ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第272号
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千葉市緑区 網代 春男
3月10日にNHKニュースウォッチ9で放映された「タンク水の処分 揺れる漁業」東日本大震災・原発事故9年「タンクにたまる水に処分案 有馬が取材
福島の漁業は今」をご覧になった方はいらっしゃいますでしょうか。現地で漁業者、東京電力に取材したものです。
トンボの観察会やヤゴの同定でお世話になっているトンボの先生 互井賢二さんから同番組について問題提起のメールをいただきました。
内容はトリチウムを含む汚染水の海への放出が安全であると誘導するような報道のあり方に中立公正であるべきNHKの姿勢を問題視すると共に互井さんのトリチウムについての認識を述べたものでした。
私はNHKの番組は見ていないのでNHKに関する問題は別として、もとより、汚染水の処理問題に関心はあるのですが私自身は判断する知識を持っていません。
幸い当会の運営委員に海洋の放射能を長年調査している研究者の稲富直彦さんがおられますので互井さんのメールを送り、解説していただきました。
互井さんのトリチウムに関する認識を肯定した上で広汎な調査実績に裏付けられた化学者の観点からの解説は、汚染水問題を正しく認識する上で大変貴重なものと思いお二方の了解をいただき本誌に内容を紹介することとしました。
<互井賢二さんから寄せられたメール内容>
3月10日のNHK「ニュースウオッチ9」で許されない内容が報道されたとの指摘が友人から入りました。小生も見ていて、トリチウムが問題がないとの話で、海への放出へ動き出すプロパガンダのような番組でした。この時に何か引っかかっていたことを友人がきちんと科学的に問題指摘をしてきました。東京電力の主張にNHKがのっかった形でのプロパガンダで要注意です
小生がこのURL(互井さんの友人が互井さんに送ってきたNHKの番組のURL)を見た処、上記報道番組で出て来る TCS-172(日立)と言う放射線検出器はガンマ線用のシンチレーションサーヴェイメーターであって、トリチウムの弱いベータ線検出には無力です。報道では、この無力な検出器を使って、「殆ど検出されないから安全です」とやっていたことになります。知っていてやったとしたらひどい詐欺です。このような番組が3月10日の特集で出たこと自体、大変人を馬鹿にしています。
知らないでやったとしても、大きな誤解を人に与えます。マスメディア、ましてや、料金をとって報道する番組が責任をもってなすべきものではありません。元来、料金を取ると言うことは独立であることの経済的基盤になっているはずなのに、政府が経営責任者を任命する。これ自体ひどい話ですが、そのメディアがこういうことをしているのです。
上記の計測器について少し捕捉します。
トリチウムの壊変はβ壊変で、しかもそのβ線は18keVと非常にエネルギーが弱いから、アトミカも「このβ線の物質透過力が極めて弱いため、測定試料を放射線検出器の外側に置く方法ではほとんど検出できない。…液体シンチレータに溶かし込んで測定する液体シンチレーション法を用いる」と、書いています。詳しくはアトミカの「トリチウムの液体シンチレーション法による測定
(09-04-03-25)」をご覧ください。アトミカの記事は福島後沢山消去されましたが、この項は生きていました。
さらに捕捉するなら、トリチウムのベータ線はエネルギーが弱いからと言って無視できるのは外部被曝のケースであって、内部被曝では何も起こさないなどと言うのは論外です。トリチウムのベータ線のエネルギーは~18000eVで、一般の原子から電子をたたき出すには30eV足らず、数eV 程度のエネルギーしか要しませんから、大型ダンプカーが人の群れに突っ込んでなぎ倒すのと同様に、周囲の生体組織の原子に当たり散らしながら多数の電子をたたき出してゆきます。一個の放射線辺り、単純計算で数百個から数千個もの電離を起こして、狭い領域に活性酸素を濃密に生じるはずです。活性酸素は周辺のタンパク質やDNA等の有機物に結合してダメージを与えます。
勿論、どんな薄いトリチウム含有水でも有害というつもりはありません。我々の体には放射線から身を守る様々なシステムが備わっていますから。ただ、福島で溜まってしまったトリチウム水は、1L当たり77万ベクレルという、基準値よりはるかに高い放射線を出すものであり、トリチウム以外にも除去しきれない放射性物質を幾つも含んでいます。それを、外部から検出器をあててみて「(口に入れても)無害です」という誤解をおこさせるのは詐欺以外の何物でもない、ということなのです。
<稲富直彦さん (公益財団法人海洋生物環境研究所総括研究員)の解説>
e-mailの内容、確認しました。
トリチウムは半減期が約12 年のβ線放出核種であり、その放射線の特性や、検出器との係りは互井さんの認識でほぼ間違えありません。
また、トリチウムについては、外部被ばくよりも内部被ばくが問題になることも事実です(Bq→Gy換算係数は内部被ばくが外部被ばくの106倍程度大きい)。その上で、以下、番組の主張の根拠となると思われるデータを補足してみます。
1.トリチウムの人体影響の考え方
