ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第214号 

2015.5.8 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 放射能に汚染されたゴミ-指定廃棄物処分場が中央区蘇我地区に
  2. 我が家新築ものがたり⑩ ~ウッドボイラーな冬~
  3. ちば環境情報センターの関連イベントへのお誘い
  4.  千葉県にすむ哺乳類 4   アカゲザル
  5. 貝のよもやま話 20 「世界の遺跡から出土した貝」展から

放射能に汚染されたゴミ
-指定廃棄物処分場が中央区蘇我地区に

ちば環境情報センター 代表 小西 由希子

 2015年4月24日環境省は、福島原発事故による8000Bq以上の高濃度放射能汚染のゴミ(指定廃棄物)の最終処分(埋立)候補地として千葉市中央区蘇我地区の東京電力敷地を選定したと、千葉市・千葉県に提示しました。あまりに唐突で、驚いた方も少なくなかったことと思います。
 環境省では、千葉県の処分場選定にあたり、市町村長会議を2013年4月から2014年4月までに4回開催してきました。当時、会議の議事録は概要のみで詳細は公表されませんでした。処分場は当初国有地か県有地という話でしたが、2014年1月の会議後、民有地も対象にし県内5000カ所から選定するという報道がありました。環境省のホームページで最近ようやく公開された議事録を読むと、民有地を提案したのは森田県知事だったことがわかり驚きました。
 候補地のすぐ海側は、千葉県・千葉市のごみ埋立て処分場だったところです。蘇我地区は以前から大気汚染が深刻で、さらに10年前には工場からの違法排水が大きな問題になりました。現在も工場からの粉じんが課題となっている地域です。さらにまたこの地に負担を背負わせるというのでしょうか。
 国が責任を持って管理していくので安全ということですが、安全に「絶対」という言葉はありません。住宅地から離れていることも選定理由のようですが、人の目が届かないところで正確な監視はできません。

 
 

 実は、千葉県の指定廃棄物の放射能濃度は、5万~10万Bqのものが14.4%もあり、かなり高いことがわかります(図1)。県内各地から市街地の中を運ぶ過程で交通災害による放射能汚染被害の発生も避けられませんし、今後首都圏直下型巨大地震や東京湾北部地震も予想され、大津波や液状化による危険度の高い場所でもあります。東京湾に流出した場合には、内湾の漁業に深刻な影響を与える危険性も考えられます。
 市町村長会議での「福島に持っていけないのか」という発言に対し、国は「福島の除染や廃棄物処理、復興にも大きな悪影響が出る」と回答していますが、量的な負担はどうなのか、保管量を比較してみました(図2)。千葉県は福島県のわずか2.8%です。

   

 さらに千葉市の保管量は,県全体のわずか0.1%(図3)です。
 原発事故の解決の糸口すら見えていないのに、それでも国は原発をすすめていこうとしています。そんな中、国の一方的な方針で高濃度放射性廃棄物を各県が処分し、千葉県では千葉市がそれを受け入れなければならないことに、私は納得がいきません。
 実は市町村長会議のほかに部課長会議も2回開催されていますが,議事録は公開されていません。密室でどんな議論がされたのか、県民は蚊帳の外です。放射能の問題は、将来世代に負の遺産を残すもので、悔いのない対応をしたいと切に思います。知らなかったではすまされないのです。私達が今ここでどう動くかが問われています。(図は環境省HPより作成)
 当会では,5/14(木)17時~19時 指定廃棄物処分場勉強会を予定しています。会場は当会事務所です。(連絡先090-7941-7655)また、千葉県放射性廃棄物考える住民連絡会(090-4868-7388)でも5/26(火)18:30~蘇我勤労市民プラザ多目的ホールで「処分場問題を考える蘇我地区住民集会」が予定されています。ぜひご参加ください。 

我が家新築ものがたり⑩ ~ウッドボイラーな冬~

山武市 中村 真紀  

 6歳の娘に「お父さん、どの季節が一番好き?」と聞かれ、「う~ん、冬は好きだったけど薪が大変だから秋かなぁ」と真剣に答えていた夫。それが初めての冬を越えた正直な感想かも知れません。
 私にとってはそれ程大変ではありませんでした。チビをお姉さん達にみてもらいながら、夕飯の支度の合間にちょこちょこ火のお世話。ボイラーの温度が上がらず、ぬる?いお風呂になってしまったり、日中は煙で近所迷惑にならないよう薪を我慢していたので寒くてたまらない時間帯も時々ありましたが、何とかボイラーのお湯を使ったお風呂と床暖と温風ヒーターで冬を乗り切りました。お蔭で大した風邪をひくこともなく、子供達も寒さに強くなり、3月で1歳になった末っ子は青っ洟全開で免疫力を上げまくり、私もじっとしていると寒いので前より働き者になった気がします。
 問題は夫です。大変だったと思います。
 普通の薪ストーブより薪を沢山使うのでなかなかすぐ使える薪を貯めておくことが出来ず、深夜に帰宅後、次の日の薪をカット(電動のこぎり買いました。ソーラーで充電中)、冷え切ったお風呂を温めなおすためボイラーの薪も燃やし、次の日の朝出勤前には私達が日中に使う暖のためにまた薪を燃やし…。薪の調達も一日仕事。冬場は1ヶ月で軽トラ山盛り一台分位の薪を使いました。サービス残業や休日出勤ばかりの会社なのに数少ない休日は薪の確保。重いので上げ下ろしだけでも重労働です。
 そんなたくましいお父さんのお蔭で私達家族も無事に温かな春を迎えられそうです。
 そういえば、次の休みには煙突掃除もお願いしなきゃな。

