ちば環境情報センター
1999.12.6 発行    ニュースレター第29号

代表:小西由希子


         目   次
  1. ビオトープのすすめ
  2. 市民版まちづくりプランをつくろう!
  3. な〜んて谷津田 3 「石神(いしがみ)谷津」
  4. 船上から見た千葉の海岸線
  5. 「楽しむ大事さ」

ビオトープのすすめ

千葉県立小金高等学校  川北 裕之

ビオトープには生きものたちが息づいています。この時期になると、『小金ビオトープ』では、シンボルツリーであるコブシの葉はすっかり落ち、陸上の部分はひっそりとしてきます。それでも天気の良い日は、キタテハなどのチョウが見られることもあります。
 
冬の間は、鳥たちが餌を求めてビオトープにやってきます。シジュウカラ、ヒヨドリ、スズメ、ツグミなどは常連で、池のドジョウを求めてコサギもやってきます。この時期だけは、生物部の生徒が、生物室から見える池の近くの柳の枝にひもで結んで、餌としてミカンやラードなどをやっています。部屋の中から野鳥の観察ができます。

  年が明けて2月になると、アカガエルやヒキガエルが産卵にやって来ます。黒い卵は太陽の光を浴びて、1ヶ月もたてばオタマジャクシとなって池を泳ぎ回ります。
  このようにビオトープでは、季節の変化に応じて生きものの生活している姿にふれることができます。ビオトープでは生きものの観察もできますが、今の子どもたちにとっては、それらを通しての自然体験が重要視されていますし、ヒーリング(癒し)効果を強調する人もいます。ドイツや震災に遭った神戸市などではこのことを意識してつくっています。癒しが必要なのは子どもたちだけではないかもしれません。
  ビオトープづくりの実践でうまくいっているのは、参加型です。学校なら子どもたちに参加させて、アイデアを募集して行く方法です。地域の自然を復元することになれば、地域で自然が残っている場所に行ってみたり、親や祖父祖母たちに昔残っていた自然や生活のことを尋ねることになります。 ビオトープはつくってお終いという従来の公園ではありません。自然が復元していく様子を観察して行かなくてはなりません。そのためにも多くの人々が最初からかかわってほしいのです。みんなで相談しながら作り上げていく作業は楽しいものです。
  ビオトープづくりは手段であって目的ではありません。目的は、地域の自然を守ることであったり、地域を見つめなおすことであったり、人のつながりを深めることであったり、精神的な安らぎを求めることであったりするかもしれませんが、そのほとんどの目的は時間とともに少しずつ実現し、参加した人たちやひいては地域が変わってくるはずです。
  ビオトープは食う食われるの関係をつくり、生物の多様性が維持できれば良いのです。水域を複雑にしたり、エコアップの仕掛けをするものそのためで、管理に労力はあまりいらなくなります。いろいろな実践を見学して、できることから始めてください


市民版まちづくりプランをつくろう!

千葉市 増原直樹

 千葉市でいま、今後15年間の市政運営の基本方針が作成されていることをご存知でしょうか。この方針は「千葉市新総合ビジョン」という名称で、今年の6月から審議会が設けられて、そこで検討されてきました。この審議会は有識者、市議、各種団体の代表など計100名の委員で構成され、そのうち30名が市民からの公募で選ばれました。
私もその公募委員の一人ですが、「審議会みたいな場は初めてなので、何がどうなっているかわからない」という思いを同じくする他の公募委員の方々と一緒に勉強会を開いてきました。その勉強の中で、情報公開や市民参加の問題などが明らかになり、まず自分たちからの情報発信を始めました(右記のHP参照)。また、審議会では行政側のつくった原案に対して意見を言う、というプロセス自体に疑問を感じました。そこで、ビジョンが正式に公表される来年2〜3月を目標に、市民版のプランもつくっていくことを決めました。
市民版プランは、谷津田に関する部、まちの活性化(まちづくり)を目指す部、そして海岸線を生かす部の3部構成にする予定です。環境と人、人と人とのつながりを考えたい方、一緒にプランをつくっていきませんか?千葉市にお住まいの方はもちろん、千葉市以外の方でも参加大歓迎です。また、意見だけでもぜひお寄せください。
公募委員有志によるホームページ  http://www.d3.dion.ne.jp/~shiminvi/
意見、問い合わせ先:masuhara@olive.ocn.ne.jp
環境自治体会議HPhttp://www.ss.iij4u.or.jp/~colgei/