トリチウムの被ばく影響は非常に小さい、との主張は(β線を考慮しても)「体内での留時間が短く、体組織に結合しより長く留まるものも非常に少ないから」を根拠にしたものと思われる。
人体への影響は、体外で接近した場合の外部被ばくと、体内に取り込まれた場合の内部被ばく、両方考える必要があります。簡単に言えば、それぞれに対して、放射線の強さと、体組織への照射時間の累積(合計)でリスクが定まると言えます。「問題無い」との考え方は、適当な濃度のトリチウムに対して、その放射線は弱くまた、照射時間も短いから、との理由によるものであると言えるでしょう。
トリチウムは地球で最も小さな原子である水素の一種であり、それと化学的な性質が同じであるため(環境中ではほぼ水として存在している)、拡散速度が非常に早く、また、自然界では濃縮が起きない事、等から、仮に人体に取り込まれても、迅速に出て行ってしまうことが一つの理由です。
一方で、濃縮に関連して、体組織へ結合しているトリチウムの評価が国際的に重要視されており、分析方法の転換が求められています。そのため、当研究所でも魚体の組織に結合しているトリチウムの分析・検討していますが、環境中(海水中に0.2Bq/L程度、雨水中に0.5Bq/L程度、存在しています)から魚の体組織に取り込まれるものについては検出困難なレベルとなっています。つまり「濃縮はしない」ということになります。
2.トリチウムの環境中の濃度と処分方法
これまでもトリチウムは原子力施設等から環境中に放出され続けてきた。様々な環境への負荷がある中で、現在日本周辺の海水中のトリチウム濃度は0.2Bq/L程度でありその値は年々減り続けている。
1で「原子が小さく拡散が早い」及び、「濃縮はしない」と紹介しましたが、それらは一方で「汚染水からそれだけを取り除くことが出来ない」ということの裏返しでもあり、原発や、再処理施設等、原子力施設では、「希釈して環境中に放出」との廃棄方法が取られてきました。環境中のトリチウムの累積量の主な内訳は、大きい順に、核実験由来(1945~63年の間に約2×1020Bq)、宇宙線等による生成起源(約7×1016Bq/年)、世界の原発や再処理施設からの継続的な放出(国内の施設から約8×1014Bq/年)となっています。注目されている福島第一原子力発電所の処理水の貯蔵量(以下、処理水)がざっと1×1015Bq程度(8×1014;2016年時点)であり、オーダー的には、国内の原子力施設からの年間放出量と同程度となっています(文献2、参考資料3によくまとまっています)。この状況下にあって、日本周辺の海水中のトリチウム濃度は、年を経るに従い減衰しており、大気圏核実験で放出された量が相当なもので、年々減衰しながら、その名残が未だに検出されている、と解釈できるでしょう。
文献2) 経産省 トリチウム水タスクフォース資料
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/tritium_tusk/20160527_01.html
・福島第一原子力発電所における汚染水対策の検討資料が閲覧できます。
(以下次号につづく)
国際環境NGO FoE Japan 高橋 英恵
12月2日から15日にかけてスペイン・マドリードで開催された国連気候変動枠組条約締結国会議(COP25)では、気候変動への取組みの議論の中、気候危機に直面する途上国市民団体が中心となり、日本の石炭火力発電事業(石炭支援)に対する抗議も行われていました。
その抗議の場で、フィリピンの市民団体メンバーは、「これまでも声を上げてきたにも関わらず、日本政府は過去の過ちから学ぼうとしていない。台風は威力を増し、フィリピンだけでなく、日本、そしてアジア各国に甚大な被害を及ぼしている。日本は“高効率”として石炭火力を売り込み、気候変動対策よりも利益を優先している。日本は直ちに石炭支援を止め、世界有数の経済大国として、持続可能な自然エネルギー社会への転換を牽引して欲しい。」とコメントしました。
日本による石炭支援は、これまでも主要な国際会議の場等で批判されてきました。
開幕直後、日本では梶山経済産業大臣が石炭火力温存を明言。温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電所からの撤退(脱石炭)が国際的な常識となってきている中、この発言を受け、気候変動に取り組む国際的市民団体は発言翌日、気候変動対策に後ろ向きであるとして、日本に
“化石賞”を授与しました。
日本の石炭火力政策について、日本国内では福島原発事故以降50基もの石炭火力発電所新設が計画されました。うち15基は中止となったものの、15基は既に稼働、残りも計画が進んでいます。海外に目を向けると、東南アジアを中心に21案件の日本の石炭支援事業が現在進んでいます。1)
日本の石炭支援が批判される理由は気候変動だけではありません。石炭支援事業が進む地元では、土地収奪や生計手段の喪失、反対派住民へのハラスメントなど様々な問題が報告されています。日本国際協力銀行による公的融資が行われているインドネシアのチレボン石炭火力発電事業では、建設を請負う韓国・現代建設の元幹部が地元の前県知事に賄賂を渡したとして贈収賄事件が浮上しています。インドネシアの捜査機関は両名をすでに容疑者認定し、また、丸紅とJERA(東電と中部電力の合弁会社)が出資する事業者の元取締役社長等上級幹部2名も同贈収賄事件に絡み海外渡航禁止措置を受けています。
