ちば環境情報センター
2005. 2. 7発行    ニュースレター第91号
代表:小西由希子

目次
  1. 楢葉の白鳥現象とは  
  2. 古紙リサイクルについて
  3. 環境意識調査アンケート中間報告
  4. 「ショクドーと下大和田」       
  5. エコマインド養成講座2004年「活動の体験記」

楢葉の白鳥現象とは

東京都文京区 荒尾 稔

 福島県の浜通り、楢葉町にたまたま調査に行った折、小さな堤に600羽以上の白鳥が越冬していました。聞くと1日、この堤にいて、1日2回の餌を待ってのんびりしていると聞きました。餌付けは町役場が、○○補修費(?)の名目で予算化し、選任の職員が米を主体に餌を撒いていました。見学者は殆ど来ません。実は、福島県だけで1万羽近い白鳥群が、60ヶ所ほどで越冬しています。福島県下では、餌や人件費で年間2億円を軽く超している模様ときいています。

そこではっとしました。白鳥が人間を利用しすぎて、白鳥固有の生き方を失った状態だと、思わず気が付きました。千葉県でも本埜村の白鳥群がよく似た状態だとも。この過重な餌付けによる、生き物の自立喪失は、戦後の日本の文化の反映ではないかとも考えています。私はこの状況を「楢葉の白鳥」現象と呼び、問題を指摘してきました。
まず、日本に渡来する白鳥群は極めて頭が良く、人間を徹底的に利用している生き物であると認識して下さい。ペットで言うと、猫では無く犬に近い。寿命は野生状態では平均10年程度、しかし餌付けされた個体群では18年〜20年と言われています。餌付けされた白鳥群では、野生群と比較しても、繁殖率は異常に高く、千葉県本埜村の個体群も、いまやネズミ算的な増え方に入っていると見ています。
餌付けは日本では戦後、それも最近の風潮です。戦前は鴨場のごとく狩猟の目的のため等以外での餌付けはされていなかったと思います。
まず、餌付けされた白鳥の親は、シベリアに北帰繁殖し、夏の終わり頃、ようやく飛べるようになった幼鳥を引き連れて、10月15日〜20日頃、越冬地まで一気に南下飛来します。本来、白鳥は日本での越冬地での半年間、幼鳥に餌のある場所,餌の取り方,食べられるもの,駄目なもの,タヌキや鷲、犬等からの危険の避け方,仲間との付き合い方などを、付きっきりで教育します。また、親になれるまで3年間、家族群として毎年、親と行動を共にすると言われ、しっかりと親の行動を見ているといわれています。また、半年後北帰するまでには幼鳥は越冬地を故郷としてしっかりと認知します。
ところが餌付けされた親は、生きる手段を人に託し、1日中越冬地に留まります。子どもに何も教えません。1日2回の餌を待って、寝たり起きたりの生活です。俗に言う3食昼寝付きの生活で、栄養満点、体力抜群。おいしいものしか食べなくなります。当然、そのような親の幼鳥は、餌の取り方も、餌場も、本来の危険さえも経験しないまま、4年目には親となって幼鳥を同行してきます。何も知らないままに親になった白鳥は、当然、親と同じで、人に命を託します。子ども達に何も教えられません。原体験がないからです。
問題はここです。人間を徹底的に利用しすぎて、白鳥の本来の生活者としての生き方を無くした、白鳥文化を台無しにしてしまった状態と言って良いと思います。人のペットの犬と同じくらいで、ライフサイクルが人の3倍早く、それ故に、私も親子3世代以上での観察で「楢葉の白鳥現象」に気が付きました。
日本の子ども達の実情を見ていると、餌付けされた白鳥群は、いまの学校の先生や、教わる生徒達と重なりませんか。日本の文化喪失の実態、生き方の原体験の不足、日本文化への関心の薄さなど、日本の今の社会現象の中に「楢葉の白鳥」現象が随所に見られます。問題の本質はここにあると思っています。
今年5月開催予定の「第2回里山シンポジウム」の実行委員会では、私どもの情報の発信先たる中心を、「子ども達の親の世代へ向かって、絞り込んで行こう」ということになりました。サブテーマ「里山と子ども−親に継承える(つたえる)昔体験−」へとつながる話しだと考えています。
でも、この現象にも宮城県や山形県、新潟県では、すでに人との共生の定着のなかで、自然に解消が進んでいます。白鳥にとっては、一時的な現象といっても良さそうだと分かってきました。正直、ホットしています。それは人の自立した生き方への重大なヒントを与えてくれています。


