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ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第262号 

2019.5.8 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 東京湾のマイクロプラスチック ダイアグラムで見る20カ所の砂浜
  2. 旅行業者HISが、オランウータンの生息地を破壊!(2)
  3. 第14回江戸川の稚アユ救出作戦
  4. 新浜の話16 「軋轢」

東京湾のマイクロプラスチック
ダイアグラムで見る20カ所の砂浜

千葉市稲毛区 グラフィックデザイナー 森口 ゆかり 

 子どもの頃、実家に近い砂浜で裸足なって遊ぶことが大好きでした。
近年、大量のプラスチックごみが砂浜に流れ着くというニュースが各地から寄せられ、昨春に幕張の浜に行くと、砂浜の波打ち際にプラスチック製品が多く含まれた長く続くゴミの線ができて、両端には多く溜まっています。軽いものは、風に吹かれて防砂林までの砂浜全体に広がり、とても裸足では歩けません。

 

 よく見ると、砂粒がカラフルです。その粒の多くは、陸地にあったものが水より軽いために雨が降ると洗い流されて、川から海へ流れ込み、紫外線や波の力で細かい破片になり海を漂っていると推定されている、プラスチック片です。ストローは、鼻に刺さったウミガメの被害のニュースから廃止の取り組みが進んでいますが、砂浜には、ペットボトル、袋類、釣り具、弁当容器、人工芝、破片になった日用品や、見慣れない加工前の粒状樹脂が多く散乱し、景観も害しています。人が、海辺の生物の暮らしの場をゴミだらけにしている、あまりに残念な状況でした。(図1)
 微細なプラスチックは、海洋生物が誤って食べて消化管に詰まる、傷つく、胃にたまり栄養失調になるだけでなく、有害な化学物質を吸着する性質から、食物連鎖による人への健康影響も懸念されています。

 

 保存能力や衛生面に優れ、軽くて長持ちする大変便利な道具プラスチックは、短時間にのみ使用する目的でも多用されてきました。世界の生産量は1964年から2014年の50年間に、1500万トンから3億1100万トンと20倍も増え、今後20年間で倍増すると予測されています。この中から年間800万トンが海に流出しているといわれ、一般的な2トンゴミ収集車400万台分を海に捨てたことになります。ダボス会議(2016年1月)では、手を打たなければ、2050年までに海の魚の量を重量ベースで上回ると報告されました。(図2)
 何が原因か、身近な東京湾の砂浜の状況はどうか、幾つか海岸の様子を見て確かめたいと撮影を始めました。海水浴場や観光地の清掃が行き届いた砂浜でも回収が困難なため残っているマイクロプラスチックを採取して、画像とともに全体の様子を形で表し、海辺に行く機会のない方々にも見ていただき、現状に気づくきっかけになればと考えるようになった、その頃に機会があり、2018年9月から約半年かけて制作しました。昨年の夏は9月も30度を超える夏日が続き、厳しい熱さの中での調査でした。市原市付近は、工場や潮干狩り場が多く空欄ですが、地図上10kmメッシュの中から1か所ずつ、20カ所を観察しています。(図3)。      つづく


【参考資料】
   環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況」
   2016年エレンマッカー財団「The New Plastics Economy

旅行業者HISが、オランウータンの生息地を破壊!(2)

東北大学大学院教授(環境社会学)・仙台PS操業差止訴訟原告団長 仙台市 長谷川 公一  

HISは撤退申し入れを黙殺し、基礎工事を強行!
 このニュースレター第259号で紹介したように、私たちは全国の環境団体・環境系の研究者・市民活動家などの賛同を得て、1月15日付けで、HISの澤田社長宛に計画撤回を申し入れました。2月5日には直接面談し、社長の英断を求めました。澤田社長は「検討の余地はあるか、と少しは感じている。これまで(批判点について)詳しくは聞いていなかった」と不勉強は認めたものの、法令違反はないとして計画を続行。私たちの批判や疑問にほとんど答えないまま、3月中旬には重機を入れはじめ建屋などの基礎工事の開始を強行しました(写真)。建屋などの建設工事は2019年内に完成し、2020年の年明けからは試運転、2020年度から本格操業開始の予定です。宮城県の担当者や地元角田市役所は、既存の制度を駆使して地域を守ろう、極力計画をチェックしようという発想が弱く、傍観しています。