世界の貧しい地域では気候変動への適応の限界を迎え「損失と被害」が生じ始めています。損失と被害は往々にして経済的損失として数値で表されがちですが、貧しい国々では生計手段や文化の喪失といったまさに日々の生存の問題です。近年は日本でも多くの災害が発生し、尊い命が失われました。
多くの国々が気候変動の緊急性と重要性を理解し脱石炭を進めており、アントニオ・グレーテス国連事務総長も脱石炭を呼び掛けています。日本には一刻も早い脱石炭と、社会の脱炭素化のためのロードマップづくりが求められています。
1)出典:https://sekitan.jp/jbic/issue
千葉県野鳥の会 市川市 蓮尾 純子
2020年3月31日。先の見えないコロナ禍のただなかです。東京オリンピックの延期決定前から、全世界での感染拡大がめだつようになり、行徳の保護区観察会も3月に続いて4月も中止となりました。長期休館や廃館といった状況下でも続けられた観察会ですが、今は事態の収束を祈るほかありません。幸いに新しい木造舎屋の建設は順調に進んでいるようで、形がだいぶ見えてきました。
「たまには鳥を見にくる人もいるだろうから、鍵を開けて入れてあげてください」
管理人の仕事として言い渡されたのはこれだけでした。たったこれだけのことで、ただで住まわせていただいて、お給料(二人でひとり分、と言い渡されていました。たしか最初はひとり3万円ちょっと、後に7万円になったかと)もいただけるなんて、ありがたいお話ですよね。しかし当初から、私たちはこの保護区のためにやれるだけのことをやってみようと決めていました。
今にして思えば、当時のお役所の担当者にとっては、まあ、どっちでもいいかな、という選択だったのかもしれません。それにしても、地元や役所と激しく対立した当の相手を身内に取り込むというのは、英断か、暴挙か、賢明な策というか。めぐりあわせだったのでしょうか。
最初の1ヶ月、嘉彪は昼夜を問わずバイクで走り、釣人に注意して出ていただいていました。ものすごい勢いで潮が出入りする千鳥水門のあたりは、釣り雑誌にまで紹介された絶好の釣り場。夜釣りに入る人も多かったのです。何年かはワタリガニ(イシガニ)が多くて、魚屋さんの軽トラックがカニ捕りに来られたことまでありました。一方、私はせっせと鳥のカウント調査を。12月のうちに10回は一周カウントをやったはず。当時の保護区は造成後間もない埋立地で、植生もまばら。周辺緑地には前年(1974年)に植えられた高さ50㎝、指ほどの太さの苗木が1m間隔で続いており、木立や茂みは育っておらず、どこでも自由に歩くことができました。
眼前にひろがるスズガモの大群はみごとでした。日中は何をするわけでもなく、気になることがなければ、首を背中の羽に埋めて休んでいました。大きな音がしたり、群れの中に鳥が舞い下りたりすると、ざわざわと動きはじめます。夕方近くになると、羽ばたいたり、羽繕いをしたり、動きがだんだん活発になり、日没後、あたりがとっぷり暮れてから、一方向にまとまって泳ぎはじめ、そのうち端からめくれ上がるように飛び立って海に向かいました。まっくらな水面、肉眼では動きが見えない時分です。夜の間に三番瀬方面で餌をあさり、日の出前、次第に赤みが増す東の空を背景に海から戻ってくるというスズガモたちの日常はまもなくわかりました。
私たちが引っ越してきた1975年12月といえば、ちょうど新しい行徳の街並みができはじめた時期。造成されたままの空き地が大半で、東西線の海側では、まっ先に建てられた5階建の製鐵運輸の社宅と、7階建マンションの「ソフトタウン行徳」だけが目につきました。地盤沈下でできた池もそこかしこに見られ、池の中に門柱と井戸だけが突き出た住居跡もありました。新浜小学校の開校が1975年4月。その前まで、行徳地区の小学校は明治初期開校の行徳小・南行徳小の2校。浦安は浦安小1校のみ。それからほんの2、3年で、みるみるうちにマンションが立ち並び、店舗も増えて行きました。
買い物は、駅前公園近くの「主婦の店いしわたり(現在は「アコレ」)か、行徳駅の「ポニー行徳(現在は「ドンキホーテ」)で。自転車さえあれば、暮らしには何の不便もありませんでした。
年明け。元旦に家族で散歩に来られる方も多かったので、手持ちの望遠鏡を出して、みごとなスズガモの群を見ていただいたのが、行徳野鳥観察舎としての仕事はじめです。
代表 小西 由希子
<野外活動とイベント情報休止のお知らせ>
新型コロナウイルスによる感染は未だ収束の兆しが見えません。誠に残念ですが、当会の野外活動は当面の間中止することにいたしました。年間を通じての米づくり講座につきましても、2020年度は開催しないことといたします。どうかご理解をよろしくお願いいたします。すでに講座の申し込みをし、受講料をお支払いくださいました方には返金させていただきます。
また毎月お届けしているイベント情報も、各地でのイベント中止に伴い当分の間休刊といたします。現状を鑑み、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
なお、状況が好転し再開いたします時には,改めてご連絡させていただきます。
会計 髙橋 久美子
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