古紙リサイクルについて

千葉市稲毛区 深山 貴道 

 古紙のリサイクルが注目され、自治体が中心となって資源化を進めるようになってかれこれ10数年。現在、古紙リサイクル率は回収率68%利用率60%を記録しています。さて古紙リサイクルの現状を皆さんはどのように感じていますか?
皆さんご存知のように紙の原料は木です。パルプがなければ良質な紙を作ることは出来ません。しかし森林資源には限りがあります。
1990年代、世界の森林面積は約9,400万ヘクタールが失われたそうです。その広さはナント日本の本州4つ分!!そして砂漠化も加速しており砂漠化の影響を受けている土地の面積は全陸地の約4分の1、耕作可能な乾燥地域の約70%に当る約36億ヘクタールに達し、約9億人の人々が影響を受けていると言われています。そして、今も尚それは加速しているのです。
 そう考えてみると古紙のリサイクルは唯の地域活動に留まりません。地球環境の保全にも役立つ有意義な活動になります。また、家庭・事業所から排出されるゴミは自治体により焼却処分されることが多いのですが、そこに占められる紙の量は30%を超えています。これをリサイクルすることが出来れば焼却によるCO2の削減、税金の節約にも繋がり一石二鳥にも三鳥にもなります。
 人は一度享受した利便性を捨てることは出来ないと僕は思っています。本好きの僕にとって紙もまた捨てられない物の一つです。紙が歴史に登場する前、記録媒体は木であったり竹だったりしました。「青史に名を刻む」って言うでしょう。1冊の小説が竹に書いてあったら・・・電車に持ち込みは無理ですね。そう考えれば「紙」は世紀の大発明だったと僕は思うのですが、どちらにしても「木」が必要。かといって、「紙」の原料として木が丸ごと使われることはありません。

