ちば環境情報センター
2002.1.7 発行    ニュースレター第54号
代表:小西由希子

目次
  1. つぶやきを形あるものへ −佐倉市直弥公園のビオトープ−
  2. 環境を学ぶものとして
  3. 光るミミズ発見!

つぶやきを形あるものへ その2
 −佐倉市直弥公園のビオトープ−

佐倉市 美濃和 信孝 

1年前のニュースレター第41号の続編としてお知らせします。今回取り上げる佐倉市直弥公園は、隣接する佐倉市第三工業団地のテニスコート移転に伴い、新たに公園化がなされる場所で、来年春の竣工をめざして現在工事が進められています。台地上にはテニスコートが造成されますが、下の長さ200mほどの小谷津には、10数年来人の手が入っていない放棄田が広がっています。98年の秋、この場所の測量が始まったとき、ここが開発されてなくなってしまうのではないかという危機感を持った私たちは、「さくら・人と自然をつなぐ仲間」の名前で、佐倉市公園緑地課に要請を行いました。その内容は、この湿地にカエルやトンボのための池を掘らせて欲しい、というものでした。私たちの願いを市は快く聞きいれてくださり、管轄の県開発公社との調整役もやっていただき、湿地のビオトープ化に向けての一歩を踏み出すことができました。私たちが声をあげなければ、この谷津は菖蒲田のような場所になるか、あるいは埋め立てられて普通の芝生広場になっていたことでしょう。
昨年秋から、「佐倉里山クラブ」が活動主体となり、池掘りをはじめとする環境整備に取り組んでいます。スコップとマンノウで少しずつ掘り進んでいく手作業は、遅々として進まないように見えますが、それでも現在約150 m2に広がった池が満々と水を湛えています。今年の春以来、この場所で確認された生物は、カエル5 種、トンボ13種をはじめとして動物だけでも139種を数えました。夏にはカワセミがダイビングし、キジバトが水浴びをする光景も見られました。今は冬枯れた景色が広がっていますが、谷津の奥のアシやセイタカアワダチソウの原野が、たくさんの鳥たちを呼んでいます。あまりに鳥が多いので、11月16日に15分間の定点バード・カウントを行ってみました。近くの耕作田では6種14羽でしたが、この放棄田では、11種37羽の鳥が見られました。11種の中にはオオタカやウソなど珍しい鳥も混じっていました。荒れたように見える湿地もまた大切な場所であるということがわかります。
現在斜面下に溝を掘って、流れをつくる作業に取り組んでいます。溝はかなり掘り進みつつあり、10月11日の大雨のおかげで、湧水を集めた小川が今も涸れることなくさらさらと流れています。百メートルほど離れたところでは、今年の夏ヘイケボタルの発生が見られたので、将来この流れで繁殖するようになることを期待しています。台地から斜面にかけては、県の手できれいに下刈りがなされました。近くの小学生たちが木を植える体験学習の場所として活用できたらと思っています。
市民の手による現有の自然をそのまま生かしたビオトープづくりが、ここだけでなく市内各地で始まっています。地元の人たちも多大な関心をもってこの場所の行く末を見守っているようです。多くの生きものたちが集い、たくさんの市民がふれあいをもてる場所にしていきたいと願っています。


環境を学ぶものとして


私と環境教育            江戸川大学環境情報学科2年 柏市 山下 厚子 

平成13年、去年は私にとって、とても意味のある年になりました。
私は大学の授業で「環境と教育」という授業をとってから環境教育というものに興味をもち、5月に友達に誘われてちば環境情報センターのサポーター研修会に初めて出席し、いろいろな人たちと出会い、会員になりました。それ以来いろいろなイベントで参加するようになって、学校外でも学校内でも少なくとも以前よりは積極的に活動するようになりました。
夏には谷津田の方によくお邪魔していました。今では蛙も手掴みで捕まえることができるし、素足で田んぼの中に入っていけるけれど、実は私は子どもの頃に田んぼで遊んだことや蛙を捕まえたりして遊んだ経験が記憶になく、素足で田んぼの中に入ってはじめはどうやって遊べばいいのかが分かりませんでした。そして、最近子どもたちと遊ぶこともなかったので、子どもに対してどのように接すれば良いのか…と戸惑ってばかりでした。
ところが、何回か谷津田やプレーパークなどに行って子どもたちと遊んでいるうちに、仲間に入れてもらえるようになって、前よりはずっと子どもたちから近い位置で子どもたちと遊べるようになりました。それからは子どもたちのやることに驚いてばかりです。
子どもたちは、私たち大人が考えつかないような遊びを考えたり、しかもそれを実際行動に移して、さらにどのようにすればもっとその遊びが面白くなるのかを自分たちで考えて…。そんな場面を私が見たとき、以前授業で配られた資料に「子どもは遊びの天才である」と載っていたとおり、本当に子どもは遊びの天才だと感じました。私はいつも子どもたちと遊びを通して、何かしら教えてもらっているような気がします。 
去年の自分は一昨年の自分よりも環境学習に対して積極的にはなりましたが、これからもいろいろなイベントやシンポジウムなどに参加をして、自分の知識や経験をもっと積んで自分の環境学習を進めていきたいと思っています。


