ちば環境情報センター
2004.8.6 発行    ニュースレター第85号
代表:小西由希子

目次
  1. 暑い夏と汚れた空気
  2. 「緑」の進化と佐倉緑の銀行
  3. 今の地球には、このマンガが必要だ
  4. 事務局よりお知らせ:臨時総会報告

暑い夏と汚れた空気

千葉市中央区 高橋 克行 

 毎日暑い日が続いています。7月は各地で過去最高気温を記録し、市原や甲府では40℃以上の日もありました。これだけ暑いとすぐに「異常気象」とか、「地球温暖化」とか心配してしまいますが、去年の夏がどうだったか憶えていますか?そうですね。去年は海水浴場で閑古鳥が鳴くくらい、涼しい夏でした。図1をみると2003年は7月の気温が例年に比べ低いことがわかります。これはこれで「異常気象」といえるかもしれませんが、暑い夏も涼しい夏もやってくるのですぐに温暖化と結びつけることはできません。では、涼しい夏と暑い夏では、どちらの空がきれいでしょうか。
 わたしは環境調査会社で10年ほど大気汚染の調査をしていました。大気汚染を調べている立場から、夏の暑さと空気の汚さについてお話させていただきます。


大気汚染と聞くとどんなものを想像するでしょうか。工場の煙突からもくもく出る煙、トラックから噴出す黒いすす、あるいは近所で枯葉やわらなどを燃やすところを想像する人もいるかもしれません。大気汚染の「専門家」は空気中でおきるいろいろな現象を合わせて考えることで、大気汚染の原因を突き止め、汚染が起こらないように規制や対策をしています。
 夏の大気汚染の代表は「光化学スモッグ」です。みなさんもこの言葉を聞いたことがあると思います。実際にはどんなものか分からないという人も多いでしょう。これは工場や自動車の排気ガスなどに含まれる窒素酸化物と炭化水素が、空気中で反応してできます。このせいで目がチカチカしたり、のどが痛くなったりすることがあります。「空気中で反応」ってよくわからないと思いますが、空気中ではいろんな反応がおきます。みなさんはフロンガスがオゾンを破壊するということを知っているでしょう。これも空気中で起きる反応のひとつです。
 去年の6月から8月に千葉県内で光化学スモッグ注意報が発令された回数は8回でした。これはおととしに比べると11回も少ない回数です。しかも図2を見てわかるとおり、例年は頻繁に注意報が発令される7月には一度も発令されず、こんなことは10年ぶりとのことでした。つまり、去年の夏は空がきれいだったということもできます。
実は光化学スモッグの原因物質である光化学オキシダント(Ox)という物質は、ここ数年上昇する傾向にありました。これは専門家の間では話題になりつつあって、いろんな対策を進めているにもかかわらずOxの濃度があがった理由はよくわかっていませんでした。いまも、多くの研究が進められています。
 こんな時にOxの濃度が下がってしまうと、対策の効果なのかそれとも別の要因なのかを見極めるのが難しくなります。去年は涼しかったのでOxを作る反応がおこりにくかったと考えられます。空気中の反応はそのときの天気、気温、風の強さに左右されます。涼しい夏のほうがきれいな空であることが多いですが、天気は人間の力では変えられません。「空がきれいになった」と喜ぶのはまだ早く、たまたま去年はそういう夏だったということです。だから根本的な原因は解決されていないということをちゃんと認識しなければなりません。今年は暑いので順調に(?)光化学スモッグが発生しています。「暑い日」イコール「空気が汚い」ということになりませんが、光化学スモッグ注意報が発令されたら、子供たちを外で遊ばせるのはなるべく避けて、大人のみなさんは自動車に乗って出かけるのをやめましょう。
 夏らしく暑くても、きれいな空であるように、私たちの暮らしを見直さなければならないのです。そろそろ移動手段をクルマに依存する生活習慣を見直す時期に来ています。クルマは便利ですが空気を汚している原因のほとんどは自動車の排気ガスであることを知っていますか。クルマを利用する方の「自己責任」が問われるのも遠くないと思います。
 空気がきれいか汚いか、あまり関心がなかった人も、毎日吸っている空気です。ぜひ家のまわりの空気、学校のまわりの空気、お勤め先の空気にも目(鼻?)を配ってください。


