ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第210号 

2015.1.7 発行    代表:小西 由希子

目   次  

  1. 谷津田での米作り体験記
  2. 路樹レポ-街路樹調査から見えてきたこと その2
  3. ダーチャサポートプロジェクト始動 -その5-
  4.  「谷津田の生きものが語る」シリーズ11ふくろうのふくじい -千葉市緑区下大和田の森に在住-

谷津田での米作り体験記

佐倉市 高野 千絵子 

 14回目の下大和田でのお米作りに、ご縁がありまして参加させていただきました高野と申します。春から冬、モミから米ができるまでの一年間、あっという間に過ぎ、この講座で多くのことを感じ学ばせていただきました。
 元々、私の両親の故郷が秋田で、幼いころ訪れると、辺り一面田んぼだらけ、それこそ地平線に見える山のほうまで緑色といった景色でした。水路も川から流れくる水で、はだしで入りドジョウやナマズ、フナなどを捕って、夕飯に食べたものでした。ところがそのうち、土の水路がコンクリートで固められ、水草も魚も見られなくなり、暖かい景色が急に冷たく感じたことを覚えています。

   

 今回米作りに参加したのは、そんな幼いころに遊んだほんの一時が、本当に楽しくワクワクした記憶に残っていて、大人になっても自然が大好きでいられることを、自分の子供にも経験してもらいたかったからです。
 今、私は佐倉市に住んでおり、たくさんの自然が広がっています。お蔭で子供たちも雑木林や手繰り川で遊ぶことができ、色々な植物や魚を見ることができます。
 しかし、下大和田の里山では見たこともない珍しい生き物にたくさん出会えたのです。「どうしてここには、見たことがない植物や魚がたくさんいるの?」その答えが、この谷津田の米作りにあったのです・・・。
 米作りに関しては、祖父母は農家ではなかったので、私も初めての体験でした。ここでは、農薬や化学肥料を全く使わない、人の手を使った昔ながらの米作りをします。
 春はモミを田んぼの中に作った苗床にまき、苗を育てます。それから、まんのうや鍬で田の土を雑草ごとひっくり返し、養分にします。ガッチリと根を張った草を掘り起こし、泥の中に漉き込む・・・腕と腰の痛くなる作業ですが、こうすることで土に酸素が渡り、微生物の活動によってドロドロだけどふかふかの田んぼができました。

 

 一か月ほどで籾から10センチほどの苗ができました。いよいよ田植えです。もちろん機械ではなく、人力です。苗は3本づつ、手のひらに沿うようにして持ち、根がしっかり土中に入るように植えます。コツがつかめるまで植え込むのに時間がかかり、まっすぐ植えたつもりでも間隔がバラバラで曲がっていたりと、愛嬌のある田んぼが出来上がりました。
 一株にたった3本だった苗が、夏には分けつが進み、一株が十数本に増えていました。緑色の毛が田んぼにたくさん増えた!と言ったような喜びをひそかに感じていました。そのころには、雑草もずいぶん生え、これもまた人力で一生懸命泥の中に漉き込みました。除草剤は一切使いません。ですから、稲の周りにはたくさんメダカやオタマジャクシが泳いでいます。農薬を使わないので虫もたくさんいます。国のレッドリスト準絶滅危惧種のタコノアシもたくさん生えていました。また、鳥獣から守るため、案山子もつくりました。最近はなかなか見られないですよね。
 そして9月になり、いよいよ稲刈りです。この時は失敗しました。普通の田んぼのように土が乾いていると思い、子供の着換えを持ってこなかったのです!この田んぼは、生物を守るために、一年中水を抜きません。子供たちは予想以上に張り切って鎌を片手に、黄金色になった稲をお宝収穫のようにどんどん刈っていきます。初めての収穫、それはもう夢中で、気付いたらお尻も背中も真っ黒・・・(服は廃棄処分になりました・・・)。子供達は、泥んこの中でもがいている泥んこのメダカを、泥んこの手ですくって川へ逃がしてあげていました。こんなに泥んこになる経験もそうそうありません。また、稲の中から現れた、目が真ん丸なかわいらしい小さな小さなカヤネズミに、癒されたりもしました。 

