ちば環境情報センター
2001.1.6 発行    ニュースレター第42号
代表:小西由希子

目次
  1. 「地域と学校」
  2. 学校ビオトープ
  3. 谷津田観察会で感じたこと

「地域と学校」

千葉市花見川区 斉藤 久芳 

「うわー大きい!こんなキノコ見たの始めて」「気持ちわるーい!ホントに食べられるの」くじらの会,11月の活動でのこと。昨年3月の活動で、学校林の木を切り倒してキノコ栽培の原木を作り、ヒラタケ、ナメコ、シイタケの菌を植え付けました。それから8ヶ月、原木からみごとにヒラタケが発生,直径10p以上に育ったキノコをみんなで収穫し、キノコ鍋にして食べたのです。「キノコ汁、あったかくて美味しいね」と、普段あまり野菜を食べない子供がお代わりするほど。残ったヒラタケは、おみやげに一人5,6個ずつ持ち帰りました。
 くじらの会、正式には「横戸小の学校林を育む会」と言って、学校林の中に小川づくりをしたことがきっかけとなり、1999年2月に発足しました。その時の趣意書の抜粋を載せてみます。
●くじらの会ってなに?
 ぼくたちは,おととしの12月,横戸小の学校林に生まれたクジラの親子です。名前はまだありません。小学校の125回目の誕生記念に,全校の子供たちとPTAの皆さんが力を合わせ作ってくれました。
 まだ,できたばかりで仲間は少ないけれど,池に水がたまると間もなく森に住むウサギや鳥たちが,水を飲みにやってきました。水面に写る森の景色を不思議そうに眺めている子供がいます。さらさら流れる小川には,メダカやタニシが落ち葉に隠れて暮らしています。春になってカエルが卵を産んで,たくさんのオタマジャクシが生まれるのがとても楽しみです。
 7,000uの広い学校林には,虹色広場,野草園,にこにこ農園,ピッコリ村などがあって,バッタやトンボを追いかけ,野で草を摘みドングリを拾って遊ぶ子供たちの姿がいつも絶えません。
 でも,学校林は初めうっそうとした松林で,とても中へ入って遊べるような状態じゃなかったんだ。美しかった緑の松はマツクイムシにやられてどんどん枯れてしまい,百本以上の松が切り倒されていった。そうしていくうちに,うす暗かった森は次第に明るい草原や雑木林へと変わっていき,今の学校林の形ができあがったのだよ。校舎の前でずっと学校林を見まもってきたツゲの木じいさんが,ぼくたちに教えてくれました。
 小川づくりをきっかけに,「学校林の自然をもっと豊かなものにして21世紀の子供たちに伝えよう」,「学校やPTAだけでなく地域ぐるみで森を育んでいこう」という気持ちが,みんなの間に広がっていきました。
 いつの時代も最良の学校環境を作ろうとした地域の方々の思いを引き継ぎ,人と人の交流,人と自然のふれあいを通して,たくさんの生き物たちが共存できる森づくり,そして誰もが楽しく憩える森づくりに「学校林を育む会(愛称"くじらの会")」は取り組んでいきたいと思います。
●ビオトープコンクールに応募して
 くじらの会は、次の3つを目標に活動しています。
 @森づくり:下草刈り,間伐,植樹など育成管理。
 A小川づくり:メダカやトンボ等が住める環境の復元。
 B自然体験:森や小川の環境を活かした自然体験。
 一昨年8月、第1回全国学校ビオトープコンクールに応募したところ、県内で唯一、二次審査へ進み、さらに最終選考の9校に残り、去年2月の発表会及び審査会では、5部門中「学習部門」「計画部門」「協力部門」の3部門で優秀賞を受賞しました。
 このことは、単に横戸小の取り組みが専門家によって高く評価されただけでなく、数紙の新聞に報道された結果、地元だけでなく市内外の注目を集めることになり、学校とくじらの会にとっては、喜ばしい反面、期待を裏切ってはいけないと気持ちを新たにしています。
 学校は、総合的な学習の実施に向けて、学校林を活用した学習計画の研究開発に取り組んでいます。くじらの会も今年度は、千葉市の自主研修グループの協力を得て、自然体験型の環境学習に取り組みました。
 子供たちの将来にとって、学校林や小川のように、いつでも多様な生き物と直接ふれあう体験ができる環境は、とても重要だと思います。こうした環境を守り将来に伝えていくためにも、くじらの会は学校と連携しながら、学校の教科では実現が難しいような自然体験を中心に、自主的な活動をしていきたいと考えています。
        (横戸小くじらの会代表,千葉市環境局環境保全部  環境調整課自然保護係係長)


