ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第257号
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千葉市美浜区 熊野 志功
ニュースレター読者のみなさん、こんにちは。くまのシコーです。シコーは、下大和田谷津田でお米つくりをしています。
2018年10月20日(土)、お天気の日に、古代米の稲刈りとオダ掛けをしました。稲刈りをしているときに、赤茶色のふわふわした小さな動物が、残った稲穂にむかって、すばやくまっすぐに走るのを見ました。そこで一句。
稲穂まで走るふわふわカヤネズミ
写真1はカヤネズミの写真です。こんなにかわいい動物がいるなんて。
さて、カヤネズミは、お米を食べるやっかいものと思われてきたけれども、違うという話があります。
以下のホームページから、小冊子『知ってる?田んぼのカヤネズミのくらし』(畠佐代子、2016年)をダウンロードして、ちびっこさんはお父さんお母さんたちに読んでもらってください。最近の研究がやさしく紹介されています。
http://www.usp.ac.jp/topics/ses20160614/
近江(おうみ)の彦根で、カヤネズミが本当は何を食べているのか調べるために、巣に残ったフンをDNA分析したそうです。すると、フンのなかにはイヌビエやスズメノヒエのようなイネ科の雑草が多く、田んぼの巣のフンからはオンブバッタも見つかりました。イネはというと、田んぼの巣からは見つからず、休耕田の巣18個のうち1つから見つかっただけでした。
これは、冊子の4ページの表です。
つまり、カヤネズミは、田んぼのお米をほとんど食べず、むしろ、困りもののイネ科の雑草や、イネを食いあらす害虫を食べてくれているということがわかります(表)。
だから、カヤネズミは人間にとって害獣ではなく、米つくりを助けてくれる仲間らしいのです。そういえば、昔は、あのトキでさえ、イネをふみあらすと思って駆除(くじょ)していたと、佐渡島(さどがしま)の方から聞いたことがあります。人間を支えてくれる仲間だったのにです。
スズメにもやさしい下大和田谷津田では、写真2のように、カヤネズミの巣の周りの稲が刈りのこされていました。葉っぱでできた、丸くてもにゃもにゃなのが、カヤネズミの巣です。今ごろはもう、田んぼの近くの草地に引越したでしょうか。
このほかにも、下大和田谷津田には、カヤネズミの巣がたくさんありました。シコーにお米つくりを教えてくださっている、 ちば環境情報センターの平沼勝男さんは、今年は過去最多とおっしゃっています。
カヤネズミは、豊かな草地ときれいな水のあるところでないと生きられない生物なので、カヤネズミがたくさんいるということは、それだけ自然が豊かということを意味しています。カヤネズミは、豊かな自然を表す指標(しひょう)ということです。農薬を使わず、昔からのやり方で、みんなでお米をつくっているからこそですね。
田んぼも土の水路も隣りの山も、生き物だらけです。たくさんの生き物たちにいつでも会いにいけるなんて、本当に大切なすばらしいことと思いませんか。
熊野志功こと磯田尚子(慶應義塾大学大学院講師)
我孫子市 為貝 和弘
我が家の太陽光発電システムが発電を開始してから8年弱が経過し、FITによる買取もあと残り2年ちょっとで終了します。2018.11.20に通算44,000kWh発電量に達した事を示す表示がでましたので、これまで平均で約5,500kWh/年の発電がされていたことになります。
今なら、同じ発電量の発電システムをもっとずっと安く設置(150万円程度)できますが、8年前には補助金を差し引いても250万円弱かかっていました。売電料金による収入と昼間の発電による消費電力の低減量を足して考えると、10年間で設置料金がやっとペイできるという感じです。
