ちば環境情報センター ニュースレター第12号

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1998.7.1 発行    編集責任者:小西由希子

ーー水の復権は慎重にーー

千葉県立中央博物館 林 紀男

近年、生態系への配慮を謳った水辺再生の試みが各地で行なわれるようになりました。
これらの中には、、エコアップによるビオトープ創出などのカタカナ表記され、「生態系への配慮」という錦の御旗を掲げ、正義を振りかざして行なわれている事例の含まれているようです。勿論、外来の言葉をカタカナ表記で受入れる柔軟な対応を揶揄しているのではありません。こうした中に、造園至上主義が垣間見える事例が散見していることを危惧しているのです。換言すれば、人間からの視点のみを重視したご都合主義、人間勝手な景観美追求などがまかり通っている事例に淋しいものを感じるのです。手付かずの原生の自然が最も尊く、人里の自然環境がこれに劣ると考えているわけではありません。
人間も生態系の重要な一員であり、また、一員でしかないことを自覚するといった、自然に対する謙虚な態度が重要であるといいたいのです。

ホタルの里を復活させる試みとしてゲンジボタルを大量に人工繁殖させ放したり、水生生物が豊富な水辺を求めて、トンボを象徴として池整備を行なうなど、自然に眼を向けた活動には意義深いものを見出すことができます。
しかし、養殖されるゲンジボタルや造成時に植栽される水生植物などは、業者が市場で入手したものであることも多く、遠隔地に清掃する個体や株であったり、極端な場合は輸入されたものであったりする現状をご存知でしょうか?
生物の導入にあたっては、その地域に生息している、あるいは、かつて生息していた種を選定するのが一義です。しかし、より一歩踏み込んで、同種であっても地域性にまで配慮した視点を持って頂きたいのです。生物の個性には、遺伝情報としてその地域に生息する個体群に継承され、長期的には進化を遂げます。それを人間が勝手に移動して撹乱させてよいはずがありません。人間本位な生きものの導入は、その場に適応して生活していた生きものにとっては、いい迷惑となります。

生態系の復元を試みる場合、その土地で採取された個体・卵・種苗などを使う配慮が望まれます。地域の人達がこうした価値観を共有し、自分達が苦労して創出・保全した場合は、親近感も一入と考えられます。時間はかかっても、結局こうした努力が地域の潜在力に応じた生態系復権の近道なのです。
私たちの隣人たる水生生物たちから、「余計なお世話は止めてくれ!」と叫ばれないよう、彼ら?彼女ら?のよき理解者たる存在になりたいものです。

環境学習におけるネイチャーゲーム

松山みよ子 

 6月13日「博物館を活用した環境学習に関する日米シンポジウム」が開催されました。今回の会場となった茨城県自然博物館は平成4年11月に開館した,周辺の菅生紹と一体となったミュージアムパーークという新しい形の博物館です。米国からは環境教育を実践している5人方々が来日され,基調講演は,(社)日本ネイチャーゲーム協会の名誉会長であり多くのネイチャーゲームの著者でもある,ジョセフコーネル氏による「効果的な環境教育のあり方について」でした。レイチェル・カーソンの言葉より「知ることよりも感じることの大切さ」についてお話を始めてくれました。
自然をいくつしむ心は感性を豊かにします。そのためには直接体験すること,それによって自然を感じ心と心のつながりが生まれます。ネイチャーゲームは「自然への気づき」をとても大切に育てていま。自然をより深く理解することのできる指導理論「フローラーニング」には,
第1段階 熱意を呼び起こす…遊びの要素にあふれた活発な活動
第2段階 感性を研ぎ澄ます…感受性を高め注意を集中する活動
第3段階 自然を直接体験…自然との一体感を感じる活動
第4段階 感動をわかちあう…理想と共感をわかちあう活動
があり,これらの内容からもそれが受けとめられることと思います。「自然の中にとけこむことで人は安らぎと喜びを受け,それによってより大きいものへの安心感,安堵感に包まれおのずと謙虚になり,命を重んじるようになります。我々は,大きなものの中の一部にすぎない,もっと大きな愛に気づくはずです。」と結ばれました。
ネイティブアメリカンの教えの中にも「仲間の愛の中で育った子は世界に愛を見つける」という言葉があります。環境教育は一人ひとりができることをそれぞれの立場において思い思いの方法で進めればよいのではと思います。私にとっての環境活動は,私の行動できる範囲で自然への気づきや命への感動を次の世代に伝えていくという,未来へのボランティアにほかならないと,改めて思います。

楽しかった幼稚園のこどもたちと自然教室

古川 美之 

 「わ−おもしろい」「もういっかいやってもいい?」「この木にこんな実がついているの−!」こんな元気な声が自然の広場にはあふれていました。
6/24〈水)千葉市若葉区の幼稚園の年長児(5〜6才)を対象にした、自然教室を開きました。フィールドは幼稚園の園庭の奥にある自然の広場。こども40人、おとな40人、ちば環境情報センターからの6人のスタッフで、にぎやかに楽しく自然と遊びました。
まずスタートは「じゃんけんゲーム」で、スタッフと仲よくなり、手や耳を使って歩いてみる「めかくしトレイル」、かくれんぼ探しの「カモフラージュ」などのネイチヤーゲームをやり、その後は「フィールドパターン」で自然の中の宝探しをしました。
「いつもは何気なく遊んでいる広場なのに、手や足で自然を感じることができてたのしい!」「いつも気にしていない木や葉や花にもそれぞれ個性があって生きているんだ」と感じてくれた親子がたくさんいました。
多感なこどもたちが自然にひたって自然に目を向ける機会を持ち、その距離が縮まってくれればその親(おとな)もまた自然や環境を考えることになるでしょう。「花ひとつ葉ひとつにも自分と同じ生命がある」そう感じる心を見つけ、育てることが今一番大切なことだと思うのです。
また次の自然教室の時、こどもたちがきっとわくわくしながら参加してくれることを願っています。