学校ビオトープ

船橋市 越川 重治

1.はじめに
豊かな時代に育った子供たちの遊びの世界は,個性のない画一化されたものになり,バーチャルリアリティー(仮想現実)のゲーム,テレビなどの氾濫によって,本物の世界がますます見にくくなりつつある。この子供たちの次の世代はどのような世の中になってしまうのだろうかという危惧をいだいているのは私だけではないと思う。
そのような世界にいる生徒たちに本物の「生き物のあるがままの姿」を五感で感じさせることにより,自然に対する原体験を高校で遅ればせながら追体験させたいと考えていた。そのために今まで生物の授業で「タンポポ調査」,「ツバメ調査」,「カエルの卵からの発生観察」,「自分の木」などの教材により,身近な自然を見る機会を作ってきた。その流れの中でもっと身近なところで自然にふれあう場を作りたいと思い,「学校ビオトープ」作りを始めたのである。
2.学校ビオトープは,本当のビオトープか
本来のビオトープは人間の都合から発想されるいろいろな要素を取り入れたものではなく,野生動物の利益のみを重視したもので野生生物が生活,あるいは生息できるひとまとまりの空間をさしている。ドイツなどでは,人間はなるべく手をかけずありのままの環境と生物の姿を謙虚に見つめていく姿勢が貫かれているように思う。
それと比較するといろいろな学校で作られ始めた「学校ビオトープ」は原風景の自然が失われた人工的な場所から始める創出型のものが多く,ありのままの自然に任せるには限界がおのずとあり本来のビオトープとは,ほど遠い存在にあるのが現状であろう。本校も同じくビオトープというより自然生態園と呼んだ方がよいかもしれない。
しかし,私はあえて自分の学校で作っているものを「国分高校ビオトープ」と呼びたいと思う。なぜならそれは不完全な形ではあるが,原風景の自然環境を復元しようとする基本的精神の上に立って作っており,自然に対してあくまでも謙虚な姿勢で臨んでいるからである。この姿勢はこれからも変えたくないと考える。
いろいろな学校で行われている「学校ビオトープ」も自然に対する謙虚さを忘れずになるべく自然に任せるようにしてほしいと思う。
3.「学校ビオトープ」を作る上で注意すべき点
ビオトープを作る計画段階および作った後失敗した経験から注意点・問題点をあげてみた。

