ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第137号 

2008. 12.8 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 首都圏最後の巨大ダム 八ッ場(やんば)ダムをストップさせよう!
  2. NPOとの交流体験セミナーを受講して学習を終えて
  3. あまり知られていない?お魚の話

首都圏最後の巨大ダム 八ッ場(やんば)ダムをストップさせよう!

佐倉市 入江 晶子 

 11月に入ると、やんばの美しい紅葉が思い起こされます。「関東の耶馬渓」と称される名勝吾妻渓谷(群馬県長野原町)は、日本カモシカやクマタカも生息する貴重な自然の宝庫です。新緑の芽吹く頃、冬枯れの季節と、いつ訪れても四季折々の美しさを見せてくれます。この渓谷の上には中世から続く由緒ある川原湯温泉街があります。これらの景勝地がダムによって沈められようとしているのです…。

◆必要性の失われたダム
今から半世紀もさかのぼる1952年、利根川の支流吾妻川の中流部に八ッ場ダム構想が浮上しました。水没予定地の住民は激しい反対運動を展開しましたが、年月とともに住民は国との闘いに疲れ果て、やむなくダム建設を受け入れることになったのです。このダム計画は、利根川中下流部の洪水被害を軽減すること(治水)、東京、埼玉、千葉、茨城、群馬の1都4県へ水を供給すること(利水)を目的としています。しかし、時代は変わり、ダムの必要性について疑問の声が大きくなっています。その理由は、主に三つあります。


紅葉の吾妻渓谷

@首都圏は水あまり
ここ10年間ほど、首都圏の都市用水の需要は横ばい傾向にあります。今後は首都圏の人口も減少すると予測されているので、これ以上の水源開発は必要ありません。現時点でも水が余っている状態です。
A非現実的な治水計画
一方の治水についても、計画そのものが過大な洪水流量を想定した非現実的な内容となっています。つまりダムをつくらんがための計画なのです。1947年のカスリーン台風の大洪水を想定してつくられていますが、この大洪水は戦時中、山の木の乱伐がもたらしたもの。今では森林が生長し、山の保水力が回復しています。堤防の補強や河川の改修をきちんと進めれば、利根川が氾濫することはありません。
B災害誘発の危険
さらに専門家からは「災害を誘発する危険性がある」と指摘されています。その一つがダム本体の建設予定地の岩盤がきわめて脆弱であること、二つ目にダム湖周辺の地すべりや崩落の危険性です。

◆760億円もの県民負担
これまでダム計画は幾度となく変更され、完成予定は2015年に延長されました。総事業費は周辺整備等の費用も入れると約6千億円にもなり、起債の利息も含めると1兆円にものぼると試算されています。「こんな無駄な事業に巨額の税金を投入するのは許されない」として、2004年秋に首都圏の住民約5千人がいっせいに住民監査請求を行いましたが、千葉県からは「却下・棄却」を言い渡されました。そこで、私たちは千葉地裁に住民訴訟を提起することになったのです。2005年3月の第1回裁判に始まり、この4年間、関係都県の原告団・弁護団と連携し、法廷で闘ってきました。千葉地裁では第16,17回に証人尋問が実現し、結審は年明けになる予定です。

◆今ならまだ間に合う
今年9月には熊本県議会で知事が川辺川ダムに反対の態度表明をし、11月には京都、滋賀、大阪、三重の知事が国に対して大戸川ダムを凍結するように申し入れました。「西の川辺川、東の八ッ場」と言われ、今や無駄な公共事業の象徴となっている八ッ場ダム。いまだに本体工事に着手されていないので、今からでも十分中止できます。同時に長年にわたってダムに翻弄され苦労してきた地元住民の生活再建も大きな課題です。これからも中止に向けて運動の輪を広げていきたいと思います。ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

*詳細を知りたい方は、ぜひ下記のHPをご覧ください。
・八ッ場あしたの会 http://www.yamba-net.org/
・八ッ場ダム訴訟  http://www.yamba.jpn.org/
*次回は、シリーズ2「千葉県にとっての八ッ場ダム問題(仮題)」です。どうぞお楽しみに。
(写真と図は八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会のパンフレットから引用させていただきました)

