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ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第253号 

2018.8.6 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 石炭火力発電所に対するダイベストメントに関する動きをご紹介します。
    日本生命保険相互会社と石炭火力
  2. 新浜の話 7 「新浜カウントグループ(新浜倶楽部)」 
  3. どんぐりと野ねずみ
   

石炭火力発電所に対するダイベストメントに関する動きをご紹介します。
日本生命保険相互会社と石炭火力

袖ケ浦市民が望む政策研究会ブログより 

 7月3日、今日は日本生命保険相互会社の総代会が行われます。総代会の会員は200人いるのですが、その方々に、日本生命保険相互会社が、日本におけるダイベスト運動(地球温暖化と関係する温室効果ガスの一つ、二酸化炭素(CO2)の削減を目指し、そのもととなる化石燃料関連企業からのダイベストメント(投資撤退)を唱えて始まった市民運動。)の先導的役割を果たしていただくべく、激励の発言を求める手紙を総代会会員に送付しました。私たちも送付しましたが、その中から、気候ネット桃井さんの手紙を紹介します。現状についてきっと深い理解を得られるでしょう。          (事務局 川上宏) 

 拝啓 例年より早い梅雨明けで、早くも猛暑を迎えておりますが、貴殿におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さて明日7月3日、日本生命保険相互会社の総代会を迎えるにあたって一筆お便りさせていただきました。
 今年4月26日、日本経済新聞において「日生、ESG投資(環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資。)を急拡大 石炭火力は停止検討」との見出しで記事が掲載されました。記事では、日本生命の2018年度の運用方針に関する説明会で、秋山直紀財務企画部長「17年度時点で成長・新規領域に約7822億円の投資を実行。うちESG分野は2022億円と、当初の目標に初年度で到達した」ことを明らかにするとともに、同会見で「「石炭火力発電などのプロジェクトに対しては新規の投融資は行わないことも検討する」考えを明らかにした」と報じられています。
 このような方針は、世界的な脱石炭の潮流に乗るものであり、私たちも早期の “方針決定”を期待するところです。世界では、2015年パリ協定の採択を前後に、世界900以上の機関投資家や金融機関などが化石燃料関連企業からのダイベストメントの方針を定めており、その運用規模は全世界総額で6.15兆ドルにのぼります 。
 また脱石炭を宣言している国はイギリス、フランス、カナダなど28カ国となり、こうした国のリーダーシップのもと地方政府も「脱石炭連盟(PPCA)」に加わり、これらの地域では2030年までには既存の石炭火力発電所がすべて廃止されることとなっています 。
 パリ協定では、地球の平均気温の上昇を、産業革命前から比べて2℃を十分に下回るように抑え1.5℃におさえることを目標としていますが、これに従えば、今後人為的に排出できるCO2の排出量は科学的にあと僅かしか残されていません。そのためには、地球上の(とりわけ先進国の)既存の石炭火力発電所も早期に廃止しなければならず、石炭火力発電所を新規で建設したとしても座礁資産化するリスクが高まっているため、こうした動きが加速していると考えられます。
 一方、再生可能エネルギーを100%にするという動きも強まり、国際的な自然エネルギー100%を宣言するためのイニシアティブ「RE100」には昨年からリコー、イオン、アスクルなど日本の企業も加わり大手企業137社にのぼっています 。こうした動きを背景にして、太陽光や風力発電のコストは急激に下がり、化石燃料コストを大幅に下回るようになってきています。自然エネルギー100%の世界は、手の届かない理想の世界ではなく、現実的に達成できる将来のビジョンとして描かれるようになりました。
 日本では、石炭火力発電所の建設計画が多数存在し、2013年以降から着々と進んでおり、その動きはまさに世界の潮流に逆行するものです。多くのエネルギー関連企業の筆頭株主として存在している日本生命の方針決定は、日本の未来を世界の潮流に向ける重要な決定となり、ひいては、高炭素経済から脱却して、持続可能な社会経済へと向かわせることとなると信じています。現在の計画として次のような計画が存在していますが、「座礁資産」となる可能性の高い以下の計画を今から止めることが日本社会全体にとっても必要であると考える次第です。ぜひとも今回の総代会にて、この点でご発言いただけたらと思い、ご連絡申し上げる次第です。どうぞよろしくお願い申し上げます。 

気候ネットワーク東京事務所長 桃井貴子

 その後、日本生命保険は7月12日、国内外の石炭火力発電プロジェクトに対する新規投融資(プロジェクトファイナンス=PF)を止めると明らかにしました。
 ※ 袖ヶ浦市民が望む政策研究会:市民の為の政策実現を目指して、活動をしている市民運動グループ。

