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ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第209号 

2014.12.8 発行    代表:小西 由希子

目   次  

  1. 路樹レポ-街路樹調査から見えてきたこと その1
  2. 谷津田の生きものが語る」シリーズ10モズの隠された真実-千葉市緑区下大和田在住-
  3. 淡交会・環境セミナー「都市における生物多様性戦略」
  4.  貝のよもやま話 19 -捨てられていた謎の貝-

路樹レポ-街路樹調査から見えてきたこと その1

佐倉市 小西 由希子 

 2012年7月6日発行のニュースレター第180号でご紹介した、市民ネットワーク街路樹プロジェクトの2年間の活動を小冊子「路樹レポ」としてまとめましたので、その一部をご紹介させていただきます。
 街路樹が突然切られてしまったり、強く剪定されて形がいびつになっているなど、皆さんもそんな経験をお持ちではないでしょうか。農薬散布の心配やムクドリへの苦情もあります。新緑や紅葉が美しい一方で、落ち葉の掃除が大変だから切って欲しいという要望も行政には多く寄せられるようです。一方、年々生長するのに、財政難から管理費は十分とはいえません。そんな中、街路樹はどうあるべきか、もっと市民が関わる事はできないのだろうかと考えたのが調査を始めたきっかけでした。

千葉市の街路樹

 

 千葉市の現状ですが、街路樹は道路の付属物とされ、道路管理者である土木部が公園緑地部に管理を委託し、各区の公園緑地事務所ごとに民間事業者が受託作業をしています。市内にある街路樹は47000本、管理費はグラフ1のとおりです。市民からの要望で最も多いのはやはり剪定に関することだそうです。

 

樹種名

本数(本)

 

樹種名

本数(本)

1

マテバシイ

4,307

6

ヤマモモ

2,411

2

イチョウ

4,255

7

クスノキ

2,165

3

ハナミズキ

3,287

8

ナンキンハゼ

2,136

4

ケヤキ

2,787

9

ユリノキ

2,089

5

サクラ類

2,745

10

プラタナス

1,873

街路樹ウォッチング
 次に千葉大学の藤井英二郎先生に同行いただき千葉駅前周辺を歩いて観察しました。街路樹は「地下支柱」で支えられており、アンカー(支持ベルト)や鉄枠が幹に食い込み木を痛めているものが多く見られます。一時期多くの街で使われた後、撤去費用が高く放置され、全国的に問題なのだそうです。
 また、根の発育が阻害されたり無理な剪定で木にストレスがかかり、幹から直接芽が出る胴吹きや、木が弱ってくると木肌がボロボロに剥がれたり、心材腐朽菌によって幹の中に空洞ができることがあるそうです。元気そうに見えていても大風で倒れる危険性があるようです。

 

 剪定は樹木の種類によって適期があり、誤ると枯れる原因になること。また自然な樹型を崩すような剪定をやってはいけないということでした。
 樹木を植える時は、土壌改良をし、下の土壌との攪拌が必要ですが、それが行われていない場合が多いそうで、赤土やコンクリート廃材が混ざっているような土壌では根が十分張らないそうです。根がしっかり張るように、道路の事だけではなく樹木のことも考えることが大切とのこと。たとえ虫が発生しても樹木が健康で環境がよければ鳥が食べてくれるということでした。
 どの自治体も財政難の中、予算削減ありきで進められますが、本来街路樹のあるべき姿から管理を考えて、最低限の費用は確保する必要がある。管理費用のダンピングをさせてはいけないとのことでした。

 さらに、ビル建設の際、公開空地を作ると建ペイ率が上がるため、ビル街の無理な植栽が増えていることも問題だそうです。
 街路樹については、専門家による評価や、市民にその役割や実態を理解してもらう機会が必要で、ホームページで広報したり、ウォッチング企画があるとよいのではとおっしゃっていました。
 街路樹は、管理だけでなく設計が大切。年度を越える際、管理情報の申し送りが必要とのことでした。
 街路樹が現代社会に果たす役割の大きさを思うと、私たちはなおさら樹木の生命力を大事にしていく姿勢が必要だと感じました。
 (次号に続く)
 (「路樹レポ」ご希望の方はご連絡いただければお分けいたします)

谷津田の生きものが語る」シリーズ10
モズの隠された真実-千葉市緑区下大和田在住-

聞き手:大網白里市 平沼 勝男 

 僕たちの名前はモズ。たった2文字の名前。すごいと思わないかい、きっとそれだけ人間にとって昔から身近な存在だったんだよ。さていきなり問題!読者の皆さんは、日本に生息する鳥の中で、他に2文字の鳥の名前を何種類言えるかな?正式な名前(和名)だよ、サギやタカは正式な名前ではないから駄目だよ。答えは最後に言うね。僕たちが住んでいる場所は、開けた野原や農耕地、それに広い公園さ。見晴らしの良い低い草が生えているようなところが好きなのさ。畑仕事や散歩の途中に良く人に見られていると思うよ。僕たちは結構目立つ鳥だしね。でも僕たちのことをよく知らない人が多いと思うんだ、だから教えるね。

