目次 |
佐倉市 田中 正彦
1.はじめに
2003年度から高等学校でも「総合的な学習の時間」(総合学習)が本格的に始まった。しかしながら、文部科学省が考えているような環境学習や国際理解などについて、系統立てたカリキュラムの中で実施していこうとする高等学校は、多くないようである。特に進学校ではその時間を補習などに当てる学校もあると聞いている。多かれ少なかれどの高校でも、総合学習の時間をどう取り扱っていくかに頭を悩ませているのが現状であろう。
こうした状況の中、筆者は今春犢橋(こてはし)高等学校に赴任して、1年生の総合学習を担当することになり、どのように進めていくかを考える立場になった。幸にして本校は、3年間しっかりと生徒が自ら考え問題解決をしていくスタイルの総合学習を進めていこうという方針であり、1年生では環境と福祉の問題を取り上げることになっていた。日頃から千葉県内の環境、特に谷津田や干潟などの水辺環境の保全に関わっていた筆者は、生徒達に環境問題について考えてもらえる良い機会と思い、「真面目な総合学習」に取り組んだ。
2.遠足で環境学習
地球温暖化やオゾン層の破壊など、取り上げたい環境問題はたくさんあるが、生徒にはまず身近な問題に気づいてもらうことから始めようと考えた。1年生の遠足が「三番瀬で潮干狩り」に決まっていたので、そこを何とか総合学習の場にできないかと思った。そこで、千葉県が抱える大きな環境問題である「三番瀬埋め立て」や干潟の生きものについて事前学習しておき、遠足当日には生きもの観察やゴミ拾い(三番瀬クリーンアップ大作戦)を実施することにした。その経過は以下のようであった。
三番瀬クリーンアップ大作戦 |
<事前学習>三番瀬の紹介ビデオを上映し、筆者が生息する生きものについて解説をした。その後、生徒達は三番瀬について書物やインターネットで調べ、班ごとにどんな生物を見たいかを「出会いたい生きものベスト10」として一覧表にまとめた。
遠足当日のゴミ拾いに関しては、ただ三番瀬をきれいにするということでなく、海洋環境を考えるという観点から、JEANの小島あずさ代表と大倉よし子氏に海洋ゴミについての出前授業をお願いした。
<遠足当日>生きもの観察では、普段からあまりなじみのない干潟の生きものに生徒達は大興奮。潮干狩りをせずに、タモ網でミズクラゲやエドハゼを追い続ける者もいた。
午後からの「三番瀬クリーンアップ大作戦」では、教師が驚くほど一生懸命に海岸ゴミを拾っていた。ビニール袋やプラスチック容器といった物だけでなく、ヘルメットや風呂桶,大きな流木や廃船を10人がかりで運んでくる猛者達もいて、事前学習により生徒達の意識が相当に高くなっていたことをうかがわせた。最後に、教師と生徒の代表が「出会ったすごい生きもの賞」,「すごいゴミ賞」を選び、表彰した。
<事後指導>遠足の成果を班ごとに壁新聞として模造紙1枚にまとめ、クラス掲示した。クラスで代表作2点を選び、全クラスから選出された壁新聞を廊下に掲示し、壁新聞コンテストを実施した。そして学校職員に、優秀作品に投票してもらうことを呼びかけた。また、保護者面談で訪れた保護者にも投票用紙を渡し、投票してもらうことで、総合学習の成果を学校職員や保護者にアッピールした。後日投票結果を集計し、壁新聞優秀作を選び表彰した。
3.おわりに
今回三番瀬への遠足を題材に、総合学習を展開した事例を報告した。生徒自らが考える力を身につけるという総合学習の目的は、テーマの与え方や事前学習の内容,評価方法(壁新聞コンテストによる生徒や職員への還元)など教師側が系統立てて考え、生徒に与えていかなくては達成されないであろう。今回どこまでそれができたか分からないが、学習の前よりちょっとだけ環境に対して生徒が目を向けられるようになってくれたらと期待している。
最後に、無理を承知で海洋ゴミの出前授業を引き受けてくださった、小島あずさ氏と大倉よし子氏に心よりお礼申し上げます。
※本文章は、JEAN通信113号(03年8月号)に投稿したものを一部加筆し、再掲載しました。
千葉市緑区 高山 邦明