 そして、稲を干し、脱穀し、籾摺りをし、見事なお米が出来上がりました。子供達は本当に嬉しそうに、ピカピカの新米に舌鼓を打っていました。本当に美味しかったです。お米ができるまでの一連の作業に参加することで、教科書や本で読んだだけの世界が、現実に目の前で開かれ、子供にとっても本当に貴重な体験をさせていただきました。
 最後になりますが、下大和田YPPのお米作りの皆様、心もお腹も満たしてくださり、本当にどうもありがとうございました。太陽と水と土と緑と風の匂いが、頭のてっぺんから足の先まで染み渡り、田んぼとそこに住む生物と共に過ごした、素敵な一年になりました。

路樹レポ-街路樹調査から見えてきたこと その2

佐倉市 小西 由希子  

 次は千葉市内各区の街路樹ウオッチングの報告です。
 稲毛区では、国道126号穴川交差点から国道14号につながる、道幅31m~52mの都市計画道路を見学しました。市民の働きかけによって市と協働の「道づくり全体協議会」が発足し、道路で街が分断されないようにと、掘り割り道路の一部蓋かけ、緑化が実現したものです。

   

 緑地は広いのですが残念ながら高木が少なく、歩行者はもっと緑陰が欲しいのではと感じました(写真①)。また広い花壇には一年草が植栽されていました(写真②)が、今後は手入れが少なくてすむ宿根草や球根にするなど、工夫も必要ではないでしょうか。日陰の植栽マスにはクチナシが密植され、そのほとんどが枯死していました。環境にあった樹種の選定が必要です。
 花見川区では、新検見川駅北側に東西の伸びる桜並木を見学しました。大正時代高圧送電線の下に緑地が整備され、昭和30年地元の婦人会が桜を寄付して、今では見事な桜並木になっています。根元には様々な草木が植えられており、老人会や町内会などによってきれいに手入れされていました。
 さらに北に行くと、オオガハスが発見された東大グラウンド近くにメタセコイアの並木があります。根上がりでアスファルトにひびが入っていて歩行者には危険です。見た目の美しさだけで樹種を選定したのでしょうか。
 またさつきが丘団地のイチョウ並木は、美しい黄葉が喜ばれていたそうですが、大量の落ち葉と葉で街灯が隠れて防犯上危険などの理由で切りつめられ、ネギ坊主のようになっていました。
 街の成熟と共に大きくなりすぎた街路樹は、今後植え替えなどを検討する時期にきているのではないでしょうか。(つづく)

ダーチャサポートプロジェクト始動 -その5-

㈱高田造園設計事務所代表取締役 千葉市緑区 高田宏臣  

 今農場の煮炊きに活躍しているのが、この自作のロケットストーブです。かまどの場合、大量の薪を使ってかまど全体を暖めねばならないのに対し、このロケットストーブは少量の小枝などで効率よく炊事の用が足せる上、簡単に火入れができるのです。
 
 ちなみに、この五風十雨農場では水、電気、燃料の全てのライフラインがほぼ自給されています。
 小さな焚口に小枝をくべると、たちまち炎は煙突に勢いよく吸い込まれていきます。
 その手軽さと効率のよさ、廃品利用で手軽に自作できる点など、週末ダーチャの煮炊きの用にはロケットストーブは必需品になることでしょう。
 この日の昼食は、周囲で取れた山菜です。 周囲の野山から採取して、自家製の油で山菜てんぷらのできあがりです。
 
 今回料理してくれたのは、ダーチャサポートと提携的に協力くださるNPOメダカの学校の方々です。山菜野草の知識があれば、春の野山はおいしい食べ物であふれているのです。
 お米は五風十雨農場の自然栽培米。
お味噌も完全無農薬の自家製大豆から作った、とてもおいしいお味噌汁。
 いのちの味というべきか、いのち溢れるほんものの食材のおいしさ、昔は当たり前だったのでしょうが、今の時代、健康な水と太陽と大地が育む素材本来のおいしさに出会うことで大きな感動に包まれます。 調理して食べる楽しみ、本当の満足感、ここでの食事は大切なことに気づかされます。
 五風十雨農場マザーハウスでのダーチャ談義は夜も続き、薪ストーブと少しの照明の下、緩やかな時間が流れます。
   