「緑」の進化と佐倉緑の銀行

佐倉市 小野 由美子 

 (財)佐倉緑の銀行では昨年好評につき再び、ちば環境情報センターに依頼し、次の日程で自然体験学習会を開きます。「小篠塚谷津で遊ぼう」8月24日(火)9:30佐倉市南図書館集合。またたくさんの子どもたちの笑顔に出会えますように。
ところで、佐倉緑の銀行(通称 緑銀)とはどんな組織かご存じですか? 今期より一理事として関わることになったのでご紹介したいと思います。
今から20年前、旧堀田邸庭園の斜面林、緑豊かな常緑広葉樹林売却問題が浮上しました。広く市民に愛されている森であったことが幸いし、市民の手で守ろうという熱い保存運動が盛り上がりました。この運動が効を奏し、斜面林は都市緑地保全地域に指定され、次世代に継承される形で保存されることになりました。そしてこの運動がきっかけとなり自然保護及び緑化推進という目的で、(財)佐倉緑の銀行が設立されたのです。
緑銀は過去にこんな事業を行ってきました(※現在行っていない事業)。

小篠塚谷津での川遊び(2003年8月22日)

 カタクリ植生地の保護管理(佐倉市受託事業)、花と緑の学習会、緑ふれあい祭り※(苗木配布、写真展示など)、花いっぱい運動、緑化用種苗生産※(市受託)、サクラオグルマ(キク科、佐倉固有種)の保護増殖、鷹匠清水ビオトープ活動(2001年〜)など。
 この20年の間に世の中で言うところのいわゆる「緑」も進化してきました。芝生や外来種で緑を確保することから、在来種、埋土種子を生かした緑が見直されて来ました。その地域固有の緑、自然というものに眼が行くようになりました。奥山の原生自然から、人が関わり続けることで維持されてきた谷津環境・里山といった二次的自然・・・と自然の中身も多彩であることがだんだん学ばれて来ました。そして緑の地は野生動物の生息域としても重要であることが認識され、緑の回廊・水と緑のネットワークこそ必要と提唱される時代になってきたのです。
 緑銀はどちらかというと、緑化推進を主として事業展開してきました。緑の認識が変わるにつれ緑銀も変わっていくことで、いつまでも市民に支えられる団体として生き残っていけるのです。しかし、足元をもう一度確かめてみると、取り組むべき重要な事業として第一に掲げてきたのは「野生動植物及びその生息地、優れた斜面林並びに景観地の保護、取得及び活用」(寄附行為第4条第1項)ということだったのです。「今こそ私たちは、ふるさとの自然のすばらしさを自覚するとともに、受益する私たち自ら自然を守り、活用しながら佐倉にふさわしい環境を創造するため設立する」と設立趣意書に高らかにうたった心意気を、私たち佐倉市民はすっかり忘れていました。時代の要求と掲げていることが合致、緑銀は第一の重要な事業を推進する地点に立っています。
 しかしながらここに財政的な弱点が存在することをお知らせしておかねばなりません。基金4億円に対し、たかだか4年前には400万円も受け取ることができた利息も、今期はわずか50万円。理事は一切報酬なし。それでも財政報告等書類を整え、事務所も民家を借用、一般管理費150万円はかかります。つまり何もしなくても毎年100万ずつの赤字という苦しい台所事情、現在は積立金を取り崩して対応しています。
潤沢な予算がなくなった今、かえってわが身を振り返るチャンスととらえています。市内で活躍するグループの活動を側面からサポートし、野生動植物及びその生息地の保護、優れた斜面林の保護が進むよう、少しでもお役に立ちたいと考えています。どうかご支援ください。