千葉の伝統的な谷津田の保全に取り組んでいるちば・谷津田フォーラムでは、今年度、千葉県が募集した「NPOによる公募型環境学習事業・こども環境講座」に応募して採用され、去る11月8日?9日の2日間、千葉市緑区の下大和田と昭和の森周辺を会場に講座を開催しました。ちば環境情報センターはかねてより谷津田フォーラムと共に谷津田保全に携わっており、下大和田の観察会や谷津田プレーランドプロジェクト(YPP)を共催していますが、今回の講座にも情報センターからたくさんのメンバーがスタッフとして参加しました。その1人として、講座の様子を報告します。
ネイチャーゲーム「カモフラージュ」 | いざ、谷津田たんけんへ |
土曜日の昼過ぎ、下大和田にやってきたのは小学校3年から中学2年までの男女32人。YPPで見かけたことのある顔もあり、みんな最初から元気一杯です。まずはアイスブレーキングのネイチャーゲーム。「私は誰でしょう」の動物当てと「カモフラージュ」の隠し物さがしを楽しみ、だんだんと雰囲気がなごんでいきました。そしていよいよ谷津田探検。グループに分かれて、魚採り網を手に田んぼを歩きました。サンショウの実の辛さ、丸々太ったアカガエルのお腹の赤い色の鮮やかさなど、驚きが一杯。真剣な顔つきですくった網にメダカが入っているのを見つけると大きな歓声が上がっていました。探検から戻る頃には日が傾きはじめ、急いでたき火のために木をこすり合わせる火起こしに挑戦。「焦げ臭い匂いがしてきた!」、「あっ!煙が出たよ!」、「すごい、火種だ!」とあちこちのグループから次々と声が聞こえてくるのですが、肝心の炎はあがりません。スタッフがクラクラするほど息を吹きかけても結局点火できず、無念の涙を飲んでライターでたき火に点火。するとその直後、粘っていたスタッフが火起こしで見事点火に成功しました。もう少し早ければ…残念でした。たき火は子どもたちに大人気。落ち葉や小枝を入れて立ち上がる炎を楽しんだり、マシュマロを棒の先につけて焼いて食べたりと、日が暮れるまでたき火を楽しみました。
火おこしに挑戦 | 早朝ハイクで野鳥の観察 |
下大和田から宿泊場所の千葉市ユースホステル(昭和の森内)へ移動し、夕食を済ませるとナイトハイクです。雲間に満月が見え隠れする夜。いざ出発するとそれまで元気一杯だった男の子がスタッフの手をしっかり握りしめるかわいい光景も。最初は真っ暗闇に見えても目が慣れると道が見えるようになること、夜の静けさや神秘さを初めて体験した子がほとんどだったようです。
夜は10時就寝だったのですが、夜更かしをしたグループが多かったようです。それでも翌朝6時からの早朝ハイクには自由参加にもかかわらず全員が集まり、さわやかな空気の昭和の森でバードウォッチングを楽しみました。朝食後は昭和の森から続く小山町の谷津田探検です。下大和田とは雰囲気がちょっと違う谷津で、午後のネイチャークラフトに使うツルや葉っぱ、木の枝、ドングリを袋一杯集めました。途中、穴の中に集まっているヘビを見つけたり、望遠鏡で鳥を観察したり、いろいろな発見もしました。
昼は昭和の森に戻って野外炊飯。小山町で地元の方に切らせていただいた竹を使って、炊飯の器を作り、下大和田でとれた谷津田米を炊きました。箸やお皿も手作り。かまどの火がなかなか強くならず、ご飯や焼き魚に時間がかかりましたが、その分お腹が減って、自分たちで作ったお昼が一段とおいしく感じられたようです。
グループに分かれて竹きりを開始 | 全員集合 |
最後のアクティビティはネイチャークラフト。ツルでリース、木の実や葉っぱで額、ドングリでトトロ、竹細工、木の人形など、谷津田の自然のさまざまな産物を使って、思い思いのものを作りました。あっという間に素敵なクラフトを作り上げる子どもたちの豊かな発想には驚かされました。
2日間にわたる講座でしたが、あっという間に終わった感じがします。子どもたちからも「もっと遊びたかったなぁ」、といううれしい声が聞こえてきました。谷津田の自然の中で実に生き生きと活動する子どもたちの姿、素敵な笑顔を見ていると、ホッと安心するとともに、日常こうした体験が少なくなっている中で、今回のような環境講座やYPPを通じた自然体験の大切さを再認識しました。なお、講座の写真を千葉・谷津田フォーラムのホームページに掲載していますので、ぜひ、ご覧下さい(http://yatsuda.2.pro.tok2.com)。
以下は、講座に参加した子どもたちが書いたふりかえりシートの集計結果です。子どもたちの感想をご覧下さい。
<ふりかえりシート集計結果>
1.この講座で楽しかったことはどんな事ですか?
