ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第243号
目 次
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福島市 阿部 一子
国際環境NGO FoE Japan 吉田 明子
電力自由化特集の3回目は、千葉県で具体的に選べる電力会社についてみていきます。パワーシフト・キャンペーンで紹介している、再生可能エネルギーや地域を重視している電力会社のうち、千葉県で契約できる電力会社をまとめました。毎月数千円、年間で数万円のあなたの電気代をどこに支払うか。それは未来への意思表示です。より詳しい情報はこちら http://power-shift.org/ もしくは各社ウェブサイトへ!
東京情報大学 総合情報学部 環境情報研究室 原 慶太郎
3)レジリエンスとEco-DRR
2000年代から、各地で暴風雨や地震・火山などによる大規模な自然災害が頻発しています。2011年3月に起きた東北地方太平洋沖地震・津波によって、亡くなったり行方不明になったりした方は18,000人を超え、2016年4月の熊本地震でも200名を超す方が犠牲になりました。2005年8月に米国東部を襲ったハリケーン・カトリーナでは、暴風雨と洪水によって2,500名を超える死者・行方不明者を数え、2015年9月の関東・東北豪雨では、死者8名、避難勧告は315万人に及びました。今年に入ってからも全世界で豪雨や突風、季節外れの大雪などの被害が報じられています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告では、これらの強風、竜巻、落雷、集中豪雨などを極端気象(extreme weather)と呼んで注意を喚起しています。
このような災害が多発する状況に対し、レジリエンス(resilience)という言葉で、社会として対応できるような枠組づくりが提起されています。レジリエンスは、「はね返り」や「元気の回復力」などの意味で用いられる語句ですが、心理学では以前より用いられ、「逆境に直面したときに、それを克服しその経験によって強化される、また変容される普遍的な人の許容力」や、「困難あるいは驚異的な状況にもかかわらず、うまく適応する過程、能力、あるいは結果」を意味します。また、生態学においては、「生態系が同じ機能や構造を維持し、ある安定領域に留まるために撹乱を許容できる量または程度」のことを指し、「生態系の状態が撹乱を受ける前の状態にまで戻る速さ」、および「生態系が構造や機能を維持するために撹乱を許容できる程度の大小」という意味で用いられます(東北大学生態適応グローバルCOE
2013)。英国の王立協会では、「レジリエンス・シティ(Resilience City)」というプロジェクトを立ち上げましたが、ここでは、「個人・地域社会・人間社会と自然生態系を含む社会生態系が、たとえ自然災害にあったとしても、存続・適応・発展し、さらには新しい状態へ大きく転換すること」としています。
一方、わが国では、2011年の東日本大震災以降、生態系を活用したリスクの減少という意味で、Eco-DRR(Ecosystem-based Disaster
Risk Reduction)という言葉を耳にするようになりました。「持続的でレジリエントな発展を目指して、生態系の管理、保全と復元を行うこと」とされています(PEDRR
2010)。環境省が、「生態系を活用した防災・減災の考え方」に関する報告をとりまとめ公表しています(環境省 2016)。この中で、防災・減災に対する生態系機能として、1)
災害リスクの低減、災害発生時及び復興の各段階で効果を発揮、2) さまざまな災害で効果を発揮、3) 生態系のレジリエンス(回復力)と復興への貢献、4)
平時に多様な生態系サービスを発揮、5) 低コストで整備・維持管理が可能、6) 災害に強い地域コミュニティの形成、7) 地域の活性化への寄与、8)
気候変動対策への貢献、を挙げています。また、Eco-DRRの基本的視点として、1) 総合的な視点(時間的・空間的)で検討する、2) 地域で合意形成を図る、3)
地域本来の生態系と災害履歴や伝統的知識を活用する、4) 維持管理の仕組みを構築する、ことの4点を挙げています。
グリーンインフラ
1990年代半ば頃から米国で、土地利用計画に関する意思決定において自然環境の重要性を強調するものとして、グリーンインフラという概念が広がりはじめ、特に都市計画分野において、水と緑を扱う多様な手法や計画に関連して使われてきました。米国環境保護局(EPA)ではグリーンインフラの定義を「地域社会が健全な水環境を維持するために選択しうる手法であり、多様な環境からの利益を得つつ持続可能な地域社会の維持に寄与する」としています。2013年に出された「新戦略アジェンダ」では、「連邦政府のさまざまな部署において横断的にグリーンインフラを通常の業務として位置づけること」が掲げられ、連邦政府の役割強化が謳われています。
同じ2013年には、EU協議会から「欧州グリーンインフラ戦略」が公表されました(European Commission, 2013)(図5-1)。ここでグリーンインフラは、自然が人間に便益を提供する空間的構造を指し、正常な空気や水などの多面的機能をもつ生態系利益・サービスをもたらす自然の機能を強化することを目的としています。欧州戦略では、都市から田園地域までの緑と水の空間がインフラとして抽出されています(図5-2)。グリーンインフラの効能としてNatural England (英国の非政府部門公共機関)は、(1)人々が自然とふれ合うことができる野生生物の生活空間、(2)屋外のレクリエーション空間、(3)気候変動の適応、(4)環境教育、(5)地域での食料生産、(6)ストレスを削減し運動の機会を与えることによる健康と福利の改善、を挙げています。 最近では、地方自治体レベルでグリーンインフラに対する取り組みも進められ、英国西部の都市リバプールを中心とする地域では、市民を巻き込んだ行動計画づくりをはじめとする活動が進められています(図6)。
このグリーンインフラは、ようやくわが国にも導入されつつあり、国交省や環境省など各省庁で動きがでてきている。最近では、高層マンションの屋上庭園やオフィスビルの壁面緑化の中には、地域の自然環境や生物多様性への配慮がみられるものが増えてきた(図7)。これらも都市の中のグリーンインフラです。
(次号に続く)
フレンドシップキャンプへのご寄付、
今年もフレンドシップキャンプに多くの皆様からご寄附をいただきまして、どうもありがとうございました。おかげさまで、ちば環境情報センターで8万円、ちば市民放射能測定室と合わせて10万円を、千葉YMCAさんにご寄付させていただくことができました。 |
ちば環境情報センター事務局 |
ニュースレター2017年11月号(第244号)の発送を1月8日(水)10時から事務所にておこないます。 発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。
編 集 後 記 アセス手続きを行わないまま稼働を始めた石炭火力発電所(仙台パワーステーション)に対し、住民が操業差止を求めて立ち上がりました。決起シンポジウムの基調講演で、日本の公害史で「欧米の研究者は、日本の公害対策は市民によって下から作られたと評価している」と話されました。今また市民の対応が問われています。mud-skipper♀ |