HISパーム油発電の泥沼へ
 しかしHISは、本業の旅行業から遠く離れた、パーム油発電という泥沼の深みにいよいよはまり始めた、自滅への一歩を大きく踏み出したと見ることもできます。ここに予告しておきます。ちょうど東芝が2006年得意顔で原発メーカーのウエスティング・ハウス社を買収したことが粉飾決算の誘い水となり、2016・17年に顕在化し、経営破綻の引き金になったように。SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視した投資活動)は、今や世界の企業の基本的な行動原則です。グローバル化した時代に、SDGsやESG投資に背を向け、全国の環境団体・環境系の研究者・市民活動家などの要望を黙殺する企業が長期的に生き残れるでしょうか。2012年以降に計画された50基の石炭火力発電所の新増設計画のうち、これまで13基が計画中止もしくは石炭以外の燃料への計画変更(2019年4月末現在)を余儀なくされています。社会的学習能力のない企業は、生き残れない時代なのです。

 

悪臭・騒音・低周波公害——パーム油発電所による近隣住民被害
 パーム油発電所について、ニュースレター第259号に記したように、原料のパーム油確保にともなう熱帯林破壊などを主に問題視してきましたが、2017年7月に運転を開始した京都府福知山市では、発電所は出力1760kWの小規模ですが、近隣住民から悪臭、ディーゼルエンジンの運転にともなう騒音、低周波公害による睡眠妨害などの訴えが寄せられています。HISの計画はディーゼル発電機4基、計4万1100kW、23倍も大きいものです。環境アセスを行っておらず、試験運転開始後には、大問題になることでしょう。
 連休明け後、HISに対して、私たちは計画撤退を求める署名活動(日本語版および英語版)を本格的に開始します。紙でも、オンライン
( http://chng.it/GT694P9Jn2)でも受け付けております。是非ともご協力ください。環境破壊的なプロジェクトと企業は、市民の力で淘汰いたしましょう。

第14回江戸川の稚アユ救出作戦

 東京都江東区 中瀬 勝義  

実施日:2019年4月14日
場 所:江戸川水門・水閘門前
主 催:利根川・江戸川流域ネットワーク

 国交省江戸川河川事務所、市川市、江戸川区、松戸市、江戸川を守る会、松戸市漁業協同組合、地域交流センター、みずとみどりの寺子屋、流山カヌー同好会、葛飾区カヌー協会、松戸まちづくり交流室、えどがわ環境財団、新坂川をきれいにする会、東邦大里山応援団、船橋芝山高校生を始め、利根川・江戸川流域のたくさんの市民団体の後援、協力で50人を超すスタッフを擁して開催された。 

 今年の稚アユ救出作戦は、佐野実行委員長の開会宣言で開始。江戸川河口所長から参加者への暖かい挨拶を頂いた。先ず、大型紙芝居「アユの一生」が演じられ、秋に利根川で生まれ、利根川、江戸川を下り、東京湾で育ち、春に再び江戸川、利根川を上るアユの一生を学んだ。その後、水門で閉ざされて上れない稚アユのために、子供たちにEボートを漕いで閘門を開けてもらうことで、アユの遡上を応援した。
 子供たちは下流側から閘門に入り、稚アユとともに上流へボートを漕ぎ入れ、Eボート体験を楽しんだ。子供たちからは元気な歓声が上がった。ここ江戸川の稚アユ漁は昔から盛んに行われ、様々な川に出荷し、「アユ溢れる川」として有名だった。住民の水道水源と洪水対策のために水門がつくられ、アユが上れなくなったが、地元の子供たちと市民の協力で上らせることができた。

