ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第275号
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元千葉県立中央博物館副館長・放送大学客員教授 中村 俊彦
房総半島・千葉県の自然を愛する人たちからの長年の要望と自然保護や環境保全の社会的ニーズを受け、「千葉県の自然誌を中心として歴史を加えた博物館」を設置目的とした千葉県立中央博物館が機関設置されたのは1989年1月であった。当時、名称を「自然誌博物館」とすべきとの意見も多かったが、県各地を担う9の県立博物館ネットワークの拠点機能を有するとして「中央博物館」の名称となった。沼田眞初代館長のもと、人間を含む自然の森羅万象を記録し、その資料を後世に伝えるための自然誌科学の拠点として、日本国内のみならず、その崇高な哲学に基づき収集された資料と設備、またその陣容および活動実績は海外からも注目されてきた。
しかし設置からわずか30年、千葉県教育委員会は、2020年6月、新型コロナウイルスで日本が大混乱のなか、生涯学習審議会で特別部会を設置し、自然誌の専門家無し歴史の専門家だけ、かつ非公開でおこなわれた審議の結果として「千葉県立博物館の今後の在り方(案)」を発表した。
これは「中央博物館の“知の創造”拠点としての機能強化を図る(p1)」という文言を用いつつも残念ながら、それは千葉県の自然誌拠点としての機能が消失させられてしまいそうな内容になっている。
県予算の削減や施設の老朽化により、県立博物館の縮小のため、施設利用の有料化と県立博物館の統合や指定管理者制度の導入、さらに市町村への移譲までも進めてきた千葉県教育委員会であるが、千葉県の財産として人々から提供を求め収集してきた貴重な収蔵資料を市町村に移譲するには、当然それなりの責任ある態度で臨むべきもの。しかし、県立博物館の今後の在り方(案)では、香取市にある中央博物館大利根分館に対し「地元市での博物館設置状況、また利活用の意向がないこと等の事情に鑑みると、施設の廃止もやむをえません。(p25, p30)」とした。そして、その他の館も含め、引き受け手のない資料や機能を「中央博物館:専門職員と博物館資料を集約(p30)」するとしている。
貴重な農業資料、水郷域の民俗・歴史・考古資料を収蔵してきた大利根分館の移譲・廃止を進める一方で「県立博物館をめぐる現状と課題、強化すべき機能(p29)」として「収蔵資料の自然資料が87.3%(p29)」の現状を強調しつつ、課題としては、なぜか「県域の人文系資料の収集が不十分(p29)」とした。さらに中央博物館の展示の今後には「人文科学系の充実。(p22)」も明記された。しかし自然誌の充実や課題解決についての文言はまったくない。
中央博物館の初代沼田眞館長、二代千原光雄館長の後、館長は定年前の千葉県の文化財行政及び教育行政出身者がほぼ1、2年で交代しており、文科省指定研究機関の博物館ではこのような人事、他ではみられない。その中央博物館の機能強化のための具体策とは、受け入れられなかった人文系資料を収容し、さらに不十分とする人文資料を収集・集積しつつその専門家も増やすシナリオである。
千葉県には67もの歴史系博物館が存在する。広大な敷地と数多くの歴史建造物や古墳、また民俗・考古など多くの人文系資料を有する千葉県立の博物館「房総のむら」、また佐倉市には日本屈指の規模及び陣容の「国立歴史民俗博物館」もある。県内各地の文化財センターでは、考古資料の収蔵とともに展示もされている。そして現在、日本の国宝・特別史跡に指定された千葉市加曽利貝塚には、考古歴史の国際レベルの博物館を目指し幅広い分野の専門家とともに地域との議論もふまえ大幅リニューアルを目指す「新・加曽利貝塚博物館(仮称)」ができる。
千葉県内のこのような博物館の現状をふまえると、日本列島のほぼ中央に位置する房総の地に、その特異な自然ときわめて豊かな生物多様性を守り伝える「自然誌博物館」が、千葉県立として一つぐらいあっても良いとおもうのだが。
