ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第234号 

2017.1.11 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 八ッ場ダム と 私たち
  2. 海岸砂丘における生態系サービス その5「自然の恩恵を受けた酒作り」
  3. 千葉県にすむ哺乳類 23  テン と アナグマ 
  4. みんなが楽しんだお餅つき

八ッ場ダムと私たち

八ッ場ダムをストップさせる千葉の会 佐倉市 中村 春子 

 …私はどうかこの渓谷の林がいつまでもいつまでもこの寂びと深みとを湛えて永久に茂っていてくれることを心から祈るものである。(中略)
 …もし若しこの流れを挟んだ森林が無くなるようなことでもあれば、諸君が自慢しているこの渓谷は、水が枯れたより悲惨なものになるにきまっているのだ。
                                          「静かな旅をゆきつつ」 若山牧水

 
 これは80年以上前に若山牧水が八ッ場ダム予定地を訪れた時に、詠んだものです。美しい渓谷を破壊し、由緒ある温泉街を沈め、それでもダムをつくる必要があるのだろうか?

 

 私たちはこの問題を知ってから、この八ッ場ダム予定地を何度も訪れました。私が八ッ場ダム計画を知ったのは、1987年、佐倉市の飲み水に関心を持ち、水道部を訪ねた時でした。当時の佐倉市の水道水は、地下水100%のおいしい水でした。しかし、八ッ場ダムができると徐々に地下水の割合が減っていくことを知りました。
 そして、当時、「東京の水を考える会」を訪ね、嶋津暉之さんの話を聞き、「八ッ場ダム」は下流都県の住民の水道水確保のためだけでなく、治水面からも利水面からも、多くの問題を抱えている事業であることを知りました。
 八ッ場ダム計画は1947年のカスリーン台風が関東地方を直撃したことをきっかけに浮上。1986年完成、事業費2110億円の計画のもとに始まりました。それから今まで、5回の変更を経て、事業費は5320億円、竣工2020年3月となっています。国土交通省は計画変更のたびに、これ以上の変更はないと必ず言い、1都5県の議会に諮ります。それぞれの都県議会は、自民、公明、民主党など、何ら疑問を挟むことなく「はい、そうですか」と承認し、今に至っています。

   

 昨年9月、台風18号で鬼怒川の堤防が決壊し、甚大な被害が発生しました。堤防決壊で、川から溢れた洪水が家々を次々と襲っていく凄まじい状況が放映され、堤防決壊のもたらす被害の恐ろしさに息をのむ思いでした。
 鬼怒川の上流には、国が作った4つの大規模ダムがありますが、ダムの効果はなかったのです。八ッ場ダム建設の理由の一つになっている治水には、ダムではなく堤防強化を各々の地裁、高裁、最高裁で訴えてきましたが、官僚である裁判官は一顧だにしませんでした。
 私たち1都5県の住民は、2004年11月から各地裁、東京高裁、最高裁と11年間に渡り、弁護士・研究者や多くの方々の支援により、さまざまな問題点を現地調査、過去の文献等を細部まで研究した書面を出してきましたが、敗訴しました。この国に「三権分立」のないことに大いに怒りを持ちました。
 11年間の裁判の記録をまとめた記録集「6都県住民11年間のたたかい 裁判報告」ができあがりました。1冊1000円です。どうぞお求めください。

海岸砂丘における生態系サービス
その5 「自然の恩恵を受けた酒造り」

北総生き物研究会 金子 是久 

1.はじめに
 前回、取り上げた大正時代に千葉県(東京湾側)の海岸砂丘に存在していた酒蔵の主な廃業理由については、以下のとおりである。
  1) 酒類の嗜好の変化(洋酒(ビール・ワイン等)による影響
  2) 1923年の関東大地震で建物が倒壊し、再建が困難となった
  3) 企業整備令(1942年公布)又は米不足による影響
  4) 沿岸域の工業化による地下水の多量採取で、酒造りが困難になった
  5) その他(博打の保証人となり廃業)
 今回は、1)人々の嗜好の変化(洋酒(ビール・ワイン等)による影響で酒蔵が廃業した原因について検討する。

2.調査方法
 調査地の酒蔵情報については、千葉県酒造組合(1970)の資料、国税局HP(https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/jikeiretsu/01.htm)等を参考にした。また、調査地した酒蔵のご子孫から廃業理由について、聞き取り調査を行った。

3.結果および考察
 聞き取り調査によると、大正時代に千葉県(東京湾側)の海岸砂丘に存在していた酒蔵の中には、昭和後期または平成初期まで酒造業を営んでいたが、ビール、ワイン及び県外日本酒の勢いに押されたことで廃業した酒蔵があった。
 千葉県内の酒類の全体消費量(1963-2014年)をみると、1960年代から上昇し、1994年にピークとなり、それ以降、多少の上下変動はあるが、ほぼ平行状態が続いている(図1)。一方、千葉県内の酒類の消費量の構成比では、日本酒は1963年時に38.8%であったが、その後、2014年には6.4%に低下した。ビールは、1963年に49.8%、1990年代には70%を超えたが、それ以降は低下し、2014年は26.8%であった。他の酒類(ワイン・リキュール等)は、1963~1980年代前半まで10%前後であったが、その後、急速に上昇し、2014年には66.8%となり、ビールや日本酒を大きく上回った(図2)。上記の結果から、人々の嗜好が日本酒からビール、他の酒蔵(ワイン、リキュール等)に変わったことが伺える。これは、全国の酒類の消費量の変化をみても同じような傾向である。また、千葉県は、江戸時代には下り酒(灘(神戸)や伏見(京都)などで醸造した酒)を購入して飲んでいたとの記録がある(鈴木1997)。近年は、広報宣伝機関の発達と交通運送事情の著しい好転を相俟って、県外の主産地等の清酒の進出も遂次増加している。もとより戦前の自由時代においても東京から、神奈川県から陸上・海上によって輸送されて、当時の県内需要が満たされていた事実もあって、現在も県内消費量の4分の3弱は県外清酒が使われている(千葉県酒造組合1970)。さらに千葉県は1960年代から現在にかけて道路、鉄道等のインフラ整備が進行し、交通網が急速に発達した(Kaneko et al. 2014)。これにより、物流が段階的に発達し、国外・県外からの酒類の輸送が容易となり、それらの酒が千葉県の地酒よりも好まれていった可能性が高いと考えられる。