新浜の話 7 「新浜カウントグループ(新浜倶楽部)」 

千葉県野鳥の会 市川市 蓮尾 純子 

 浦安橋東詰のバス停からほんの数分で、浦安の町並みに入ります。バス停のきわは水田で、冬にはいつも干してあった海苔簾を思い出すのですが、青々とした稲や色づく稲穂の記憶はありません。その季節には江戸川放水路から回っていたのでしょうか。猫実(ねこざね)の街なかを歩いて15分ほどで、境川に出ます。焼きアサリのおいしそうな匂い、夏の帰り道にはたいてい寄った氷屋さん。
 町の中心近くにあった「市兵衛」という割烹料理屋さんが、新浜カウントグループの拠りどころになっていました。バス停近くのパン屋さんで毎週のように昼食を買っているうちに、パン屋の奥さんと仲良くなって、土曜の夜に近くで泊まれるといいのだけれど、という話になったそうです。奥さんが「市兵衛」の御主人の妹さんで、持っているパチンコ屋さんの2階の部屋があいているけれど、ということ。若手社会人のメンバーは、土曜日の仕事を終えてから(週休2日制が普及するのはまだまだ先のこと)、月額2千円也でパチンコ屋さんの2階に泊まらせてもらうようになりました。旅館は1泊二食付きでたしか3千円くらいだった時代です。夜は「市兵衛」さんで一杯やることも。

 

 夕方前の時間帯にはお店の仲居さんたちがこの部屋でひと休みしていることもあったそうで、パン屋の奥さんは独身者ばかりのメンバーにいい人を紹介したかったようです。それでもみんな鳥ひとすじで、夜も、当時入ってきて間もないピーターソンの図鑑を中に、シギチドリ類や故熱海浩さんの難解なムシクイ類の識別談義に花を咲かせていたとのこと。周囲に目を向ける余裕もなかった、今となっては少々残念、という声もありました。
 高校生メンバーの私たちは、パチンコ屋さんのお部屋にお邪魔したことは1、2回しかありません。一隅に流しがあって、1回だけみなに夕食を作ったことがあったはず。塩ダラの切身にわざわざ塩をして大失敗、大笑いされた覚えが。
 お布団があるわけではなく、座布団に寝袋で泊まったそうです。3年の間、ほとんど毎週土日に通い続け、鳥を数えた若き日の絆は、みそっかすには窺い知れぬ強いものだったと思います。今でも年に2回、同じく熱狂的なバードウォッチャーで、1970年代から谷津干潟の鳥のカウントを続けている石川勉さんの中華料理店「鳳蘭」で飲み会をやっています。海外勤務が長かった今野紀昭さんを中心に、昨年にはスペイン、今年は北海道の道東旅行のほか、7月にはアリューシャン列島への夢の探鳥行を実現させておられ、憧れのシラヒゲウミスズメや「アリューシャン・マジック」を堪能されたそうです。
 「新浜スタイル」と呼ばれていたのは、ひざまでの長靴にプロミナ―(地上用のスポッティングスコープ)。電車やバスの中でも双眼鏡を手放しませんでした。数取器と保育社の原色日本鳥類図鑑(小林桂助著、コバケイ図鑑と言われますね)も必携品。そのうちに欧米のコンパクトな図鑑が加わりました。今の格好とあまり変わりはありませんが、デジカメ登場のはるかに前で、写真を撮る人は重くて長い望遠レンズを持ち歩くことに。
 中学生からの長い鳥歴で「坊や」と呼ばれ、長く日本鳥類保護連盟に勤められた柳澤紀夫さんは山岳部出身で、泊まりがけの鳥見にはいつもコッフェルを持参。リタイア後、山階鳥類研究所の特任研究員(ボランティア)として特にシギ・チドリ類のカラーフラッグ(足につける標識の一種。色や形、組み合わせによって標識地がわかる)観察例関連を担当された広居忠量さんは、高校生どもの引率役で、今も指導教官。宇山大樹さんはリタイア後与那国島に部屋を借り、住み込みで鳥を記録されました。

どんぐりと野ねずみ

哺乳類研究者 香取市 濱中 修 

縄文人が食べたどんぐり
 秋、校庭のマテバシイの木が、どんぐりを落としていました。拾って教室にもっていき、生徒たちに「このドングリはおいしいんだよ」と教えてあげたのですが、反応がありません。どんぐりの皮をむいて食べて見せました。生徒たちの顔が、いっせいに驚きの表情に変わりました。今は、多くの子どもたちにとって、どんぐりは人間の食べ物ではないようです。

 

 どんぐりの粉を使って、クッキーを作ることができます。千葉市の加曽利貝塚で行われているイベントでは、どんぐりクッキーが今も売られています。でも、どのどんぐりからも、おいしいクッキーができるわけではありません。マテバシイのどんぐりは、粉にして、そのまま焼いても、おいしいクッキーになります。しかし、雑木林をつくるクヌギやコナラのどんぐりは、タンニンという渋い物質をたくさん含んでいますから、よく渋抜きをしてから焼かないと、食べられるクッキーにはなりません。
 青森県にある三内丸山遺跡は、集落のまわりに、広いクリ林があったことで知られています。日本の寒冷な地方には、昔から自然の中にクリの木が生育していました。北の地方の縄文人は、クリの木を集落のまわりに植えて、その果実である栗を食料にしたのです。
 九州の縄文遺跡では、イチイガシのどんぐりがたくさん出ています。イチイガシのどんぐりは、マテバシイのどんぐりと同じようにタンニンが少なく、そのまま焼いて食べることができます。イチイガシは、暖かい地方に育つ木です。南の地方の縄文人は、栗の代わりに、イチイガシのどんぐりを食料にしていました。
 どの種類の木のどんぐりも、渋抜きをすれば食べられます。でも、そんなめんどうくさいことをしなくても、イチイガシのどんぐりならば、すぐに食べられます。そういう理由で、南の地方の縄文人たちは、イチイガシを集落のまわりに植えて、広いイチイガシの林をつくりました。縄文人は、頭が良かったのです。