現在、千葉県は「千葉県立博物館の今後の在り方(案)」に対し、7月15日(水曜日)必着で多くの方からの意見を求めています。是非とも皆さんから、ご意見をお寄せ下さいますようお願い致します。
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/iken/2020/arikata2020.html
ちば環境情報センターより:パブコメの締め切りが間近でしたので、
次ページの「9月入学を考える」と合わせて中村さんの原稿を掲載しました。皆様も上記のパブコメにぜひご意見をお送りください。
元千葉県立中央博物館副館長・放送大学客員教授 中村 俊彦
新型コロナウイルスの影響で、今年できなかった4月の入学式とその後の教育活動の遅れ問題に加え、国際化の流れと留学生対応、さらに冬の受験勉強は酷との理由により、知識人と称される人たちが、急に小中高、全ての学校教育の「9月入学」を唱え出した。大学ではその選択肢も存在するなか、多くのマスコミや政治家、教育評論家までもこれに同調し、入学式9月への変更を推進している。準備不足との理由で、今年からの実施は見送られただが、その意外な成り行きに日本という国の「知」の貧困さと危うさを感じた。
四季の自然がきわめて豊かな日本では、入学式や入社式,行政の会計年度も含め様々な事始めを、自然・生命の息吹と同調させ、4月としてきた。その原点は、農耕サイクルにあったと考えられる。桜の開花を、田の神様がやってきた証しとして米作りをスタートさせてきた日本では、各地に種蒔桜が伝えられている。これは生物指標として科学的合理性を有する。しかしその一方で、人間は科学技術をかてに、自然からの離脱を進歩としてきた。しかし、ヒトも生物であるかぎり、四季折々に変化する自然・生命のリズムとの関係は簡単に解消できるものではない。
環境変化は、ヒトはもちろん全ての生物にとってストレスであり、こころと体に影響する。希望とともに不安も大きい新入学や新入社、もちろん個人差はあるが、その環境変化のストレスは決して小さくはない。そのようななか日本の春の自然は、ヒトの環境適応を後押し、美しい思い出も残してくれた。
冬を耐え春の芽吹きの4月スタートから、酷暑と冬支度の9月スタートへの変更、それは四季の変化に重ね合わせてきた生活文化はもとより、日本人のマインド形成にも影響するに違いない。それは、子どもたちには特に大きく、学力面での負の影響も想定される。「5月病」は緑の息吹で克服できても、落ち葉舞う中の「10月病」は、自然・生命のリズムを無視できる強力免疫の持ち主以外、その深刻さが増す可能性は高い。
私たちは守らなければならないものがある。この自然・生命のリズムのなかで育まれた日本人のこころと文化、それは時代の変貌と淘汰のなかで今に伝えられてきたものである。自然・生命のリズムを無視した9月入学という突然変異のシステム、生物進化の論理に照らし合わせても、それは日本という国、そのものの淘汰につながる可能性が高い。
本論考は、今年5月20日、*里ちばMLなどで多くの里山里海仲間の方々に情報発信したメールの内容を推敲し投稿させていただいたものである。そのメールの要点やその後のMLでの情報交換の様子については、すでに佐野郷美さんが、「市川緑の市民フォーラム会報2020年6月172号」の「急浮上した9月始まりをどうおもいますか?」にて、ご自身の意見をふまえまとめていただいている。その内容も参照していただきながら、「9月入学」の問題については、これからも皆さんと研究・考察し、情報発信して行かなければならないとおもう。
*里ちばML:里山里海に思いを寄せる仲間のグループメール
<下大和田での活動> 報告 網代 春男
第245回 下大和田谷津田観察会とゴミ拾い 2020年6月7日(日)晴
3月以降行動自粛中は担当により動植物の記録だけ取っていました。活動を再開し、初の観察会です。
今日の特記は大きなテントウムシに出会ったことです。大きい!見たことない!と言う声が上がりました。昨年東金の県立農業大学の農園で千葉県3例目が発見されたという、まだ珍しい、ハラグロオオテントウでした。温暖化によるものか北上してきているということです。大きさに驚きましたが下大和田でよく見られるカメノコテントウと共に3巨大テントウムシの中の1つということでした。
