ちば環境情報センター ニュースレター第112号

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2006. 11.6 発行    代表:小西 由希子

目 次

  1. 「生物多様性ちば県戦略」に結集して下さい!
  2. 環境漫画講座が実施されました
  3. 第4回 こども環境講座報告
  4. 若いって、すばらしい!

「生物多様性ちば県戦略」に結集して下さい!

千葉県立中央博物館副館長 中村 俊彦 

 世界で最も豊かな千葉の自然と3万年以上の人々の知恵と工夫が凝らされた素晴らしい文化,そして、そのなかで人々の心と身体を育んだ生物・生命(いのち)のにぎわいとつながり、これをしっかりと守り、子ども達や将来の人々に伝えたい。これは偽らざる私の気持ちです。子どものころの千葉の里やま・谷津田や東京湾の干潟での楽しかった生命とのふれ合いの数々が今の私をつくってくれました。

 しかしながら私が子どもの時から、自然は年々壊され、遊び学んだ里山海の地は開発のため、ビルの建ち並ぶ団地や息苦しい工場地帯になってしまいました。「開発は社会の発達のために仕方ないこと」、子どものときのこの思いも、しだいにその多くは将来を思考しない人間のわがまま行為なこともわかって来ました。将来を食いつぶす自然破壊を止めるために頑張って来たつもりですが、金と権力のプロ集団が操縦する「開発」と言う重戦車と、郷土を愛するわずかな市民の水鉄砲との戦いでは、負け戦の山が築かれるばかりでした。それでも戦い勝たねばならない。突進してくる戦車に対し、水鉄砲で勝つための「戦略」があれば!私はずっとそう思ってきました。
 数ヶ月前、「生物多様性のちば県戦略をつくろう!」、堂本知事から誘いをいただき、私はこの9月から県庁の自然保護課におかれた「生物多様性グループ」の一員として仕事をはじめました。
 生物多様性については、1992年のブラジルの地球サミットで「生物多様性条約」が採択され、日本は1993年に加盟、1995年には「生物多様性国家戦略」が策定されました。2002年には「新・生物多様性国家戦略」が完成、今は更なる充実のための改訂作業が環境省で始まっています。しかし、地域レベルの生物多様性戦略はまだありません。
 堂本知事は、地球サミットのまえから生物多様性保全のための活動を日本の代表のひとりとしても携わって来られました。生物多様性のちば県戦略の第一回専門委員会が先日おこなわれましたが、その冒頭挨拶のなかで知事は「遅くなってしまったが、今から至急、生物多様性のちば県戦略を県民の皆さんとともにまとめ上げたい。そして一刻も早く、実行していきたい」と熱い思いを述べられました。
「(仮称)生物多様性ちば県戦略」は来年3月までに原案を作成し、6月には完成させる予定です。短期間での大変ハードな日程ですが、まず科学的,専門的立場で戦略策定に携わる専門委員会が発足しました。委員長の大澤雅彦東京大学教授,副委員長の原慶太郎 東京情報大学教授をはじめ私も含め8名の委員構成で月1回、公開で開催されます。その一方、県民の方々からの意見をしっかり反映させるためのタウンミーティングを県内各地で開催していきます。このタウンミーティングは千葉県環境基本計画の見直しも兼ねながらの実施で、その企画・運営は、関心ある個人・団体の方々に実行委員会を組織して頂き、実施していくものです。さらに、県行政・研究機関等の連絡調整の組織も立ち上げなければなりません。
生物多様性のちば県戦略は「人・自然・文化が調和・共存する未来のための設計図」と考えています。多様性の概念は、個を尊重し大切にすることでもあります。この設計図では、私たちの食料・エネルギーや健全な生態系の保全・再生の具体策とともに、人の心を支える多様な生命(いのち)を守り育むための対策も盛り込まなければなりません。
 どんなに立派な設計図でも、これを現実にしていく体制が取れなければ絵に描いた餅になってしまいます。したがって、この実施体制の設計図には、行政,市民・NPO,研究者それぞれの責任と役割、さらには地域の市町村と県や国との分担や相互連携の方策もはっきりさせなければならないと思います。
経済中心で強者が弱者を駆逐する現代社会のパラダイムから脱却し、多くの生命とともに真に助け合う仕組みとしての社会が構築できるか、そのカギを、握るのは、まさに社会の現場と公共をになう市民・NPOそれぞれの未来に向けての熱い思いと実行力です。生命が満ち満ちる豊かなふる里千葉のためにも、皆さんのこれまでの活動の成果とその力を、是非とも生物多様性のちば県戦略づくりとその根っ子でもある千葉県環境基本計画の見直しに結集させて頂きたいとおもいます。