NPOとの交流体験セミナーを受講して学習を終えて

北総県民センター香取事務所 塚本 遼平 

 現在、私は環境保全に関する業務に勤めています。この仕事を始めて、環境保全は行政による規制だけでは限界がある。住民一人ひとりの心がけがどうしても必要であると感じていました。そこで、自主的に環境保全活動を行っているNPOの現状を知りたいと考え今回の参加を希望しました。
 体験学習1日目、谷津田での脱穀作業、またそこに生息する生物の観察会に参加しました。
体験を行った率直に感じたことは、“楽しい”ということでした。田舎で生まれた自分とって、水田風景や、緑の茂る山林風景は身近なものであると感じていたのですが、そこにあるものを学び,感じ,触れ合うという経験はほとんどなかったと思います。活動に参加していた子供たちともに、自然と遊びながら、作業をお手伝いさせていただき、とても楽しい時間を過ごせたと感じました。
 生物の多様性の保護は、今取り組まなければならない環境保全のひとつです。未来を担う子供たちと、生物の多様性について感じ、学べたという経験は貴重なものであったと思えました。

 体験学習2日目では、ニュースレターの発送作業を行いながら、活動されているみなさんの話を伺わせていただきました。ひとつ強く印象に残ったものがあります。それは、NPO活動を継続していく動機に関することです。
 私はこれまで、NPO活動とは、社会的使命感が原動力となっていると思っていました。実際は、それのみでは精神的負荷が大きくなってしまい、活動を続けることが困難であると伺いました。それ以上に、まず自分が素直にやりたいと思う気持ちが重要であり、そのために、活動を共にする仲間と、情報を交換し、励ましあいながら活動に関するモチベーションを高めあうことが必要であると学びました。自分たちがやりたいことを、できることから始めていく姿勢は環境保全に必要なものだと感じました。
 2日と短い期間でしたが、活動に参加させていただき、環境保全に対して新たに気づくことが多いものとなりました。この経験を生かし、自分の中でも周囲の環境に対して、より広い視野を持って自分なりの環境保全を探してみたいと思います。

あまり知られていない?お魚の話

大網白里町 平沼 勝男 

 皆さんはマクドナルドのフィレオフィッシュをご存知でしょうか。ほとんどの方が一度や二度は食べたことあるのではないかと思います。ではこのフィレオフィッシュ、パンに挟まれた白身フライ(専門的にはパテと呼びます)の魚の正体をご存知でしょうか、そしてこの魚はどこで獲れたもので、どこで加工されたものかわかりますか? 正解は、原料はスケトウダラです。ベーリング海においてアメリカの漁船が獲っています。船上で凍結されたスケトウダラをタイに持ち込み、骨や皮を取り除き、可食部分100%のブロック状に再凍結します。そのブロックを日本国内の工場で加工してパテにしています。

 話は変わりますが、スーパーで売っているサケの切身、良く見かけるのが「チリ産 養殖銀さけ」と表示されているものです。この産地のチリと言う国、南米大陸の南端に近い場所にある細長い国です。地球の反対側にあるといってもいいくらい遠い国であることを意識されたことがあるでしょうか。しかも養殖の魚です。ちなみに、日本には秋サケと呼ばれる天然のサケが毎年9月から12月にかけて、北海道・東北を中心に漁獲されています。最近でこそ「北海道産 生さけ」「岩手県産 生さけ」などと表示され漁獲シーズンにはスーパーの店頭に並びます。しかし、一年を通じて売られ、もっぱら食べられているのは圧倒的に「チリ産 養殖銀さけ」の方なのです。スーパーでの売り場の面積を注意して見ていただくとおわかりいただけると思います。チリから日本に入ってくる銀さけは年間約6〜8万トンといわれています(頭・内臓除去、いわゆるドレスの状態)。それに比べ国内水揚げの秋サケは年間20万トンを越えます。何故わざわざ地球の反対側から養殖のサケを輸入しなければならないのでしょうか。サケが足りないからではありません。なぜなら平成19年でいいますと、日本の秋サケは原料ベースで10万トンもの数量を中国に輸出しているからです。答えは脂の乗りと見かけの良さ(身色の赤さ)にあるようです。日本の消費者は国産の天然の秋サケに比べてこれらに勝るチリ産の養殖銀サケを好むのです。勝る理由は銀サケの養殖池で与える餌の影響であることはいうまでもありません。日本の消費者の好みに合った銀サケをチリの養殖業者が生産しているのです。
では日本の秋サケは中国に向かった後にどうなるのでしょうか。もちろん一部は中国国内で消費されます。しかしその他の多くは骨や皮を丁寧に取り除いた後、アメリカやヨーロッパに再輸出されるのです(一部は日本に戻ってきます)。私は実際に中国の加工工場で日本のサケが加工され、WAILD SLMON FILLETと表示され、アメリカの世界一の量販店ウォールマートへ出荷されているのを見ました。欧米では天然のサケとして人気があるのです。

