ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第273号
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我孫子市 矢竹 一穂
千葉県では県内で絶滅や減少の恐れがある生物をリストアップしたレッドデータリスト(RDL)を約5年ごと、リストとともに生態や生息生育状況をまとめたレッドデータブック(RDB)を約10年ごとに公開しています(千葉県HP)。私は2001年からRDL・RDBの作成に関わり、県内のニホンリス(Sciurus lis、以下リスと略記)の生息状況を調査し報告してきました(矢竹ほか2005・2011、矢竹2012)。このたび、これらの結果をまとめた論文が千葉県立中央博物館研究報告に掲載されましたので(矢竹ほか2020)、概要を紹介し今後のリスの保全についての考えを述べたいと思います。
論文は2001~2003年、2009~2010年、2018~2019年の3回(以下、2001・2009・2018年調査と略記)に県内全域を対象にリスの生息の有無を現地調査したもので、生息の確認は主にマツ類の食痕(齧られた球果)によりました。調査の単位は約1×1kmのメッシュとし、生息メッシュ・非生息メッシュの数を集計しました。
3回の調査で確認した生息メッシュ数は県北部で25→20→11メッシュ、生息確認率(生息メッシュ数/調査メッシュ数)は52%→47%→34%と減少、県南部でも57→54→40メッシュ、74%→68%→59%と減少していました。県北部での減少が特に顕著で、生息地が孤立してきており今後の存続が懸念されます。県南部は房総丘陵を中心に連続した森林があり調査メッシュ以外での生息も期待されますが、前回調査からの生息メッシュの減少は明らかで安定とは言い難いと思います。分布状況は図(矢竹ほか2020より作成)のとおりです。
下大和田谷津での生息も当地で活動されている網代春男・小田信治両氏から情報を頂き引用しました。2019年10月14日にも網代氏が水田を挟んだ南側でリスを目視されており、生息が維持されている貴重な場所と言えます。
このようなリスの減少傾向をただ調査していくだけではなく、何らかの保全策を講じる時期に来ていると考えられます。リスの生息する森林が残されることが第一ですが、様々な人間活動によって森林の減少は必至であり、せめて残された森林の連続性を確保した上で、その質を改善していく森づくりが必要と考えます。「自然のままに」とは言いますが、昨今、重要視されている「里山」も元々はヒトによって造られ、利用・維持されてきものであり、その中で生息生育してきた生物も少なくないことも明らかにされています。
具体的にはリスの食物を提供する樹種として、可能であれば選好の高いマツ(マツ枯れによる枯損も激しいですが)、地域の植生も考慮したオニグルミやスダジイ、また営巣や休息に利用されるスギ等の常緑樹があげられます(詳細は矢竹・田村2001)。さらに営巣・繁殖用に巣箱の設置や、自然の食物を補う範囲で過剰にならない給餌なども有効だと思います。
【引用文献】
千葉市緑区 網代 春男
以下、先月号に掲載できなかった稲富直彦さん (公益財団法人海洋生物環境研究所総括研究員)の解説です。
また、下北半島にある核燃料再処理施設(以下施設)では、2006~2008年にアクティブ試験と称し、試験的にトリチウムの海洋放出を実施しています。この3年間に放出された量は、処理水の約3倍(約2.4×1015Bq)程度であり、処理水規模のトリチウムが比較的短い期間に海洋中に放出された
貴重な事例となっています。では、海洋中の濃度はどうなっていたか?