設置場所:千葉県我孫子市の二階建て家屋の傾斜屋根上 設置方向:南西向き 発電開始:2010年12月 売電料金:48円/kwh 太陽電池:パナソニック MD-HIT215T ( 単結晶シリコン+アモルファスシリコン ) 変換効率:16.8% モジュール:4.51kwh 設置費用:290万円 国補助金:31万5700円 市補助金:10万円 実質負担:248万4300円 |
2019年は余剰電力買取制度スタート時点から売電してきた世帯の契約が終了する年(10年間の買取義務保証期間)になります。今後の買取価格がどうなるか未定(よくて7円~8円、最悪0円とも言われている)ですし、15年程度で寿命を迎えるパワーコンディショナーの交換料金(約30万円)も考えると、火力発電や原子力発電の割合を少しでも減らそうという強い意志がないと、設置するには躊躇するでしょうね。
我が家でも、パワーコンディショナーの交換時に蓄電池を入れるか、またはハイブリッド車にして充電する事も視野にいれて検討中です。
哺乳類研究者 香取市 濱中 修
すみわけ
中学校理科のある参考書(1)に、「すみわけ」の例として、私の研究が引用されています。千葉県に住む野ねずみの生態と分布についての研究です。
著者からも、出版社からも、いっさい連絡がなかったので、私は、つい最近まで、そのことを知りませんでした。
異なる種類の生物が、よく似た生活をしているとき、住む場所を分け合うことで、競争を避けて、共に生活する現象を「すみわけ」といいます。1930年代後半、可児藤吉は、水生昆虫の研究をしていて、この現象を発見しました。でも、その論文(2)に、競争ということばはありません。
可児は、1944年、学徒出陣で出征し、まもなくサイパン島で戦死しました。「競争を避けて」は、戦後になって、他のひとたちが、「すみわけ」に加えた解釈です。
「生存競争」は、資本主義が産んだ概念です。理科の授業で、そんな概念を刷りこんでしまったら、子どもたちは、自然をありのままに見ることができなくなります。
大切なことは、授業でも自然観察を実施することです。子どもたちに、自然の中での学習を通じて、生物のすみわけに気づいてもらうことです。読み物で、教え込みことではありません。
指標生物
川の流れは、瀬では速く、淵ではゆるやかになります。水底の石の表側で速く、裏側でゆるやかになります。川には、細かく違う環境(微環境)が存在します。
川に住む水生昆虫は、それぞれの種が、自分に合った微環境を選んで生活しています。瀬のほうが、淵よりも住んでいる水生昆虫の種類がずっと多いことから、瀬には、淵よりも多様な微環境が存在することが読みとれます。生物は、環境をとらえるものさしになるのです。
住んでいる生物の種類から、その場所の環境を推定することができます。そういう目的で使われる生物を指標生物といいます。野ねずみも、指標生物になります。
アポデムス指数
アカネズミとヒメネズミは、どちらもアカネズミ属(Apodemus)に分類されます。ある場所で、この2種類の野ねずみが捕獲される割合を、アポデムス指数(Apodemus
index)といいます。1970年代の始めころ、宮尾嶽夫さんが提唱しました。
普通、樹木が密に生い茂って、林内が昼でも薄暗い森林では、ヒメネズミの割合が高くなり、樹木がまばらに生え、林内に光が差しこむ森林では、アカネズミの割合が高くなります。そのことから、宮尾さんは、この2種類の野ねずみの割合が、自然破壊などで、森林の疎林化がどの程度進んだいるかを計るものさしになるとしました。
当時は、富士スバルライン沿いで、天然の針葉樹が枯れるなど、開発による自然破壊が大きな問題になっていました。アポデムス指数は、それをとらえるのに役立つものさしでした。しかし、ヒメネズミのほうが、気候が寒冷な高山に住み、アカネズミのほうが、温暖な低山に住むという「すみわけ」論が普及していた時代でしたので、宮尾さんの提案は、注目されることがありませんでした。
