ちば環境情報センター
2004.4.7 発行    ニュースレター第81号
代表:小西由希子

目次
  1. 日本の森林行政に関係して、なぜこうなるの?
  2. もと技術屋のひとりごと ・・家庭の省エネルギー・・・
  3. 地球温暖化防止対策として「ケナフ」を登録品目に

日本の森林行政に関係して、なぜこうなるの?

東京都文京区 荒尾 稔

植樹して、30年から40年を経過した山武杉の、1本あたりの単価が100円から150円にしかならないと証言を各地で聞いて衝撃を受けています。それも木材市場まで運搬費を負担して、現物を展示しての価格と聞いて、開いた口がふさがらない状態です。
150円で買えるものの代表格はおにぎりです。おにぎりは、店頭販売の申し子であると同時に、代表的な高回転商品です。1日に最低1回転はします。もちろんそれ以上になれば、賞味期限切れと言うこともあります。
いま、アルバイトでも、おにぎりを1日に300ヶは握れます。売価で言えば4万5千円。1ヶ月を20日としても90万円になります。年間で1,080万円。30年間として、32,400万円の売り上げ累積となります。
これと、30年経過した山武杉が150円として、比較するとどうなるのでしょうか。216万の1、となります。気の遠くなりそうな格差です。本当とは思えません。30年から50年をかけて1回転という商品は、ほとんど例がありません。少なくとのパソコンの管理システムでは対象外でしょう。
もっと端的に言えば、GDP(国内総生産)としての計算で、おにぎり産業は30年間で、2億円以上の売上げを計上でき、国や県から見れば、お米を作る農家や肥料会社,おにぎりを製造する会社,その社員,運送するトラック会社,コンビニエンス等から所得税,住民税,源泉所得税等、至る所から税金を徴収できる仕組みになります。同時にGDP数値を高め、かつ景気を持ち上げる上で、結果として多大な貢献をすることになります。
他方、200万分の1の貢献と評価された森林には、国として見向きもしたくなくなるのも、これだけ見ると理解できなくもありません。
このレベルの木は、チップとしてしか利用されていません。従って日本の林業は、国際的な競争下では、この程度の価格でしか市場が成立せず、山そのものが、価値を生み出せない不良債権のごとき状況に陥ることになったのでしょう。
千葉県の山武杉は、品質的な問題を抱えているから安いのかといいますと、宮城県でもほぼ同じ価格帯です。しかし、よく考えるととても変です。
まず、家庭の専従の主婦が、夕食としておにぎりを握ると、国には税収が減ることになります。同時に大企業がおにぎり産業を運営すると、いろいろな会社を経由して、たくさんの所得に転換していき税収が増えますが、町の総菜屋さんが作ると貢献度が落ち、家庭の主婦が作ると最低になります。国の施策として、家庭でおにぎりを作られては困る、お総菜屋でも困る。出来たら1部上場の会社がおにぎり産業に参入することが最善と言うことになります。さらに市民が、労働力を森林に投入されては、GDP的には困るということになります。
GDP信仰というのは、こういった側面がありそうです。山の湿地や里海の干潟などは、それ自体が売上げを上げることはありません。従って、統計上GDPには貢献しません。田んぼのただの虫などは無価値と言うことになります。
それだけでなく、国が中小企業に冷たいと言われるのも、税収という仕組み上、GDP貢献度が低いからと言う方もいます。
最近では、農水省が研究者に、冬期湛水水田や不耕起栽培等の研究にも待ったをかけているという根強い噂が流れています。肥料販売や農薬,空中散布,ほ場整備という国の事業展開に大きな影響を与えかねないという判断が生じているのでしょうか。
それは、GDPに対極的な、生き物が生き物を支える力、生物生産指数(仮名)とも呼ぶべき現象のあることが、色々と分かってきたからだと思います。