環境漫画講座が実施されました

 千葉県NPOによる公募型環境学習「里山で描く生き物漫画体験学習」(主催:千葉県,企画・指導:NPO法人ちば環境情報センター)が、2006年9月3日と10月1日に千葉市緑区下大和田の谷津田で実施されました。
 この講座は、生きものに詳しい網代春男氏に谷津田を案内していただいた後、発見したことを題材に環境漫画家の  つやまあきひこ氏の指導で4コマ漫画を描くというものです。参加者たちはいつもとはちょっと違った視点から谷津田と生き物を観察し、環境への思いを込めて絵を描きました。
参加した2名の小学生から感想が寄せられましたので、掲載いたします。


大椎小学校4年 千葉市緑区 木山 慧 
 前期後半に入った9月3日、ぼくは、また下大和田の谷津田に行った。今日は、「朝日小学生新聞」で連さいしていた、「里山どんぐり」の作者、つやまあきひこ先生がお見えになり、いっしょに漫画を描くというもよおしが行われた。つやま先生の自己しょうかいや注意事項をそこそこに、漫画の題材さがしに出かけた。田んぼにはテープとかかしがいっぱいあった。しばらく歩いていくと、オオカマキリのメスがいた。つかまえようと背中を持つと、おもいっきり前足で指をはさまれた。

網代さんの案内で、谷津田の生きもの観察 4コマ環境漫画作品発表

 「いったー!!!」。絶叫するぼくのとなりでスタッフの一人が、「前足の後ろを持つと、はさまれないですむよ。」と教えてくれた。ぼくはその言葉にしたがって、前足の後ろを持ってつかまえる。―なるほど、たしかにそこを持つと前足ではさまれる心配もない―(信用できない人は、実さいにやってみてください。はさまれたとしても、ぼくは責にんとりませんからね。)
 カマキリを虫かごの中に入れる。(この虫かごはほかの人のだ。)そしてまた歩き始める。歩いていると中、いきなりなにかが目の前を横ぎった。オニヤンマのメスだ。オニヤンマは水面におしりをちょっとつけると、また飛んでいった。たまごを産んだのだろう(す速い…)。オニヤンマを見送ってまたまた歩く。
今度はコバネイナゴを見つけた。イナゴは、イネを食べてしまう害虫だ(スズメ防止のテープやかかしがあるけどイナゴ防止にすることはできないって農家のおじさん達は気付いているのかな?)。イナゴをつかまえようとしたけど、なかなかつかまらない。いさぎよくあきらめ、次の場所へ進む。次の場所は、だだっ広い広場だった。奥に入ると、バッタがうじゃうじゃはねている。あと、エンマコオロギのメスで、産らん管が折れているのを見つけた。ほかにミイデラゴミムシも見つけた。
 ぞう木林にもどって漫画を書き始める。そしてしばらくしておべんとうを食べる。そしてまた書き始める。しばらく静な時間が続いた。あと最後に、記念写真をとり、参加しょうをもらった。(ふー…)
 この日ぼくは、たくさんの生き物にあった。ここは、とても楽しいから、また遊びに来たいと思った。


あすみが丘小学校5年 川上 遙加 
 私がマンガ講座と聞いて、最初に思ったのは、「どうして自然とマンガに関係があるのだろう?」ということです。私の考えるマンガとは、自分で考えた架空の生物(キャラクター)を使うので、自然とは関係はないと思ったからです。
 でも行ってみると、自然をネタにしてマンガをかくと言われて、やってみると、いがいにスラスラかけて、とてもたのしかったです。私がネタにしたのは、クモとヘビです。キケン、というかきもちわるい生物ですが、マンガはそういうものをつかった方がおもしろいのでそれにしました。内容は、クモに虫をあげてあそんでいるのと、ヘビに追われているカービィのマンガです。自然をつかってマンガをかいたのは、初めてだったので、とてもたのしかったです。またやりたいな、と思いました。

