかけ、気にかけ作ったものは、体にも、心にも優しいものになるになるように思うので、また挑戦したいと思っています。 

海岸砂丘における生態系サービス
その4 「自然の恩恵を受けた酒造り」

北総生き物研究会 金子 是久 

1.はじめに
大正時代に東京湾側の海岸砂丘に存在していた酒蔵の環境、当時の酒造りの様子等について記載してきたが、今回は、これらの酒蔵の廃業理由と現在の状況について紹介する。

2.調査方法
調査地の酒蔵情報については、千葉県酒造組合連合会(1925)、館山市史編纂委員会(1981)、北条税務署 大正13年改調 酒類製造免許臺帳、笹井(2016)の資料を参考にした。また、調査対象の酒蔵のご子孫から廃業理由について聞き取りを行った。

3.結果および考察
調査地の酒蔵情報、廃業理由および現在の状況について表1~2に示す。




引用文献
1) 千葉県酒造組合連合会(1925)千葉県酒造組合連合会報・創立20周年
記念号.
2) 館山市史編纂委員会(1981)館山市史.(株)国書刊行会.
3) 北条税務署 大正13年改調 酒類製造免許臺帳.
4) 笹子三喜男(2016)『明治・大正・昭和館山商店街地図』
                (平成28年2月刊行).

【発送お手伝いのお願い】

 ニュースレター2016年12月号(第233号)の発送を12月7日(水)10時から事務所にておこないます。 発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


 編集後記 : 11月6日、下大和田谷津田で古代米の脱穀を行いました。4月に始まった米づくりも現場での作業は終了し、あとは12日に千葉市農政センターで行う籾すりだけとなりました。田起こしや夏の草取りなどきついこともありましたが、今、収穫した籾を手に満足感で心はいっぱいです。 mud-skipper