ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第141号 

2009. 4.6 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. おさかなの話  その1.-養殖銀サケ-
  2. 生物多様性と化学物質
  3.  <事務局より>  里山シンポジウムにぜひご参加ください
  4. <事務局より>  下大和田のパンフレットができました
  5.  八千代市立小学校の先生へ出前講座~小学校における地球環境の教え方~

おさかなの話 その1.-養殖銀サケ-

大網白里町 平沼 勝男 

  スーパーで売っている銀サケの切身、皆様おなじみの魚であると思います。この銀サケ、表示にある通り、多くがチリと言う国で養殖されたものです。サケの養殖は日本も含めて世界中でおこなわれています。種類は銀サケの他にアトランティックサーモン、トラウトサーモン、キングサーモンが代表的なものです。いまや世界中で養殖されるサケの生産量は天然のサケの漁獲量よりも多いのです。2005年のデータですが、天然のサケの世界の漁獲量は90万トン弱です。それに対して養殖サケの総生産量は180万トンを超えます。養殖技術の目覚しい発展がその裏にあります。以前の養殖サケは食べても養殖特有の臭いが強く、私などは食べることができませんでした。とくに北欧で養殖されたアトランティックサーモンなどはその際たるものでした。今は技術が進み味も良くなりました。味だけではなく身の色もかなり良くなりました。
 ところで、サケの養殖業者や輸入業者、販売者が持っている必須アイテムがあります。何だと思いますか?実はこれロッシュ社製のサケ用のカラーチャートなのです。一般的にサケは赤身が強い方が喜ばれます。特に日本ではその傾向が強いです。
 このカラーチャートはサケ用なので赤いのですが、これを使って商品の品質、つまり身の色の赤さの尺度にしているのです。私も手元に一つあります。ロッシュという会社はスイスに本社がある有名な製薬会社です。タミフルを生産していることでは有名ですね。実はこの会社、サケの養殖で欠かせないアスタキサンチンという色素成分を製造・販売しているのです。この色素成分を餌と一緒に与えるとサケの身の赤色が強まるのです。ロッシュ社はこのカラーチャートをアスタキサンチンの顧客に提供してくれます。チリの養殖業者は有力な顧客なのです。最近の養殖銀サケは天然の紅サケと比べても見劣りしないほど赤味が強くなりました。その影にはロッシュ社の販売戦略があったのです。

ロッシュ社製のサケ用のカラーチャート   養殖銀ザケ(業務用)

 天然の銀サケは養殖物に比べてはるかに身色は劣ります。脂もそれほど多くはありません。この銀サケ、もともとは北太平洋に生息するサケです。アメリカ・カナダ・ロシアを流れる川を母川として北太平洋を回遊しています。日本ではほとんど水揚げされません。もっと生息域は北なのです。先ほど天然物は脂が乗らないと述べましたが、私が知っているかぎりアラスカのユーコン川の河口付近で漁獲された銀サケは別格でした。脂が乗っているのです。ユーコン川は全長3千キロを越える大河です。サケは産卵のため川を上るのですが、そのためのエネルギーを豊かな北の海でたっぷりと蓄えます、これが脂なのです。養殖物とは違い癖がなく本当にすばらしい脂でした。とても美味しいサケでした。しかし身の色はそれほど赤くありません。
 ところで、アスタキサンチンというものは天然のサケの赤身の成分と同じものです。エビやカニの赤色の成分も同じものです。ですから安心してよいものであるらしいです。皆様どう思われますか。
 最後に抗生物質(合成抗菌剤も含めてます)について一言。抗生物質は養殖の魚に使用が認められているものがあります。ただし、出荷されるとき抗生物質は魚の体内に一切残っていてはいけない、もしくは残留基準値がありそれ以下であることが決められています。養殖サケの輸入時には一部の抗生物質の残留がないことを証明した書類が必要です。ただ、すべての検査をしたわけではなく、(もしそれが必要ならばコスト的・物理的に輸入は無理!)残念ながら完全に安全であるとは言えないのが現状です。ただしそのことは豚肉・鶏肉などにもあてはまることと思います。食の安全とは遠い先の話なのでしょうか。
 皆様、天然の魚を食べましょう。