ちば環境情報センターの関連イベントへのお誘い

千葉市稲毛区 桜井 健  

1.田植えのお誘い -谷津田が一番美しい季節です-

 同封のイベント情報などにも日時は掲載しているのですが、田植えの季節を迎えました。5月に入って谷津田の新緑が日ごとに色を変え、一番美しく清々しい時期かもしれません。
 谷津田のいろいろなイベントのことを文字では目にするけれども、なかなか機会が無くて来られたことのない方、また、以前は足しげく下大和田谷津田に行っていたけれども、最近ちょっと足が遠のいてしまった、という方もいらっしゃるかもしれません。
 下大和田の谷津田での活動は1年を通じてやっていますが、気候も良く風景も美しい、田植えの時期に遊びに来ませんか?
 どんな感じでやっているのか、様子を見に来ていただくだけでも結構です。田んぼに入らなくても、短時間でも、谷津田の空気を吸い、子どもたちの歓声を聞いていると心身ともにリフレッシュされます。
 5月16日(土)9:45~14:00の予定で、下大和田谷津田での田植えを行います。おおぜい集まって楽しくやりたいと思っていますので、ぜひご参加下さい。

2.「第12回里山シンポジウム in 山武」へのお誘い

 ちば環境センターとしても、毎年企画運営にも関わって来ております里山シンポジウムですが、今年は山武市を会場とし、「-子どもに繋ぐ暮らし方- 里山と資源循環」と題して開催します。詳しくは今回のニュースレターに同封されているチラシをご参照下さい。
 今回は基調講演にスタジオジブリの高畑勲監督をお迎えし、また数多くのドラマや映画、CM音楽を手がけられた西村由紀江さんのピアノミニコンサートもあり、盛りだくさんの楽しい会になりそうです。
 また午前中の文科会では、当会のメンバーの木下敬三さんが発表者となり「山武市ならではの資源循環を目指した新しい農業へ」、同じく当会のメンバーの中村彰宏さんの担当で「里山資源を活かす循環ライフのすすめ」と題してご自宅の見学会も含めた分科会なども予定されています。当会のメンバーの活躍も楽しみです。ぜひ5月17日(日)は「里山シンポジウム in 山武」にお運び下さい。

 千葉県にすむ哺乳類4 アカゲザル

哺乳類研究者 香取市 濱中 修 

 南房総市白浜地区(以下、「白浜」)に、野生化したアカゲザルがすんでいます。
 アカゲザルの故郷は、アフガニスタンから中国までのアジア大陸です。アカゲザルとニホンザルは、よく似ていますが、ニホンザルは尾が短く、アカゲザルは尾が長いので、簡単に識別できます。アカゲザルの顔つきは、ニホンザルよりも少し面長です。
 最初に、白浜で野生のアカゲザルが目撃されたのは、1970年代半ばのことです。当時、私は、Rh式血液型の研究のために飼育していたアカゲザルを、白浜で野に放したようだと伝え聞いていたのですが、このアカゲザルが、世間から注目されることはありませんでした。
 ヒトには、ABO式血液型の他にも、いろいろな種類の血液型があります。Rh式血液型はその1つです。Rh式血液型の存在は、アカゲザル Rhesus monkey の血液(血球)を使って、1940年に明らかにされました。Rhは,アカゲザルを意味します。 