 すべてではありませんが病院で出される食事や学校給食、一部のお弁当や企業の社員食堂などで出てくる魚の切身にまったく骨がないことはご存知でしょうか。実は私の仕事もこの骨なしの魚を扱っております。当然骨のない魚は世の中にいません。そうです、骨を除去するためにわざわざ中国に原料を持っていき、かの地で骨を取り除いているのです。日本で獲れたサケやサバなどもそのためだけで行って再び日本に帰ってくるのです。

        なぜそのようなことになるのか。魚離れ・魚嫌いの原因のひとつに魚の骨を嫌う人が増えていることが挙げられるからです。なぜ中国で加工するのでしょうか。日本ではコストが高くできないのです。中国は人件費が安くコストがかからない。おまけに設備が整っている、働く女工さんたちも若く仕事の覚えが早い、など優れている面がいっぱいあるのからなのです。

 私は水産業界に従事していますが、多くの矛盾点を感じます。日本近海は世界三大漁場のひとつであることは有名です。事実日本の漁獲量は世界第2位。海外に輸出される量も少なくありません。先に例をあげた秋サケ以外にもサバ、サンマ、スケトウダラなども輸出されています。サバを例に取ると輸出先は東南アジアやアフリカ諸国といった国々です。それらの地域では実際に人々が日本のサバを食べているのです。実はこの輸出されるサバは脂の乗りが悪く、型も小さく日本の市場では値が付かなく安いのです。そういったサバが輸出されるのです。
 
 これまでの例でもおわかりいただけるように、日本国内の消費事情、ちょっと贅沢病が蔓延しているのではないでしょうか。これは経済大国の特権なのでしょうか。もちろん業界側にも責任はあります。もっと消費者に対して事情を説明する機会を設けてこなかった、消費者の選択に対してなんら警告すらできなかった、もっと消費を喚起する方策を取れなかった。古来より日本人はそれぞれの地域において、四季折々さまざまな水産物を利用してきました。魚それぞれにあった調理方法で無駄なく食してきたと思います。いわゆる美味しい食べ方を知っていたのです。そういった伝統的な食べ方や工夫ももはや廃れようとしている現在、脂が乗っている、きれいだからといって、養殖魚が増え、海外から脂の乗りのよい水産品を安易に輸入してきました。しかしここで見えてきたのは食料自給率40%という現実ではないでしょうか。加工品が安価に生産できるから、骨がなくて食べやすいから、使いやすいからといった利便性を追求するあまりに、生産の場を海外に移し、その結果、加工の工程が長くなり、とうとう国境や海も越えてしまいました。それらの食品が我々の食卓に並ぶときに見えてきたのがギョウザ問題であり農薬問題であり数々の偽装問題ではないでしょうか。
 我々は昨今、安全なものを安心して食べたいと強く思うようになりました。しかしそれでも実際には自分たちが毎日食べている食品のことについてどれほどのことを知っているのでしょうか。もう一度自分たちが食べているものについて一人ひとりがよく考えるべき時が来たと思うのです。 

発送お手伝いのお願い

ニュースレター1月号(第138号)の発送を 1月 7日(水)10時から事務所にておこないます。
発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記:12月になりました。恒例の流行語大賞には「グ〜」が選ばれましたが、景気・雇用はては刺殺事件の多発など、世の中よくないことばかりが目につきますね。環境問題も山積するなか、ちば環境情報センターは何をすべきか、しっかり考えていきたいと思います。  mud-skipper