その時期も含め(1991年~現在)、再処理施設沖合に調査網を張り (沖合東西10km~70km,南北215kmの範囲)、年間2回、海水等の放射能モニタリングが実施されておりその結果が公表されています(詳細は以下、文献5参照)。当方はその調査に立ち会っており、施設からの放出の痕跡を検出する期待もありましたが、最大値は1.3Bq/L、その他、数か所でその1/2以下(バックグラウンドの2倍程度)の値が検出される程度でした(文献6参照)。これらの結果は、トリチウムの拡散が早く、放出の痕跡を捉えることがいかに難しいかを物語る例と言えるでしょう。
3.国の目指すところ、漁業者の懸念
国としては、放出基準を基に希釈し海洋に放出する方法、が最も合理的であると考えているところかと思われます。処理水保管にコストをかけるなら、安価に早々解決し、対策の進まない陸域の除染や、廃炉等に回したい、との考えもあるかと思われます。
一方で、漁業者は、放出に反対の姿勢を明言しています。ほとんどの漁業者は、「健康影響は問題無い」と理解されていますが、反対の理由は「風評被害を恐れている」からです。
なお、互井さんご指摘の、処理水に残留してしまった「トリチウム以外の放射性核種」については、処理水を適切に処理することにより取り除ける(文献1)としています。
4.総括
トリチウムの環境負荷(及び人類への影響)は非常に低いことは多くの方々に理解されてはいるものの、海洋放出は社会的影響が大きく「国民の安心」を担保するにはまだ十分な説明と理解が浸透していない、というところが現状かと思います。当方はNHKの番組は見ていませんが、「海洋放出問題無しとのプロパガンダ番組」との印象を受けたとすれば、それは、国や事業者の意向を反映(もしくは理解)した編集の上、「国民の安心を担保するため説明や配慮」が不足していたためであると推察します。
※例えばγ線計測器による安全確認の下りは本来、管理上の手続き以外の何物でもありません。科学的には、「影響が非常に少ない」は事実であったとしても、社会的に「安心できる」は必ずしもイコールでは無く、当事者間の十分な理解のための手続きが別途必須となるということです。
※例えば、薄く拡散したたばこの煙の発がん性が十分低いといわれても、吸引による不快感はそれとは別である、との例に似ています。
どのような解決がよろしいかは、国土の狭い国に営々と暮らしてきた、日本人が、これまでと同様に、リスクと向き合い、国民の納得する方法を考え決断する必要があるでしょう。難しい問題ではありますが、日本人ならば、賢い選択ができるものと信じています。
以上、大変雑駁な内容ですが参考になれば幸いです。
5.参考文献
1) TEPCO 処理水ポータルサイト
https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/
・処理水の保管状況、放射性核種の濃度等を確認できるサイト。
2) 経産省 H-3タスクフォース資料
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/tritium_tusk/20160527_01.html
・福島第一原子力発電所における汚染水対策の検討資料が閲覧できます。
千葉県野鳥の会 市川市 蓮尾 純子
保護区の観察会はいつ始められたか。40数年の経過で記憶や記録も定かではありません。1976年元旦のオープン以来、眼前に広がるスズガモの大群のおかげで、利用する方々はみるみるうちにふえました。たぶん最初の1、2ヶ月のうち、遅くも夏休みまでには、保護区の中をご案内する観察会を始めていたと思います。市役所の方からチャボをいただいたり、翼を傷めて飛べないハシボソガラスのカンちゃんが来たのもこのころ。野鳥病院や観察会、カウント調査など今に至る活動のもとは、みな最初の年、それも前半に始まっていました。
一面の草原となった造成地の中にぽつんと建てられた初代行徳野鳥観察舎。プレハブ2階建、1階は2DKの管理人住居で、日当たりと風通しは抜群でした。南に面した6畳間2つ、うち1室が家族の寝室で、もう1室は来客用にしていました。オオバンクラブ時代やもっと前からの友人知人、学生さんたちが作業の手伝いや調査に来てくれて、夕食が家族3人だけという日はむしろ少なかったかもしれません。最初の忘年会の時だったか、17人が泊まられたこともありました。DKは9畳ほどで、北西(住宅地側)に玄関があり、南東に勝手口と台所。