2.この講座で残念だったことはどんな事ですか?
3.この講座で初めて知ったことはどんな事ですか?
4.お友達は出来ましたか?
はい・・・28人 いいえ・・・3人
5.来年もまた参加したいですか?
はい・・・32人 いいえ・・・0人
習志野市 鈴木 美和子(三番瀬Do会議)
2001年秋に、堂本知事が三番瀬埋め立て計画の白紙撤回を表明してから2年が過ぎました。2002年1月より発足した「三番瀬再生計画検討会議」(円卓会議)は、2年近い検討をへて、2003年11月に再生計画素案(180ページ)を発表、現在パブリックコメントを募集しています。関心のある方は下記のアドレスにアクセスしてください。といっても、計画素案は180ページですので、ここでは簡単にポイントを紹介しましょう。
円卓会議では、三番瀬の海域の再生ではなく陸域について話し合われた結果、現在の埋立地を湿地化し海とつなげていくことが多く盛り込まれています。また自然再生のためには干潮時には干出する干潟を人工的につくることが必要というのが多数意見で、人工干潟化が計画されています。
地権者も居住者もいる陸地を海に戻すことはまず実現不可能ですし、自然海域を人工干潟にすることは生態系上、維持管理のコストなど大きな問題があります。しかし、これが専門家,自然保護団体,漁民,住民などによる三番瀬円卓会議の結論です。円卓会議は1月末で終わり、県はこの円卓会議の報告を受けて具体的計画の作成作業に入る予定です。
☆計画素案、パブコメ→千葉県三番瀬HP http://www.pref.chiba.jp/syozoku/b_seisaku/sanbanze/soan/public_coment.html ☆円卓会議の経過→三番瀬Do会議HP「どうなっているの三番瀬」 http://www.ne.jp/asahi/sgmr/3banse/dounatteruno.html |
八千代市 松尾 昌泰
ちば環境情報センター(CIEC)のホームページに関わって丸5年になります。当時に比べて、今はインターネット時代となり、その重要性はいちだんと増大したと思っています。当センターはもとより、他団体や行政の環境関係イベントの情報をホ―ムページ上に紹介しています。CIECの事務所に出かける時間が、又、まとまった時間がなくても、インターネットのお陰で、少しの、ちょっとした自分の都合の良い時間で、このイベント情報集めとホ―ムページの仕事をしております。
環境問題の改善には、個人個人の努力・協力が必須ですが、それだけでは限界があります。社会の仕組みだとか制度をできるだけ早急に、環境に優しいように変えて行かなければならないと痛感しています。
2003年11月14日のレスター・ブラウン氏の講演「地球と人類を救うプランB」の中で、「今以上の(戦時中と同じような)スピードで環境・食糧・水問題に取組む必要があり、そのためには抜本的制度や税制の改革が必要である。」と訴えていました。同感できるところが多くありました。
編集後記:1996年12月に女性3名で設立されたちば環境情報センターも、今月で丸7年を迎えました。会員数も300人近くに増え、ニュースレターは77号を発行することができました。これからも、環境情報の収集発信や参加体験型環境学習推進のNPO法人として、活動を充実させていきたいと考えています。 mud-skipper