 転載禁止
 
 
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 戦後、血液中のRh因子が、新生児溶血性疾患の原因になっていることがわかり、Rh式血液型はにわかに注目されることになります。Rh因子解明のために、たくさんのアカゲザルが、実験動物として日本でも飼われることになりました。
 Rh因子の全容解明がほぼ完了するのは、1973年です。研究が終わり、飼い続ける必要がなくなったアカゲザルを、野に放したようなのです。
 1990年代にはいって、アカゲザルとニホンザルの雑種が見つかるようになり、白浜のアカゲザルは、一気に注目されることになりました。
 ジャワ島に直立原人が暮らしていた50万年前、氷河期が訪れて海面が低下し、日本列島と台湾島は、大陸と陸続きになりました。その結果、アジア大陸の東端にすんでいたサルが、日本列島と台湾島に分布を拡大しました。
 その後、海面の高さがもとに戻り、これらの島々は、大陸から離れました。サルは、日本列島ではニホンザルに、台湾島ではタイワンザルに進化しました。大陸に残ったサルは、アカゲザルに進化しました。すなわち、この3種類のサルは、「親戚」の関係にあります。だから、雑種ができるのです。
 白浜のアカゲザルの群れの分布域は、ニホンザルの群れの分布域と、重なってはいません。しかし、この2種類のサルの雄は、おとなになると群れから離れて、旅にでます。結婚相手を探す旅です。
 アカゲザルの雄が、ニホンザルの群れと巡り会って、ニホンザルの雌と結ばれれば、雑種の子どもが生まれます。反対に、ニホンザルの雄が、アカゲザルの群れに移れば、アカゲザルの雌との間に雑種の子どもが生まれます。
 雑種のサルは、生殖能力があります。ですから、アカゲザルを駆除しなければ、ニホンザルにアカゲザルの遺伝形質が広がっていくことになります。
 高宕山のニホンザル棲息地(富津市、君津市)は1956年に国の天然記念物に指定されています。千葉県にすむニホンザルは、日本の他の地域のニホンザルと隔離されていて、遺伝子の交流がないため、固有の遺伝的形質をもっています。そのため、学術的に価値が高いのです。アカゲザルとの混血は、阻止しなければなりません。
 千葉県は、2007年から、白浜のアカゲザルと、アカゲザルとニホンザルの雑種の本格的な駆除を始めました。駆除は、今も続けられています。
 千葉県には、アライグマ、ハクビシン、キョン、それにアカゲザルという4種類の外来哺乳類がすんでいます。日本にもちこまれ、野生化した理由は、それぞれ違います。共通していることは、飼育者が深く考えずに、これらの動物を野に放したために、今日の問題が起きていることです。


        

貝のよもやま話 20 
「世界の遺跡から出土した貝」展から

     千葉港ポートパークかもめのクリーン隊
     千葉市中央区 谷口 優子
 
  千葉県立中央博物館で春の展示「世界の遺跡から出土した貝」を開催中です。
日本の貝塚から出土した貝はもとより東南アジア、西太平洋、南米ナスカなど非常にスケールの大きな貝の展覧会になっています。実際に出土した貝もありますが、遺跡から出土した貝は破損したものも多いので現生のきれいな貝を展示しています。
  驚いたのはぺルーのナスカ地上絵に海岸で打ち上げられたと思われる海の貝がまかれているのだそうです。実際に調べてみると砕かれた貝が点々としており、非常に雨の少ない地域なので雨乞いなどの儀式に使われたようです。ナスカ平原は海から約50キロあるそうです。

        
  また、中国殷墟の遺跡から出土したタカラガイについて今回の展示を企画した黒住先生に質問したところくわしく説明してくださいました。殷の遺跡のほとんどは盗掘されていて残っていないそうです。唯一残った王妃・婦好墓(ふこうぼ)を調査したところキイロダカラが数千個も副葬されていて、ほかのタカラガイが混入していないことがわかりました。「殷」といえば日本ではタカラガイがお金として使われていた、とほとんどの本に書いてあります。ところが中国の博物館ではその大量のキイロダカラが「お金だった」という説明は一切なかったそうです。もしかしたら「タカラガイのお金」というのも考えなおさないといけないのかもしれません。柳田國男「海上の道」では宮古島からタカラガイが中国本土に持ち込まれ、かわりに稲を中国から持ち帰った・・・・とありますが、近年では宮古島の遺跡調査で中国との交流がなかったことが証明されています。
 同じ貝でも産地によって形が違うので遺跡の貝を調べることによって「貝の道」を辿ることができるのです。4月25・26日には講演会(無料)があります。
 黒住先生が世界各地を回って共同研究されてきた先生方のお話を聞くことができます。ぜひ、みなさまのご来場をお待ちしています。
 この企画展示はカメラで撮影ができます。5月10日まで開催しています。



 (編集部から:谷口優子さんからの原稿は、4月号に掲載予定でしたが編集作業上の問題で今月号になってしまいました。文章内容と時期がずれてしまったことをお詫びいたします。)
 

【発送お手伝いのお願い】

 ニュースレター2015年7月号(第215号)の発送を 6月 8日(金)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。

編集後記: 箱根山で火山活動が活発化して、5月6日には警戒レベル2となりました。御嶽山のこともあるせいか、気象庁も報道もかなり慎重な対応をしています。日本が火山国であることを改めて認識し、この美しい自然が火山や地震によって形造られてきたことを実感します。日本人は、太古の昔から災害と恵みの間で、生き続けてきたのですね。  mud-skipper