 

まずは大きさ、スズメより一回り大きい、くちばしの先から尾までの長さは20センチくらい。尾は長め。ちなみにスズメは14cmくらい。色はお腹がダイダイ色。頭の上から後ろにかけては色の濃いダイダイ。尾と翼は黒色。全体的にはオレンジ色に見えてとてもきれいだよ。メスはオスに比べ少しくすんだ色に見えるかな。オスとメスのもう一つ違いは横から見たとき、閉じた翼の上に白い紋が見えるのがオスさ、メスは無いんだよ。顔はオスメスともに目にサングラスをしているみたいに横に黒い線が走っていることが特徴。これを過眼線というんだよ。とっても愛くるしい姿なんだぜ。四六時中長い尾をクルクル動かしているし。
 ところで「隠された真実」というサブタイトルは気にならないかい。決して大げさではないし、しかもいくつかあるんだ。そのうちの一つ、実は僕たちは小さな猛禽類といわれるくらい狩りが得意な肉食鳥なのさ。得意技は必殺“飛び下り捕食法”さ。杭の上や木の枝の上からじっと獲物を探し、発見したらすぐさま飛び下り、獲物を捕らえるのさ。飛んでいる虫や小鳥も捕らえることもあるよ。よく餌にするのは、バッタ、イナゴ、コオロギ、カマキリ、クモ、トカゲ、ネズミ、ザリガニ、小魚、そして冬の時期には餌が不足するときにはほかの鳥も。スズメ、ホオジロ、アオジなんか捕まえるぜ。あまりにも狩りがうま過ぎて、獲物を見かけると本能的にとびかかって捕まえてしまうこともあるんだ。捕まえた後は木に獲物をひっかけて食べることが多い。実は足の力はそれほど強くないんだ。足で押さえる代わりに木の枝に刺したり、またの部分にひっかけたりしてからくちばしで引き裂くのさ。しかしさっき食べたばかりでお腹がいっぱいのときもあって、その時はひっかけたまま置いておく。これが“モズのはやにえ“と呼ばれていう行動さ。後で食べることもあるし、忘れてそのままになってしまうこともあるからね。

 

 “モズの高鳴き”を知っているかい。秋の代名詞としても有名だよね。僕らは秋の早いうちは縄張り活動を頻繁に行うのさ。これは無用の争いを避けるためなんだ。強く警戒音を出して縄張りの中に入れないようにするのさ。それが高鳴きの正体さ。むやみに縄張りの中に入ってきたら喧嘩になってしまうからね。そういえば人間の世界にも、縄張りの中に美しいサンゴをとりにくるよその国があるらしいね。僕らとあまり変わらないね。
 最後にモズの漢字を知っているかい。百舌とか百舌鳥という漢字を当てはめるんだ。僕たちは実は物真似がとても上手なんだ。たとえばウグイスの「ホーホケキョ」。ホオジロの「一筆啓上奉り候」、コジュケイの「チョット来い、チョット来い、・・・・・・」芸達者だろ。だから百の舌でモズさ。エッ、君のは2枚だって!
 僕たちは、見た目は可愛らしく、実は獰猛、だけど芸達者。すごい鳥だろう。気に入ってくれたかな。あっ、そういえば2文字の鳥の名前の答えは言ってなかったよね。答えはアビ、ウソ、キジ、ケリ、シメ、ツミ、トキ、トビ、バン、そしてモズの計10種類さ。君は何種類言えたかな。
 (参考文献 都市鳥ウォッチング 唐沢孝一著)

淡交会・環境セミナー「都市における生物多様性戦略」

東京都江東区 中瀬 勝義 

 日時 : 平成 26 年 11 月 22 日
 場所 : 東京環境工科専門学校
 主催 : 淡交会, 講師:幸丸政明氏

1.生物多様性の主流化を阻むもの
・生物多様性を主流化することは、愛知目標の第一の テーマなのに、社会における認知度が未だ十分でない 認知度は、2009 年 13%、2012 年 20%と低い。
・温暖化の認知度は高いが、生物多様性は意味が分かり 難く、生物多様性の損失の影響が把握し難い。

2.生物多様性とは何か
・地球誕生は 46 億年前、原始の海に生物が誕生したのが 40 億年前、その後、植物が陸上に進出。動物も陸上生態系の成立。長い時間をかけて生命活動により地球の大気や土壌が形成され、様々な環境の変化に対応して、絶滅と新しい種の誕生を繰り返し、現在の生物世界が出来た。
・「生物多様性」とは、いろいろなタイプの生態系がそれぞれの地域に形成されていること。 種の多様性とは、いろいろな動物・植物や菌類、バクテリア等が生息していること。 遺伝子の多様性とは、同じ種であっても、個体や個体群の間に遺伝子レベルで違いがあること。 生物多様性の理解を進めるために、「生物多様性」を「つながり」と「個性」と言い換える。