エノキの折れかかった枝ではアシナガオニゾウムシがペアーでいるところが見られました。これも観察会初登場でした。巡っている間、ウグイス、ホトトギスの囀りに加えて、キビタキの囀りがずっと聞こえていました。
参加19名(大人11名、高校生2名、中学生2名、小学生3名、幼児1名)報告 網代春男・写真 田中正彦
第250回 下大和田YPP 「田の草取り」 2020年6月13日(土)小雨
活動自粛中はスタッフで人数を制限して田んぼの維持と来年の種籾を残す程度を目標に活動してきました。今日は活動自粛開け初の米づくり作業で、密にならないように配慮しながら、小雨のなか田んぼへ入って草を取りました。田植えを希望する方には田植えもしていただきました。
田んぼにはニホンアカガエルの仔ガエルとまだしっぽが残ったシュレーゲルアオガエルの仔ガエルがいっぱいでした。昼前に雨が本降りになってきて作業を終了しましたが、大方草も取り終えていました。
参加8名(大人7名、小学生1名) 報告 網代春男
森と水辺の手入れ 2020年6月21日(日)曇
新型コロナウイルスでの感染防止に配慮しながら活動再開して初の「森と水辺の手入れ」です。
千葉市環境保全課から3名の方も参加しての保全活動地域内の協働作業です。懸かり木になった倒木の始末、笹刈り、畔まわり土手の草刈りなどを行いました。皆さん、行動自粛から解放されて笹刈りも楽しそうでした。子供達はメダカやザリガニ採りに夢中でした。
参加27名(大人17名、中学生2名、小学生5名、幼児3名) 報告 網代春男・写真 田中正彦
<小山町での活動>
小山町YPP 報告 赤シャツ親父
コロナ騒動のあおりを受け、実施が遅れていた小学校田んぼの体験学習でしたが、6月10日に大椎小、6月26日には、ほぼ1月遅れであすみ小の田植えが実施されました。特に、あすみ小学校は児童数120人を超える大人数でしたが、2群に分けて、午前中に独立2回、田植え+自然観察のプログラムを実施する体制で臨み、集中を避ける工夫を施しました。結果、子どもたちの体験時間は全体的に短縮される形とはなりましたが、人の事情とは無関係に脈々と息づく谷津田の生命が、初夏を迎え一気に溢れる様に十分なインパクトを受け取ったように感じました。驚き感動の歓声、喜びの笑顔がそこかしこで弾けました。なお、小山町YPPの保全活動は遅れ気味ではありますが、小規模にコツコツと継続中です。
下大和田町
6月 7日 ハラグロオオテントウ出現(千葉市内初かも)
6月17日 ノシメトンボ、マユタテアカネなどアカネの仲間羽化
6月29日 カブトムシ、カナブン出現
小山町
6月 4日 シオヤ、シオカラ、オオシオカラ、そろい踏み。
6月29日 シュレーゲルアオガエルの若い個体多数、灌木葉上に静止。カラスアゲハ飛来。
谷津田ってどんなところ?と興味をお持ちの方、お米づくりを経験してみたいなと思っている方、谷津田プレーランドプロジェクト(YPP)のイベントには大人から子どもまで、初めての方も好きなときにご参加いただけます。家族で、お友達どうしで、もちろんお一人でも気軽にいらしてください。
主 催:NPO法人 ちば環境情報センター
連絡先:小西TEL.090-7941-7655 ,E-mail : yatsudasukisuki@gmail.com
ご注意:・車で来られる方は必ず指定の駐車場に止め、農道などに置かないでください。
・近くにトイレがありませんので、集合前に一度済ませておくなどご協力をお願いします。
・小学生以下のお子さんは保護者同伴でご参加ください。
・けがや事故のないよう十分注意は払いますが、基本的には自己責任でお願いします。
・三密を避けるよう意識して行動してください。
<下大和田谷津田>
場 所:千葉市緑区下大和田谷津
集 合:現地。初めて参加する方は駐車場や会場をご案内しますので事前に網代(あじろ)090-2301-0413までご連絡ください。
交 通:JR千葉駅 10番 成東あるいは中野操車場行きのちばフラワーバスで中野操車場バス停下車。
徒歩5分で現地。<千葉駅発8:25,8:40など、所要時間45分>料金は550円。