外階段で自由に上がれるようになっている2階は13坪ちょっとの観察室で、流しとトイレがついていました。まわりにはまだ一軒の家もありません。現在の福栄4丁目かもめ自治会のご町内に家が建ちはじめたのは1977年(昭和52年)のこと。自治会入口の外にかたまった3軒、峯崎さん・小原さん・児島さんのお宅が唯一のご近所でした。
この年、明光企画の内山明夫さんから、創刊されたばかりの「行徳新聞」に記事を書くことを依頼されました。観察舎で働くようになる前、毎日小学生新聞日曜版に私が(種ごとのエピソード)、中学生新聞日曜版に夫嘉彪が(分類の科ごとに)、それぞれ鳥の記事を1年間連載させていただいたことがあります。未経験ではなかったのですが、喜んで、というよりはおそるおそるお引き受けしました。
行徳新聞は形を成しつつある行徳の新市街の方々にとって、貴重な地域の情報紙となり、第2号から月1回の割合で掲載された「新浜だより」も多くの方々の目に触れました。40年以上もたった今でも「楽しみに読んでいました」とよく言われます。行徳新聞への連載のおかげで、野鳥観察や、自然に親しむ面白さなどが新興の行徳の街に急速になじんできました。
風呂田利夫さん(元東邦大教授・当時は東邦大助手)が中心となって、「新浜研究会」を立ち上げたのもこのころ。オオバンクラブや市川在住の生物学会重鎮、植物の岩瀬徹先生、昆虫の山崎秀雄先生なども入っておられ、造成後間もなくまだ植生もまばらな状態の保護区で、生態系全体にわたる生物調査が1976年のうちに始まりました。風呂田さん以下、東邦大学海洋生物研の方々は魚類や底生動物を対象とした潜水調査もされました。そのころは文字通りのウェットスーツしかなく、空気を入れないためにスーツの内側をぬらして着用します。わが家のお風呂の先客待ちで、調査から戻ってこられた方々が冬の戸外で震え上がったこともありましたっけ。
当会の新型コロナウィルス感染症への対応について代表 小西 由希子<野外活動とイベント情報休止のお知らせその2> 新型コロナウイルスによる感染は未だ収束の兆しが見えません。ニュースレター272号(2020年4月号)にも掲載いたしましたが、誠に残念ですが、引き続き当会の野外活動は当面の間中止することにいたしました。 千葉市緑区下大和田での米づくりも、当会運営委員を中心に必要最小限の参加者が十分な間隔をとって作業しています。例年どおりコシヒカリ、水稲農林1号、赤米、黒米、緑米の5品種を播種しましたが、来年の種籾を得るための必要最小限量にとどめました。下大和田での米づくりの主目的は、メダカやニホンアカガエルなどの里山の生きものが生息できる環境を維持するということですので、草刈や草取り、畦の整備などは今後も実施していきます。 毎月お届けしているイベント情報も、各地でのイベント中止に伴い当分の間休刊といたします。また、ニュースレターも発行できないことがあるかもしれませんが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。なお、今後も状況に応じて対応いたしますので、改めてご連絡させていただきます。 会費納入のお願いと振込手数料について(再掲載)会計 髙橋 久美子振込用紙を同封させていただきました。感染防止のため、新型コロナウイルスが終息してから納入していただいてもかまいません。 ゆうちょ銀行の口座をお持ちの方は、ちば環境情報センターの口座に直接送金すれば、100円の手数料になります。ちば環境情報センターのゆうちょ銀行の口座番号は、 『特定非営利活動法人 ちば環境情報センター 記号10560 番号55564681』です。 なお、振込用紙を使って、ATMで送金する場合は、152円の手数料がかかります。 もちろん、スタッフに直接渡していただければ、手数料はかかりません。その際は、ご自分の氏名と何年度の会費かを明記したメモを添えてください。また、ニュースレター発送用封筒のタックシールに会費納入状況が記載されていますので、ご確認ください。もし、間違いがあればお知らせください。 今後ともよろしくお願い致します。 【発送のご協力について】ニュースレター2020年6月号(第274号)の発送は6月8日(月)に実施する予定です。毎回作業のお手伝いをお願いしていますが、新型コロナウィルスの感染拡大状況下では、集まっての作業ができません。そのため、しばらくの間は発送のお手伝いをしてくださる方の募集はせず、5月号同様最小限の人員で作業をいたします。今後状況によりお手伝いをお願いすると思いますので、その節はよろしくお願い致します。 |