 
下流側から閘門に漕ぎ入れ
 
閘門の中に入り子供たちの歓声が
 
  稚アユと一緒に江戸川上流側へ

新浜の話16 「軋轢」

千葉県野鳥の会 市川市 蓮尾 純子 

 「あそこの水ん中に叩っこんでやろうか、という者もいるからな」「精神病院から出てきたような奴なら罪にはならんから」「あんたらはいいかも知れんが、親がかわいそうだから」
 あれはいつのことだったのでしょうか。たぶん1967年か、1968年はじめごろ。久しぶりに楡里ちゃん、裕子さん、私で新浜に出かけた時のこと。場所は昔の舟だまりの近く。今だと福栄公園の横か、新浜通りの交差点のあたりか。「古川純子ってやつはいるか」(古川は私の旧姓) べか舟から上がってきた漁師さんに声をかけられました。「私です」と答えたのがよかったのかどうか。「新浜を守る会」の住所は「古川純子方」になっているので、新聞にも、各種書類にも必ず私の名が出ます。みるみるまわりを囲まれて、憤懣をぶつけられました。自分がどのように受け答えをしたのか、思い出せません。ふしぎですが、怖いとは少しも思いませんでした。でも、どうしても平行線になるしかない立場。ただそれが悲しくて、恥ずかしいことに涙が止まらなかったものです。
 それから10年近くが経過し、プレハブ2階建ての行徳野鳥観察舎旧館がオープンしてからのこと。「蓮尾さん、あん時は悪かったねえ」 60歳代のご年配の方。時々顔はお見かけしていたと思います。「あすこで、みんなが何とか言ったでしょう。私は言わなかったけどね。みんなもね、困ってたもんだから」
 あの時の漁師さんたちのお一人だったのです。ただ懐かしそうに話をされている。どうお答えしたか、これももう思い出せません。その後も何度もお孫さんを連れて顔を出してくださいました。「蓮尾さん、孫の相手をするようになってはね、もう人生、秋ですよ」

 

 同じく旧館時代のことだったと思います。夜、電話をとると、いきなり怒鳴りつけられました。「あんたねえ、あんなのは、この辺にいくらでもいるんだ。それをやましなのみやだかなんだか、ひょっと持ってっちゃって、どういうことなんだ」
 最初は何がなんだかわからずにいたのですが、だんだんにわかってきました。この日、妙典のほうからトラフズクの死体が届けられました。めったに目にしていない種類です。珍しい鳥なので、山階鳥類研究所にお届けします、ということで、拾われた方のお宅にお礼のお電話をしたのです。その方からのお叱りでした。「珍しい鳥なら鳥で、この辺の学校にでも置きゃあいいんだ。それを好き勝手にやってよう」
 この時の受け答えも、結末も、思い出せません。結局、山階といういわばカタキの名前に腹を立てられたのです。言いたいことだけを思いきりぶつけて、あとはけろりとしておられたような気がしますけれど。
 私と嘉彪が行徳野鳥観察舎に住みこみで働く、ということになった時、私の母は「行徳に住んだりして大丈夫なの?」と心配し、父からは「ただそこに住んでいるというだけではだめだ」と言われました。父のことばを実践できたのかどうか。


 総会と交流会のご案内

日 時:2019年5月25日(土)
総 会:13時30分~15時 交流会15時~17時  
会 場:ちば環境情報センター事務所
内 容:2018年度の活動実績報告・会計報告,2019年度の活動予定・予算などの審議。
    総会後、交流会を予定しています。
    軽く飲食しながら、情報交換などいたしましょう。当日受付、参加費300円。

※正会員の皆様はご出席よろしくお願いいたします(総会資料は別にお送りいたします)。
 欠席される方は同封の委任状をお送りください(郵送またはFAXまたはメールで)。
 なお総会はオブザーバーとしてどなたでも参加できます。

【発送お手伝いのお願い】

 ニュースレター2019年6月号(第263号)の発送を6月7日(金)10時から事務所にておこないます。 発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。

編 集 後 記

 機会を得て台湾を訪問した。レストランで肉うどんをいただいた。付け合わせに、昆布巻き、牛蒡のおひたし、海藻の酢の物が添えられていてびっくり。麺は米粉。台湾では、米をご飯以外の様々な形で利用(餅、麺、菓子など)していて、日本でも米消費を広げるヒントになりそう。       mud-skipper♀