生物多様性と化学物質

市原市 南川 忠男 

  3月15日に生物多様性車座会議の一環として化学物質から考える生物多様性についてお話させていただく機会がありました。10年前に環境ホルモンが騒がれ下火になったように見えますが、今回の会議の準備で調べたら、その影響は持続しているようです。これまでに生物種の大きな絶滅は五回あり、過去五回の大絶滅の主な原因は地殻変動や火山活動・巨大隕石の衝突などの自然災害でした。現在進行中の大絶滅は人間活動が主な原因となって起きており、その原因の第一は生息地の消滅、第二は化学物質汚染であると考えられております。
 これまで人工化学物質は我々人類に快適で豊かな生活をもたらし、その化学物質の有用性のため大量生産・大量使用・大量消費されてきた。例えば絶縁油としてのPCBや夢の冷媒として開発されたフロン、更には十分な安全確認がされずに農薬としてデビューしたDDTなどは先進国では1971年に製造中止・使用中止になったにもかかわらず、北極圏など高緯度地域の動物にはいまだに高濃度で検出されている。それらの化学物質は商業生産が始められた頃は、その有害性が全くわからず、広範に使われてからカネミ油症やオゾンホールの拡大が認識され、かなりの時間が経過してから生体や自然界での分布が調査され、その有害性の影響が大きく拡大した頃にようやく製造中止になっていった。

 太古の昔の海にはダイオキシンなど合成化学物質はなく、薬物代謝酵素を進化の過程で本来保有する必要がなかったイルカ・シャチなどの海棲哺乳動物は海洋での食物連鎖の頂点に位置することから、都市河川水に近い近海に溶解している残留性の有害化学物質を高濃度に蓄積していることが知られている。普段は大海を回遊しているが、日本近海での迷走や浜辺への打ち上げ現象もこれらの毒物代謝ができずに位置知覚能力阻害の影響であると思われる。
 野生生物に見られる異常はいずれ人間の疾病との関連も明らかになると思われる。人間の体内だけでなく地球全体がこれまで存在しなかった人工化学物質で汚染されています。又、水俣病の悲劇やサリドマイド薬害などの話の中から、妊娠3週から9週の影響を受けやすい時期は臓器・神経系が形成される頃で母体から有害物質が吸収され、化学物質が原因で口蓋裂などの先天異常(現在新生児の1から2%)の全体の1割を占めている。ヒトの多様性を損なう一番は豊かな生活がおくれたのにその様な症状を持って生まれたり、成長して生殖異常を発生させたりすることだと思います。

 有害性がわかってもしばらく使用が放置され、対応がすぐにできないこれまでの化学物質管理のあり方も改善する時期になってきた。
新しい化学物質を合成する場合は人を含めた生態系への蓄積性や難分解性・毒性・安全性が確かめて、予測できない場合は控えめな方針すなわち無害とわかるまでは生産しないという方針が望ましい。人類に豊かさをもたらした現在の化学技術の進歩も製造コスト低減・利益拡大に貢献した裏で生物多様性を損なってきた。
 これらの弊害を防止するため、化学物質の規制としては日本では化審法が1973年に制定され、EUはREACHという化学物質の登録、評価、認可制度を2007年6月に施行しました 透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順と管理手順を用いて、化学物質が人の健康と環境にもたらす影響を最小化することが生物多様性にも貢献するものと信じております。
 ボルネオの熱帯雨林を伐採してできた広大な土地に植えられたアブラヤシからもたらされる安い洗剤より、私は今までどおり高くても良いから原住民の強制移動をさせなくてもよく、オランウータンの生息地を狭めない方を望みます。(写真:田中正彦)

 <事務局より>  里山シンポジウムにぜひご参加ください

 2009年5月17日(日)第6回里山シンポジウム全体会が佐倉市志津コミュニティーセンター行われます。今年のテーマは「里山と食料・水・木材」、里山からの恵みの価値について再評価しようとするものです。
 食料や水、木材は、私たちの暮らしに欠くことができないものであり、これらはすべて里山からの恵みであります。古くから私たちの祖先はこれらの恵みによって生かされてきましたが、それはみな里山に人の手が加わることによってもたらされてきた恩恵であるのです。
 里山の価値は、人間が自然と共生することによって、食料、水、木材に代表される多くの自然の恵みを安定的に引き出すことを可能にした点にあり、里山を通して地域の循環社会が成立していたといえます。