・第252回 下大和田YPP「かかしづくり」
田んぼを守ってくれる かかしを作ります。
日 時:2020年8月8日(土)9時45分~14時 雨天順延
持ち物:古着、弁当、飲み物、長袖長ズボンの服装、長靴、ゴム手袋、帽子、敷物など
参加費:小学生以上100円
・下大和田 森と水辺の手入れ
林内の下刈りや水辺回りの手入れをします。
日 時:2020年7月19日(日)9時45分~12時 雨天中止
持ち物:弁当、飲み物、長袖長ズボンの服装、長靴、軍手、敷物、あればヘルメット。
参加費:無料
・第247回 下大和田谷津田観察会とゴミ拾い
夏の虫の盛りです。小川にもたも網を入れてみましょう。
日 時:2020年8月2日(日)9時45分~12時 雨天決行
持ち物:筆記用具、飲み物、長袖長ズボンの服装、長靴、帽子、あれば双眼鏡、ゴミ袋、午後まで活動する方は弁当、敷物。
参加費:小学生以上100円 共 催:ちば・谷津田フォーラム
<小山町谷津田>
・ 2020年7月期 小山町 YPP:一般を対象とした活動再開は7月期も停止の予定ですが、メンバーによる保全活動は小規模に継続致します。ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解いただき度宜しくお願い致します。なお、個人的にご興味をお持ちの方は、当方のe-mailまでご連絡下さい。 e-mail; tomizo_i@nifty.com
(赤シャツ親父)
5月30日に実施された、今年度のちば環境情報センター総会で、新しい監事と運営委員各2名が承認されました。会員の皆さんにご紹介いたしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
新監事 千葉市稲毛区 檜原 扶紀子
今年度、監事をさせていただきます、檜原扶紀子と申します。
ちば環境情報センターの米作り講座との出会いは、長男が小学校3年生の時、学校から持ち帰った「米作り講座」のお手紙です。学校から手紙を握りしめて走って帰り、「米作りに参加したい!!」と言ったのをよく覚えています。
そんな長男も自然が大好きな中学2年生になりました。温かいスタッフの皆様に本当にお世話になり、谷津田の環境に守られ、心を育てて頂いたなと、本当に感謝しております。これからも、谷津田の米作りに少しでも関わらせていただけたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
ちば環境情報センター運営委員 大網白里市 平沼 勝男
ちば環境情報センターでは新型コロナウィルス感染拡大により、これまですべての活動を自粛してまいりました。
しかしこの度、千葉県の緊急事態宣言解除をもちまして、ウィルス感染防止に務めながら活動を再開させていくこととなりました。
田植えシーズンもすでに始まっているため、お米つくりは自由参加的に行いたいと思います。
初めて参加される方は、駐車場などご案内しますので事前にお電話ください。
以下の詳細をご覧ください。
<自然観察会>
実 施 日:毎月第1日曜日 9:45~12:00
参加資格:自由参加
参 加 費:小学生以上一人100円
持 ち 物:長靴、帽子、長そで長ズボン、飲み物、(お弁当・敷物)
三密に気を付けて、自然観察会を行います。
<お米づくり>
実 施 日:『下大和田 谷津田ごよみ2020』の記載の通りです。
参加資格:自由参加
参 加 費:小学生以上一人100円(マイ田んぼの方を除く)
持 ち 物:田んぼ用の長靴(ない方はお貸ししますが数に限りがあります)、作業用手袋、他観察会に同じ。
既にスタッフの手で苗は植えてありますがので、今年はこれらの稲の収穫をめざします。今後の行事の中で、お米つくりだけでなく「ザリガニ釣り」や「魚とり」などを行いたいと思います。これらすべて、三密に気を付けて行います。
<森と水辺の手入れ>
実 施 日:毎月第3日曜日 9:45~12:00
参加資格:自由参加
参 加 費:無料
三密に気を付けて作業をします。もし、再び緊急事態宣言が出されるようなことがあれば中止となります。天候により、順延または中止になることもあります。その時はメールでご連絡いたします。