 中心部分は当然建材などに使われ、パルプの原料はその他の余りの部分になります。そういう意味では無駄なく使っていると思うのですが・・・。
小説はPCで読め!とかトイレはウォシュレットだ!とか、そういった意見もあるでしょうが、人が生きていく限りどこかに影響を及ぼします。ダメと簡単に否定するのではなく、どう有効に使うか?が重要なんだと僕は思います。
そして木を切るのなら出来る限り少なく、そして可能な限り自然環境を守りながら・・・それが絶対条件です。何より大事なのは何度もリサイクルすること・・・これが重要です。紙は繊維ですから寿命があり、数回のリサイクルにしか耐えられませんが古紙は資源回収に出しましょう!
さて、ここからは古紙リサイクルの現状について書きたいと思います。まず、古紙の流通について。消費者から排出された古紙は「古紙回収業者」等によって回収され「古紙問屋」に納入されます。問屋は回収業者から古紙を買い、選別・プレスします。そして、用途に応じて「製紙メーカー(洋紙メーカー・家庭紙メーカー等)」に販売します。そして製品に生まれ変わって消費者である私たちのもとへ。簡単に言うとこんな流れになっています。
昨今はマスコミに取り上げられることもある「古紙」ですがマスコミが言うように古紙業界は果たして好調なのでしょうか?
2005年1月6日現在、日経新聞での古紙価格は問屋卸値で新聞5円,雑誌3円,段ボール3.5〜4円となっています。古紙輸出の好調に支えられて、この2年間古紙価格は高騰したと言われ、古紙抜取りに対する条例の施行などマスコミに取り上げられることも珍しくありません。さて、皆さん!新聞古紙1円,雑誌0円,段ボール0.5円の数年前に比べれば確かに価格は回復しました。しかし、この金額で果たして高騰していると言えるのでしょうか?確かに一時的に新聞10円段ボール7円という時期もありました。・・・わずか3ヶ月足らずでしたが。
昭和55年、当時の通産省は新聞古紙の適正価格として製紙メーカー大手に対してメーカー着35円〜40円が妥当だと告げています。古紙価格は昭和57年には低迷し、昭和56年12月の新聞古紙価格が13円。平成9年には底を見ることになりました。凡そ20年間下がりっぱなしだった古紙価格が若干上がったからと言って価格が回復、或いは高騰しているとは口が裂けても僕には言えません。また、想像してみて下さい。10kgの束を100回トラックに積んでも最大5,000円にしかならないのです。かなりの重労働だと思いませんか?
平成に入り回収量が一気に増加し、古紙価格は暴落しました。これは何故でしょう?逆説的な話になってしまいますが古紙はもともと民間主導でリサイクルされていました。しかし、行政にはリサイクルを推進させるべきある意味義務が生じ、それが回収量の増大に繋がったのだと思っています。
古紙業界では古紙市況バランスを回収量の調節によって行ってきました。しかしリサイクルという大前提の前に需給調節の為に回収量を抑えるという手段は取れず、国内需給バランスの崩壊を招き、それが古紙価格の暴落を招いたと思っています。
さて、平成9年雑誌は逆有償(逆にお金を取られるってことです)になり回収業者は一部の地域で回収を拒否するようになりました。これは前言のように古紙の需給バランスが崩壊したことが最大の要因だったと思います。東京都が打ち出した東京ルール1によって回収量は一気に増大、関東圏の古紙は完全に供給過剰に陥り結果として集団回収等を行っていた地区では業者は問屋にお金を払って卸す。また問屋は売れない古紙の為に在庫オーバーに陥り、お金を払って輸出するという普通なら考えられない手段を用いて苦しい時期を凌いだのです。普通の商売じゃありません。
ここに至って業界は本当にギリギリの状態に追い込まれ東京に業界関係者や市民の皆さんが全国から約1,000人集まってデモを行いました。僕なんかは「若い」という理由だけで先頭に立たされたりしたものですが、その時、社会の反応は?
・・・限りなく0ですから〜!!残念!!←斬ってる場合じゃないです。
この数年、中国を始めとするアジア各国への輸出が盛んになり古紙は国際商品化しました。大手製紙メーカーは増収増益を続けています。M&A、リストラを敢行するだけでなく中国への投資や国内工場への設備投資を行うなど努力を重ねています。しかしその一方で原料たる古紙は当然低価格で購入することになります。商品自体が安価なので仕方ないとも言えますが動脈産業は好調でも回収・選別梱包を担当する静脈産業たるリサイクル業界はここまで書いたとおりの体たらくです。また、例え好調と言っても古紙発生量のたかが10%強の輸出に支えられる好景気などありえないのです。早晩、輸出価格は国内と同額或いはそれ以下になると思っています。品目によっては既にそうなっていますから。
しかし、だからと言ってここで古紙リサイクルを止めることは出来ません。今まで以上にリサイクルを推進し限りある資源を有効利用しなければなりません。その為にはリサイクル活動が地域と密着し、経済的に自立できるシステムが必要なのだと僕は思います。
世界は加速度を増しながら変化しており中国も急ピッチで資源循環システムを構築中です。いずれ古紙回収リサイクルも出来るようになるでしょう。その時、日本の古紙はどこに行くのでしょうか? 古紙リサイクルはこれから本当の正念場を迎えるのです。


環境意識調査アンケート中間報告

 先月号でお伝えした「千葉市内商店街に対する環境意識調査アンケート」の中間報告です。
発送後2週間で19通の回答を頂きました。71商店街に発送しましたので現在26%の回答率です。ご協力いただいた商店街の皆様にまずは感謝申し上げます。
皆さんは商店街のイメージをどのように感じていますか?僕は八百屋さんとかお肉屋さんのイメージが強いのです。商店の内訳を見てみますと意外に食料品店が少ないのですね。その他が過半数近くあることから問題作成に際して勉強不足だったことが露呈してしまいました。深く反省すべき点です。
さて、有効回答の半数の商店街で月1回は会議を行っているようです。フリーマーケット,地域の祭り参加,ラッキースタンプ,大道芸,音楽祭,ダンスコンテスト,クリスマスイルミネーションなど。こういったイベントを支えるもとになっているのでしょう。
僕は某商店街のフリマにはよく行ったりするのですが皆さんいかがですか?マイバック、その他環境に配慮した取組みという点では残念ながら取り組んでいない商店街の方が多いようです。ご担当される方がいないということもあるでしょうが環境問題に意識を持っても実践に移すには課題が多くあることがよくわかります。千葉市が策定した「ちばルール」も浸透しているとはまだまだ言えません。「今日の景気及び先行き不安の中ではリスク的投資は出来ない。じっと耐える時だと思う。」こんなご意見がありました。「不景気は脱した」と国民に豪語している方がいらっしゃいますがどこを見てるんでしょうね?
また、「大型店同士の戦いの中、路面店が生きていくのは厳しく空店舗を学生やお年寄りの団欒の場、子供たちへの遊び場にしたいが協力を取り付けるのが難しく苦戦中」とのご意見もありました。こういった取組みが多く成功すれば地域の活性化に繋がり防犯対策等にも繋がっていくと考えるのは僕だけでしょうか?4月には正式な報告ができると思います。(文責:深山 貴道)