 隣の方から庭の水路に生えるクレソンをいただき、特産の行者ニンニクを、摘み取る。今日の夕飯も楽しみ。そんな暮らしを望む人に、できるだけ提供していきたい。同時に、耕作放棄地や里山の再生に繋げていきたい。そんな思いで、ダーチャサポート活動を始めます。
 そして、それが決して、時間やお金にゆとりのある一部の人にしか手に届かない別荘のようなものではなく、例えば、庭のある暮らしか、週末の自然の中での暮らしの場か、そんな選択ができる程度の金額で、できるだけ今の都会の子育て世代の人たちに提供し、サポートしていきたいと思っています。
 自然の中で生きる力を身に着け、大地の恵みに感謝し、感動しつつ暮らすこと、そんな人たちが増えることでこの国はどれほどよくなることでしょう。
 造園の仕事、そしてダーチャサポート、いずれも日本、地球の美しい未来のために力を尽くしてまいります。NPOダーチャサポートプロジェクト、多くの方々のご賛同、ご協力を心よりお待ちしております。(おわり)

          

 「谷津田の生きものが語る」シリーズ11
ふくろうのふくじい -千葉市緑区下大和田の森に在住-

     生きものコミュニケータ:市原市 南川 忠男  
  「わしをみたことがあるかい?」普段あんまり出会わないのは、わしらが夜行性だからじゃ。
 3年前の自然観察会の時に15人の人間が昼間大きな木の枝に止まっているわしを見つけて、網代さんが「ふくろうは夜行性だが、昼間も出てくる時があります」と解説しているのが聞こえた。「正解じゃ。あの日は寒い冬の晴れた日で、なかなかえさが見つからず、はらぺこだったのじゃ、昼も寝ずにえさをさがしていたのじゃ」。
 2月になるとニホンアカガエルが産卵で森から田んぼの畦に移動して人間には聞こえないオスの鳴き声も聞こえてくるので、この時はおなかがカエルで一杯になるぜ。 
                  
  わしらふくろうは右の耳と左の耳の高さを違えてあり、ねずみの歩く音やもぐらがのそりと穴から出てくる音を左右の耳に到達する垂直時間差と首を回してその時間が同じになる水平方向に合わせて焦点を合わせている。首はまうしろまで回せる。
 特に垂直方向の正確さは人間の3倍になる。眼球も大きく、三日月くらいの少しの光でも獲物に焦点を合わせられるのじゃ。森や田んぼのあらゆる生きものを識別できる。わしらは一旦全部まる飲みして消化できなかった骨や毛を団子状にして吐き出している。
 どこに巣があるかな?それはその団子の落ちている場所になる。わしの家内はこの前の朝、老衰で死んで森の広場に落ちていったのを見た。カラスのピー助やカー子に食べられる前に、自然観察会の人間が来て、「あらフクロウさん、こんなところで南無」と言って丁寧に埋めてくれたので成仏できている。人間さん、ありがとう。
 わしら食物連鎖の上にいるふくろうは下にいる生きものがたくさんいる環境で生きていける。この谷津田でふくろうが命をつなげられるのは米作りをしてくれる人間のおかげじゃ。
 今まで「生きものが語るシリ-ズ」のご愛読どうもありがとうございます。これからはカエルの一平やクサガメの亀子らの子孫の物語が不定期に登場します。

   参考文献:福本和夫著「フクロウ」
      私の探梟記(法政大学出版局1982)
 

【発送お手伝いのお願い】

ニュースレター2015年月2月号(第211号)の発送を2月6日(金)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: 12月の末に下田へ行く機会があり、南豆(なんず)無線電機を訪問しました。ここは、日頃観察会で愛用しているパワーギガホンというハンディー拡声器を生産している有限会社で、その性能の良さにいつも感心していました。高い技術力がありながら下田というローカルな地に留まる企業に、かねてから興味があったのです。事務所に行くと5~6人がユーミンの曲が流れる中で仕事をしていました。千葉から来た小生を温かく迎えてくださり、その雰囲気の良さにまた感心させられました。  mud-skipper