また、参加者の皆様とスタッフの健康を守るために、以下のルールをつくりました。ルールに則った行動をお願い致します。尚、消毒用のアルコールはこちらで準備いたします。
谷津田の活動
① 活動時や昼食時は距離を保つよう各自意識して行動する。 |
以上となります。皆様と谷津田でお会いできる日を楽しみにしております。
新浜の話29 ~欠陥干潟~千葉県野鳥の会 市川市 蓮尾 純子行徳鳥獣保護区は埋め立てによって造成された場所です。同じような場所は東京湾では各所に見られ、葛西臨海公園や東京港野鳥公園のように水鳥にとって大切な生息場所になっているところも少なくありません。東京湾ではいちばんと言ってよいほどシギ・チドリ類が多い場所である谷津干潟は、周囲が埋め立てられ、もともとの干潟面が埋められずに残った場所。 残念なことに、こうした場所のどこと比べても、行徳鳥獣保護区のシギ・チドリ類はぱっとしませんでした。それでも1980年代までは数十羽から100羽をこす数が入ることもあったのですが、基本中の基本種であるハマシギとか、キョウジョシギといったごく普通種も、見られはしたものの、群れという感じでは入ってくれませんでした。正直、いまだにその明確な原因はよくわかりません。 いくつかの原因が考えられます。まず、流入する淡水がないこと。通常、シギやチドリが多い干潟は河川の河口域に発達し、海水に淡水がまじるところです。また、保護区の干潟は泥、というよりさらに粒子がこまかいシルト・粘土質。塩浜の埋立地が造成された時に上澄みの泥水が流しこまれ、表層の80㎝ほどはこの状態に。極端に粒子が細かいシルト・粘土は、乾くとがちがちに固まり、水中ではいつまでも沈まずに漂います。有機物をこし取って食べる二枚貝は、水を吸い込むと有機物の代わりに粘土分をとってしまうことになり、とても住みにくかったと思います。干潟に穴を掘ってすむ生きものすべてにとっても、保護区の干潟はいろいろな点で住みにくかっただろうと。砂と泥がまじった砂泥質の干潟でも、泥が多いところに鳥が多いのですが、何千年もの歳月をかけて粒子の細かい泥が積もった有明海などと、わずか数か月での堆積である保護区の干潟とは比較にもなりません。 保護区本土部は吹き上げ方式の埋立地で、泥をとった跡の大きな穴が海中に残ります。千鳥水門横手の「北の釜」と、暗渠水門の前(南極島の沖)の深み。これらの深みは夏には無酸素水がたまり、保護区内での青潮の原因にもなります。また、周囲の緑地部分は浚渫船で泥を上げて造成したため、「新浜海溝」と呼ばれる外周部分も水深数メートル。もともと東京湾内湾奥部の干潟は岸から2㎞以上も沖合まで続いており、1000分の1から2程度のゆるやかな勾配だったはず。それが10分の1から50分の1ほどの急勾配になってしまったわけです。広い干潟も、ゆるやかに流下する陸水も望みにくい状態。 まだあります。幅3mの千鳥水門を通って出入りする海水。開放されたままとは言え、出入りする潮には限りがあって、干潮は3時間近く、満潮でも1時間以上遅れます。このため、東京湾では最大で3m近くにもなる干満差が、保護区内では最大で1mちょっと。面積・勾配・潮位差、そして干潟の泥質・淡水の流入がないこと・海水部分の深み。困った条件がよくもまあ重なったこと。埋め立てて造成された年月の浅さは、他の場所を見ると、根本的なものにはならないようでした。 シギ類の渡りでの衛星追跡による数千キロ、7~8日にものぼる無着陸飛行や、大切な餌料としてのバイオフィルム(干潟の泥を覆う有機物)という概念。この10年ほどでわかってきた事実はめざましいものです。一方、東京湾をはじめとしたシギ・チドリ類のおそろしいほどの減少には歯止めがかかりません。保護区の干潟が抱える欠陥も、個性のひとつとしてとらえるべきなのかもしれません。 【発送のご協力について】ニュースレター2020年8月号(第276号)の発送は8月7日(水)10時から千葉市民活動支援センター会議室(千葉市中央区中央2-5-1 千葉中央ツインビル2号館9階)にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。 |