千葉県には、山地がありません。だから、アポデムス指数を左右する要因として、標高(気候)を気にしなくてすみます。千葉県内で,私が捕獲したアカネズミとヒメネズミについて,森林の種類ごとに割合を求めると,図2のようになります。アポデムス指数は,千葉県の森林について,それぞれの自然度を示すものさしになります。
参考・引用文献
(1)石渡正志・滝川洋二(2014年)『中学理科の教科書 改訂版 生物・地球・宇宙編』講談社
(2)可児藤吉(1944年)「渓流棲昆虫の生態-カゲロウ・トビケラ・カワゲラその他の幼虫に就いて」(『可児藤吉全集』所収)
千葉県野鳥の会 市川市 蓮尾 純子
たぶん同じ年、1968年の6月だったと思います。「新浜を守る会」の仲間たち と、同じく蓮尾嘉彪(よしたけ)からの声かけで、新浜鴨場のサギの標識調査を手伝わせてもらったことがあります。当時日大2年の前川広司さん、東大2年の山科健一郎さんがいっしょで、農工大の野鳥研究会のお仲間もいたと思います。鴨場のサギ山の標識調査はその何年も前から山階鳥類研究所の吉井正先生がやっておられ、ヒナの見分け方や生長についての論文も書いておられます。
サギのコロニーに踏み込み、巣にいるヒナを捕らえて標識足環をつける調査です。侵入者にコロニーは大パニックで、大きくなったヒナは巣から逃げ出します。びっしりと繁った竹やぶに踏み込むので、ウィンドヤッケや雨合羽の完全武装。白いふんやヒナに吐きかけられた半分消化された魚やカエルなどが外衣について、惨憺たるありさま。それでも、はるかに悲惨なのは巣から逃げたヒナで、地面を走って逃げる途中、掘割に落ちて溺れるものも。
堀に落ちたヒナを何とか助けようと、たも網ですくったり、棒につかまらせてつり上げたりしていました。でも堀のそばは急傾斜。糞でぬれた地面に足を滑らせ、「ドッボーン!」。「誰か落ちた!」「古川さん(私の旧姓です)に決まってるよ」「どうせそうですよ(これは私)」「待ってなさいよ、今、舟で助けに行くから
あーあ。腰までの深さです。水面から堀のふちまでは80㎝くらいあって、自力ではよじ登れそうもありません。濁った水にはゴミが浮いて、傷みかけたサギの死体が浮いて、何とも気色の悪いこと。その時、対岸の竹やぶからガサガサと人影が。山科氏です。助けにきてくれた、と喜んで、じゃぼじゃぼと近づきました。ところが、ところが。「古川さん、これ」あれ?どうも様子が違う‥‥‥
「向こう岸から落ちたらしいんだけど、あっちに渡してくれる?」気がつくと2羽のサギのヒナを手渡されていました。びしょぬれでふるえているけれど、体は暖かい。そのまま山科氏はまた姿を消し、私はじゃぼじゃぼと対岸へ。岸に戻したサギのヒナが竹やぶへと消えて行ったあと、嘉彪と前川氏が小舟で助けに来てくれました。
山科健一郎さん、東大地震研の教授で、三宅島の噴火の時など、時々テレビでもお見かけしました。リタイア後、昨年観察舎で行った「とびはぜ祭り」の時は、とてもわかりやすく親しみやすい「とびはぜものしり帳」を作ってくださいました。まるで 七夕のような年1回程度のデートで、20年もかけて、バイオリニストの彼女と四十路をこえてからゴールインされた彼。一点集中と、それに伴うおとぼけが学生時代から個性的でした。事件当時、「あんまりだ!」という抗議に対しておわびのハガキをくれたのですが、「ひらにひらにご容赦。サギのヒナの救助のことしか頭になかった。次回は何をおいてもまっさきに飛び込んでお助け申す。そのために、今一度目の前で落ちてくだされ」とありました。
前川広司さんは、後にほかの学生メンバーと「若さの探鳥会」と銘うって、30歳以上はおことわり、という探鳥会を何回かやられています。楽しかったです。初めて雪の山道を歩いたのはこの時だったなあ。軽井沢近くの御代田という駅のホームから、電車を待つ小一時間の間に30種もの鳥を見たこともありましたっけ。その後、学芸大教授の小川潔さんなどと環境教育のさきがけとなられました。前川さんと山科さんは、今も時々よいコンビでいっしょに行動されているそうです。
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