 環境行動実践のためのワークショップ
「あなたもなれるサポーター、わたしもやりたいサポーター」活動報告

田中玉枝 

 1)「関さんの森へいってみよう」結果報告
   企画者:谷口、中村、田中玉枝
   実施日:5月31日(日)10時〜12時
   参加者:17人(こども2人)
実施までの日程
   5/17 下見、打ち合わせ(観察のポイント探し、作業分担、当日の日程など)(書記中村)
   5/20からポスター、チラシ谷口作成)、配布(田中担当)
   ポスター展示場所・‥町会の掲示板、コンビニエンス、図書館、ミニコミ紙発行所(駅は有料とのことでだめでした)
   チラシ配布・‥友人、生協関係など
   ミニコミ紙・・・すまいる
   資料作成(田中担当) 20部用意
   5/31 田中の自宅に電話が2本はいる。いずれも「すまいる」を見たというもの
当日の様子
久しぶりに太陽が顔を出した5月31日、「関さんの森へいってみよう」にご参加の方はこちらです。と書いた紙を手に新松戸の駅で待つこと30分、ポスターやすまいるを見た方、中村さんの友人、谷口一家など15人が集まりました(後で2人増える)。
関さんの家の前で、「関さんの森」について簡単に説明をした後、すぐ隣でおこなわれている宅地開発の状況等を見つつ森に入りました。森の中でどうしてこれに参加したかを一言入れながらの、自己紹介をしました。
初めての方がほとんどだったので、説明役谷口が、森のルール、危険な生物にあったら、から話を始めました。そして森の中を歩きながらエゴの木、ニワトコ、シログモなどを丁寧に楽しく解説してくれました。そして湧水のそばでポスターをみながら水の結晶の話をして、終わりになりました。最後に一言感想を述べてもらいましたが、みんな来てよかった、説明がよかったと喜んでくれました。その後ザリガニ釣りをしたり、梅を買ったりして解散になりました。うれしいことに5人の方が育む会会員になってくれました。
結果と反省
今回は募集までにあまり時間がなく、個人的な呼びかけがほとんどできなかった。ポスターは貼ってくれるところが以外とないことがわかった。ミニコミ紙での呼びかけは効果的であった。掲載が2日前とぎりぎりだったが、近くの人(4人)が来てくれた。もう一週前に載せられれば、もっと集まったと思う。
また感想の中でも多く聞かれたように、谷口さんの解説の仕方が好印象を与えた。ただ植物を説明するのでなく、膨らませる話し方は興味を引きつけるのに効果的だった。これはすぐにだれにでもできるものでなく、「自分のもっている自然を大切にしたい心をどうやってつたえられるか。」これからの課題になりそう。
中村桂子さんの友人のような若い人が、自然に興味をもってくれているのは、とてもうれしい。これからもいろいろなことにどんどん参加してほしい。

「トビハゼを見に行こう会」に参加して

練馬区 光が丘  為貝和弘 

 小一の息子と参加した。江戸川放水路に来たのは20年以上も前になる。行徳駅から御猟場,オオバン池を経て,河口まで歩いたように記憶している。まだヌートリアやメダカなんかが普通に見られた時だった。きょうあの時一緒に歩いた友人に誘われて久しぶりに訪れたが,あまりの変わりように唖然としてしまった。堤防のすぐ近くまで家が建ち並び,今の東京のどこにでもある風景がそこにはあった。
そんな感じで始まったが,干潟にはまだ豊かな生き物たちが変わらずに生きていた。以前に比べたら種類も量もずっと減ってしまったのかもしれないが,20年ぶりに訪れた自分を歓迎してくれるかのように,チゴガニたちも自慢のダンスを見せてくれた。
今の子どもたちは,自然に親しむ機会が少ないとよく言われる。自然が身近にないのだから仕方ないのかもしれないが,親自身が,何が危険で何が危険でないかがわからないので,子どもを自然の中に連れ出せないのだ。そういう意味で,親と子が泥だらけになりながら生き物と接することのできるこういう機会は非常に大切だと思う。今回参加した幼児が,最初は泥に足を取られて「もういやだ,帰る」と泣いていたのがいつの間にか上半身水につかり嬉々としてカニを追いかけていた。来て良かったと思った。
息子も泥に何回もはまりながら,楽しんだようで帰つてから次のような日記を書いた。
・・トビハゼ,アサリ,エビジャコ,スズキ,毒をもつアカエイ,アべハゼ,ヤドカリ。いろいろ見ました。つかみました。ヤドカリはおひっこし中だった。結構大きいヤマトオサガニも見た。他のヤマトオサガニは,白くなって固まっていた。死んでいたのかなあ。脱皮だったのかなと思った。・・なんとなくだけど一日良かった。


編集後記 : 
コモウセンゴケの可憐な花を見ました。今年は夏の訪れが早いのでしょうか。(松山

   蛙なく谷津田に人の動きなし
   ざわめきの学園通り夏めきぬ(マリコ