「ショクドーと下大和田」

千葉大学園芸学部 四街道市 橋本 早苗 

 私の所属している千葉大学植物同好会(略してショクドー)は、名前のとおり植物が好きな人達のサークルです。
歩く野山植物図鑑のような人、ラン博士、食虫植物が大好きな人などマニアックな人がいるのはもちろんですが、私のようにただ緑が好きなだけでも、入ってから沢山学んでいけます。ユニーク(珍)な人ばかりの面白いサークルです。
 昨年の5月よりこの植物同好会でマイ田んぼをやらせてもらっています。黒米の田植えから7,8,9月の草取りを仲間とやってきました。また毎月の自然観察にも参加して、谷津田の生き物や植物を知ることができました。先日の収穫祭では焼き芋づくり!大学から最高の参加人数12人を記録しました。みんな谷津田のなかでのびのび楽しんでいるのが伝わってきました。私はなんだかとても嬉しい気持ちになりました。
 植物同好会のメンバーは特別かもしれませんが、きっと予想以上の人達が自然に惹きつけられる心を持っているのではないかと感じます。ただ、自然に触れ合う機会が少ないが為に、その心に気がつかないで日々過ごしているのではないだろうか?と思うようになりました。多くの人に身近な自然をもっと感じてもらいたいですね。
 下大和田での田んぼ活動は私達にとって大変ありがたいものです。自然豊かな谷津田の中で、あたたかいスタッフに助けられながら、一年間の米づくりに関われるなんて!!また、地域のやNPOの方がたと学生が世代をこえた関係を築いていける場でもあります。お互いをつうじて新しく知ることが沢山あると思います。この先、下大和田で何かアクションを起こしたいと考えています。谷津田の好さをさらに広めていけたらと思います。これからもどうぞ宜しく、一緒に楽しみましょう。


エコマインド養成講座2004年「活動の体験記」

土・日コース受講生 佐倉市 田渕 克彦   

 私は、本年度の「エコマインド養成講座」(千葉県環境財団主催)受講生となり、講座プログラムの一環とされる「活動の体験(8月〜12月)」実施の派遣先として、希望通り当センターに受入れて頂き、8月6日,10月6日,12月6日の3回、ちば環境情報センター事務所での活動に参加させていただきました。
この間、月に一度のニュースレター発行のお手伝いを主としたセンター活動を実体験させて頂く中で、「活動の体験」に当たっての自身としての所期の目的(同センターの活動を知り、取り組む方々との面識を得、自身の活動基盤作りの一助とする)も果たすことができ、12月15日の講座最終回(講座終了後のアクションプラン発表)をもってつつがなく受講を満了し、堂本知事の署名による受講終了証を手にすることができました。
 この場をお借りして、暖かいご指導・ご協力を頂きましたちば環境情報センター関係各位に、心よりお礼申しあげます。本当にありがとうございました。
 今後は、講座での成果・経験を生かしてセンター会員(11月6日に入会させていただきました)の一員として活動に参画させていただくとともに、自身のコミュニティでの環境学習支援活動を展開してまいります。どうぞ、皆様のご支援・ご協力をよろしくお願い致します。


編集後記:1月15日、都川遊水地のニホンリス生息状況調査に同行しました。ここは旧河道沿いに7本のオニグルミが生え、5年前にはリスが実を食べた痕跡がありました。今回、残念ながらリスが生息する証拠は得られませんでしたが、アカマツの混在する斜面林の衰退が一因では、と専門家の指摘を受けました。  mud-skippe