な〜んて谷津田 「石神(いしがみ)谷津」

八千代市 佐藤信和

八千代市には開発され宅地などになったものを除き、谷津地形が10カ所程度残っています。その中の1つである石神谷津を紹介します。石神谷津の源頭は八千代緑が丘駅から500m程度の距離にあり東葉高速鉄道が開通してからは大変行きやすくなった谷津です。上流の巾は約50m下流が100m弱で全長が約2kmある細長い谷津です。6年前まではほぼ全面水田が耕作され農道も手入れされたコンパクトな大変美しい谷津でしたが、現在水田は下流の約1/4のみで、その他は放置され開発を待っている状況にあります。
 水田が耕作されていた時の水源は地下水で上流部に井戸がありポンプで汲み上げられていました。人工的な水源で季節的な流れではあったが谷津本来の絞り水などもありヘイケボタル、アカガエルも多く生息していました。また鳥類も多く季節を問わず格好の自然観察の場所でした。斜面林の樹木はコナラ、イヌシデ、ムク、シラカシ、エゴ、エノキ、サクラ、ウワミズザクラ、イヌザクラ、ホウ、ハリギリ、コブシ、シロダモなど典型的な雑木林の木で新緑、花の季節それぞれ美しい景色を楽しむことができます。
 しかし、東葉線の開通とともにこの地区は住宅都市整備公団による大規模な宅地開発が計画され石神谷津も消滅することとなり、このため耕作が放棄されました。その後の谷津の変貌は激しく、いかに谷津が人間の農業活動により維持されていたかを見る典型的な例となっています。水田跡はびっしりセイタカアワダチソウが繁り、農道の除草が行われないため斜面林はカラスウリ等のつる植物で覆われ動植物が単純化しています。畦の野草、ホタル、アカガエルは当然絶滅しました。開発計画では一応谷津の下流の一部が残ることになり、多自然型谷津公園のようなものが計画されていますが、ほとんどは埋め立てられるため千葉県における谷津の消滅の典型的な例になると思います。
このように谷津としてはまもなく無くなりますが、工事の開始は数年先と思われ、それまでは地形的には典型的な谷津として残っています。また贅沢を言わなければ人工的な公園よりは自然は豊富で訪れる価値はあると思っています。現在水田が残っている部分の定期的な生物調査、一部の水田跡の草刈とレンゲの種蒔き、谷津の現状記録などの活動を続けています。簡単に行くことができますので機会があれば是非訪れて下さい。また残る部分の利用形態について提案いただければ幸いです。

船上から見た千葉の海岸線

千葉市美浜区 佐々木 典子

 11月のよく晴れた日、船から三番瀬と千葉市の海岸線を見る機会に恵まれました。千葉市側は、工場,人工海浜,公園と分断されてはいますが、“幕張の浜“の背後に幕張新都心,住宅群のそびえ立つ景色は、それなりに美しくもあり、”検見川の浜“の防波堤は、平日なのに釣り人でにぎわっていました。しかし、20年以上経年しているにもかかわらず、鳥がつばさを休めているのが見られるくらいで、貝やカニなどの生物が育ってきているようすは見えません。
船橋市,市川市側は、工場,航路,直立護岸ばかりで海岸線と呼べるものではなく、浦安市にあわせて埋めてしまおうと考えるのも一理あるような形状です。しかし、汚れて見える海にも豊富な貝類,カニ,ゴカイがいることを、私達は知っています。埋め立て計画が縮小されたことに喜びつつ、より一層の縮小を望みます。さらに市民が,子供たちが、干潟の大きな役割を理解できるようなシステムづくりができたら、と考えています。

「楽しむ大事さ」

―とある女子大生の「ちば環境情報センター」―  

松戸市 上村 まゆみ

これはある日、中学以来の友人とわたしが交わした会話です。「明日、幕張で環境の勉強をして来るんだ。」(その日は千葉環境シンポジウムの日でした。)「ふーん、でも環境問題ってよく話題にはなるけどすぐに消えちゃうよね。」この言葉は、わたしの友人の環境に対する意識が決して低いのではなく、普通の人の感覚から出た言葉なのであろうと思います。
 わたしは去年の秋頃から情報センターに入会し、活動をしてきました。その内容もお手伝いという名目の元、ほとんどは遊び感覚で参加していました(今もそうですが…)。「活動」と言いつつ、企画も起こさない、準備も手伝わないで当日だけ参加する自分に一時期疑問を感じていましたが、今ではこう思っています。何事も楽しむ事が大切なのだ、と。
 私自身が楽しめない事を誰がやってくれるのでしょうか。皆が考えなくてはいけない環境問題だからこそ、興味がなくても馴染み易いように楽しくする事が大切だと思いました。私自身が楽しんでいる今は、将来のための訓練期間中なのだと思っています。
大学で勉強していながら、専門的な知識を余り蓄えずに卒業しようとしているわたしですが、ここに入って体験した数々のことはわたしがこれから生きていくため、活動していくための貴重な体験であったと感じています。これからも明るく楽しく活動していきたいと思っている今日この頃です。


環境学習に関心のある方へ耳よりなお知らせ:ちば環境情報センターでは日本生態系協会の赤井裕氏を囲んだ「環境学習勉強会」を企画しています。地域や学校などで、環境学習に真剣に取り組んでみようという方、是非参加してください。話し合うことで思わぬアイデアが出たり、自分自身の考えをまとめるのにもいい機会だと思います。詳しい日程や内容については、後日ニュースレターに掲載いたします。

ちば・谷津田フォーラムからのお知らせ
谷津田調査票を同封いたしました。どんな谷津・谷津田でもかまいません。調査票にご記入の上、ちば環境情報センター宛お送りください。なお、調査項目ではっきりとわからないところは、空欄のままでかまいません

事務局からのお知らせ
「こだわってメダカってマップ」制作に対して、イオン財団から30万円の助成金が交付されることが決定しました。千葉県に生息するメダカとその環境を保全するために、有効に使っていきたいと思います。皆さんのご協力をお待ちしています。メダカカードまってまーす!!


編集後記
通勤途中の車窓から、田んぼの上を飛行するハヤブサを見つけました。冬の使者の登場に、冬の到来を感じました。mud-skipper