T.その地域の原風景をもとにして作られているか
@土はその地域のものを使う。
他地域からのものを使うと埋土種子などから思わぬ植物などが出現する場合がある。
A移入する生物は,基本的にはその地域の個体群が望ましく,基本設計段階で種類・個体数を決めておいた方がよい。
いろいろな生物を各地から採って来てすべてを移入するのはまずいと思う。最低線の生物を入れ,それ以降はなるべくそこの自然に任せることが大切である。また,少なくとも出所がはっきりわかっているものを使い,安易に生物はどこかで捕まえて離せばよいという誤った考えを生徒に植付けさせない。
B基本的には,外来種は意図的に入れない。
特にアメリカザリガニは,水草を食べてしまうので狭い池では注意が必要である。ブラックバス,ブルーギルはメダカ等の在来種を食べてしまうので入れない。また,カダヤシもメダカと競争するので要注意。いったんこれらの外来種を入れてしまうと,排除するのは非常に難しく,生態系のバランスをくずす原因になることを考えておく必要がある。
C市販の「ビオトープセット」は注意が必要である。
売られているものは,どこの地域の個体群かわからないし,また野外で盗掘・乱獲したものが売られている可能性もあるので自然破壊に加担してしまう場合もあることに注意が必要である。
D田んぼから学ぶべき点はたくさんある。
 ビオトープに田んぼはいらないという人がいるが,田んぼから学ぶべきものはたくさんある。イネの生態ばかりでなく,田んぼにまつわるいろいろな文化や農機具等民俗学の分野への発展も考えられる。本校でもほんの一畳ほどの小さな田んぼを作ることにより環境が多様化し生物相が増えた。農村的な自然復元はとてもよい教材があるので田んぼや畑などの農村生態系をぜひ作ってほしいと思う。
U.遺伝子の撹乱に注意しているか
@いろいろな地域の個体群を入れると,遺伝子の撹乱が起きてしまう。
例えば,いろいろな地域から捕ってきたメダカを同じ池に放したり,ヒメダカを同じ池に入れたりした場合。また市販のクサガメを入れると,外国産の個体群の可能性もあり,在来種と交雑の可能性があるので注意が必要である。
A外来種や園芸品種が野外へ流出する危険性はないか。
注意が必要なのはハーブ園のミント類の交雑,ケナフ栽培によるケナフの帰化植物化,開放系の水系から外来種の流出など。
V.計画および維持管理について
@ビオトープとはどういうものかを説明し,計画段階から生徒および地域住民の人にかかわってもらうことが大切である。
本校では生徒に設計図を考えてもらいその中の優秀作品に基づきビオトープ作りを始めた。設計段階のはじめから関わることにより,汗水たらして掘った穴が池となり,しだいにまわりの環境も変化してくると生徒たちのビオトープの見方も変わってくる。
A水系を作る際の水源はどうするか。
湧水はあるか,地下水を利用できるか,雨水は利用できるか,水道水を使うか,により設計がかなり変わってくることを考えておかねばならない。
B予算が無くても工夫しだいで作ることは可能である。
 本校ではビオトープにかけたお金は現在,池を作る際に用いた防水シートのみである。お金をかければきりがないが最低線の予算でもかアイデアと人力でなんとかなるものである。
C関係者への説明も大切。
学校であれば管理職への説明・理解はもちろんのこと他の職員にも理解を求めるのが大切である。特にいろいろな面でお世話になる用務員さんとの意思疎通は特に大切である。
意思疎通がうまくいかないとビオトープの草を刈られたり,除草剤を使われたりなどのトラブルが発生しやすい。
D近隣住民や地域の人々との関係。
 近隣住民の苦情(蚊やその他の昆虫が多い等)に対してフェンス際の約1.5メートルの除草をするだけでも昆虫の移動がかなり減る。ビオトープの生態系が安定すれば,蚊の大量発生はないことなどを説明したり,学校ビオトープで何をしているかを直接近隣住民に説明することも大切だと思う。
E継続的な管理体制はどうすべきか。
学校ビオトープを作った管理者が転勤等でその学校から異動してしまった後,ビオトープが無くなってしまったのでは残念である。そのためにも付近の住民を巻き込んだ地域に根ざした形のビオトープが理想である。また,行政や地域住民などに協力していただかないとビオトープのネットワーク化も円滑に進まないと思う。
4.最後に
いろいろ気づいた点を書きましたが,まずはどんな形でも生徒といっしょに作ることが大切だと思います。はじめは簡単なものから始めてください。教育効果を期待するより,生徒といっしょに自分で作る楽しみを大切にしていってほしいと思います。毎日いろいろな発見が見つかるとおもいます。レイチェル・カーソンはセンス・オブ・ワンダーの中で「知ることより感じることのほうが大切である」と言っています。自然の偉大さに接するとき人は謙虚になっていくのではないでしょうか。
              <千葉県生物学会室内例会2000.11.30.資料より転載>   (県立国分高等学校)


谷津田観察会で感じたこと

 千葉市若葉区 鵜沢 満枝  

10月の爽やかな秋晴れの日、8才の息子4才の娘と共に緑区にある下大和田谷津田の観察会に参加しました。今回は水辺とあり、子供たちの期待度はかなり高く私もふだん踏み入ることのできない田んぼとあり楽しみにしていました。
息子の一番の目的は図鑑でしか見たことのない水かまきりとたがめ(両者とも肉食!?)を見つけることでしたが、残念ながらお目にかかることはできませんでした。それでも小川にタモをいれれば必ずといって良い程、カエルやドジョウ、かわにな等がかかり歓声をあげていました。息子は勢いあまって川に落ち、服が濡れたまま数時間水を得た魚のようにはしゃいでいました。娘は畦に咲く野の花を摘み、数珠玉をとり、山栗を拾い、秋の自然の恵みを満喫していました。帰宅してからが又楽しいひとときでした。数珠玉を箱に入れてゆっくりと動かし、波の音を聞かせてくれた娘、その後3人でせっせと数珠玉に糸をとおしネックレス作り。10粒ほどの山栗は茹でて食べると、とても甘く美味しくてそれ以来娘は大の栗好きになりました。 
 近頃「花も虫も生き入るのだからとったらかわいそう」と触れようともしない子を見かけます。好奇心の固まりであるはずの子どもがそう思うはずはないのできっと大人に教えられたのでしょう。確かに乱獲はいけないし、自然を大切にする考え方は正しいのですが、幼い頃に虫を捕まえる楽しさや難しさ味わう等、自然にふれる機会があって初めて自然の大切さを実感するのではないでしょうか。
先日テレビでドイツの環境教育の様子を紹介していました。ドイツの子供たちは家庭でも学校でも自然、環境に関してひとりひとりが責任をもつことの大切さを教え込まれています。その内容は、体験を通してまさに五感を使っての環境教育です。といってもいたってシンプルで日本の学校でもすぐに模倣できるものです。日本でも地域の特色を生かした環境教育を行う学校が増えてきたようです。高度成長期に学童時代を過ごした私にとってとても羨ましい話です。でも、今から遅くはありません、子供たちと共に学び、楽しみながらエコライフを実践していきたいと思います。息子の感想です。