野ねずみが食べるどんぐり,食べないどんぐり
 千葉県の森林には、アカネズミとヒメネズミが住んでいます。この2種類の野ねずみは、秋から冬にかけて、どんぐりを食べます。でも、どの種類の木のどんぐりも、同じように食べるわけではありません。タンニンが多くて渋いどんぐりは、食べません。野ねずみにとって、タンニンは毒なのです。渋いドングリを食べ続ければ、胃腸が傷つき、栄養の吸収ができなくなって、衰弱して死にます。
 スダジイ林には、アカネズミ、ヒメネズミがたくさん住んでいます。スダジイのどんぐりは、マテバシイのどんぐりと同じようにタンニンが少ないドングリです。

 

 人間が木を切ったりしなければ、千葉県は、ほぼ全域がスダジイの森林になります。でも、人間は、木を切って、家を建てたり、燃料にしたりしてきましたから、スダジイ林は、鎮守の森など、神様や仏様のための神聖な領域にしか残っていません。
 雑木林は、炭や薪にする木を育てる林で、主にクヌギやコナラが育ちます。これらの木のどんぐりは、タンニンが多い。だから、多くの雑木林の中には、アカネズミもヒメネズミも、あまり住んでいません。
 雑木林が人里のすぐ近くにあって、畑と隣り合っているところには、アカネズミがたくさん住んでいます。農家が、畑の隅や雑木林の中に、規格外れで売り物ならない芋などを捨ててくれるからです。アカネズミは、雑木林の中に巣穴をつくって、夜、それを食べに出てきます。
 クヌギやコナラは、冬に葉を落としてしまう木ですが、千葉県の農村部には、冬でも葉があおあおと茂っている森林がたくさんあります。アカガシ、シラカシなど、常緑のカシ類が中心の林です。これらのカシ類も、タンニンが多いどんぐりを実らせますから、アカネズミやヒメネズミは、この林にも少ししか住んでいません。
 房総半島の南部には、イチイガシの林があります。ここには、アカネズミとヒメネズミがたくさん住んでいます。イチイガシのどんぐりが、これらの野ねずみの冬の生活を支える食べ物になっているからです。

アカネズミとスダジイの林の再生
 スダジイは常緑樹で、高い枝に葉がびっしりとつきますから、スダジイの林の中は、一年を通じて、良く晴れた日の昼間でも、薄暗い。だから、スダジイのどんぐりは、その林の中で芽を出しても光が弱すぎますので光合成をして育つことができません。
 台風がやってきたりして、スダジイの林の中の大木が倒れると、そこに空き地ができ、地面まで日光が差し込むようになります。そういう場所をギャップ gap といいます。アカネズミは、好んでギャップに巣穴をつくります。
 秋、アカネズミは,スダジイのおいしいドングリを、巣穴やその近くにせっせと運んできて隠します。食べ物が少ない冬に備えて、どんぐりを貯えておくのです。
 貯えられたどんぐりのほとんどは、冬の間に食べられてしまいます。でも、幸運などんぐりは、食べられずに残ります。ギャップに暖かい春の日光が差し込むと、アカネズミが運んできたどんぐりが、芽を出して育っていきます。やがて、スダジイの新しい木が大きく育って、林は修復されます。アカネズミは、スダジイの林の再生に一役買っています。

 フレンドシップキャンプへのご寄付のお願い

 今年も千葉YMCA主催で、福島の子どもたちを千葉市少年自然の家に招いてちばの子どもたちと交流する「フレンドシップキャンプ」が開催されます。震災以降、福島からのバスの費用の一部にと、会として皆さまにご寄付のお願いをさせていただいてきました。今年も以下の通りご連絡をいただきましたのでどうかよろしくお願い致します。
 お手数ですが、以下の口座にお振込みいただきますようお願いいたします。イベント時に手渡しいただいても結構です。
 郵便振替口座 00130-3-369499 ちば環境情報センター 「キャンプ寄付」と明記してください。

がんばれ地球マンはしばらくお休みします


 

【発送お手伝いのお願い】

ニュースレター2018年9月号(第254号)の発送を9月7日(金)10時から事務所にておこないます。 発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。

編 集 後 記

 上高地のマイカー規制は1975年から、乗鞍岳は2003年からだそうだ。バス代は高いが大勢の利用があるのに驚いた。環境効果だけでなく、賑わいや触れ合いも生まれる。関係者間の調整は困難を極めるだろうが、空洞化した市街地でも乗り入れ車に課税するなど検討の余地はある。      mud-skipper♀