私の環境             江戸川大学環境情報学科2年 足立区 神辺 晴美 

私は今でこそ環境に興味があって、いろいろと勉強や活動をしています。しかし去年までは、ただなんとなく環境に関する勉強がしたくて入学した江戸川大学で、受身的に授業を受けているだけでした。私が環境に目覚めるきっかけとなったのはちょうど一昨年の今頃、1年の9月から所属した環境系サークルの多くの先輩達が引退したことだと思います。当初そのサークルは3年と1年しかいませんでした。そして多くの先輩達が、4年になるといろいろ忙しくなるためサークルから引退し、残った先輩もサブ的存在で活動したいとのことで、1年が中心となっていくことになりました。そこでだんだんと自立心が出てきて、4月には他の環境サークルにも手を伸ばすようになりました。そこでいろいろな人と出会い、やる気のある人たちに触発されてどんどんいろいろなことに興味を持つようになりました。この頃このちば環境情報センターの代表の娘さんの小西さんとも出会い、この会のイベントに参加させていただくようになりました。
そんな中で思うことは、人間は周りの環境によって育てられるということです。今の私は多くの人たちに支えられて今の自分ができています。周りに多くの活動的な人がいたから、自分もそんな風になりたいと思って積極的に活動していくようになりました。私を変えてくれた人たちにとても感謝しています。そして今後は深い付き合いをしていきたいと思うとともに、もっといろいろな人と出会っていきたいです。さらに自分が他の人を変えられるような存在になれたら嬉しいです。
今は国立公園について勉強中です。皆さんは日本にも国立公園があることを知っていますか?日本人にはなじみの薄い国立公園ですが、北海道から沖縄まで28指定されています。富士山や日光や奥多摩も国立公園に指定されているので、知らないで訪れている地も多いのではないでしょうか。自然を守るためには行動を規制しなければならないけれど、人々が自然と親しんでいないと自然を大切だと思えません。そこのバランスの難しさを痛切に感じているところです。卒論では海外の国立公園を調査したいと思っています。私は今まで4カ国ほど海外へ行ったことがあるのですが、やはり日本と海外は大きな違いがあって、今までどれだけ自分が狭い視点でしかものごとを見れていなかったかがわかり、日本では絶対得られないものを得られます。海外旅行はとてもお金がかかるので、かなり大変ですが、それ以上の利益を得られるものだと思っています。
今年はまた一段と成長した自分でいられるように今の一時、一時を大切に過ごしていきたいです。今後ともよろしくお願いします。


光るミミズ発見!

 佐倉市 田中 正彦  

2001年12月13日午後6時頃、千葉市緑区にある谷津田の農道を車で移動していると、路上にじっとしている1匹のカエルがライトに照らし出された。車を降りてよく見るとシュレーゲルアオガエルであった。「こんな時期にカエルが活動するのか」と不思議だったが、その日は夕方近くまで暖かい雨が降っていたので、そんなこともあるのかと思い車に戻ろうとした。そのとき何気なく足元を見ると、雨に濡れた地面がぼんやりと光っているのに気が付いた。
青白いほのかな光は枯れ草に埋もれるように点々とみえたが、何が光っているのか全くわからなかった。そこで、車から懐中電灯を取り出し、発光体に向けたのだが、光を当てると発光がみえなくなり、なかなか正体を確認できない。明かりを消して、発光している場所を指さしておいてから懐中電灯の光を当ててみたら、わずかに動く物体がようやく見えた。さらに近づいてみて驚いた。発光体の正体はなんと長さ2pほどのミミズだったのである。ミミズが光るのかと半信半疑だったが、足元にいた2個体をフィルムケースの中に入れ、真っ暗な車内で見ると、やはり発光しているのはミミズであった。
翌日、図鑑やインターネットで発光ミミズのことを調べてみると、どうもホタルミミズであるらしいことがわかった。ホタルミミズは、1934年3月に神奈川県大磯で初めて発見され、その後、1938年11月福岡県太宰府市,12月静岡県沼津市,1949〜55年冬神奈川県横須賀市, 1956年埼玉県小川町などで記録されている。小川町の時は、NHKで放映されたり、雑誌「採集と飼育」に掲載されたりしたそうである。最近では2001年11月11日に広島県福山市で発見され、このことが 12月29日の朝日新聞で報道された。また、兵庫県版レッドリストでは未確認貴重種に分類されている。
千葉県での記録はあるのかと、千葉県立中央博物館や千葉県の自然誌を編纂している千葉県史料研究財団に問いあわせたところ、はっきりとした記録はないのではないかとのことであった。また、史料研究財団の布留川毅氏から、自然誌の中でミミズのことを執筆している大野正男氏(東洋大学文学部教授)に写真確認をお願いし、おそらくホタルミミズで、県内初記録ではないかとの返事をいただいた。
そんな珍しい生き物が谷津田の農道にいたのである。でもちょっと待てよ、ホタルミミズは本当に珍しいのか。過去の例は、すべて冬に記録されていることに気が付くであろう。寒い冬の夜、しかも雨の時に谷津田などうろつく輩がどれほどいるだろうか。もしかしたら、いろいろなところに生息しているのに、我々の目に触れていないだけなのかもしれない。
冬季、雨が降ったら家の周辺を散歩して、足元を見ていただけませんか。そしてもし光るミミズを見つけたら下記の「原稿の送り先」までご連絡ください。情報をお待ちしています。


編集後記: あけましておめでとうございます。環境世紀元年といわれた昨年は、命の尊さと人間の愚かさを改めて考えさせられるとしになってしまいました。地球上の全生命が、対等の立場で解り合えるような、そんな世の中を創造していきましょう。   mud-skipper