水かまきりとたがめを見つけられなくて残念でしたが、とても楽しかったです。赤カエルのおなかをなぜたら、きもちよさそうにじっとしていました。
この前、あおばの森のはくぶつかんに行ったら、てんじしつに水かまきりがいました。しっぽで呼吸していました。えさの魚をたべるのは見られませんでした。ペットショップにたがめが3600円で売られていました。お母さんにかってと言ったら「自分でさがしてつかまえなさい」と言われました。小川にかわにながいたのでなつになったらホタルがいるかもしれないので、らいねんまたいきたいです。学校に行ってかんさつかいのことを話したら「行きたかったなー」と言ったともだちがたくさんいました。   (鵜沢 淳史)


ーーー 事務局からのお知らせ −−−

ちょっといい本の紹介「税制・財政を環境の視点で考える」
 ヨーロッパでは環境負荷の少ない社会に変えていくために環境税が導入されているが、日本の自動車グリーン税は、業界等の抵抗で「自動車買い換え促進税」になってしまった。また国の予算の中の「環境保全経費」の多くは、下水道事業と原子力関係で占められているが、大規模土木事業である下水道事業は、予算額の割には水質が改善されないと10年ほど前から総務庁が勧告していた。
 このような税と国の予算を、環境の視点で考察するとともに、税と予算が行政、業界、族議員によって決められていくしくみを明らかにしている。ちば環境情報センター会員の鈴木希理恵氏も執筆している。
定価 1,800円(税込) 発行:「環境・持続社会」研究センター(Tel 03-3447-9515/E-mail:VZR02520@nifty.ne.jp )直販のみ
再生封筒スタンプ欲しい人この指とーまれっ!
 当センターの使う封筒に
「再利用封筒」というかわいいイラスト入りのスタンプが押されているのにお気づきですか。
会員の松下優子さんデザインによるこのスタンプを、皆さんも使ってみませんか?
裏紙で作った自家製封筒に押せば、ちょっぴりグレードアップされたエコ封筒に変身ですよ!
 お好きなイラストと文字を選んでセンターまでお電話またはFAXでお申し込み下さい。インクも付いて600円.。
第3回 白鳥に会いに行こう
千葉県最大の白鳥渡来地本埜村で150羽あまりのオオハクチョウとコハクチョウを観察します。都市鳥研究会の越川重治氏を講師に、生態など分かり易く解説してもらえます。現地には京成佐倉駅から自家用車に分乗して行きます。車手配の都合がありますので、事前に参加連絡を願います。
    日 時:2001年2月4日(日)10:00〜12:00 
    集 合:京成佐倉駅前北口ターミナル10:00
    持ち物:双眼鏡,筆記用具,十分な防寒を
    参加費:300円(資料・保険代)
    申込み:前日までに電話またはfaxで
    電話&FAX:043−223−7807
    主 催:ちば環境情報センター
<メダカに関する情報をお送り下さい>
 昨年に引き続き「こだわってメダカってマップ」制作に対して、イオン財団から30万円の助成金が交付されることが決定しました。メダカをはじめ多様な生物たちとその環境を保全するために、有効に使っていきたいと思います。メダカに関する情報などありましたら、「こだわってメダカってカード」にご記入の上、ちば環境情報センターまでお送り下さい。ご協力お願いいたします

編集後記:7:02今世紀最初の太陽が、地平線にかかる雲の上に顔を出しました。太陽の寿命はあと50億年とか。人類にとってはこの100年が正念場でしょう。 mud-skipper