もと技術屋のひとりごと ・・家庭の省エネルギー・・・

千葉市花見川区 青木 清

ある技術系の学会誌に"わが家の環境論争"いう話が載っていた。著名な先生の講演録の一部である。いま使っていない部屋の照明やエアコンをつけっぱなしにしているので"無駄な電気"は消すようにいうと、奥さんは「小さな家なのだから家中明るくしておいたほうがずっと気持ちがいい。エアコンにしても自分の部屋だけ冷房していて、別の部屋へ用事をするため入っていって急にエアコンをつけても、涼しくなる頃にはもうその部屋にはいなくなる。全部つけっぱなしにしたほうが快適な暮らしができる。街灯だって人っこ一人いない真夜中についているのだから、家の中で誰もいないところに電灯をつけるのは当たり前」と言ってくる。
こうなると"無駄な電気"という言い方が全く主観的になってくると述べている。また"お金の節約"になると言っても「価値あるものにお金を使うのは消費の原則」と言ってくるという。さらに"子孫のために"良い環境を残すという考え方に対しても、「時代が変わると価値観が変わって有り難味を感じないだろう。我々の祖先が子孫のために何をしてくれただろうか」と返ってくるという。もう1年以上も前のことで、少々極論的にも感じられ、また、お金に困っていない人の話としても、案外、一般人の本音ではないだろうか。
地球温暖化防止対策の一つの柱として省エネルギーがあげられているが、その方法は"無駄を省く"ことと"欲望を抑えて我慢をする"ことの二つに分けることが出来ると思う。
"無駄"とは、役に立たないこと、益のないことと広辞苑には書いてある。例えばテレビは視聴者が見ることで役に立つのであって、誰も見ていないのにつけっぱなしだったり、見ていたが眠り込んでしまったりの状態は"無駄"をしていることになる。スイッチを切るなり、タイマーを使用することで省エネルギーを実施できる。これに対して、"我慢"を実行するのは難しい。例えば夏場、エアコンの温度を少し高く設定して暑いのを我慢するのは、それが摂氏1度だけであっても抵抗がある。エアコンは涼しい快適な環境を欲しいから買ったのである。
快適で豊かな生活に慣れてしまった我々先進国の国民にとって、最も受け入れやすく、自然に実行できる方策が望ましい。
豊かさを保ちながら温暖化問題を解決していくプログラムが、実はすでに進んでいる。省エネ法の中に導入されている通称「トップランナー方式」である。
このプログラムは「自動車の燃費基準や電気製品の省エネ基準を、それぞれの機器において現在商品化されている製品のうち最も優れている機器の性能以上にする」という考え方で、平たく言えばそれぞれの機器を作るときに、燃費や省エネ性能がトップの製品に、がんばって追いつき追い越していこうというもの。昨年、我が家では古いテレビが機能しなくなったので、液晶テレビを購入した。使用電力がなんと半分である。
画面の大きさが少し小さいこともあるが。地球温暖化対策ハンドブックによると、液晶型はブラウン管型に対して、製造や輸送、廃棄の過程も考慮した総合的な二酸化炭素の排出量が35〜39%少ないとある。1,2%の"我慢"による抑制努力にくらべて何と効果的なことか。ただし、購入価格は数倍高い。5年も使えば省エネ効果が出て十分元は取れるようだが、温暖化防止のためといってすぐに買う人は少ないだろう。買い替えのときまでに少しでも安価になっていることが望まれる。


地球温暖化防止対策として「ケナフ」を登録品目に

千葉ケナフの会 船橋市 荒井 進 

このたび、ケナフに関して国内で最初にできた団体であるケナフ協議会の稲垣会長、長年大学のキャンパスで試験栽培を続けてこられた釜野徳明神奈川大学名誉教授と私の3名の発案で、ケナフを排出権取引材料の追加品目として登録できるよう、有志および諸団体に呼びかける運動を始めました。
 私たちはこの一年生栽培植物「ケナフ」が二酸化炭素(CO2)の吸収量が多いことから地球温暖化防止に役立つことに着目し、14年前からその普及活動を進めてきました。県内では千葉市緑区でボランティア、ボーイスカウト、ガールスカウトの方々と約600坪の畑で6年前から継続して栽培し、いろいろなイベントを通して地球温暖化防止に役立つ運動を進めております。
 このケナフは生長が著しく速く、播種後4〜5か月で高さ3〜4m,直径3〜5cmの喬木状に育ち、1ヘクタール収穫量(乾燥・年間)16〜18t、オーストラリアでは30tを記録し、樹木の生長を大きく上回っています。二酸化炭素の固定量はベトナム農林大学でのデータによると、1ヘクタール当たり222,000〜252,000本植栽(21〜13cm間隔)でのCO2固定量は、36から73t、で2期作できるので72〜146tに達します。杉の場合2.5〜5.0t、ユーカリ20.9〜36.7tと、ケナフは栽培密度による報告が、文部科学省化学研究費補助金プロジェクトで発表されています(東京大学アジア生物資源環境研究センター飯山賢治教授)。
 ケナフは二酸化炭素の固定以外に、今日 わが国で国家プロジェクトとして進めているバイオマスの植物系生分解性樹脂へのケナフの利用、愛知万博でのケナフテントの採用、中国紅蘇省でのケナフ排出権がらみのケナフプロジェクトの開始(本年度から)、また雲南省での植林から紙・パルププロジェクトのユーカリ生育までのつなぎに「ケナフ」(一年草)をと、話題は日本から海外に移りつつあります。
 このような状況を鑑み、ケナフの排出権登録品種としての署名活動に協力いただける方は、千葉ケナフの会(NPO法人 循環型地球環境保全機構内)までご連絡ください。
連絡先:〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町2-6-8大湯ビル
TEL.03-3667-3953 FAX.03-5695-1939, E-mail:kenaf@kt.rim.or.jp


編集後記:今年も3月中にソメイヨシノが咲いてしまいました。毎年、新学期最初の授業では、生徒にサクラの花をスケッチさせていたのですが、昨年は葉を描かせなければなりませんでした。今年も入学式は葉桜が出迎えることになりそうですね。地球はだんだん暖かくなっていくのでしょうか。          mud-skipper