第4回 こども環境講座報告

大網白里町 平沼 勝男 

 2006年10月7日、まるで台風のような強い低気圧が過ぎ去った秋空の下、千葉市昭和の森ユースホステルにおいて、ちば環境情報センター,ちば・谷津田フォーラム共催による、こども環境講座が開催されました(千葉市教育委員会後援)。
 今回ですでに4回目となったこの講座。23名の子供たちが集まり、今まで同様熱のこもった講座となりました。迎えるスタッフはベテランスタッフから初参加のスタッフまで、大学生、専門学校生からご家庭の主婦、そして一般のサラリーマン、教員まで多士済々。今年も充実したスタッフをそろえることが出来ました。

アケビの実を見つけてみんなにっこり 早朝は下夕田池で野鳥観察

 集まった子供たちは、千葉市を中心に、小学校4年生から中学校2年生までの男女の児童。中には去年も参加した児童もありました。講座の内容は、最初にお互いに知らない者同士が早く仲良くなるためのゲーム、アイスブレーキング。簡単なゲームをすることで早く打ち解けあうことが出来ました。
 次に、谷津田探検。グループに分かれ、近くにある小山町の谷津田に出かけ、思い思いに谷津田の探検をしました。もちろんスタッフは危険防止についての配慮は怠りません。子供たちは身近にある豊かな自然を満喫していた様子でした。
 夕食後にはナイトハイク。懐中電灯もつけず、夜の昭和の森の中をグループごとに散策しました。なかには怖い話で盛り上がったグループもありました。ナイトハイクが終わるとお風呂です。このあたりになるとスタッフとはわきあいあいといった感じです。その後、消灯の10時までの間、スタッフとともに遊ぶ昔遊び。これは去年から始まったもので、こま廻し、ベイゴマ、メンコ、将棋が好評です。自由参加ですが昨年同様多くの子がスタッフと楽しく遊びました。昨年もそうでしたがベイゴマが上手な子がいて驚かされます。
 翌朝、6時から早朝散歩。ユースからすぐ近くにある池に行き、双眼鏡を手にしてバードウォッチングをします。朝早いため自由参加ですが毎回ほとんどの子供が参加してくれます。この日は、白鳥,カルガモ,ハシビロガモ,ゴイサギ,アオサギ,シジュウカラなどを見ることが出来ました。
 朝食後は、ネイチャークラフトの開始です。午前の部と午後の部で行います。クラフトの得意なスタッフが多くいる特長を活かして、子供たちに自然の素材を利用した物作りの楽しさを体験してもらうことを目的にしています。竹を小刀で削る箸作り。竹で作るテレカ笛。紙と竹ひごで作る紙トンボ。ジュズダマの実を入れたお手玉。草を折って作る草バッタ。藁縄を使って草鞋(わらじ)作り。枝を切って作るクマさんバッチ。どんぐりがトトロになるどんぐりトトロ。笹で作った弓矢。どれも子供たちには人気で、いくつものクラフトにチャレンジします。クラフトを作る子供たちは真剣そのもの、この姿、親御さんに見せてあげたいです。
 昼食は恒例の野外炊飯。子供たち自身がカレーライスを作ります。調理係りとかまど係りに分かれて担当します。煙と格闘しながら出来上がったカレーライスの味は格別です。
 午後のクラフトで終了です。ふり返りのあと、スタッフ挨拶、記念撮影をして解散となります。そして子供たちを親御さんにお返しします。子供たちに感想を聞くと、全員が来年も参加したいと言ってくれました。

みんな笑顔で記念写真
 スタッフにとって、あっという間に二日間が過ぎ去ります。準備から当日にかけて結構大変ですが、またやりたくなるのがこのこども環境講座の特徴です。子供たちの笑顔がそうさせているようです。また一つ素敵な思い出と出会いができてしまった。そう感じたスタッフは私だけではないと思います。

若いって、すばらしい!