3.「生物多様性」の内在的価値/固有の価値
・生物多様性の意味(価値)を説明する「命と暮らしを支える生物多様性」では、「生態系サー ビス」として、人間にとって何らかの「役に立つ(奉仕する)」面ばかりが取り上げられ、内 在的(固有の)な価値が見過ごされ、「生物多様性」そのものの意味があるというメッセー ジを発しきれないでいる。
・世界の既知の生物 全世界の生物:175 万種、哺乳類:6000 種、鳥類:9000 種、 昆虫:95 万種、維管束植物:27 万種、未記載種も含めた総種類数は 3000 万種!
・生態系、種、遺伝子の生物多様性損失により、広範な生態系サービスの低下が生ずる危険性大。
・我々の存在自体を脅かされないためには、どの程度の生物多様性があれば十分なのかは、明確 な回答は存在しないが、我々がどのような世界に住みたいかがポイントである。
・一つの答えとして、ディープエコロジーがあり、環境問題は既に技術的対応を超えたものとし て認識し、今日の環境問題、社会問題の「根源」に目を向けるべきという。そこでは、すべて の生命に固有の価値(内在的価値)があり、人間にとっての有用性とは無関係なものである。 自然界への人間の介入は過剰で、他の生物にもまして、人間の地球に対する責任は重い!!

4.今なぜ「都市の生物多様性戦略なのか?」
・人間活動により地球の生物多様性が危機に! 都市はますます肥大化し、危機は増している。 都市も一つの生態系として捉えることが大切である! 里地・里山・里海等中間地域の大切さ。 都市生物相の検討、エコロジカルネットワークの構想、エコトーンの重視が必要である。

<所感>日本の環境行政・自然保護・生物多様性保全の創始段階から、トップリーダーとして活躍し 続けてきた講師の貴重な講演を聞くことができた。まだまだ、生物多様性の認知度は低いが、 その重要性はますます高まっている。自然豊かな生物多様性立国を祈念して。  

          

 貝のよもやま話 19
 -捨てられていた謎の貝-

     千葉港ポートパークかもめのクリーン隊 千葉市中央区 谷口 優子  
 10月の台風が去ったあとの日曜日、館山湾に貝の採集に出かけました。台風が去ったばかりの波があるときには貝が持って行かれてしまって採集には適しません。波が静まって台風から2,3、日たった頃がねらい目です。
 浜に降りていきなりめずらしい貝に出会いました。ちょっとうれしいと思ったのものもつかの間、しばらくするとあっちにもこっちにもその貝はありました。別の場所には館山では絶対に拾えない外国産の貝が。すると今度は淡水の二枚貝があたり一面に散乱していました。どうやらだれかがまとめて貝を捨てたようです。貝がらも海に捨てれば不法投棄。これらの貝はどう見ても業者が捨てたものなので「産業廃棄物の不法投棄」、ということになります。
 わたしは貝屋のはしくれですのでこのままにはできません。息子といっしょにすべて拾ってきました。貝をやっている人ならばすぐに気づきますが、ここに落ちていてはならない貝なのです。
               
 この貝は誰が捨てたものなのかすぐに察しはつきました。貝の数と種類からしてコレクターではなく貝細工屋さんがむかし仕入れた大量の貝を処分したものだとすぐにわかりました。この日見つけたのはリュウキュウカタベガイ(沖縄以南の巻貝)243個、ノシメガンゼキボラ(日本にはいない巻貝)22個、ササノハ(淡水の二枚貝)346個、タテボシガイ(琵琶湖特産の二枚貝)93個、サオトメイトヒキマイマイ(色の美しいハイチなどにいるかたつむり)などです。30~40年前に作られていたクジャクの羽にはタテボシガイが使われています。琵琶湖ではつくだ煮にして現在でも売られているそうです。(食べてみたいものです)
 貝がらというのは本当に不思議なもので生ごみとして捨てるのには抵抗があるようです。ときどき千葉ポートパークでもいるはずのないサザエやトコブシの殻がまとまって落ちていることがあります。先日、市民活動フェアでお話した方はわざわざ食べ終わったアサリなどの貝殻を捨てに行くそうです。人は貝を海に返したがる傾向があるようです。魚の骨は海に返す人はいないのに不思議です。
 海に落ちている貝は時としてこんなこともあります。海は続いているのでもちろんめずらしい貝を拾うこともあります。でも、見慣れない貝を拾ったら「この貝はここに棲んでいたものかしら?」と疑問に思ってみてください。不思議な貝を拾ったら拾った場所と日時、まわりの状況もぜひおしえてください。
 

【発送お手伝いのお願い】

ニュースレター2015年月1月号(第210号)の発送を1月7日(水)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: 先日、大草谷津田いきものの里に、県立高校の生物教員が集まり、研修会を行いました。森に入って最初に出た質問は、ヤツデを指さし「この木は何ですか」というものでした。クヌギやコナラも見たのが初めてということでした。教科書には、生態系や生物多様性に関する内容が沢山出てくるのに、どのように説明しているのでしょうか。まず教師が身近な生きものたちに触れることが、何より必要だと痛感しました。  mud-skipper