 今回の会場である佐倉市をはじめ、八千代市など県内の多くの市町村では、水道水源として印旛沼だけでなくその多くを地下水に頼っています。こうした自治体では、安価で安全でおいしい地下水を長く使っていくため、その保全に努力しています。千葉県の水がめである印旛沼については、以前から水質悪化が問題になり改善のため多くの人が関心をもってさまざまな活動をおこなってきました。一方で地下水については水源やその循環については、足下にあって目に見えないことなどからあまり多くの人が関心を持たずにきています。里山の保全は、生物多様性や地球温暖化防止の視点からだけでなく、地下水の涵養にも大きな役割を果たしています。私たちの住む千葉県の優れた自己水源を、地域で大切に守っていくことが、今最も重要であり、次世代への責任でもあると考えます。
 里山からの恵みである、食料・水・木材は、これらを賢く活用していくことが保全につながります。パネリストの方々には、これら里山の恵みの現状と活用をお話しいただきたいと思います。「もし、里山がなくなってしまったらどうなるか」「里山を未来に引き継いでいけるようにするにはどうしたらよいか」という視点から発言していただき、会場の参加者と共に里山で得られる地元の資源の価値を再認識し、地元力を見直す、さらに自立した循環の仕組みをつくることが結果的に地域の底力となっていくことを考えていけたらと思います。詳細についてはニュースレター5月号にチラシを同封しますので、ご覧ください。

<事務局より>  下大和田のパンフレットができました

 日頃より、NPO法人ちば環境情報センターの活動にご理解、ご協力をいただきありがとうございます。
 当会では、千葉市緑区下大和田の谷津田・里山保全活動の一環として、2000年2月より毎月第一日曜日に観察会を、2001年4月から米づくりを実施してまいりました。そしてこの間、多くの良き仲間たちと出会い、協力しながら現在に至っています。
 今回私たちのこうした活動を紹介するパンフレットを作成いたしましたので、ニュースレターに同封いたしました。このパンフレットをご覧になって興味を抱かれた方は、ぜひ私たちの活動に参加していただきたいと願っております。どうぞよろしくお願いいたします。

<会費納入のお願い>
 日頃よりNPO法人 ちば環境情報センターの活動にご理解,ご協力いただきありがとうございます。
 新年度を迎え、今年度の会費納入の時期を迎えました。
 2009年度会費の納入がお済みでない方は、同封した振り込み用紙の希望会員区分を○印で囲み、会費(正会員5,000円,普通会員2,000円,賛助会員10,000円/1口)をお振り込み下さい。
 宛名タックシールに会費納入状況が記載されていますのでご確認ください(行き違いの際はご容赦ください)。なお、年度については4月から翌年の3月まで、複数年度の納入歓迎いたします。 
  • 郵便振り込みの場合:郵便振替口座は00130-3-369499  
  • 銀行振り込みの場合:千葉銀行本店 普通 口座番号3627678,
  • 口座名義:特定非営利活動法人 ちば環境情報センター 代表 小西由希子

 八千代市立小学校の先生へ出前講座
~小学校における地球環境の教え方~

     
                            八千代市 松尾 昌泰 

 千葉県地球温暖化防止活動推進センターを経由してストップ地球温暖化千葉推進会議に出前講座の依頼があり、CO2CO2ダイエットの一環として、八千代市立八千代台西小学校にて、2009年1月21日、小学校の先生を対象に出前講座(講師:内山顧問)を行いました。
 先生たちは、同じメンバーで毎月テーマを決めで研究を行っている八千代市教育研究会(総合的な学習部会)で、この出前講座では今まで小学校でおこなってきた出前講座のポイントを紹介しました。
 具体的には、「パワー君(手回し自転車発電機)」を体験していただき、4~6年生用の地球環境の出前講座の例を紹介しながら、「小学校における地球温暖化防止に関する教え方」について説明しました。
 特に、小学生には、「パワー君」を使用することによって、小学生の体力はせいぜい30~60ワット程度(それも数分間だけ)であり、エネルギーの大切さと、電気を使えば使うほど発電所では多くの電気を発電しなければならないこと、したがってより多くの温室効果ガスを出すことを、「自ら体を動かし体感」してもらうことです。
 なお、講座の中で出されたクイズ2題には、先生たちは驚きの声を発していました。
 :「自販機1台のエネルギーは?」→→→:「それは家庭の1軒分」
 :「コンビニのエネルギーは?」 →→→:「それは家庭の51軒分)」

 今後、八千代市の小学校で地球温暖化防止に関する教育がより充実されることと思います。
 

発送お手伝いのお願い

ニュースレター5月号(第142号)の発送を 5月8日(金)10時から事務所にておこないます。
発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: 今年のソメイヨシノの開花は,東京が平年より7日早い3月21日,銚子は平年並みの4月1日でした。その後の冷込みで東京の満開は12日後、千葉市ではまだ5分咲きといったところでしょうか。このところ桜が散ってしまったあとの入学式が当たり前のようでしたが、今年は満開の元で実施できそうですね。 mud-skipper