キャンドルナイト「でんきを消して、スローな夜を」

千葉市稲毛区 星野 智子 

 合言葉は「でんきを消して、スローな夜を」。キャンドルナイトとは、みんなで電気を消して、キャンドルを灯そうという、NGO発の自主消灯ムーブメントです。地球温暖化防止・スローな生活提案など、いろいろな地球に対する思いが集まって、2003年の夏至から日本全国に広がりました。
http://www.candle-night.org
千葉でもイベントをしようと、千葉市稲毛で6月21日に、キャンドル作りとキャンドルナイトパーティを企画しました。今回はキャンドルの素材にこだわり、ミツバチの巣から採れるミツロウで作られる蜜ろうそくを、山形県朝日町から取り寄せました。エコミュージアムや、リサイクルキャンドル作りなど環境教育にも熱心なミツバチの森の安藤さんの手作りミツロウです。17時から子どもたちが集まってきて、キャンドルつくりをはじめました。ミツロウを湯せんにかけて溶かし、ろうそくの芯を何度もつけて太らせるディップ方式で作りました。温かいうちにカタチをつけたり、葉っぱで飾ったりします。自分だけのキャンドルにみんな思いを込めて楽しそうでした。夜にはオーガニックな食材・野菜を中心に持ち寄った料理を並べてパーティをしました。屋外で風があったために食事をしてからキャンドルサービスの時間を設けました。夜には20人を超える人が集まり、みんなそれぞれおしゃべりを楽しみました。ゆっくりと、豊かな時間を仲間と楽しむ。普段の環境活動にとっていい栄養補給になったと思います。
地球温暖化防止活動というとカタいイメージがありますが、お風呂の電気を消して、代わりにキャンドルを灯したり、夕食もたまにはキャンドルや間接照明だけで楽しんでみるのも雰囲気が変わります。
キャンドルナイトイベントは夏至と冬至と両方行われますので、次回12月のイベントにみなさんも参加してみてください。大きなイベントである必要はありません。友人や家族と過ごすスローな夜を楽しみながら、地球のことやライフスタイルのことをおしゃべりしてみてはいかがでしょう。


今の地球には、このマンガが必要だ

千葉市稲毛区 中村 彰宏 

 僕はつい先日、1冊のマンガに出合いました。それは、ちば環境情報センターの会員の環境漫画家つやまあきひこさんが描かれた環境マンガ「マジンジラ」です。
「マジンジラ」とは、スワヒリ語で「環境」を示す言葉。物語の主人公の小学生の男の子が、世界の旅を通じて自然界の「命の輪」に触れ、考え、行動していく。そんな彼の姿が、僕たちにかけがえのない想いを伝えてくれているようなマンガです。
僕が19歳の頃から6年間、環境活動してきた中で、「環境の事を、関心が無い人にも広く伝える事」は常に悩むテーマでした。そんな中で、子どもも大人にも分かりやすく、環境に関心が無い人も楽しみながら学ぶ事が出来るこの「マジンジラ」に出合った事は、衝撃でした。
これからいろんな人に繋がっていくでしょうこの作品は、これからの環境活動にとって大きな力となってくれる事でしょう。間違いないっ!
<原作:ラディック鯨井,画:つやまあきひこ,
発行(株)ソニー・マガジンズ/1600円(税抜)>

マジンジラ掲載の田んぼの食物連鎖についての解説


事務局よりお知らせ   −−臨時総会報告ーーー

 2004年7月10日に行われた特定非営利活動法人ちば環境情報センター臨時総会で、以下とおり代表および運営委17名と監事1名が選出・承認されました。任期は2006年6月30日までです。
これからも千葉県を中心とした環境活動情報の収集発信,環境学習,環境保全活動など、会の運営に全力を尽くす所存でおりますので、今後とも皆様のご協力をよろしくお願い致します。

役割 ※(新)は新任     
特定非営利活動法人ちば環境情報センター代表 小西由希子
同    運営委員 赤井裕,伊原香奈子,瓜生達哉,長正子,小西朝希子,佐々木典子,
高山邦明,田中正彦,中村彰宏,平田和博,福満美代子,古川美之,
松尾昌泰,南川忠男,宮川沙弥香,柳沼薫,萩原真紀(新)
同    監  事 青木清(新)

編集後記:暑い暑い夏です。市原市牛久では40.2℃というすさまじい気温を記録しました。家にいると、ついエアコンを入れてしまい、温暖化に一役かってしまうことになります。そんなときは谷津田に行きましょう。田んぼを抜ける風は2〜3℃は低く気持ちいいですよ。暑さのおかげで今年は豊作になりそうです。  mud-skipper