千葉県環境研究センター 小倉 久子 

 2006年3月に、ベトナム(ホーチミン市)に出張しました。目的は、千葉県,国際協力銀行(JBIC)とBridge Asia Japan (BAJ:名前のとおりアジアと日本の「架け橋」となって福祉・環境分野で活躍している団体です)がお互いの得意分野の力を出し合って環境ワークショップを開催するというものでした。
私がきょう書きたかったのは、ベトナムのことよりも、このとき一緒に参加したカオルちゃんのことです。おじさん,おばさんたちに混じってただ1人の若者の参加で、ちょっとかわいそうな気もしましたが、彼女の活躍ぶりには圧倒されっぱなしで、逆にいろいろと考えさせられました。
ホーチミン市に着いた翌朝。さあ活動の始まり!というわけで、ホテルのロビーに集合したのですが、カオルちゃんだけまだ来ません。寝坊したのだろうと、みんなが心配する中、カオルちゃんはなんと、集合時刻ちょうどにホテルの外から入ってきたのです。もうすでに、朝のホーチミンの街を「視察」して来たのでした。その後、ニュースレター(第107号 2006年6月)に書かれた彼女の体験記を読むと、朝どころか到着直後の前の晩にひとりで街に繰り出し、しっかりと観察していたようで、その行動力には脱帽でした。
 ホーチミン市,ハノイ市などの人民委員会の人たちとの意見交換会の場でも、カオルちゃんには感心させられること、しきりでした。
住民の意識向上がテーマになった時、日本側の一般参加者の一人は自分の経験「自分はいかにして環境に目を向けるようになったのか」を、こう話しました。環境教育のキーワードは「知る・考える・行動する」で、第3ステップの「行動」を起こすまでには時間がかかった。行動を起こしてからは、「Ridiculed(嘲笑される)・Neglected(無視される)・Isolated(孤立する)」を乗り越えなければならなかった、と。ご自分の経験から出たその話には、とても説得力があり、同年代の私も共感できました。
 次はカオルちゃんの発言です。彼女は「かっこいいから、私は環境に配慮する」と話したのです。日本では環境に配慮することは一つのステータスであり、かっこいいという風潮がある。千葉のラジオ局(ベイFM)は手賀沼浄化にお金を使っているというので、若者の人気も上がる。環境に気を使う人は教養レベルも高いから子供の頃にあこがれた、と気負わずに話したのでした。
 「おとな」世代の私たちは分別くさく、どうしてもベキ論を出してしまうのですが、サラッと「かっこいいから」と言ったカオルちゃんのこの発言には、ベトナム側だけでなく「身内」の私たちも大拍手。「良くぞ」というよりも正直なところ、この若さに対して「まいった、おそれいりました」という感じでした。
このようにカオルちゃんは、ベトナムの人々の心にすばらしい日本の若者像をしっかりと刻み込んでくれました。会議の場だけでなく、夜のホーチミンの街をバイクの2人乗りで乗り回したり、子どもたちと汗びっしょりになりながら遊んでくれたり、全身・全力で国際交流をしてくれました。うれしいことに、後でカオルちゃんから、カルチャーショックも含めて、たくさんの出会いなど得るものが多かったと言ってもらえたので、お誘いした私はほっと安心したことでした。
私はこの仕事の続きで、11月20日から今度はハノイ市に出かける予定で、現在準備に追われています。でも、3月のカオルちゃんの大活躍のことなど思い出しながら、今度はどういう出会いがあるのか、とっても楽しみです。帰ってきたら、またご報告させていただきます。 
    <ニュースレター第107号(2006年6月号)のベトナム体験記も、ぜひもう一度お読みください。>

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ニュースレター12月号(第113号)の発送を12月6日(月)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記:北国から初雪や初冠雪の便りが届く季節になりました。あれほどうるさかったアオマツムシの声も消え、朝露に濡れる草々の輝きを見るにつけ、深まっていく秋を感じます。それでもまだ日差しは暖かく、色濃くなったノシメトンボも舞っています。今年は紅葉の当たり年とか。期待したいものです。   mud-skipper