引用文献
   1)千葉県酒造組合(1970)酒風土記 千葉 日本醸造協会誌 65(9):775-778.
   2)国税局HP(https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/jikeiretsu/01.htm)
   3)鈴木久仁直著(1997)ちばの酒物語~酒づくり・心と風土の歴史~.千葉県酒造組合.
   4)K.Kaneko, K. Oshida, H. Matsushima (2014) Changes in the social situation
      influence local cuisine. - Local cuisine in Chiba Prefecture, Japan -, USA,
      Journal of Economics and Development Studies, Vol. 2, No. 3, pp. 25-47.

千葉県にすむ哺乳類 23 テンとアナグマ 

哺乳類研究者 香取市 濱中 修 

 テンとアナグマは、本州、四国、九州に広く分布する動物ですが、千葉県の北半分にはいません。市原市の内陸部から南の半島部には棲んでいます。どちらもイタチのなかまです。

テ ン
 テンは、イタチと同じように、道ばたの石の上や橋の欄干などに、うんこをしていきます。イタチのうんこより明らかに大きいので、テンのうんことわかります。

 
無断転載禁止 

 前回書いたように、テンのうんこの中にネズミの骨が入っていることがあります。テンは、野ねずみを食べます。テンのうんこには、果実の種子が入っていることがあります。テンは、野生の果物も食べています。
 南房総のテンは数が少なく、なかなか出会うことができません。でも、冬毛のテンは、美しい黄褐色ですから、出会う幸運に恵まれれば、忘れることのない強い印象を、目撃者の心に残していきます。


アナグマ
 アナグマは、河原の砂の上などに、爪が深く刺さった足跡を残していきます。アナグマは、土手などに巣穴を掘ります。
 
 無断転載禁止

 アナグマの主食は、ミミズや昆虫などですが、肉を与えれば、もちろん食べます。
 アナグマは、人里にも入り込んで生活します。そのため、アナグマが棲んでいる地域では、目撃情報をたくさん得ることができます。
 「むじな」は、アナグマを意味したり、タヌキを意味したりします。「同じ穴のむじな」は、アナグマです。タヌキは穴を掘りません。「むじな汁」にするのも、アナグマです。タヌキの肉は、臭いがきつく、食用に向きません。アナグマの肉は、くせがなくおいしい。

 食糧事情が悪かった時代、アナグマは肉を食べるために乱獲されました。たき火をして、巣穴の入り口から煙を送り込み、アナグマを追い出して捕獲しました。今は、こんなことをするひとがいなくなりましたので、東京都では、アナグマが分布域を拡大しています。

 現在、千葉県に棲んでいる陸棲の野生ほ乳類を一通り説明しました。海棲のほ乳類もいますが、私には解説するのに必要な知識がありません。だから、私の連載は、これでいったん終了となります。


    

みんなが楽しんだお餅つき

               
  千葉市稲毛区   大串 礼楽(れいら) 
 12月のお米作り体験は、収穫祭でした。 収穫祭では、採れたお米でお餅つきをしました。谷津田には、大人用と子供用の杵があったので、とてもつきやすかったです。
 先についた、お友達のちなつちゃんは、おばあちゃんのおうちでも、お餅つきをしたことがあったので、ヤケに上手だなぁと思いました。
 私も、最初についた、大人の人達のマネをして、強くついてみたら、みんなに誉められて、とてもうれしかったです。ついているお米は、とても熱かったみたいで、こねている人は「あちちち」と、言っていました。次は、こねるのもやってみたいと思いました。

   
 今までに何回かお餅つきをしたことがありましたが、今回が一番楽しかったです。お餅をついている時、みんなが笑顔になるのが、好きです。一番下の弟は、まだ小さいので、お餅つきはできなくて残念でしたが、最後にウスについていたお餅を、みんなではがして食べてとてもうれしそうでした。家族みんなで楽しめて、とてもうれしかったです。
 もち米をお餅にするには、とても時間がかかり、美味しくするには、とても大変なことを知りました。来年もお米作りに参加して、今度は、自由研究にお米作りについて、まとめようと思います。 いろいろ教えてくださった、網代さん、先生、みなさま方、どうもありがとうございます。 

【発送お手伝いのお願い】

 ニュースレター2017年2月号(第235号)の発送を2月8日(水)10時から事務所にておこないます。 発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


 編集後記 : あけましておめでとうございます。新年を迎えて、このところ無かったような穏やかな天気が続きますが、世の中この天気のようにはいきません。次々おこる環境問題とどう向き合うか。今年も地に足の付いた行動をとっていきたいものです。本年もよろしくお願いいたします。 mud-skipper